ウルトラマンネクサス ~VIOLET MEMORY~   作:ダイタイ丸(改)

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お久しぶりです。ダイタイ丸(改)です。

大分間が空きましたが毎回こんな感じで進めていきますはい(汗)

先日、溝呂木役の俊藤光利さんのツイートでネクサス放送から12年も経っていると知りました。
干支一周しましたね。

フュージョンファイトにもザギがいますし、そのうちネクサス勢も参戦するかも?


第2話 変身 -ジュネッス-

報告書

 

 

ビースト『タラスキュラ』による被害一覧

 

物的被害

 

・地下一階の貯蔵庫の天井、及び備蓄物の大半が使用不可

・チェスター各機の計器、電気系統にダメージ 交換推奨

 

人的被害

 

・非戦闘員負傷者12名 うち一人は民間人

・チェスターβ1操縦担当三倉朱美が左腕部を負傷 全治一週間

 

 

以上で被害報告を終わる。

 

担当:チームガルーダ副隊長小門優士

 

受領:ナイトクローラー総指揮官兼チームガルーダ隊長間虎怜士

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「ほい、これが今回の報告書です」

「ああ、助かる」

 

自室で部下の一人、小門優士からの報告書に目を通した怜士は彼にすまないと謝った。

 

「へ?なんですかいきなり」

「いや、今回の戦闘で三倉が怪我をしたと聞いてな・・・俺の判断ミスだ。すまなかった」

「ああ、朱美ちゃんね。ま、そりゃ運転席の方が銃座より危険ですししゃーないですよ」

 

そう言ってナハハと笑う小門はチェスター操縦チーム、ガルーダの副隊長だ。

 

そして先日のビースト、タラスキュラによる襲撃の際に彼とタッグを組んでいる三倉朱美が負傷してしまったのだ。

 

 

「ま、でも一応フルーツとか差し入れしたほうがいいかもですね。アイツ甘いもの好きですし」

「そうか。ではそうする」

「喜ぶと思いますよ。じゃ、失礼しまーす」

 

 

小門が出ていき、しばし報告書に目を通していると一番最後の紙で手が止まる。

 

 

そこには顔写真と身体能力の詳細データが記載されており、名前の欄には『出雲千夜』とある。

 

 

「どうするべきか・・・」

 

 

表情を変えず、しかし少し困ったような声音で怜士は一人天井を仰いだ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、怜士の頭痛の種になりつつある千夜は地上の射撃場にいた。

 

 

手には大型の両手銃ディバイトランチャーを構え、周囲にはチームガルーダの面々がいる。

 

 

「じゃ、あそこにある的に当ててみ?」

「あいよー!」

 

元気に答え、ディバイトランチャーを構える。

 

しっかりと照準を合わせ、トリガーを引き絞った。

 

 

すると反動で上体がのけぞり、弾はあらぬ方向へ飛んで行った。

 

 

「あれ~?」

「ハハハ、そりゃ最初はそうなるさ。威力が馬鹿みたいにデカい分反動も強いからなー」

 

そう言ってガハハと笑うのは最初に的に当てるよう指示した男、襟角彰だ。

 

「アキラさん!危ないですよ。また隊長に怒られますよ?」

「そうよ、大丈夫?」

 

そうアキラに言うのはチーム最年少の少年、武藤空吾と女性パイロットの風吹歩だ。

 

「だーいじょーぶ。クーゴもアユちゃんも気にしすぎだって。な、新入り?」

「はいはい・・・打撲残ってるし正式採用もまだですけどね」

 

少し嫌味を込めて言うも、明は意に介さずガハハと豪快に笑う。

 

それに非難の眼差しを向けながらも、口元を僅かに緩めて千夜はもう一度銃を構えなおした。

 

 

 

ーーーーー

 

 

タラスキュラの襲撃から二日。

 

 

千夜はこの組織、『ナイトクローラー』に身を寄せていた。

 

いや、正確には組織と呼べるほど整ったものではない。

 

ナイトクローラーは秘匿組織、地球解放機構『TLT』から離反した者たちが結成した反乱チーム、レジスタンスであるからだ。

 

