この世界で生き残る   作:鴉星

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 毎度毎度遅くなるってマジで最悪ですね。申し訳ありません。

 昨年よりは多く投稿できるよう努力します。


第29話 第二次忍界大戦 穢土転生講座

「誰でも分かる穢土転生講座~」

 

 パチパチパチ。

 

 京之介一人の乾いた拍手が空しく演習場に響き渡る。

 

 ヒアシらと使用しているいつもの演習場には、ヒアシとヒザシの日向兄弟を始めとした狩人矢鶴、小波藍歌、色松赤絵のいわゆるいつもの面々がそろっていた。

 

 部隊編成を行う際に、京之介はまずはいつもの連中を加えようと考えており、声をかけたのだった。

 

 油女、犬塚家など、配属される者たちを集めて、正式に〈獄〉は発足されることになっているが、その前にヒアシらには話しておきたいことがあった。

 

「えーっと、まずは矢鶴か赤絵が穢土転生したいやつを暗殺または強襲して殺します」

 

「おい」

 

 何か言いたげなヒアシを無視して京之介は続ける。

 

「そして、生贄用の忍を藍歌の幻術で抑えてもらうか、ヒアシ、ヒザシで行動できないように拘束します」

 

「聞け、京之介」

 

 ヒアシが再び声をかけるが、それを無視する。

 

「そして俺が穢土転生して出来上がりと。簡単だろ?」

 

「…………ふん!!」

 

「ごへ!?」

 

 キレたヒアシが京之介を吹き飛ばす。

 

 後方へと吹き飛んだ京之介を見て、ほかの面々は苦笑いを浮かべる。

 

「なにすんだヒアシィ!!」

 

 すぐさま戻ってきた京之介はヒアシに突っかかる。

 

「任務に赴いていた我々を里に呼び戻していきなり説明もなしに穢土転生講座を開かれるこちらの身にもなれ! まずはどういうことか説明しろ!!」

 

「部隊を作ることになった。俺が長。お前ら部下」

 

「もっとしっかり説明せんか!!」

 

 ヒアシが再び攻撃する。

 

「危ねぇだろうが!」

 

 ギリギリで回避する京之介。

 

「それは京之介君が立案したの?」

 

 赤絵が攻撃を回避を続ける京之介に問いかける。

 

「いや、扉間様が提案したんだよ。そしたらヒルゼン様とダンゾウ様が賛同しちゃってさ」

 

「ええい、いい加減当たらんか!」

 

「お前の攻撃は痛いんだよ!」

 

「痛いようにしているんだろうが!!」

 

「ふざけんな! 返り討ちにしてやるよ!」

 

「やってみろ」

 

 京之介とヒアシの攻撃が激化するが、慣れている四人は会話を続ける。

 

「他里の強力な忍を利用して敵の弱体化と味方の補強をする部隊なんだね。木ノ葉としてはありがたいかな?」

 

 矢鶴が右手を顎に当てながら考える。

 

「確かにな。だが、それだけではないな」

 

「どういうこと?」

 

 ヒザシの発言に赤絵が問う。

 

「穢土転生を利用していれば、木ノ葉の忍たちは、「そいつらに任せればいい」という考えが芽生えてしまうだろうな。」

 

「なるほどね。補強しても弱体化したら意味ないものね。運用とかも含めて管理していく形かしら」

 

「京之介君が言っていた通りに動くとなると、偵察能力がある人も必要だよね? でも人数が多すぎるのも動きが察知されちゃうかな」

 

「攻撃担当が僕と赤絵なのはいいとしても油女一族みたいな偵察能力があるといいかもね」

 

「うん。犬塚一族とかいてくれるとありがたいね」

 

「それをいうなら奈良一族とかの猪鹿蝶も必要だと思うわよ。強襲だけじゃどうにもならない場面だってあるだろうし。そういう場面で京之介が穢土転生した忍を使わせてくれることも低いと思うし」

 

「確かにな。我々が率先して使ってしまえばその他の連中がとやかく言う様子が想像できそうだ」

 

 ヒザシたちは苦笑いを浮かべる。

 

 京之介から頼りにされていることは感じ取れるが、まさかこの年で組織に加わるとは思ってもいなかったからだ。

 

「なんだか京之介に関わるととんでもないことになるわね」

 

 藍歌が未だに戦っている京之介を見ながら呆れる。

 

「しょうがないよ藍歌ちゃん。京之介君だもの」

 

