色々とつらい赤ん坊時代も終わり、俺はようやく忍術の修行ができる年齢になった。
とはいえ、まだ三歳だし、そこそこのことしかできない。
これまでだって、父上たちの工房を覗いたり、金属を叩く音をBGMに昼寝をしたりしていたくらいで、とくに厳しかったわけじゃない。研磨家は三歳からどんな分野に向いているか調べるらしい。ちなみに大抵が職人の道だとか。
できれば戦わない仕事がいいんだけどなぁ……。無理だろうなぁ……はぁ……。
「京、どうかしたのか?」
「……え? なんですか兄上?」
「いや、なんだかボーっとしていたぞ?」
「あはは、すみません緊張しているみたいで」
「ま、無理もないか、今日からお前も、修行が始まるんだしな」
少し前に三歳の誕生日を迎えた俺は、父上から適性検査なるものを受けて、どんな仕事に就くか調べるらしい。
後、驚いたことに、俺には兄がいた。前は一人っ子だったから少しうれしかったりする。ちなみに姉もいるけど、今は母上と共に留守にしている。
「兄上は、工房へ行かなくてよろしいので?」
「弟のお前がどんな道に進むのか、兄として見届けたいんだ」
俺の兄、
てか、この世界で名前が全部漢字ってのもレアじゃね? 千住家と特定の人を除けば、砂隠れとか霧隠れの忍びくらいしか思いつかないよ? ……もしかしてルーツはそっちのほうなのかな?
ちなみに俺の名前は
ガラッ
「待たせたな」
ふすまが開かれると、父上がやってきた。外出用の着物を着ているところを見ると、どこかへ出かけていたようだ。
「お疲れ様です。父上」
「お疲れ様です」
兄上と共に頭を下げる。
「うむ、戦争が終わっても忍具の注文が後を絶たないからな。色々と面倒だ。さて、無駄話は終わりにして、京」
「はい!」
「これを」
父上が取り出したのは、原作でナルトが風の性質を調べたチャクラ紙だった。
「これにチャクラを流してみよ」
「は、はい!」
すっげぇドキドキする。俺の適性性質はなんだろう……。
チャクラの流し方自体は、兄上から前もって教えてもらった。三歳児に教えることなのかとおもったけど、この世界じゃ普通か。
「いきます。はっ!」
気合を入れて紙にチャクラを流し込む。すると。
「っ! これは!」
「京、お前……」
父上と兄上が驚いている。
ま、まぁ無理もない。
だって、紙が四等分に切れて、一枚が燃えて、一枚がボロボロになって、一枚がびっしょり濡れて、一枚の紙にシワが集まれば誰だって驚く。
うん、俺……五大性質全部持ってたよ……。
これがあの声の主が言っていた贈り物か……うれしくねぇ……。
しかも、努力をすれば優れた存在になるとか言ってたしなぁ……。
これじゃ三代目火影のヒルゼンと同じじゃん。まだ火影じゃないけど。てか、卑劣様も火影になってないし。
「……京」
「はい」
父上が厳しい顔つきで俺を見つめてくる。
「……お前は忍になれ」
ですよね。
「……はい。研磨家の名を汚さぬように努めます」
父上に頭を下げる。
「性質が一つか二つ程度ならば、職人になってもらうつもりだったが、これでは致し方ない。扉間殿との約定もあることだし、お前は忍の世界に生きてもらうぞ」
「はい!」
約定ってたしか性質が三つ以上ある子を忍として育てて欲しいっていう卑劣様の要請のことだっけ? 赤ん坊の時にそんな話をしていたような気がする。卑劣様はだいぶ研磨家を頼りにしているみたいだし、自分の近くに一人は置きたいのかもな。
「我等の家から忍を輩出するのは稀だ。手助けしてやれることは少ないかもしれんが、何かあった時は遠慮なく申せ」
「はい。ではさっそくひとつお聞きしてよろしいでしょうか?」
「うむ、なんだ?」
「父上や、兄上は忍ではないのですか?」
