Fate/move again   作:遥01

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 長らく待たせてしまって申し訳ありません! これからも亀更新にはなりますが、温かく見守っていただけると助かります。それでは。


プロローグ・アサシン

 俺は殺人鬼だ。ただただ、殺人を楽しむ。この世界は道徳だの偽善だので溢れかえってる。そんな世界は嫌いだ。鬱陶しい。窮屈だ。退屈だ。だから俺は、善を悪で苦しめる。そして、悪は善に倒されるべきなのだーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何々、聖杯戦争には英霊(サーヴァント)と呼ばれる使い魔と令呪と呼ばれる刻印が必要かぁ。令呪ってのはこの赤いのでいいんだよな。英霊(サーヴァント)......なんか適当にやってみるか」

 

 

 薄暗い部屋に赤い水溜まりのような場所がある。その水溜まりの上には右手が無い女性が横たわっている。さらにその女性の上には古い本を左手に持った金髪碧眼の男が腰を下ろしていた。

 

 

「かえ、せ......わたしのれいじゅ、を......」

「もう無理だって。右手諸とも切断しちゃったし。後は出血死を待つだけだよ。もう諦めて死にな。せめて焼いてあげるから」

「くっ......しね、さつじんき......おまえには、かみのさばきが......」

「ふぅ、やっと死んだか。手間取ったなぁ」

 

 

 男は立ち上がり、息絶えた女性を見下ろす。そして不適な笑みを溢し、こう呟く。

 

 

 冬木で待っていろよ、善良なる市民ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔術なんて滅多に使わないからなぁ。召喚できるかな......っと、これで魔方陣はいいか。じゃあ、唱えるか」

 

 

 赤く刻まれた魔方陣の傍に立ち、男は詠唱を始める。

 

 

 

 素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 

 閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ満たされる刻を破却する。

 

 

 ーーーー告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

 

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

 

 汝三大の言霊を纏う七天。

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーー

 

 

 赤く輝く魔方陣はその輝きを増し、部屋全体を包んだ。

 

 

「ははっ、あんたがオレのマスターか? 貧弱そうだなぁ」

 

 

 目を閉じていた男は聞こえた声に反応し、目を開ける。そこには、端整な顔立ちの中性的な少年が立っていた。だが、どこなとなく胸が膨らんでいるような......

 

 

「君は、誰だ?」

「俺か? オレはサーヴァント″アサシン″。一人称はオレだが、れっきとした女だぜ。で、マスター。あんたの名前は?」

「俺はグリム・英霊(サーヴァント)は真名があるんだろう? それを教えてくれ」

「......まあいい。聖杯戦争で呼び出されるアサシンなんて相場が決まってる。オレはハサン・サッバーハ。暗殺教団『山の翁』の″座″を持つ暗殺者さ」

「女が暗殺者なんてやるのか?」

「そりゃまあ、オレには才能があったのさ。だから、この座にもつけた。まぁ、オレは少しばかり異端だったがなぁ」

 

 

 にしし、と笑う少女の暗殺者。きれいな黒髪を携えた少女は、とても暗殺者に見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、オレはアサシンだ。暗殺を生業としている。だれか殺すか?」

「悪いが殺すのは後回しだ。今は敵の手の内を知りたい。橋を渡った先の町を見てきてくれ。橋を渡る前にサーヴァントと遭遇しても同じだ。じゃあ、頼む」

「了解だ!」

 

 

 アサシンとは暗殺者、いつ寝首をかかれないか心配だったが、当分は大丈夫だろう。

 

 

「ふう、疲れたな......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偵察ねぇ。俺の性分は暗殺なんだが......新たなマスターを探すのもやぶさかじゃねぇな」

 

 

 アサシンは一人、ビルの上でほくそ笑む。そのとき。

 

 

「なんか居るなぁ......」

 

 

 人気の無い場所に立っている街灯に腰をかけている男に狙いを定め、アサシンは移動する。槍を持ったその男は、案外くつろいでいた。

 

 

「よう、オッサン。暇か?」

「あらら、こんなオジサンに何のよう?」

「いやいや、なんだか面白い物を持ってるなぁ、って思ってなぁ」

 

 

 アサシンは男が持っている槍を指し、不適な笑みを浮かべる。

 

 

「その槍からして”ランサー”だろ?」

「そういう嬢ちゃんはアサシンか? 話しかけられるまで全く気配が無かった」

「ご明察。俺の名前はアサシン。さすがに真名は言えないが、まあまあ強いアサシンだ。以後よろしく頼む」

 

 

 アサシンはナイフを顕現し、ランサーは槍を構える。

 

 

「サーヴァント"ランサー"......」

「サーヴァント"アサシン"......」

「いざ参る!!」

 

 

 先手をとったのは、やはりと言うべきか”ランサー”だった。

 

 

「はあっ!」

「うおっと! あぶね」

 

 

 “ランサー”の一閃は、“アサシン”の首を掠め、纏められていた“アサシン”の髪を解いてしまった。

 

 

「意外とそっちの方がいんじゃない? というか女だったのね」

「はっ、女だからって手加減するか?」

「そんなことするかよ。戦いを挑んできたんだ。それにサーヴァント。殺すさ」

「そうだよな。ま、殺されるのはお前だけどな」

「なに? ッ!? これは......」

 

 

 1mmにも満たないであろう細い線。糸だ。至る所に仕掛けられている。首や腕、脚に至るまで。少し動かせば切れるほどに鋭利だ。その糸に動きを封じられている。少しでも動けば、容易く切断されてしまうだろう。

 

 

「悪いけど、オジサンはここでやられるわけには、いかなくてね」

「逃がすとでも思ってんのか?」

「ああ。逃がしたくなるというか、隙が出来ると見た」

「は? ・・・・・・んなっ!?」

 

 

 空からもの凄い速さで“何か”が迫ってくる。数はおよそ八十。

 

 

「なんだこれ!?」

「多分、矢だろ。戦争ではよくある手だ。遠くからの飽和攻撃。簡単に予想がつくが・・・・・・。まあ、ともかくだ。オジサンはこれで失礼させてもらうよ。じゃあ」

「あ、こら待て!」

 

 

 ランサーは闇へと消え、その場にはアサシンと破壊された街路だけが残った。ランサーの動きを封じていた糸は、突如降り注いだ“矢”に消され、消えていた。

 

 

「納得出来るかよぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

 アサシンの咆哮は空に虚しく響き、闇へと同化した。後にセイバーの館を襲撃しに行くまで、アサシンが活動することは無かった。

 

 

 

 

 

 場面が変わり―――

 

 

「遊び半分で他人の戦い(喧嘩)に首を突っ込むのはこれで終いにするか」

 

 

 弓を持つ青年は山の茂みへ消えると同時に、城へと戻っていった―――

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