 

 

「ようするに、TLTのやり方が気に食わない奴らが集まったチームね。ま、南米支部にいた奴らばっかだけど」

 

二日前、銀色の巨人となってビーストを倒した後、瓦礫のダメージと筋肉痛の千夜を介抱しながら花蓮はナイトクローラーについて説明してくれた。

 

さらに、自分たちの本来の敵は正体不明の人を食らう怪物『スペースビースト』であること。

約二年前から人間とビーストの戦いは続いてるらしいことも教えてくれた。

 

 

「なぁ、ビーストっていったい何なんだ?」

「さぁ?・・・ただ、私は新宿大災害が怪しいと思ってるわ」

「あの隕石落ちたやつ・・・俺もその時は日本にいましたよ。親父がすげぇ心配してたけど」

「へぇ、お父さんは何の仕事してるの?」

「自衛隊員。ま、去年引退したけどね」

「もしかして手榴弾投げる訓練とかされてないわよね?」

「そんなわけないじゃない?で、なんで新宿大災害が怪しいの?」

「だって、名前からして『スペースビースト』よ?多分、新宿に落ちた隕石に乗ってたのよ。それで地球を侵略してる・・・そう考えるのが妥当じゃない?」

 

そんな花蓮の自論を聞きながら、漠然と千夜は考えていた。

 

(じゃああの巨人・・・ウルトラマンも宇宙から来たのか?てか、なんで俺はウルトラマンって呼ぶんだ?)

 

考えながら話を聞いていると花蓮がちょっと!と呼びかける。

 

「あいあい?なんだっけ?」

「全く・・・人と議論してる時くらいちゃんとしなさい」

 

(議論っていうか自論ですよねー。花蓮の自論の議論ってなんか韻踏んでてラップみたい)

 

そんなことを考えているもんだからまた注意され、今度は頭を叩かれる千夜であった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

少しボーッとしていると知らぬ間に話の争点が彰のズボラっぷりにすり替わってしまっているようだ。

 

空吾と歩の叱責を笑って明が受け流している。

 

 

そんなチームの面々を見ながら、千夜はふと疑問に思った。

 

「あの、何で皆さんはTLTから抜け出したんですか?ビースト倒すんなら多少の思惑の違いがあってもサポートがあった方がいいんじゃ?」

 

そう質問した瞬間、場の空気が変わるのが分かった。

 

 

さっきまで賑やかだった三人が途端に静かになり、嫌なことを思い出したかのような表情を見せたからだ。

 

 

「ご、ごめん。余計なこと聞いた・・・」

そう謝ると彰がいやいやと手を振ってくる。

 

「こっちこそ悪いね・・・ただ、まぁなんというか。誰だって話したくないことはあるってことよ」

 

ナハハと笑って見せるがその笑顔もどこかぎこちない。

 

 

微妙な空気が流れ、耐えかねていると後ろから声をかけられた。

 

「おい出雲!」

「怜士?何用で?」

そう問うと1枚の書類を掲げて手招きする。

 

「うちで働くんだろう?面接だ」

「あ、ああ!じゃ、皆さんあざーした!」

 

これ以上この場にいるのは無理であるし、千夜はおとなしく怜士についていくことにした。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

千夜が去った後も射撃場の三人は沈黙を保ったままだった。

 

 

ふと、歩が呟く。

 

「言えないわよね・・・あんなこと」

 

その呟きに、ほかの二人も同意見だった。

 

 

しかし彰はそれよりも千夜について、引っかかることがあった。

 

 

「出雲・・・?まさかね・・・」

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方千夜はわざわざ個室に連れてこられ、怜士の面接を受けていた。

 

 

「血液型とかそういうのはいいので、聞かれたことだけ答えてくれ」

「了解!」

「ではまず動機からだな」

「えーと・・・やるべきことだから!」

「何故やるべきこととわかる?」

「野生の勘!」

「・・・・・・」

「うそうそ!嘘だから無言でなんか書き込むのやめてください怖いです!」

 

