研磨京之介は長生きしたいと思っている。
前世では長生きもできず、親より先に命を落としてしまい、迷惑をかけているんだろうなと申し訳ない気持ちもあった。
だからこそ、次の人生は結婚でもしてゆくゆくは孫の顔でも見る。という理想のようなものがあった。
三代目雷影と対峙するまでは。
忍であり、任務を任されている以上は、拠点制圧を第一に考えなければならない。
自分が囮になり、ヒアシやカガミに迅速に拠点を制圧してもらえれば、たとえ自分が雷影に勝てなくても、任務は成功であり、雲隠れ攻略に役立つことは言うまでもない。
ゆえに、京之介は一秒でも長く雷影を氷牢の中に閉じ込めておかなければいけない。
たとえ、自分の命が散ろうとも。
『風遁・真空球』
雷影に向けて真空の球体が飛ばされる。
「ふん!」
雷影はそれをものともせずに、右手に雷遁を手中させ手刀の要領で、なんなく切り裂いた。
『水遁・水龍乱舞』
すばやく追撃の印を結び、水龍弾を連射した。
「効かんぞ!!」
これも雷影の前では右腕を横一閃に振るっただけで終わった。
(遊ばれてる……)
雷影は最初の衝突以降、ほとんど動かずに京之介に攻撃ばかりさせている。
(影分身を残したいが、あの人はそんなもんすぐに見切る可能性がある。ましてや地獄突きの一本だとこんな氷なんかすぐに壊される……)
必死に考えを纏めようとする京之介に対して、雷影も同じように考えていた。
(自分を犠牲にして挑もうとする姿勢は悪くない。術も鍛え上げている印象を強く感じる。木ノ葉は良い忍を持っている……)
目を閉じた雷影はチャクラを右腕に集める。
(だからこそ……)
若いとはいえ、他里を治める影に挑むその勇気に敬意を表して、雷影は京之介を見つめる。
(ここで消えてもらう!)
雷影のチャクラが周囲にも影響を及ぼし、氷牢にヒビが走る。
「ちっ」
『多重影分身の術』
「……面白い、行くぞ! 地獄突き・一本貫手!!」
高速の貫手が分身たちを押しのける。
『沸遁・蒸気隠れの術』
消えていない京之介の分身たちが蒸気を氷牢の中に充満させた。
「ぬ?」
霧隠れの術とは違う性質に、雷影は立ち止まった。
(これは……沸遁? 氷遁だけでは――っ!!)
『嵐遁・
「ぬ!?」
蒸気の中から白い光線が雷影に向けて放たれる。しかし雷影は素早く回避した。
「これは、嵐遁だと……? ――む!?」
気がつけば、雷影の足元が泥に変わっており、そこから複数の泥の手が雷影を捕らえていた。
「こんなもの!!」
土遁の術だと認識した雷影は雷遁チャクラで掃おうとするが、なかなか崩れない。それどころか地面からは先端が鋭い槍状の物が複数狙ってきた。
「ちっ!」
泥の手を払いのけ、空中へと跳躍する。
『氷遁・
蒸気の中から氷の燕が複数飛翔し、雷影を襲う。
(間違いない。あの男は複数の血継限界を所有している!)
氷遁を払いのけた雷影は地面へと着地。しかしそこをぬかるんでおり、雷影の肉体はやや沈んだ。
そして雷影の足元には、京之介の次なる攻撃が仕掛けられていた。
カチッ
「む――」
ズガアアアアアン!!
研磨家の武器製造の職人たちに依頼していた設置型起爆札が足元で爆発したものの、雷影には服がボロボロになった程度で大きな怪我にはなっていなかった。
次第に蒸気が消え、お互いの顔が見えるほどになっていた。
「なかなかやるな……」
「これも効かないか」
「……一つ聞きたい」
「なんでしょう」
「お主、いくつの血継限界を使える?」
(下手に隠してもこのままじゃ手札が切れるな……なら、あえてバラすか、そうすればこの人は外のことよりも俺を殺すはずだ)
「……今は4つですかね」
「ほう……危険だな」
このまま生かしておけば雲を始めとした諸国は京之介一人に苦労させられることは雷影からしてみれば簡単に考えられることだった。
「やはり貴様はここで死んでもらう!!」
再び京之介へと一本貫手で攻撃を開始するものの。
ボン
受け答えをしていた京之介は分身であった。
「どこへ……む?」
雷影はある異変に気がついた。
「なぜ、暑いのだ?」
氷の牢で囲まれた中で戦っている雷影だったが、戦いが始まった直後はそこまで暑くなかった。むしろ氷の存在があったためか、ひんやりとしていた。
しかし今は違う。暑すぎるのだ。汗が止まらなくなるほどに。雷遁チャクラを解除してしまえば、それだけで火傷しそうなほどである。
「……まさか!?」
雷影はこの暑さの原因と京之介が行うであろう行動を察知し、氷牢からの脱出を試みる。
「「「させるか!」」」
雷影の目の前に京之介が三人現れた。
『火遁・飛龍弾』
『沸遁・蒸龍弾』
