短い上に、途中で自分で何書いてるか分からなくなった……武内くんムズイよ……
「以上が、明日の皆さんのスケジュールとなります。現場入りまでの時間はオフとなっています。大丈夫だとは思いますが、収録に支障が出ないレベルで目一杯羽を伸ばしてきてください」
「「「はい!」」」
「それでは、今日はお疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした!」」」
明日のオフどうしましょう?等と相談しながらプロジェクトルームを後にするニュージェネレーションズの3人。何度もトラブルに襲われたが、全て乗り越えた。シンデレラプロジェクトのユニットの中で一番絆が強いのは彼女らだろう。なんて、一息つけた頭でぼんやりと考える。
「ダメだ。俺にはまだ事務仕事が残ってたんだった」
こんな風に独り言が素の言葉で漏れるようになったのも、シンデレラプロジェクトのメンバーのおかげだろう。今西部長の言う『無口な車輪』。確かに、言い得て妙だ。
誰に対しても敬語で壁を造り、必要以上にアイドルに干渉しない。仕事をこなすだけの社会の車輪。そんなモノに自分はなりかけていた。それをすんでのところで引き留めてくれていたのは、遼哉だった。そして、
「……デューサーさん、プロデューサーさん!」
「は、はい!」
声をかけられて、ようやく気づいた。プロジェクトルームに人が来ていたのだ。
「千川さんでしたか。どうされましたか?」
「プロデューサーさんに資料をお持ちしたんですが……私のノックにも反応が無かったので、入ってみたんです」
「そしたら私が考え事に没頭していたという訳ですか……申し訳ありません」
「いえ、謝られるようなことでもありませんし」
笑顔で返してくれる千川さんに、申し訳なく思う。ただ、これ以上謝っても却って彼女を困らせてしまうだろう。自分は無意識に右手を首裏に持っていく。
「ところでプロデューサーさん? お仕事は後どれくらいで終わりそうですか?」
「仕事ですか? まだ時間がかかりそうですね」
「そうですか……」
見るからに凹んでしまう千川さん。恐らく飲みにさそってくれようとしていたのだろう。最近は忙しくて彼女とは一緒に飲む機会が無かった。
「まだ時間はかかります。なので、急いで終わらせますね。この仕事の方がついたら、一緒に飲みにでも行きましょうか」
「あ……はい!」
あぁ……良かった。笑ってくれた。もう……人の悲しむ顔は見たくないから。
「……あの」
「はい?」
「凝視されていると仕事に入りにくいのですが……。楽しみなのは分かりましたから、デスクに顔を乗せてニコニコしなくても……。千川さんにも自分の仕事が」
「私の仕事なら、プロデューサーさんに書類をお持ちしたので最後です。なので、お気になさらずに仕事を続けてくださいね」
「ですが……」
「お気になさらず♪」
「……分かりました」
人にじっと見つめられながら仕事するのはなんだかくすぐったい気持ちだ。そう思いながら、自分はやはり首の裏側に右手を回した。
「それじゃあ武内くん、今日もお仕事お疲れ様!」
「そういう千川もお疲れ」
仕事終わりの居酒屋で、同級生としての労いをしてくる千川に同じく同級生として返す。
「前にも増して忙しくなったわよねぇ〜」
「シンデレラプロジェクトの彼女たちの仕事が増えたのもあるけど、プロジェクトクローネとしてデビューした彼女らのスケジュール調整もこっちに回ってきたからな」
「武内くん大丈夫? ちゃんと休んでるの?」
「大丈夫。とはいえ家に帰っても少しやることあるし、結構夜遅くまで起きてるな。昨日仕事が終わったのは夜中の2時だったし」
この仕事が朝早い出勤じゃないのが幸いだなぁと言いながら酒を飲む。
「……武内くん、前の休暇ってどれくらい前?」
さて、何時頃だっただろうか? シンデレラの舞踏会を成功させた後に当時の常務だったか今西さんだったかに取らされた記憶がある。シンデレラの舞踏会もからもう……
「……3ヶ月前とか?」
「……なんで?」
「いや、なんでと訊かれても困るんだが」
ただ休暇を取るタイミングを失って、そのままズルズルといたら3ヶ月経ってしまっていたというだけで。それを聴いた千川は大きく溜息をついた。すごい呆れられている。
「決めました! 今度一緒に何処かに行きましょう、温泉とか! デートですよ、デート!」
「ちょっ、周りに聞こえるから」
突然何を言い始めたのかこの人は。
「デートとか……どうしたんだよ千川」
「だって俊輔ったら凛ちゃんとか絢香ちゃんとかにうつつを抜かして私のこと構ってくれないんだもん。私だって寂しいのよ?」
むぅ……とむくれる。首に手が回る。
「いや、俺が困ってるの分かってるだろ?」
