ことの発端は交渉したいと言ってきた半蔵にある。
彼は他里の影も呼び集めており、そこで話し合いの場を設けたのだ。
ヒルゼンを呼ばなかったのは、理由あってのことである。
曰く。これ以上血を流すことは良い事ではない。雨の里に対して木ノ葉、砂、岩の三国の土地を2割、雲と霧から国家予算の2割を頂戴したいと言った。
下手に出るのではなくあくまでも強気な発言でことを進める半蔵であったが、当然その他の者たちからすれば認められるようなものではない。
扉間は頭の中でどうすれば里の為になるかを熟考する。
その間にも四影と半蔵の話し合いはヒートアップするが、ふと半蔵が扉間が犯してきた罪というのを話し始めた。
半蔵は木ノ葉へ優秀な密偵を送り込み、調査を行わせていた。その中で、穢土転生なる術を使って金角銀角を蘇らせ、操っていると言った。
この言葉に最初に反応した三代目雷影は他国での両名の襲撃事件の真相に気がつく。
問い詰められた扉間だったが、冷静なまま肯定した。
卑劣な行いとして、四影は怒り狂うが、扉間は里を守るためであり、なおかつ今の今まで真相にたどり着けないことが悪いと言う。
加えて、扉間は豪胆にも風影と水影に取引を持ちかけた。
両者の里に木ノ葉の資源を2割ほど送り、支援するため攻撃は控えよと。
2割では無理。と水影は言うが、すでに知らせが届いていた忍刀のことを持ち出されてしまい、すべて返還されるためには、この先10年は攻めるなと扉間は言う。
風影には風の大名からの書簡を見せて了承を取った。
以前よりはたけサクモらに潜入させ、取引を成立させる為に動いていたのが今回に生かされた形になる。
納得のいかない土影の無と雷影エーは今にも扉間を殺しかねない勢いであったが、雷影に対して、条約はどうしたと迫る。
当然破棄すると言ったエーだったが、これを聞いた扉間はニヤリと笑い、条約を受けた側の人間から破るとは不義であると言い。そばにいた部下に目配せを送ると、すぐさま退席。そのまま各小国に雲隠れは木ノ葉に助けられたにもかかわらず、自ら条約を破棄する不義理な国であると流布させた。
しばらくして、雲隠れに近い霜の国や湯の国も木ノ葉を支持。雲隠れ攻略戦線に加わることになる。
一連の流れを阻止するために動く雷影を扉間が阻む。当然の結果として戦闘へと移行。そこへ無が加わる。水影と風影は扉間を助ける気はなく、そのまま静観している。
部下たちが扉間を助けようとするが、「指示通りに動け」という言葉により部下たちは姿を消す。
「二代目火影っ! 貴様は許しておけん!!」
「許されたいのであれば始めからあんなことするわけないだろう」
「ならば、散れ!」
『塵遁・原界剥離の術』
無の容赦のない一撃が迫り来るが、扉間の姿は一瞬にして消える。
「ちっ、飛雷神とやらか」
その後扉間は2人に水遁の術で攻撃するものの、半蔵により山椒魚がいつの間にやら口寄せされており、扉間の足元から襲った。その際に扉間は毒を吸い込んでしまった。
「ちっ!」
「猛毒を吸ったな? お前の身も残りわずかだ」
「……ならば、それまでにやるべきことをするまでよ」
扉間は飛雷神で姿を消す。
「逃げたか、まぁいい二代目火影を殺すという目的はほぼ果たした」
半蔵が扉間を呼んだのは、ただただ邪魔だったからだ。ヒルゼンは人が良いと部下からの報告を聞いていたため、多少揺さぶればよい条件を勝ち取ることができる。
しかし、千手扉間がいるために、それが通用しない可能性がある。なればこそ会談の場を設けてそこで殺す。いざとなれば穢土転生の話をして他影の者にやらせればよいと考えていた。
争いをやめるのは自身の目的である和が成し遂げられるときまで待てばいい。
「どうやら戦いは終わらぬようだな」
「そうみてぇだな。木ノ葉に攻撃してぇが、戦力が激減している以上従うしかねぇな」
「大名め、簡単にだまされよった」
「次に会うときは敵同士だな」
四影はその場から素早く消えた。各陣営に戻り、これからの動きを考えるためだ。
争いが止むことはまだまだ先のようであった。
毒を吸い込んだ扉間は死期を悟り、里に戻った後に、治療を拒否し、ヒルゼンら元部下たちにこれからの流れを話す。
自分の体内から取れる毒を研究し、毒対策をしておくこと。
自身が纏めた術の書を猿飛ヒルゼン、研磨京之介に送ること。
宝具、忍刀の解析を急ぎ、忍具量産を研磨家に急いでもらうこと。
戦力不足になったとしても、若い忍を無理やり戦場に立たせないこと。
自分が死んでも取り乱すことなく皆で里を守ること。
これらを伝え、扉間は静かに息を引き取った。
京之介は呼ばれることはなかった。扉間からしてみれば、自分の最後の弟子である京之介にこのような場で会う気にはなれなかった。伝えたいことは彼にしか開けられない巻物に纏めたことで満足していた。
兄の後を継ぎ、里を大きく発展させた千手扉間。
時に非情とも取れる方法を使ってでも里を守ろうとした男は、自身が思っている以上に多くの人間に愛されていた。