「この程度!!」
分身二人からの攻撃を払いのけ、京之介にはかまわず氷牢を破壊するが、すでに遅かった。
「液化」
その一言を雷影が聞いた時、分身の一人は氷に触れていた。次の瞬間。氷は溶け出して蒸気へと変わり、一気に爆発を引き起こした。
氷牢の内側の表面だけを液化させたとはいえ、爆発を引き起こすには十分であった。
外に分身を待機させており、氷遁を改めて使い、氷牢が壊れないように維持させていた。
本体の京之介は被害が及ばないように土の中に待機していた。
「はぁ……はぁ……」
チャクラを大量に使ったことで少々バテ気味であるが、雷影が無事である以上は追撃の手を打たなくてはならない。
地面から出ると、雷影が何事もなかったように立っていた。よく見ると、一部の皮膚が火傷を負っている。
「……なかなか悪くなったぞ」
「それはどうも。もう少し怪我をしてくれたら嬉しいんですけど」
「ふん。まだまだお主が未熟だからよ」
「ごもっともですね!」
咬牙蒼連を抜刀し、雷遁チャクラを流して雷影へと向ける。チャクラを流された蒼連は蛇のように雷影に襲い掛かる。
「ふん! 遅い!!」
「知ってますよ!」
咬牙蒼連の攻撃を回避した雷影は、京之介に接近するも、刃から稲妻が放たれる。
「ぐううっ!」
京之介を捕らえたとほんの僅かに油断していた雷影は稲妻が命中し吹き飛ばされる。
しかし、僅かに京之介にも命中しており、左肩がえぐれた。
「はぁぁぁぁぁ!!」
風遁へとチャクラを入れ替え、蒼連の刀身を見えなくし、雷影を斬りつける。
しかし、それでも雷影の体に多少の切り傷を残す程度だった。
「これもだめか……なら、あれしかないか……」
蒼連を地面に突き刺し、印を結ぶ。
「……次の術を最後に決めます」
「面白い……来るがいい!!」
京之介は両手を組んで頭上高く構える。
先ほどとは違い、周囲の空気がどんどん冷えていく。
「この術の名前は氷遁・絶。命中すれば必ず相手は永遠に氷の中に閉じ込められます。まぁ、まだ未完成ですけど」
「ならば! それを正面から打ち破るとしよう」
雷遁チャクラモードを全開にし、一本貫手の構えを取る。
「「…………」」
京之介の両手に冷気が集まりつくし、雷影へと向けられた。
「はあああああっ!」
「ぬおおおおおおおおおっ!!!」
組まれていた手から冷気が発射された。と同時に、接近していた一本貫手が、冷気の塊にぶつかった。
「っ!?」
とてつもない冷気に雷影は悟った。京之介の言っていたことは本当であることを。そしてこのままでは自分は負けてしまうことに。
「おおおおおおっ!」
雷影は左腕を盾代わりに冷気に突撃する。
「っ、はああああああ!!」
雷影の突撃を抑えられないと判断した京之介は、体を左へと傾けながら、一歩前へと前進した。
そこへ、雷影の一本貫手が京之介の右肩を貫く。
「ぐあっ……」
雷影は勢いそのままに突き進もうとするが――
「捕まえたぞ」
「っ!?」
――それが京之介の狙いだった。
もとより、一歩前に出て、一本貫手を右肩で押さえれば、確実に自分の氷遁は命中するはずだと考えてのことだった。
しかしながら、京之介の術は未完成。それゆえに雷影を完全には凍らせることはできない。
「見事だ。木ノ葉の忍よ。この左腕はお前にくれてやる」
「ぐ……」
雷影は完全に凍ってしまった左腕を切断。
「さて、これで終わりだ!!」
残された右腕を京之介へと振り下ろす。
『火遁・豪火球の術』
「む」
「京之介!」
氷牢はいつの間にか消えており、周囲には木ノ葉の忍が囲っていた。
うちはカガミが京之介へと近づき、生死を確認する。
「まだ息はあるな……」
「その眼、うちはか」
「……京之介はやらせんぞ」
「雷影様! ここはもうだめです!!」
「……致し方なしか。撤退するぞ!」
『はっ!!』
「カガミさん!」
「よせ、深追いはするな! 我々の目標は達成した!! それよりも、医療班を呼んでくれ!」
「はい!」
「よくがんばったな。お前のおかげだ」
カガミは気を失った京之介に礼を言った。
「雷影様、左腕が……」
「ふっ……まだまだ弱いということだろう」
(次は勝つ)
雲隠れの忍たちは追撃に警戒しつつ、防御が整っている拠点へと撤退した。
雷影の表情はどこか満足したような笑みだった。
研磨京之介
・チャクラの殆どを使い切る。
・左肩の肉がえぐれる。
・右肩貫通痕あり
・出血多量。生命の危機。
三代目雷影
・全体的に軽度の火傷
・左腕切断
三代目雷影 勝利。
研磨京之介 任務達成。
当初はもっと雷影が余裕で勝つ流れで書いてましたが、ちょっとは怪我させようと重い、左腕切断としました。