何やら書き書きする怜士に慌てて謝るとため息をついてから質問を続ける。

 

「小学生じゃないんだ。元気があるのはいいことだが真面目に、分かりやすく、明瞭に答えろ」

「りょうかい・・・」

「で、何故やるべきことなんだ?」

 

再度投げかけられるその問いに、千夜は内心焦っていた。

 

(どうすっかな~・・・ウルトラマンだっ!って言っても信じちゃくれないだろうし・・・)

 

結局、ウルトラマンという事を除いて、この場所まで足を運んだ理由を話すことにした。

 

「夢で見たんだよ。ジャングルを歩いてる夢。それでここに来たらいろいろあって・・・これがお告げかー!みたいな」

「ふむ・・・動機としては弱いがまぁいい。で、問題はここからだ」

 

そう言い、眼光を鋭くして怜士は続ける。

 

「先日の手榴弾、先ほどのディバイドランチャーの扱い。とても素人には思えん。お前は一体”何者”だ?」

「いやいや、手榴弾は偶然だし。それにランチャーだって明後日の方に飛んでったろ?」

 

そうあくまでも偶然と主張する千夜。

だが、怜士は鋭く続ける。

 

「さっき撃ったとき、お前は反動の大半を受け流せていた。銃を扱ったことがないものなら吹っ飛んでいる。俺が実際そうだったからな。それに二日前、手榴弾に続いてお前は閃光弾も投げていた。重さも構造も違う物を、爆発までのタイムラグも知らずに正確に同じ位置に落とす?それが偶然であるものか」

 

身を乗り出し、鋭い眼光で千夜を射抜きながら書類を突き付ける。

 

「過去の事は調べがついている。ベトナムで地雷処理をしていたそうだな。そんな専門技術をその歳で会得しているものが『ただの一般人』なわけがない」

 

まくし立ててから姿勢をもどし、少し口調を緩めて怜士は言う。

 

「・・・俺としては仲間の救助に尽力してくれたお前を疑いたくない。だが、俺には皆を守る義務がある。素性も分からない奴をそう簡単に内輪に入れるわけにはいかないんだ」

 

 

すると千夜は天井を仰ぎ、「まいったね・・・」と呟いた。

 

「わかったよ。ただし、こっちの全部をさらけ出すんだ。そっちにもそれなりの代償は払ってもらいますよ」

「交換条件か。いいだろう。わかる範囲でならこちらも情報を開示する」

 

そう怜士が言ったのを確認し、千夜は聞いた。

 

 

「じゃあ、あんたらは何でTLTから離反した?何か言いたくないことがあるんでしょ?」

 

 

そう問うと、怜士が目を泳がせる。

 

それを逃さず、千夜は畳みかける。

 

「こっちは洗いざらい話そうってんだ。なのにそっちはだんまりかい?」

 

 

しばらく迷うように額に手を当てていた怜士だったが、やがて観念したのかこちらを見つめてきた。

 

 

「いいだろう・・・ただし、お前の過去が先だ。いいな?」

「ああ、はぐらかしたらタダじゃおかないからね」

 

 

そして千夜は自らの過去を、闇をさらけ出す・・・

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

銃声と血、クソみたいな大人たち、あとは折檻か不味い飯。

 

 

それが子供の頃の俺の全てだった。

 

 

俺は生まれてすぐ捨てられたらしい。

 

本当の国籍だって、日本かどうかわからない。

 

そういうまっさらなガキは便利だ。

 

 

教える価値観次第では殺人マシーンにだってできる。

 

だからゴミ捨て場で泣いていた俺はテロリストに拾われた。

 

 

日本人系の顔だったからか、シノビという名をつけられ俺はテロリストとして育てられた。

 

 

ニッポンのシノビは必ず任務を実行する。

失敗すれば命はない。

だから必死になる。

だから強い。

 

そう何度も言い聞かされ続けてきた。

 

 

そんな俺を、人間として育ててくれたのは同じようにテロの道具にされていた子供たちだった。

 

彼らは大半がまっとうな暮らしをしていたものの、住んでいた場所がテロリストに襲われさらわれた者たちだった。

 