赤ん坊の時から、不思議だと感じていたんだけど、チャクラとかを扱っているのに、任務とかで長期間家をあけている形跡がないことだ。
兄も姉も、基本的には里を出ないみたいだし。
「我々はあくまでも職人だ。たしかに戦闘技術は有しているが、忍というわけではない。近いところでは鉄の国の侍というところだな」
おお、ミフネさんがいる鉄の国か。あの人好きなんだよな~。ゲームの必殺技とかかっこよかったし。
「なるほど……。では俺以外に研磨家で忍になった人はどれくらいいるのでしょうか?」
「私が知っている限りでは、私の父の兄君が忍として火影様に協力したと聞いている」
「そうですか……」
「……京」
だんまりだった兄上が俺を呼んだ。やけに真剣な顔つきだ。
「兄上?」
「……できればお前に忍をやってほしくはないし、できることなら代わってやりたい。けど、それができない以上は、お前を支えてやることしかできない。だから、お前を守る忍具は俺が作りたい。いいか?」
兄上からの申し出は、俺にとって願ったりかなったりだ。
火と土の性質を持っていた兄上は、幼いときから工房で修行を積んでおり、腕前も大人顔負けだ。今では研磨家の次期当主とまで言われている。まだ十歳なのにな。
けど、ここは甘えさせてもらおう。
「はい! お願いします兄上!!」
「ああ、最高の品を作ってやるからな!!」
「ふっ、では太刀之介よ、今から取り掛かれ」
「よ、よろしいのですか!?」
「かまわん、大事な弟を守りたいという気持ち、父である私が察せぬ訳がなかろう。私とて同じ気持ちなのだからな」
「ありがとうございます父上! では俺はこれで!!」
兄上は部屋から走り去っていった。はえーよ兄上。
「京」
「はい」
「我ら研磨家は、教えを請うものを拒んだりはせぬ。しかし忍術の知識はほとんどないといっても過言ではない。独力で磨くのもよし、誰かに師事してもよい。私より先に死ぬことがなければな」
「……はい! では、さっそく出かけてきます!!」
「うむ」
俺は父上に一礼して、部屋を出る。
まずは演習場に向かおう。そこで自分がどこまでできるか調べないと!
俺は一番近くにある演習場へと向かった。
先客がいた。
俺と同じくらいの男の子二人組みだ。
どうやら稽古をしているみたいだ。
お互いに格闘を主体に攻撃している。
「……」
しかし、どっかで見たような…………。
掌底を打ちつけ、しなやかな動き……。
っ!!
「あーーー!」
『っ!!?』
俺の声に驚いたのか、修行をしていた子供たちは俺のほうを見てきた。
やべぇ、なんか申し訳なくなってきた。
「あ、えっと……驚かせてごめん」
とりあえず謝ろう。
「いえ、気にしないでください。私たちだけが使っているわけではないので」
眼が白い……。やっぱりそういうことか。
「お前も修行に来たのか?」
「兄さん、いきなり失礼だよ」
「ああ、いや、気にしないでくれ。俺も修行に来たんだ。自分がどれだけできるか見てみたいし」
「そうか、なら一緒に修行をしないか? たまには違う奴も交えてみたいんだ」
「兄さん……彼に悪いよ」
「なにを言うんだヒザシ、弟だからって軽視する連中を見返すって約束しただろう?」
「そうだけど……」
ああ、うん……なるほど。
「ああ、そういえば名乗っていなかったな。私は日向ヒアシこっちが弟の」
「日向ヒザシです」
「…………研磨京之介、です」
この世界に生まれて三年。自分がどのような年代に生きているのかがさっぱり分からなかったけど、ようやくはっきりした。
そして、生き残ると同時に新たな決意を――
――日向ヒザシを絶対に死なせない。と誓った。
ヒアシとか、幼少期がつかみにくい……。