『ワシの研究所へようこそ。お主がかのチャンピオンであるという前提で話させてもらうぞ』
何もない空間に浮かび上がった立体映像の人物が喋り出すと、電灯が消えてその人物のみが目立つように調整されていた。腰は曲がり、数年前の多少ふくよかな体型とは真逆、およそ不健康に痩せこけた見た目の老人は口を開いた。
『マグマ団と手を組んでから、調達される人間は増え、洗脳される手駒は増え、そしてあのバカ娘の過激なやり方は鳴りを潜めさせられた。狂ったジュピターはいいように扱われ、今となっては実質、マグマ団の者共がこちらの手綱を握っている状態じゃ。まぁ、元々自我を持っていた構成員がワシとジュピターしかおらん組織。口を出された時点で、こうなることは分かっておったがな』
映像の中でゲホッ、と咳き込むプルート。どうやら顔色同様体調の方も良くはないらしい。狂ったながらも、約束を守っていたジュピターと違って狂気的なまでにジラーチを追い求めるマグマ団はプルートをいいように扱うだけで何の施しも与えていないらしい。
今となっては加害者だったギンガ団も、被害者同然の状態である。尤も、そんな事実はシロナやハマゴの知るところではないのだが。
『そして奴ら、潤沢な資源とワシの研究を横取りした結果……近々大規模な作戦を起こすらしい。まだまだ中途に過ぎんが、ワシの命ももはや用済みとして消される可能性も高い……図々しいとは承知の上じゃ。牢獄でもなんでもいい。助けてくれ』
喉から絞り出した震える声。プルートの表情にあるのは焦燥と後悔。そして何よりも、生への執着。老いさらばえた今だからこそ、今を生きる残り僅かな命を繋ぎ止めたい。そんな必死な彼の感情が、映像越しでもありありと伝わってくるかのようだった。
『作戦の場所と、ワシが今囚われておる場所はこのメモリーの中に記した』
映像の中で彼が指で持つメモリーは、一般的なスティックタイプ。そして再生時間に反応して排出されるようになっていたのだろう。シロナがいた機械のスロットから、スティックメモリーが機械音と共に差し出された。
それを手に取り、映像の中の物と相違ないかを確認した後にすぐさま懐へ仕舞うシロナ。戻り次第、すぐさま解析に掛けるべきだと決意する。シロナとて、たとえ相手が悪人だとしても改心した相手を見殺すような真似はしたくない。それに、助けを求められたのだ。答えない訳にはいかない。
『それから、そこにいるロトムを連れて行ってやってくれ。こやつの研究成果は全てそのひみつの研究所に残してある……上手く使え、そしてあわよくば、こやつでマグマ団の鼻を明かしてやってもらいたいのじゃ。優れたトレーナーであるなら、それに答えるポテンシャルは持っておるからな』
『おい、何をしている!』
ハッとした表情で振り向くプルート。彼は急いで目の前に手を突き出すと、映像はそこで途切れた。果たして、彼はたどり着く頃にはまだ生きているのだろうか。このような終わらせ方をした以上、彼の安否が気になるが……それを今ここでウダウダと考えていてもしかたがないだろう。
暗くなっていた部屋に電灯が戻り、研究所は明るく照らしだされる。そして悲しさを隠そうともしない表情のロトムは、途切れた映像があった場所を心配そうに見続けていた。
「あなた、ロトムっていうのね」
あの奇妙な笑い声をあげていた張本人。そして椅子などを浮かび上がらせて攻撃……いや、イタズラしてきたポケモン。マーズが知るよりも、ずっと手厚く育てられてきたのだろうか、プルートという非道な科学者に対して親愛の情を持っているようなロトムを、安心させるようにシロナは言う。
「大丈夫よ、あの人は必ず助けだす。無事な姿で会わせてあげるから、力を貸してもらえるかしら?」
「……! …!!」
もちろんだ、と両手代わりのジグザグなプラズマ体を揺らすロトム。一文字を結んでいた口元は、再び活発な笑みを浮かびあがらせる。そしてシロナの周囲を飛び回って、自分はやれるんだぞというアピールまでし始めた。
「ねぇマーズさん」
「はいはい、わかってるわよ」
呼びかけられたマーズはうんざりとしたように、しかし口元の笑みを隠さずにロトムに近づいてこう言った。
「チャンピオンの手持ちは空きがないから、あんたはあたしが引き受けるけどいい? 安心なさい。これでもトレーナーとしての腕はかなりのもんだと自負してるわ」
