――三浦
「鈴木のだけのせいとは言えないゾ……俺のせいでもあるゾ」
――宇月
「うへ……ズビー……ズ、ズズー」
――木村
「え、何の話ですか……遭難?」
――やみん
「あの時のうずきっちの顔……忘れられない」
――れう
「景色がきれいだったわ……は、何の話してるの?」
――鈴木
「……正直、思い出したくない……俺なんだ、俺のせいで」
迫真 ☆ 登山部
立教大学、空手部の部室にはいつもの三人がいた。
三年の三浦、二年の鈴木、一年の木村で、畳の部屋で座りながら他愛のない話をしていた。
話もひと段落したところで、鈴木はあることを提案する。
――鈴木
「山……俺が言ったんだよ。みんなを誘って登らないかって……最近、エベレスト上る映画見て……それに触発されちゃって……なんで、なんで俺……あんなこと言っちゃたんだろうなって、今は思うよ」
――三浦
「俺はすぐに賛成したゾ……いや、何だったら俺が一番、楽しそうにしてた。俺が、あんなに強く賛成しなければ、あんなことにはならなかったかもしれないゾ」
――木村
「はい、それで鈴木先輩が人を誘うってことで、日曜日に約束したんです。それより、遭難のこと、詳しく教えてもらっていいですか?あそこそんな山じゃないと思うんだけど」
――宇月
「う……ズビー……鈴木に誘われて、うう、それで私はれうとやみんを誘ったの……私が……私が誘わなければ……二人にこんなにつらい思いをさせることはなかったのに……ズビー」
――やみん
「……うずきっちのせいじゃない……私も楽しみにしてた」
――れう
「ねえ、あいつら何したの?」
――鈴木
「向かったのは、近くて日帰りができる淫夢山……待ち合わせして、バスに乗って向かった……あの時は、楽しかった」
――宇月
「みんなでお菓子食べたり……ズズー、山手線ゲームしたり」
――やみん
「すごく楽しかったよ……すずきっちのものまね、おなか抱えるぐらい笑った」
――三浦
「ふふ……あいつのコオロギのまねは傑作だったゾ……みんな笑ってたゾ……」
――木村
「うるさかったです、周りは迷惑だろうなと」
――れう
「私なにもしてないのに、前の人ににらまれた」
バスを降りて歩いていくと、登山コースの看板を見つけ、そこから山に入った。
みな、和気あいあいと話を交わしながら山を登っていくと、鈴木は少し先にあるものに気づいた。
――鈴木
「階段……あれのせいだ」
――やみん
「なんで……あんな場所に……あんなものが」
――宇月
「う……うう、ズビー……なんで階段なんか」
――木村
「はい、ありました。階段ぐらい、どこにでもあると思いますけど」
――三浦
「階段を上る途中で、鈴木が言ったんだゾ。グリコをしようって。じゃんけんで勝った人間だけが進めて、グーでグリコの3歩、チョキはチョコレイトの5歩、パーはパイナツプルの6歩を進むゲームだゾ」
――れう
「ああ、あれね。じゃんけんして、勝った人間が前に進めるやつでしょ。私は参加しなかったけど」
みながグリコを楽しむ中、木村とれうだけは参加せず、先に進んだ。
――木村
「れうさんが、先にいっちゃいそうだったんで、僕も追ったんです。さすがに一人にするわけにはいきませんでしたから」
――れう
「大学生にもなって、やることじゃないでしょ」
――三浦
「たのしかったゾ……宇月がパーしか出さなかったのをおぼえてるゾ」
――宇月
「いっぱい進めるほうが……いいと思って、ズズー……でも、そのせいで……鈴木が」
――やみん
「すずきっちが先頭になっちゃって……それで」
――鈴木
「俺が先頭で、またチョキで勝った……そしたら、あれが見えたんだ」
チョキで勝った鈴木の目の前に現れたのが、直角に曲がる階段だった。
それを登り、曲がったときに、鈴木は気づいた。
――鈴木
「……できなかったんだ……じゃんけんが」
――やみん
「……」
――宇月
「……ズズー……」
――三浦
「……」
――木村