彼らは世界の事を教えてくれた。

 

それは他愛のないことだったけれど、その中から俺は大切なものをいくつも学んだ。

 

 

嘘をついてはいけないこと。

 

悪い子には魔物がおしおきに来ること。

 

誰かに優しくすればそれは自分に帰ってくること。

 

 

彼らから聞く話は、大人たちが言うことよりよっぽど輝いて、正しく思えた。

 

 

人を殺すのは悪いことかと聞いてみたことがある。

 

すると皆口をそろえて言った。

 

悪いことだ。

 

けれど、やらなければ死んでしまう。

 

生きるために必要なら神様は許してくれる。

 

 

今思えば、彼らは自分自身に言い聞かせていただけなんだろう。

 

でも、そうでもしないとおかしくなってしまいそうな世界だったんだ。

 

いや、とっくにおかしくなってたのかもしれないけど。

 

 

そうして俺たちはひたすら生きるために殺し続けた。

 

毎日のように繰り返される戦闘で一人、また一人と死んでいった。

 

 

 

そしてその日、俺は必死で逃げていた。

 

死にたくなかった。

 

何者かもわからずに死に行くのがとてつもなく怖かった。

 

 

そんな俺に、手を差し伸べてくれた人がいた。

 

 

出雲陽一。

 

それがその人の名だった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

後から聞いた話によると、出雲陽一は友人の戦場カメラマンに用心棒を頼まれ有休をとって戦地に来ていたらしい。

 

そして戦地で逃げ回る少年兵の俺を見つけ、助けてくれたんだ。

 

 

その後陽一は日本に俺を連れて帰り、施設に預けるつもりだった。

 

だが、施設に着いたときの俺の瞳を見てその考えを改めたらしい。

 

 

見知らぬ人を、特に大人を憎悪するかのような眼差し。

 

 

その時、こいつを面倒見れるのは自分しかいないと思ったらしい。

 

 

「・・・なぁ、お前に選ばせてやるよ。施設で不自由なく同年代の子と仲良く暮らすか。それとも育児の事なんて全く分からないおじさんのところで先行き不安な生活するか。どっちがいい?」

 

 

迷わなかった。

 

俺にとって、出雲陽一という男は太陽のような存在だった。

 

必要な存在だったんだ。

 

 

 

そうして俺は養子になった。

 

名前は陽一が付けてくれた。

 

彼は名前を発表するときこう言っていた。

 

 

「明けない夜はないっていうが、それは一日経てば明けるってことじゃあない。

人によっちゃあ十日、百日、一年。それ以上も暗い中を這いずり回らなきゃならんこともある。

お前にもそんな時はきっとくる。

いや、もう経験したのかもしれんが・・・だからこそ、決して諦めるな。

人生ずっと闇なんてこたぁないんだ。

諦めずに一ミリでも西に向かえばいつか必ず夜明けは来る。光は見える」

 

 

千の夜を乗り越えられるような強さを持てるように。

 

だから俺は『出雲千夜』と名付けられたんだ。

 

 

 

それから俺は親父の教育を受けながら専門の学校に通った。

 

義務過程も事情を鑑みて何とかパスされたし、高校まで行くことができた。

 

 

でも二年前の災害でたくさんの人のために命を張る親父みたいに、もっと直接人の役に立ちたいと思った。

 

それで自分にできることを探して大学を中退して旅に出た・・・

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ベトナムで地雷撤去してたのはまぁそういう過去があったから。設置する側も構造を分かってないと危ないからさ」

 

一通り話し終わり、改めて父陽一の存在の大きさを思い知る。

 

あの人がいなければ自分はあの戦場で死んでいただろうから。

 

 

「・・・そうか、すまない。まさかそんな過去があったとは」

「いやいや、むしろスッキリしたよ。あ、でも面接的にはマイナスかな?元テロリストだし」

そうおどけていうと怜士は素早くそれを否定した。

 