そう言って空っぽのモンスターボールを右手に持つマーズ。ロトムは一度シロナを見たが、やはり雰囲気的にもマーズの方が気に入ったのだろう。喜び勇んで彼女に近づくと、ハイタッチを交わすようにプラズマの腕でモンスターボールの開閉スイッチをチョンッと押した。
吸い込まれるロトム。点滅するモンスターボール。次第にカタカタと彼女の手の中で震えていたボールは、ポケモンの捕獲完了を示すポゥンという軽い音と一緒に揺れを収めた。
ボールを軽く投げ、キャッチしたマーズはボールの赤部分に軽いキスをする。
「ロトム、ゲットね」
ここまで無言だったハマゴは、マーズの行動に耐え切れずブっと吹き出した。咄嗟に手で口元を覆い隠すが、震える方は笑いをこらえきれていない。普段とのギャップを知っているからこそ、このように「色気」を意識したようなマーズの行動がツボに入ったのだろう。
しかしハマゴのふざけた態度もそこまでだ。悪かったな、と軽く手を振ってマーズに誤った彼は目の前のコンソールを叩きだした。プルートが使っていたこの研究所の施設にロトムが有効活用できる何かがあるのは先ほどの通信で明らかになっている。だから、それが何かを見ておきたかったのもあった。
「っと、これだな」
ッターン! と叩かれたキーボードのエンター。同時に、彼らのいた部屋の右の扉がプシュッと空気を排出しながら開かれた。ただコンソールを叩くだけでは開かない厳重に施された電子ロックも、シロナが持っているひみつのカギによって反応するようになっていたのだろう。
奥のほうを覗き込んでみれば、オレンジ色のロトムの体とよく似た色合いの家電が数多く鎮座していた。これらが、ロトムを上手く使うための道具なのだろうか。傍目はどのメーカーにも属していない多少変わった家電だが、さて。
「これがその記録かしらね」
扉から入ってすぐの右側に、少々埃が積もった日誌が置かれていた。パッと埃を払いのけながら手にしたマーズがペラペラとそれをまくると、かつてのプルートらしい傲慢な言葉使いで研究成果に対する彼のコメントが記されていることが分かる。
そして付箋の挟んであるページまで飛ばすと、その中に書かれている事と目の前の家電がなぜここにあるのかの疑問が解ける。
「なるほど、ね」
「こっちも日記があったぞ。随分古いやつだがな」
ハマゴが持ち上げている方は子供向けの日記帳だ。名前の部分は薄れ、表紙もヨレヨレになっているが中に書いてあるひらがなだらけの内容はロトムと少年の出会いが綴られていたらしい。最後の方は段々と字が綺麗に整えられていき、悔しそうな殴り書きがあったという。
マーズとしてはそちらの方も気になるが、今はまずロトムの特性を確認するところからだ。
「ねぇロトム、今はどれに入りたい気分?」
「マーズさん、それって…」
彼女は5つある家電に向けてロトムの入ったボールを放り投げる。出てきたロトムは、懐かしい物を見るように目を輝かせてそれらを見回すと、洗濯機に向かって頭からツッコんでいった。
すると、なんということだろうか。グニャグニャと洗濯機そのものが変形していき、洗濯機の上部にはトゲのようなものと、ロトムの顔があらわれた。彼のプラズマ腕は洗濯バサミのような形になり、片手で排水口をホースのように持ち上げる。そして腕の色は先程よりもずっと深い蒼色になっている。
コミカルな生きた洗濯機として、ロトムはその姿を生まれ変わらせたのだ。
「これが有効活用ってことの意味か……」
「家電に取り付いて姿をかえられるのね。ロトム……モーター、つまりはそういうことかしら」
「みてぇだな、こっちのロトム発見者の日記にも書いてある」
シロナは既にロトムの由来について気づいたらしい。何かと関連付けて歴史や謎を紐解く考古学者の面目躍如といったところか。先ほど見つけた日記を読んでいたハマゴのそれに同意し、シロナの予測が正しいことを裏付けた。
とりあえずロトムのことに関してはこれで良いだろう。あとはすぐさま本拠地に戻り、シロナがスティックメモリーの中身を解析することで今回の調査は終わりである。
「にしても、ギンガ団が取り込まれたか…マグマ団も何を考えてやがる」
過去、ハマゴ自身が身にしみて知っている。マグマ団は自然愛護団体の過激派の集まりが更に暴走して出来た組織。今は、過激派という目的のためなら手段を選ばないような輩のみが集まることで、更に助長されて手のつけられないことになっている。