「分かってる……分かってるんだけど! なんか嫌なの!」
と言って彼女は、コップに残っていたビールをグイッと飲み干した。
「結局、誰が本命なの!? いい加減私の所には来てくれないの!? どうなの俊輔!」
「待て待て待て待て、とりあえず落ち着けちひろ。お前もう酔ってるな?」
「酔ってますよ! でもこれは私の本心だから! それは分かってるでしょ!」
「分かってるから困ってるんだよ……」
千川ちひろ。美城プロダクションの事務員で俺の同期。小学校時代からの幼馴染であり、俺が告白への返事を保留している相手だ。
「こうなると思ったから私は告白したのに……保留にされて。結局凛ちゃんみたいな子が増えて。酷いよ俊輔! 元々絢香ちゃんっていう強敵がいたのにぃ〜……」
「ごめんってば、ほら泣かないで! 俺、トラウマ刺激されて辛いから……確かに悪いとは思ってるよ」
「……うん」
俺の言葉に泣き止みながら聴いてくれる。
「俺もこんな風になるとは思わなかった。でも、告白された時の俺に恋愛のことを考えられる程の余裕は無かったんだ」
「確かに……そう言われた」
「ああ言った。でも、ちひろのことが嫌いだって訳じゃない。寧ろ好きだ」
俺の好きだという言葉に一瞬喜んだ顔をするが、直ぐに暗くなる。
「でも、それは恋愛感情としての好きじゃないんでしょう?」
「ああ。その時の俺はこの好きが友達としてのモノなのか異性としてのモノなのかが分からなかったんだ。だから、考える時間をくれなんて言って逃げた。余裕が無かったのは本当のことだけどな」
思った以上に言葉がスラスラと口から溢れる。酒の力もあるだろう。今はこのことに感謝だ。普段言えないようなことも……今なら。
「ちひろには感謝してる。仕事場ではちゃんと線引きもしてくれるし、終わった後には今日みたいに同級生として接してくれる。そんな女性はちひろだけだ」
でも、ここでちひろを選んでしまってはダメだ。選択をするには早すぎる。焦るな。逸るな。
「でも、俊輔はここで私を選んではくれないんでしょう?」
「え……?」
考えていたことをちひろに言われて呆然とする。酔っていたはずの彼女の顔は赤味を帯びつつも慈愛に満ちていた。
「何年俊輔と一緒にいたと思ってるの? あなたの考えてることなんて読めるわよ。凛ちゃんたち、アイドルのことを考えてたんでしょう?」
図星だ。
「ほら、図星って顔してる。美波ちゃんが言っていた恋愛推奨。それは隠れ蓑を失うことだったんだよね。アイドルは恋愛禁止。そういう隠れ蓑があったから、俊輔は彼女たちの行為から逃げられた。でも、拒む理由が無くなっちゃった」
そう。もう知らないフリは出来ない。彼女たちの中から1人を選んで、他の子を悲しませなければいけない。それは、自ら傷口を抉るようなモノだ。でも、これは今まで逃げ続けたことに対する罰。自分が一生背負い続けなければいけない重み。
「彼女たちは貴方と添い遂げるためならアイドルも引退出来た。でもそれは俊輔を傷つけることだから、遠慮していた。でも、もうその必要はない。彼女たちはもっと純粋に貴方を求めるんでしょうね」
そこで、ちひろは悲しそうな顔をした。そして俯く。
「でも、私はそこまで出来ない。彼女たちに何処かで引け目を感じている。だから、私はもう身を……」
「やめろ!」
彼女が馬鹿げたことを言う前に掻き消す。
「そんなことを言うなら、自分の涙ぐらい隠せよ……」
机には一箇所だけ雨が降っていた。
「ちひろも来ればいい。堂々とライバル宣言をしてやればいい。全部背負う。きっと俺は今まで以上にすごく困る。それでも、何時かは誰かを選ぶ。それまではとことん俺を困らせてくれればいい」
ちひろは顔を上げて笑った。
「分かった! もう嫌だった言っても止めてあげないわよ?」
「ああ、ドンと来い」
雨はもう降ってはいなかった。
「ところで、温泉は本当に行くのか?」
「もっちろんよ! 貴方は休みなさい!」
「……一応連絡してみる」
『休暇を取れるかだぁ? ったり前だろ、お前どんだけ貯めてると思ってんだ! さっさと使え! で、何に使うんだ。温泉? あぁ……了解。色々と把握したわ。明日千川の分までしっかり調整してやるよ。そんじゃあな』
「なんで遼哉、ちひろのことまで分かったんだ……?」
いかがでしたか?
それでは次回予告
プロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさん
「それでもまゆは……」
嘘です。これから連想される子(名前出てる)は登場します。でも、こんなんではございませんので。あ、最後のセリフは出てきます。
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