「違う。お前はまっとうな人間だ。強く優しい、優れた人間だよ」

「ありがとうございます・・・でいいのかな?」

「謙遜するな。お前は大した奴だよ・・・」

 

少しだけ口元を緩めて言う怜士に笑顔で返す。

 

 

「さて・・・次は俺たちの番だな・・・」

 

姿勢を正し、神妙な口ぶりに戻った怜士の話に千夜は耳を傾ける。

 

 

「俺たちがTLTを抜け出したのは・・・」

 

 

 

そう怜士が切り出したまさにその時。

 

 

天井のランプとスピーカーが作動し、基地全体に危機を知らせる。

 

 

「ビースト・・・!」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

数分後、怜士はチェスターα1に搭乗し各員に指示を出していた。

 

 

ディスプレイにはジャングルを進んでくる一つ目のビーストが映し出されている。

 

その姿を確認し、怜士はチームに指示を出す。

 

「各機に告ぐ!これよりビーストを『スタグロプス』と呼称。全戦力をもってこれを殲滅する!」

 

「「「了解!」」」

 

隊員たちの返事を聞き、操縦かんを握る手に力を込める。

 

 

「出動!」

 

 

鋼の翼が空を舞う。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

戦闘開始から数分。

 

 

こっそり地上に出た千夜はチェスターとビーストの攻防を目の当たりにしていた。

 

 

クワガタのような角を持つスタグロプスの外皮は硬く、チェスターの武装では火力に欠けるようだ。

 

 

チェスターが不利と結論付けた千夜は懐から短剣のようなものを取り出した。

 

ウルトラマンとして戦った後、いつの間にか懐に入っていたものだ。

 

 

そしてこれが何なのか、千夜は誰に聞くまでもなく分かっていた。

 

 

「俺は誰かを守らなきゃならない・・・それが人殺しをした償いだ・・・だから力を貸してくれ!」

 

そう叫び、腰の横で構えた光の遺物『エボルトラスター』を一気に抜き放った。

 

 

 

 

 

光が千夜を包んでいく。

 

身体に力がみなぎる感覚と共に出雲千夜は再び銀色の巨人、ウルトラマンとなった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「またあの巨人か!」

 

チェスターで飛んでいた怜士は目の前に現れた巨人を見据えて叫ぶ。

 

 

「隊長!あの巨人、味方でいいんですよね?」

そう無線で聞いてくる副隊長に怜士は答える。

 

「今はあの巨人を援護する!総員、気合を入れろ!」

 

そう言って怜士は照準をビーストに合わせた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

巨人・・・ウルトラマンとなった千夜はスタグロプスと改めて対峙する。

 

 

(あの角に挟まれちゃたまんねぇな・・・まずは翻弄するか)

 

方針を固め、スタグロプスが放ってくる炎弾を側転しながら躱す。

 

(素早く動くには・・・こうだろ!)

 

攻撃がやむ一瞬のスキをついて両手をクロスさせる。

すると残像が見えるほどの速度で敵の背後に回り込むことができた。

 

(行くぜ!)

 

 

接近し、パンチとキックの連打をお見舞いしてやる。

 

肉弾戦の訓練など、幼少期にとっくに体験済みだ。

 

一撃一撃に体重を込め、さらに同じ地点を執拗に攻撃してやると装甲に皹が入りはじめる。

 

 

(よし!いける!)

 

そう思った瞬間、スタグロプスが破裂した。

 

 

蒸気と外皮をまき散らし、ウルトラマンは後退。

 

チェスターは計器に不調をきたし、全機が落下していく。

 

 

(危ない!)

 

各機が自力で着陸態勢に入る中、チェスターβ1だけが不安定な姿勢のまま落下していく。

 

 

「くっそ!」

と毒づきながら操縦しているのは優士だ。

普段は銃座で射撃担当のため、こういったトラブルには弱いのである。

 

 

(間に合え!)