「頂上でお弁当を食べました、おいしかったです。は、じゃんけん?」
――れう
「綺麗な景色見ながら、何か食べるのもいいと思ったわ。じゃんけんができないのが、何か問題なの?」
鈴木は戸惑っていた。
このままでは、じゃんけんができない。
つまり――
――鈴木
「誰も進むことができなくなった……もちろん、戻ることも……つまり……遭難だよ」
――やみん
「気づいた時、頭が冷たくなって……うずきっちがなきだしたの」
――宇月
「もう、帰れないかもしれないと考えたら……ズズー、怖くなって」
――三浦
「怖いのは、みんな同じだったゾ」
――木村
「僕、遭難の話をしてたと思うんですけど」
――れう
「……違うの、これ泣いてるんじゃないの。あいつらがバカすぎて頭が痛いの」
鈴木はすぐに打開策を見つけた。
――鈴木
「出した手を、声を出して言えばいいと思ったんだ。でも」
――三浦
「宇月が言ったんだゾ、信じられないって」
――宇月
「だって、だって……一人だけ助かろうとしてるんだと思って」
――やみん
「うう……ごめん、あの時のうずきっちの顔思い出すと……涙が」
――木村
「帰っていいですか?」
――れう
「あいつらグリコしないと死ぬの?」
硬直状態が4時間続き、そこからくる疲れ、空腹、怒り、罵倒。
――やみん
「みんな……ただ悪口を言い合ってた。泣きながら……私、うずきっちに殺してやるって言っちゃった」
――三浦
「お前がみんなを殺すんだ……俺は鈴木にそう言ったんだゾ」
――鈴木
「俺は……何も言えなかった」
――宇月
「ズズー」
――木村
「その時、たぶんもう下山してたと思いますよ、みんな来ないから」
――れう
「どうせバカやってると思って、先に帰ろうと思ってたのよ。事実バカやってたんだけどね。これ以上無い最大級の」
――るりま
「ええ、私の趣味は登山よ。ここだけの話、男とおんまこするために出会いを求めてだけど。あの山を登るのは194回目だった。全然声かけてくれる人がいないのね、山って。もっと男が寄ってくると思ってたのに、呼ばれたと思ったら子供で母親と間違えられたり、すごいお年寄りだったり。ごめんなさい、愚痴みたいになっちゃって。ええ、途中で彼らを見つけたわ。話を聞いたときは薬でラリってるのかと思ったけど、どうも真剣な顔を見てそうじゃないと分かった、そっち方が怖かったけど。だから言ってあげたの、一番後ろの子の一つ下の階段を、ゴールってことにすればいいんじゃないかって。そしてら、みんな動き出して、泣きながら抱き合ってたわ。それをみて決めたの、もう山は登らないって。ヤバイ奴しかいないでしょ?」
――鈴木
「彼女は……救世主だった……彼女がいなければ……」
――やみん
「私達、今頃死んでたよ」
――三浦
「まあ、こうやって無事だからよかった」
――宇月
「本当に……よかったよ」
――木村
「……よかったですね……これでいいですか?」
――れう
「死ねばよかったんじゃない。死ななきゃ治らないタイプの病気でしょ」
――鈴木
「まあ、そういうことがあったんだよ……さあ、女に関しては宇月に任せてたけど」
――やみん
「さあ、うづきっちに聞いて」
――三浦
「宇月はなにもいってなかったゾ」
――れう
「え、あんたこれなかったんじゃないの」
――木村
「もしかして、呼ばれてなかったんですか?」
――宇月
「ああ……いやぁ……これは……えっと」
――ひなせ
「わたし呼ばれてないよどうしてよんでくれなかったのみんなに話を聞いたけど宇月が誘わなかったって言ってたよなんでなの携帯を何回もみたよメールなんて来てなかったよ分解して調べてもらっても何もないって言われたよきっと忘れてだだけだよねそうだよねだから今すぐ行こう富士山がいいてっぺんで二人で写真を撮ろうみんなと行って私とだけ行かないなんて言わないよね宇月ねはやく行こうよ宇月早く早く早く」
――宇月
「てゅわあああああああああああ」