かつてはマツブサというリーダーがいた事でその方向性はまとめられていたが、今はマグマ団は壊滅状態。残党が寄り集まってマグマ団を名乗っているだけの団体だが、それ故に質が悪い。何をしでかすのかも、そのためにどんな被害が出るのかもわからない。
共通しているのは大地を増やすという目的。だが、大地を増やすという目的自体も伝説のポケモンの力を利用したりとロクなことをしていない。
「……そういや、バトラーから連絡こねえな」
ふと思い出してみれば、ジラーチの短冊についての調査結果が来ていないことに気づく。何かあればまた連絡するようなことを言っていたが、古代文字の解析だけならそう時間もかからないはず。電波が届かないのか、それとも。
「ハマゴ君?」
「ワリィ、ちょっと考えふけってた」
シロナの言葉で現実に引き戻される。ともかくやることが出来たとはいえ、それはこの調査が無事に終わってからだ。それに目の前で起きようとしているマグマ団の凶行も見過ごす訳にはいかない。それが実行されれば、まず間違いなく周辺のポケモンや人が犠牲になるだろう。既に人間を再現なくかき集め、洗脳している輩だ。
強く拳を握りしめながら、彼はシロナの方に向き直った。
「それはそうと、ほら見て。有効活用ったってどう移動させるのかと思えば、面白いことになったわよ。家電キーホルダー、なんてね」
そういったマーズの手には、銀の輪っかに通された残り4つの家電が小さくなって括りつけられていた。オーブン、芝刈り機、冷蔵庫、扇風機。デニムのベルトを通す輪に通してみれば、彼女自身のトレードマークである赤と相まって似合わないこともない。
ロトムの件が完全に片付いたことを見届けて、シロナが口を開いた。
「それじゃあ戻りましょう。地上にはこっちの扉を使えば、来た時と同じようにテレビの部屋に転送されるみたいだから」
そう言って取り出したひみつのカギを手に、シロナは近づいた扉にカギを差し込んだ。
途端、閃光があたりを埋め尽くして―――
「……戻ってこれたみたいね」
薄暗く、ボロボロになった小さな部屋。
ハマゴたちは無事に地上へと戻って来たようだ。窓の向こう側で鳴く、ホーホーの声がやけに響いてくる。硬質な地面から、また不安定で埃の降り積もった床板に。ワープパネルの応用だろうか。そんなことを考えていた矢先であった。
「おかえりなさい。彼の言っていたのはあなた達だったのね」
「!」
扉の方から聞き慣れない声がした。
咄嗟に振り向いた3人は、その幼気な声を発する女の子が安楽椅子に座ってこちらを見上げて居ることに、初めて気づいた。しかし、いつの間に? 少なくともこんなところに子供が入り込めるわけがない。そもそも、シロナが雇ったダークトリニティが一人も通さないはずだが……。
しかし、ハマゴはすぐさま気づく。こういうオカルトになれば頭の回転が最も速いのは彼であった。
「ここの幽霊その2ってやつか」
「あらあらご名答よ。いかつい顔のお兄さん」
薄く笑った彼女はキィキィと揺れる安楽椅子から降りると、上品な様子で一礼をしてみせた。
「プルートおじさんが頼むからどんなことかと思えば、中々に面白いことが起きているみたいね。ちゃんと彼の頼み通りに出来てよかったわ」
「彼と知り合いなの?」
「どうかしら」
意味ありげに笑う少女。
長い髪に目元が隠れて、その評定をうかがうことは出来ない。
読めない相手だ。シロナがそう思っていると、少女はごめんなさいねと謝る。
「でも、ありがとう。ずっと孤独だったその子を……ロトムを連れ出してくれて。おじいちゃんの言ったとおり、優しい人たちね」
クスッと笑った少女。すぐさま、薄っすらとその体を消えさせてしまうと、音もなくその場から消失してしまった。
「あの食堂の爺さんもグルだった、ってわけか」
「あれ、これって」
マーズは安楽椅子の上には、森の羊羹が置かれている事に気がつく。添えられた小さな紙には「あの子と一緒に食べてね」というメッセージがついていた。あの幽霊少女なりの感謝の仕方だろうか。どちらにせよ、幻と言われる森の羊羹の謎も一緒に解けた。幽霊特産の菓子なら、そりゃ幻にもなると。
「ちょうど4人分あるみたいだし、一本頂いておくわね」
「んじゃマーズは2本だな、俺も一本もらっとくか」
「えー、どこに持てって言うのよ……」
仕方なしに、二本まとめて小脇に抱えようとしたマーズだったが、
「ひとまずはポケモンセンターに戻りましょうか」