「確かに、あの日一緒に鍛錬したいと言った時からこうなる運命だったのかも」

 

 にっこりと笑顔を見せる赤絵と、懐かしそうに昔を思い出す矢鶴。

 

「みんなまだそこまで老けていないだろうに」

 

 どこか楽しそうなヒザシは兄ヒアシと京之介を見る。

 

 幼いころに出会ってから自分も兄もだいぶ変わったとヒザシは思っている。

 

 仲間たちにはまだ話していないが、ヒアシと協力して日向の形を変えようと尽力している。ヒザシはヒアシから驚きの提案を受けたことがある。ヒアシの性格を考えると相当以外なものだが、現実になれば日向は大きく変わる。いい意味でも悪い意味でも。

 

 ヒザシはそれでいいと思っている。変化を嫌っては日向は弱くなると考えているからだ。ただでさえ日向の白眼はうちはの写輪眼同様に、敵対している里から狙われている。

 

 内も外も強くならなくてはならない。ヒザシはそう考えている。

 

「もらった!!」

 

「ぐう!?」

 

「あ、終わったみたいね」

 

 京之介がヒアシを退けたようで、両手を空に突き出していた。

 

「よっしゃああああああ!!」

 

「くっ、鍛錬が不足していたか」

 

「はーはっはっはっ!! 悪いなヒアシ、俺もいつまでも体術で遅れをとるわけにはいかんのだよ」

 

 少々悪い笑みを見せている京之介は膝をついているヒアシに向けて高らかに言う。

 

「上司たる俺に勝とうなど百年早いわ!!」

 

「貴様が上司? はっ、一年でつぶれそうだな」

 

「ほほう、上司に向かって態度がなってないなヒアシ君?」

 

「気持ち悪い呼び方をするな」

 

「いいのかなーうっかり秘密を喋っても」

 

「……秘密?」

 

「日向ヒアシ君は一族を変えるための一環として、赤絵をよ「貴様!! なぜそれを知っている!!?」ヒザシが教えてくれた」

 

「ヒザシィィィ!!!!」

 

 鬼の形相でヒアシは弟であるヒザシを睨む。自分に対してこんなに怒ったことはないんじゃないか、とヒザシを過去をたどりながら考える。

 

「済まない兄さん。一族以外で頼りになる相談相手を考えたら京之介が思い浮かんだから」

 

「よりにもよってこいつか!?」

 

「失礼だなヒアシ。俺ほど相談相手に向いている人間もいないだろう?」

 

「不適切すぎて笑えるな」

 

「ヒアシ君、私がどうかしたの?」

 

「い、いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

「重要なことだろうに、赤絵を「はっ!!」げふ!」

 

 再びヒアシの攻撃が命中した。

 

「今日こそ貴様の息の根を止めてくれるわ!!」

 

「上等だゴラァ!!」

 

 先ほどとは規模が大きくなった戦闘は周囲の被害が相当なものになったが、ヒザシら四人はわかっていたかのように距離をとった。

 

「はぁ…………いいの、あれ」

 

 演習場の中央がえぐれているのを見た藍歌がため息をこぼしながら言う。

 

「いいんじゃないかな。あの二人だし」

 

「うーん気になるなぁ、なんだったんだろう。ヒザシ君。教えてくれない?」

 

「もう少し待ってくれないかな。兄さんの口からのほうがいいと思う」

 

「うーん。分かった今度また聞いてみるね」

 

「ああ、そうしてくれ。さて、そろそろ集合の時間だ。行こう」

 

「そうね。遅れたくないし」

 

「え、いいの藍歌ちゃん。あの二人……」

 

「ちゃんと来るわよ。多分」

 

「そうだね。いくらなんでも遅れはしないよ。多分」

 

「そ、そうだね! 多分……」

 

「さ、行こう」

 

 その後四人は配属式が行われる広場に移動。そこには、里を代表する一族がそろっており、みな挨拶を交わしていた。

 

 ヒルゼンやダンゾウそして扉間がやってくる中、予定された時間になっても現れない京之介とヒアシの二人を怒った扉間が一撃で気絶させ、連れてきた。

 

 二人はボロボロな恰好で現れ、式の最中も責任の押し付け合いなどを始めたため、扉間に何度も殴られていた。

 

 

 

 

 なんともしまらない発足式であった。

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、演習場は術を使わずに京之介とヒアシの二人で土を運び埋めた。

 

 

 


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