岩隠れはすぐさま木ノ葉に攻めかかろうとしたが、砂隠れの忍たちが土の国に侵攻。攻撃を開始した。
ここから砂と岩の確執は大きくなっていくことになる。
霧隠れは一先ず戦力の増強を図るために静観。ただし、雲の動きには注意していた。
扉間の流布によって小国は雲の攻撃を防ぐ為に連携。雲隠れが木ノ葉へと侵攻してくるのが遅れていた。
雨の里も半蔵の指示で一時的に攻撃を中止。様子を図りつつ、木ノ葉を攻める算段の模様で、何度も国境近くに来ては挑発を行っている。
これを機に木ノ葉は国力を増強。砂や霧への資源を提供しつつ、戦力を整える。当然雲への防衛もかねて部隊の派遣や、雨への警戒は緩めずに行った。
林檎雨由利の監視の指示を受けている京之介は、葬式会場で扉間に別れの花を贈った後に彼が纏めた術の参考書を見つめていた。
「……これアカンやつやん……」
思わずそう言葉にしてしまったのは、書かれていた術のリストが前半部分に書かれていた飛雷神や影分身の類を除けば後半は禁術指定の術ばかりだったからだ。
「穢土転生のやり方とか書いてあるし……」
どうすりゃいいんだ……。と頭を抱える
「てか、感動返してほしい」
自分にもなにか術を授けてくれる。その嬉しさで巻物を開いてみればこの有様だ。
「もう開き直るしかねぇな」
どこか諦めた京之介はいつものメンバーや訓練をしたい連中を集め、監視対象の雨由利を連れて、里から少し離れたいつもの演習場にやってきた。
「なぜ彼女を連れてきたのだ」
道中でも同じことを聞いてきたヒアシが再びたずねてきた。
「だから、俺は彼女の監視役なんだから、連れてこなきゃなんねぇだろ?」
「ここから逃げるというのは考えないのか?」
「大丈夫だって、いまさら逃げたところで、帰る環境はないだろうから」
雷刀が無くとも雨由利は優れた雷遁使いであるが、彼女は京之介のそばに居られるだけで満足しているため、逃げる気はサラサラ無い。
とはいえ、警戒されていることは分かっているため、大人しく監視されている。
「んじゃ、俺は扉間様の術をひとつでも習得しますかね。ついでに新しい血継限界も」
「まだ覚える気なのか」
呆れた表情で見てくるヒアシに京之介は巻物を見せる。
「読んでみ、それには極秘事項とか書いてないし」
興味を持ったヒザシ、矢鶴、藍歌、赤絵らがヒアシの後ろから覗き込む。
『これを読んでいるころにはワシはこの世を去っているかもしれん。さて、ワシの最後の弟子であるお主には伝えておくことがある。
お前の家系には特殊な血が流れていると考えている。己を磨き続けることでその力があまりにもしっかりとお主の血肉になっていることにワシは少々疑問だった。
なぜならば、本来3つも血継限界を習得するには長い年月が必要だからだ。それをまだ十代前半のお主がやり遂げられることは異常だ。
そこでワシが推測するに、お主ら研磨家は体質的で目には見えない血継限界を習得しているのではないかということだ。
研磨京之介よ、お主はこれからも自分を磨き続けろ。そしてそれを里の為に使え、ワシはそれだけを願う。千手扉間』
「割と重要なことが書いてある気がするんだけど……」
苦笑いを浮かべるヒザシだが、京之介はあっけからんとしていた。
「いやー、読んだ後に兄上が父上の技術を学んだ上で自分なりに発展させたと聞いたこともあってか、なんかふーんとしか思わなかったかな。その手紙に関しては」
兄上が苦労しているのは俺の武器くらいらしいしな。と笑ってみせる京之介だったのだが、ヒアシは剣呑としている。
「京之介、これは他に見せたものは?」
「家族くらいだな」
「ならばすぐに破棄しろ」
ヒアシは京之介の素質がもし他里にバレてしまえば、京之介だけではなく研磨家全体に危険が及ぶと考えた。
「ありがとな、心配してくれて」
「別に、お前ではなくて研磨家全体をだな」
「はいはい」
巻物を燃やしながら笑みを浮かべる京之介と不機嫌そうなヒアシが対照的だった。
「相変わらず素直じゃないんだね」
「そうだね。いつも通りだけど」
藍歌と赤絵はクスクスと笑い。矢鶴は落ち着いた様子ニコニコしている。
「なんだお前たち、その笑みは」
「いやー、微笑ましいなーってことだよ」
肩をポンポン叩く京之介にイラッとしたヒアシは――。
「はっ!」
「ぐえ!?」
全力で掌底を当てる。
「よし、手始めに、お前と組み手と行くか」
「いやいや、待てヒアシ。そんな照れ隠しを」
「黙れぇ!!」
続けて八卦空掌を打つ。
「ちょ!? 危なっ!」
逃げ出す京之介を追いかけるヒアシ。この構図は一日中続いた。
「おかげで飛雷神のコツが分かった気がするわ」
「そうか、ならば明日はヒザシと共にやってやろう」
「薮蛇った~」
クタクタな京之介は雨由利と共に家へと帰る。
「いいところね」
「ん?」
「気に入ったわ。この里が」
「そりゃよかった」
夕暮れの中、2人はのんびりと歩いていった。
戦争というよりは前段階のようなエピソードになってしまいました。すみません。
次回は少し時間を飛ばすかもしれません。そろそろ激化させたいですし。