ダークトリニティに作戦終了を告げたシロナが、振り返りながらに言う。
その言葉に反対の異を唱えるものは一人も居なかった。
ポケモンセンターでハマゴたちが借りている部屋でノートパソコンを広げるシロナは、早速スティックメモリーをスロットに差し込んだ。すると、その中に収まっていたファイルにはこれからギンガ団がしようとしていたこと、そしてプルートが囚われている拠点の位置座標と経路、彼自身の映像では語りきれなかったメッセージが残されている。
「……ハマゴくん、とりあえずプルートの言っていたギンガ団の大規模作戦だけど、その時にはまた同行してもらうわ。今度は迎えに行くから、それまで自由に旅をしていてもらっていいかしら?」
「結構時間が掛かるってことでいいのか?」
「そうね、やることがいっぱいだわ……だからこそ、有効な手が打てるんだけどね」
資料に目を通していたシロナは立ち上がり、電源ボタンを押してノートPCを閉じた。底に記されている内容をハマゴが知れば怒り狂い、今にでも突貫するであろうことは、この前のサイホーン事件を知らされた時に十分思い知らされている。
だがそれでは駄目だ。狂ったジュピターにとって仲間の一人と勘違いされていて、キーとなるジラーチを持っている彼には後から動いてもらわなければいけない。それに、プルートの救出はダークトリニティと協力しても難しいと感じるものだ。連れていくわけにはいけない。
救いがあるというならば、解決の糸口がハッキリと見え始めたことだろうか。シロナは腰に手を当てて、ふっと息を吐く。そして手で押さえつけたポケットの中の、その感触で渡そうと思っていた「それ」を思い出した。
「そういえばハマゴ君、マーズさん。メガシンカって興味あるかしら?」
「ん、キーストーンか?」
「……あら?」
素っ頓狂な声を出すシロナ。返ってきたのは、彼女にとって予想外の反応であったからだ。
「この後、森に行ってミミロル捕まえに行く予定だ。ナナカマド博士から頼まれたコレのためにな」
ハマゴは懐から、キーストーンとミミロップナイトの入ったケースを取り出し、シロナに見せた。そして事のあらましを語って見せれば、なるほどと頷き苦笑する。まさか、サプライズに渡そうと思っていたものが被るとは思っても居なかったからである。
とすると、このマグマ団から押収したキーストーンとメガストーンは……。
「じゃあ、マーズさんに渡しておくわ」
「あ、あたし?」
当然、彼女の方に行き着いた。
「さすがの私でもそれが何か分からないけど、ナナカマド博士に聞いてみたらどのポケモンをメガシンカさせられるのか判明するんじゃないかしら。あなた達のキズナの強さを信じて託します。今度出会うとき、期待しておくわね」
「結構押し付けみたいに渡されたなあ……まぁ、多少憧れてたし? もらっとけるならもらっておくわ」
どうせなら、と一緒に渡されたネックレスの外装にキーストーンを括りつけ、首にかけるマーズ。そこまで大きな石でも無く、ファッションのまとまりを妨害するわけでもない。ちょうどよさ気のアクセントとしてマーズの服装に色が付けられた。
「さぁて、忙しくなるわね。それじゃあハマゴ君、マーズさん。また会う日まで元気で」
「あいよ。一回の医者がどこまでやれるかわからんが、善良な観光客として協力させてもらうぜ」
「あんたその物言いなんとかならないの……ああ、ジュピターの相手は私に譲ってよね」
ひとまずの別れを済ませて、すぐさま出立の支度を整えたシロナは足早に去っていった。この一分一秒の間に、プルートの命が失われるかもしれないのだ。速いに越したことはないだろう。キーストーンのやり取りが多少おざなりだったのは、おそらくはそちらの方にも意識を取られていたからだろうか。
興味深げに、正体不明のメガストーンを手のひらで転がしていたマーズはそれを自分の手荷物の中に突っ込んだ。ハマゴと違い、未知なる仲間の可能性。それは彼女に少なからずの興奮を与えている。その証拠に、口元が今にも笑みの形を作りそうになっている。
「そんじゃ、マサゴと一緒だ。しばらくは自由行動と行こうぜ」
「りょーかい。先にシャワー浴びて寝てるわね」
「俺はちょっくら散歩がてらに電話してくるわ」
右手をヒラヒラと振り、部屋から出たハマゴは部屋の鍵を白衣のポケットに突っ込み、そのまま手をポケットの中に入れながらセンターの出入り口をくぐっていった。