 

とっさにその場から飛び、ダイビングキャッチのような姿勢でなんとかチェスターを掴み激突を防いだ。

 

 

(よかった・・・)

 

チェスターを地面に降ろし、優士に頷くウルトラマン。

 

 

その隙を、”脱皮”したスタグロプスが見逃すはずもない。

 

 

背中に鋭い痛みを感じると同時、千夜は自らの失態に気づいた。

 

脱皮し、新たな姿となったスタグロプスは鎧を無くす代わりに鋭利なかぎづめを手に入れ、ウルトラマンを襲ったのだ。

 

 

(ぐっ・・・がぁ!)

 

苦しみ、しかしチェスターを守るためその場から動けないウルトラマン。

 

 

その胸のY字のクリスタルが赤く点滅し始めた。

 

 

「何だあれは?」

「危険信号かも!赤が警告色なのは万国共通ですから」

 

空吾の予想が当たっていると判断したチェスター達はそれぞれ攻撃をするが、優先目標をウルトラマンに決めたビーストは動かない。

 

 

「くそ!僕たちがもっと強ければ!」

 

空吾のその声は、その場にいた全員の気持ちの代弁だったに違いない。

 

 

もちろん、ウルトラマンとなっている千夜も例外ではない。

 

 

(こんなところで・・・!)

 

点滅が早くなるにつれ、身体から力が抜けていくのが分かる。

 

 

思い出すのはかつての戦場。

 

死なないため這いずり回ったあのころの記憶だ。

 

 

(死んでたまるか・・・やられてたまるか・・・!俺には力がいるんだ!もっともっともっともっと!)

 

 

それはきっと執念と呼ばれる感情だったのだろう。

 

 

そして”彼”はその呼びかけに的確に応えた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

チェスターで旋回しながら怜士は見た。

 

 

銀色だった巨人が黒い光を放ったと思ったとたん、ビーストが吹き飛ばされた。

 

 

そしてその後には、新たな姿に変身した巨人が立っていた。

 

 

「・・・黒い、巨人?」

 

新たな姿の巨人は黒かった。

 

黒の隙間には銀が光り、その黒も自ら輝くブラックオパールのような光沢をしていた。

 

 

「何だあの姿は・・・何故・・・」

 

何故こうも自分は不安になる?

 

 

ーーーーー

 

 

 

黒い姿・・・ジュネッスノワールに変身したウルトラマンは激高するスタグロプスを見据え、腕にエネルギーを貯める。

 

すると腕部のヒレのような部分から光の刃が伸び、武器のようになる。

 

 

独特の掛け声を残し、巨人がビーストの羽を切り付ける。

 

ビーストの悲鳴と緑の血をまき散らし、羽が地に落ちる。

 

 

その後も拳打脚打を浴びせ、時には腕の刃で切り付けながらスタグロプスを追い詰めていく。

 

 

(終わりだ・・・!)

 

 

最後の攻撃を放つべくウルトラマンは右手を伸ばし、その上に曲げた左手を載せてエネルギーを貯める。

 

 

そして左手を垂直に立てるとそこに右手を打ち付けるようにして逆L字を作った。

 

 

すると左腕から黒い光の奔流『イヴィルレイ・シュトローム』が放たれ、スタグロプスを呑み込んだ。

 

 

エネルギーを全身に受けたスタグロプスは淡い光の粒子となってウルトラマンの胸のクリスタルに吸収された。

 

 

 

そしてウルトラマンも光に包まれ、消えていった・・・

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

チェスターを着陸させ、ヘルメットを脱いだ怜士は自分の手を見る。

 

 

その手は細かく震えていた。

 

脳裏にはあの黒い巨人の姿がはっきりと焼き付いている。

 

 

 

「一体なんなんだ・・・この震えは!」

 

 

正体不明の恐怖を感じながら、怜士はただただ立ち尽くすしかなかった・・・

 

 

 

 

 

 

to be continue




というわけでどうだったでしょうか第2話。

今回はとりあえず千夜の背景がメイン。

他のガルーダ隊員も登場させておきました。
ちなみに、隊員たちの名前は人間に友好的な怪獣からつけました。
設定も更新するので見てみてください。

ジュネッスノワールはジュネッスの赤い部分を黒くして他の部分を明るくした感じです。



というわけで次回もお楽しみに!




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