「それで縄樹。これはどういうことだ?」
「あはは……。いやぁ、この前敵の忍をやっつけた時に先生から教わった水龍弾を使っちゃって……」
「なるほど、忍術をだれに習ったのか問われたか」
「ごめんなさい!」
縄樹の後方――演習場の入り口付近には、縄樹と同期の下忍が京之介と縄樹を見つめている。
「適当に忍術を教えればいいのか?」
「え、いいの?」
「じゃないとお前みたいに付きまとわれちゃ困るんだよ。一応療養で里にいるんだからな」
「っ! ありがとう先生!! おーい! 先生が教えてくれるってよ!!」
縄樹が声をかけると、一斉に駆け寄ってくる。
「先生! 俺にも縄樹と同じやつを教えてくれよ!!」
「私にも強い忍術を教えてください!」
「カッコイイ術がいい!」
「…………先生じゃねぇって……はぁ」
京之介はため息を漏らしながらも、下忍の子供たちにまずは心構えを教えていった。
「いいか、ただ術を覚えたいってだけなら俺は教える気はない。その術を覚えることでなにをするか、なにをしたいのか。それが言えないやつは帰りな」
「はい! この里を守りたいです!」
「んなもんはこのご時世じゃ大抵のやつらが思うことだろうが、ダメだ」
「えぇ……縄樹はなんて言ったんだ?」
「あ~火影になって色んな国といがみ合うことのない幸せな世界を作りたい。だったかな。はは、なんか恥ずかしいな」
恥ずかしそうに顔を赤らめる縄樹を同僚の下忍たちは見つめる。
「ええ……なんか難しいなぁ」
下忍の少年が顔を悩ませる。
「大事なのは――」
京之介が声を発すると、縄樹に向けられた視線が一斉に京之介に注がれた。
「大事なのは、今だけじゃなくその先のことをどれだけ考えられるかだ」
「先生はなにかあるの?」
「長生きすることだな。あとは家庭を持って暮らすとか」
「普通じゃん」
「いいんだよ俺は。お前らと違って生存率は高いからな」
その一言で、下忍たちの顔が強張った。
「ま、縄樹の時みたいにしつこく付きまとわれちゃ困るし、俺が暇な時にでも教えてやるよ」
「え、教えるのか先生? さっき言ったことは?」
驚いた表情をする縄樹に対して京之介は。
「よくよく考えたらお前みたいな奴にすでに教えているんだから今更何人増えようが構わねぇだろうと思ってな、どうせこれからもお前は来るんだろうしな」
「なんか、俺の時と違う気がする……」
不貞腐れる縄樹をよそにその他の下忍は大喜びだった。
「んじゃ、基本の形から始めるか。縄樹、お前もついでにやっておけ」
「はーい」
それから数日の間、京之介は下忍たちに基本的なチャクラの扱いかたなどを教え込んだ。中には術を早く教えてほしいと言う者もいたが、京之介は基礎をやるとしか言わず、中には演習場に来なくなった者もいた。
「先生、だいぶ長く基礎をしてるけど何か意味があるのか?」
「まぁ、根性がある奴だけに教えるってあたりかな。お前の代の下忍はやけに多いからな。厳選したかったと言えばいいかな」
「ふーん。なんか先生だったら全員に教えそうなのに」
「そうしてやりたいが、俺一人で見るには限界もある。影分身を使ってやってもいいが、そっちにチャクラを回すより術に使いたいからな」
「先生なりに考えてるんだな」
「一言余計だ」
「イテッ」
こつん、と縄樹の頭に拳を打ち付ける。
「ところで先生」
「ん? なんだ」
「俺には新しい術を教えてくれないのか?」
「教えてもいいが、そんなに焦る必要はないと思うが?」
「だってさ、みんなも先生に教わるようになったら実力をつけちゃうじゃん。やっぱり最初に教わった俺からしたら負けたくないよ」
「他の奴を意識することで、自身を高めようとするその姿勢は大事だ。俺もよくヒアシとヒザシと一緒に競ったからな。体術方面じゃ赤絵にもかなわないけど」
「へぇ、先生も苦手な物があるんだな」
「あるさ、だから鍛えてるんだ」
「そっか」
縄樹はちょっとうれしそうに笑う。
穏やかな日々が続いていた。
縄樹が12歳の誕生日を迎えるまでは。
「先生!! これ、姉ちゃんから誕生日にって、じいちゃんが持ってた首飾りだって!!」