彼を出迎えたのは満天の星空。この街のポケモンジムが、月の前に大きくそびえ立っている。巨大な樹木が目立つ、草ポケモンのジムによくある巨木という象徴は、巨大なシルエットになって街の雰囲気を醸し出していた。
「こっちにも顔出しとけって言われたっけか」
そんなようなことを、この街に到着してからすぐに言われていた気がする。さて、草タイプのポケモンのエキスパートが、一介のポケモンドクターに一体何のようがあるのだろうか。気になるところではあるが、それは明日以降アポを取ってゆっくり時間を作ればいいだろう。
今のところ、それよりも気になることがある。
この街の象徴、神話のポケモンそのものの姿を象った石像が聳え立つ名物の高台に辿り着いたハマゴは、近くのベンチに腰掛けながらポケッチを起動した。PiPiPi、と電子音とともに操作して番号をつなげると、通話中を知らせるヴィジョンが浮かび上がる。
映像付きのテレビ電話は、この世界では最もよく普及したサービスだ。殆どの通信機器にこちらの映像を映し出すことが出来、逆に相手側の現状をよく知れる。騒がしかったり、ピンチだったり、この電話が活躍する事で記事に取り上げられたこともあった。
そんなこんなでつながったのは、ふとした拍子に思い出したジラーチの研究をしてもらっているバトラーのところだ。そろそろ、短冊に書かれていることが判明していればいいのだが。
「よお、久しぶりだな……おい、バトラー?」
通話は確かにつながった。だが、相手の姿が見えない。
いや、一体コレはなんだろうか? 彼が居るはずの研究室は薄暗がりでよく見えない。
≪…………ぉ≫
「バトラー! おいバトラー! 何があった!?」
うめき声がひとつ。緊急事態にでもなったのか。呼びかけるように叫ぶハマゴへ応えるように画面の下から出てきたのは、血塗れになった男の右手だった。
≪ハ、マゴくん……ちょうど、よかった≫
「待ってろ!」
ポケナビの方を取り出し、すぐさまバトラーを救出に向かわせるため地質調査団のツテから知り合いの人間の医師へとメールを送る。二つ返事でバトラーの元に友人が向かった事を確認すると、まずハマゴは現在確認出来るだけの材料からバトラーを安静にさせた。
話す余裕はあるし、出血量も最初だけでそう酷くはない。安全が確保された後、また電話すると言って彼は電話を切ろうとしたのだが。
≪まってくれ≫
「喋んな馬鹿野郎。おとなしく待ってろ」
≪マグマ、団は……確実に、君のジラーチを使い潰すつもり、だ……≫
その言葉によぎったのは、ジラーチが傷だらけで倒れていた時の光景。ジラーチの命をなんとも思わず、使い潰す。ならば多少死にかけていたところで彼らの目的に使えたという事なのか? 使用方法は、願いを叶えさせることではなかったのか。
≪一度、たりとも…………うばわせ、る、なよ…?≫
「わかった。わかったさ! だから喋るなつってんだろうが!!」
これ以上はバトラーが無理をする要因にしかならない。
そう判断したハマゴは、距離からしてそろそろ友人のドクターが彼のいる場所に到着したはずだろうと考え無理矢理に通話を切った。これで、後はゆっくりと床に寝ているバトラーは無事に搬送されるだろう。
たったの一日で、ギンガ団とマグマ団、そのどちらもが大きく動き始めていることがわかるとは。流石のハマゴも、精神に疲れを感じて頭を抑え、天を仰ぐしかない。ここのところ張り詰めっぱなしの警戒はかなり精神的に来ている。
頭の奥に響く頭痛は考えすぎの証拠だろう。
それでもハマゴは弱気な考えを押さえつけて、あえて気丈に振る舞う姿を呼び起こす。一度目をつむり、再び目を開ければ―――いつもどおりの暴力ドクターの出来上がりだ。
「ったく……何がしたいんだ、クソッタレの犯罪者共が……」
彼のつぶやきは、月の中へと溶けていく。
夜空はすべてを包み込み、等しく闇を抱えていた。
投稿ペースが完全に戻るのは9月20日以降になると思います。
遅筆な作者ですが、これからもよろしくお願いします。
ピカッと移動
・皆おなじみシルフカンパニーで既にあったワープパネルを応用。
ロトム参戦
・マーズの手持ちは最終的に5体か6体にする予定。
幽霊少女
・森の羊羹は彼女が丹精込めて作っています。
おじいちゃんはその羊羹を包む葉っぱの包装を作ってる。
キーストーン被り
・正直当初の予定にはなかった。
血塗れバトラー
・マグマ団の襲撃があった。その理由は未だ不明