「…………お前、何歳になった?」
「え、12歳だけど? 言ってなかった??」
「そう……か、12歳か……」
京之介は表情を落とす。
「先生?」
「明日は予定があるのか?」
「え? ああ、うん。この後また雨隠れ側の国境まで物資を運ぶ任務かな。結構きつくなってるらしいから大人数で運ぶんだ。俺以外の下忍も結構いるみたいだし」
「そう、か……」
「どうかしたのか先生?」
「いや、なんでもない。帰ったら誕生日祝いになにか新しい術を教えてやるよ」
「本当か!?」
「ああ」
「よっしゃああああああ!!」
体全体で喜ぶ縄樹を優し気な表情で京之介は見つめる。
「ただし、ちゃんと任務を達成してこいよ」
「分かってるって! 先生の教えはちゃんと守るさ」
「そうか、なら頑張れよ」
「おう!!」
その日の夕方
京之介は演習場で一人寝そべりながら考え事をしていた。
(やはり、救うべきか……)
数時間前に縄樹は任務のために里を出た。
「……先生ねぇ…………」
縄樹に先生と言われてからの日々を少しだけ思い出す。
「能力は間違いなく高い。だが、どこか危うい」
沈む夕日を見ながら京之介は立ち上がる。
「……弟子を助けるのは師の役目かな」
次の瞬間、京之介は演習場はもとい、里から姿を消した。
雨隠れの忍を警戒するにあたって、木ノ葉の忍たちは国境に数十メートルの壁を作り上げた。五大国を除けば個人の能力の高さは間違いなく雨忍であり、警戒しないわけにはいかない。
しかしながら、敵は他にもいる。岩隠れの忍だ。
二代目土影である無が二代目水影と戦闘をしており、今はそちらに集中しているというのが木ノ葉に伝えられている情報である。
危険を承知で情報部隊が潜入して手にしたものであるが、すでに彼らからは一週間も追加の情報がない。
次の人材を派遣したくとも、広範囲を警戒しなければいけないために、人材を割くことはできない。
そんな時に、縄樹たちはやってきた。
自分たちが持てる範囲の物資を持ち、量を人数で補って素早く国境付近までやってきた。一部の上忍、中忍はそのまま警備に加わる予定でもあるし、下忍も1日滞在したのち里へと戻る予定となっている。
下忍たちにはまだ無茶な任務は当てられないということを理解しているが、現場に出ると縄樹は早く火影になりたいという気持ちが出てきてしまう。
そこに、敵意がやってきた。
『塵遁・原界剥離の術』
一撃だった。たった一撃で、城壁はあっけなく消えた。
「て、敵襲だぁぁぁぁぁぁ!!」
「雨隠れじゃない、こいつら岩の――ぐあっ!!」
攻撃してきたのは岩隠れの無率いる少数精鋭部隊だった。
「ど、どうして土影が……」
情報伝達が遅れてしまっている木ノ葉では知らないことだが、霧隠れは長期による遠征の影響で、物資調達が厳しいものになっており、水影はすでに一時撤退をしていた。
土影が雨を攻撃せず木ノ葉に狙いを定めた理由として、現在五大国の中で一番国力を維持できている里からだ。無はその状況を少しでも変える為に水影との戦闘後、すぐに行動を開始した。
(このままじゃ……)
縄樹は森の中へと避難していた。仲間の悲鳴を聞きながら、体を小さくして震えている。
「どうしよう……どうすれば……先生…………」
「こんなところにもいたのか」
「ひっ!」
「さてと、覚悟はいいか?」
岩隠れの忍がクナイを取り出す。
「死ねぇ!!」
「うわあああああああっ!!」
振り下ろされるクナイが縄樹に当たることはなかった。
「う、ぁ……」
「え?」
岩隠れの忍は縄樹の命を奪う前にその命を落とした。
「はぁ、間に合ったか……」
「え……せ、先生?」
縄樹の目の前には愛刀を持った京之介が立っていた。
「縄樹、お前は撤退して援軍を呼んで来い。急げば別拠点の人たちが駆けつけてくれるだろう。それまでは俺がやる」
「え、でも……」
「行け!!」
「は、はい!」
縄木の姿が見えなくなったのを確認した京之介は岩隠れの忍たちへと向かっていった。
活動報告にて、アンケートを取ろうかと思います。
よろしければご確認ください。