バトラー邸へ謎の襲撃、プルートが話したギンガ団の実態。これまで遅々として進んでいないと思われていた事態であったが、その実、ハマゴの知らない場所では進展を迎えていた。搬送されたバトラーはまだ意識が戻っていないようだが、あと1~2日もすれば目も覚めるだろうとのこと。現代の医療技術はそれほどまでに進化している。
そんな中、ハマゴはマーズと行動を別にしていた。ジラーチはボールの中へ仕舞って彼が所持している。流石にこんな状態で、敵のキーであるジラーチを他人に任せることはしないようだ。
さて、彼が訪れているのは、昨日も訪れたハクタイの森のハクタイシティ側入り口である。心配したところで治療が進むわけでもなければ、思案したところでプルートが無事に保護されるわけでもない。だからこそ彼はいつもどおりに、そして自分の目的を果たすために行動を始めている。
ドライ、などという言葉はこれまでの彼を見てきた諸君にならおおよそ似つかわしくないというのは知っての通りだろう。彼は必要以上に激情を出さないだけで、自分が今動くべきなのか、動かずともいいのか、そうした判断のできる男だ。
空のボールを放り上げて、キャッチ。
フレンドリィショップで購入したそれは黒地に黄色のHという文字が描かれたボール、ハイパーボールである。これ一つで6個ものモンスターボールを買うことが出来る値段であり、高級品なのだが……正直、モンスターボールさえあれば事足りるということで在庫が誇りをかぶっていることも多いボールだ。
では、なぜ彼はそんなものを買ったのだろうか。
「ったく、あの店員め……」
思い起こすのは今朝の出来事。
彼が訪れたフレンドリィショップはてんやわんやの大騒ぎになっていた。その原因は来店した客がポケモン共々酔っていた事で暴れまわっていたのである。おかげで、彼が入店した時には幾つかの商品は棚ごとポックリと昇天なされていた。
そんな中、来店してきたハマゴがボールを買い求めていると知った際にはこれ幸いと、幾つかが割れてしまって使いものにならないボールの箱詰めパック買いのうち、無事なものを押し付けられたのである。廃棄するにも多少手順が大変なモンスターボール。そこに現れた客。我々の知る法律とは程遠いこの世界では、そうした安くした押し売りは別段咎められることではない。
とはいえ、そうした訳ありモノを押し付けられた側の感情は我々の世界と同じである。ぶつくさと言いながら森の入り口をくぐったハマゴは、24時間ぶりとなる鬱蒼と茂った森の空気に出迎えられた。
しかし、一部の密集したところと違って森のなかは木漏れ日が差し込む場所も多い。見た目以上に不快な感覚はなく、ハマゴも片手であくびを抑えながら、程よい朝の涼しさを堪能して道を進むことが出来た。
問題なのはその後である。彼が目指すのは浅く、この数年で補導された通過ルートではない。そのルートをあえて外れた自然そのものの獣道。この森で暮らし、まだまだ世界を知らないイタイケな子を我がものとするために侵入したのである。
……という言い方は犯罪臭がするが、言ってしまえば冒険してポケモンゲットだ。野生のポケモン達は人の言葉を解するとはいえ、進んで人の往来する道に近づくものはあまりいない。縄張りや、突然であって驚いたから襲いかかるものだ。
「さぁて、この辺りかね」
空のボールを仕舞いこむと、腰にあるモンスターボールへ手を掛け彼は呟いた。
ここから先はいつポケモンに襲われてもおかしくない。となれば、キュウコンを出しておくに越したことはない。ファウンスの地質調査団として働いていた時と同様、彼はごく自然にキュウコンを侍らせて森の獣道の中へ歩いて行く。
ガサガサと草むらを揺らして進む中、葉っぱや折れた木の枝が白衣にまとわり付いていく……ということはない。さすがと言おうか、自然あふれるファウンスを行く経験を活かし、衣服には汚れらしい汚れは見当たらない。無駄に鍛え上げられた無駄のない無駄な動きである。その後ろをキュウコンもトコトコ歩いて付いて来る。道中会話らしい会話が無いのも彼らのあり方の一つだろうか。
そうこうしている内に随分と奥まった所まで来たのだろう。木々の密度が高まり、薄暗くなってきた森はコケや湿り気が強くなってきた。キュウコンは燃え移ることも熱くもないが、火傷はする不思議な怪異の炎、「おにび」を展開することでその先を明るく照らす。
これまでの旅路で何度も見た光景。しかし、本来なら一瞬だけ生み出すものを延々と持続させる離れ業も、このキュウコンならではだろう。
「……見つかんねえなあ」
森のなかを歩きまわること、はや2時間。正午のため簡易な栄養飯とポケモンフードで昼食を広げた彼らは、ひどく苔むした不思議な岩が鎮座する開けた場所に到着していた。
彼は背負っているリュックから小さな折りたたみ椅子を開いて座り、その向かい側にいるキュウコンにポケモンフードを手渡しで食べさせている。
反対に、ハマゴはギュッと握ればゼリー状になって出てくる十秒メシで話題のCMを思い起こしながら、簡素な食事に味があるだけマシか、と故郷の栄養食の不味さを訴える患者たちの姿を懐かしんでいた。故郷であるフエンタウンは漢方が受け継がれてきた街ということもあり、その「不味さ」と「栄養バランス」の神がかった調整はどこの病院食にも負けては居ない。
ゴミとなった栄養inゼリーというパックをゴミ袋に入れ口を絞めたハマゴは立ち上がり、この奥地で静かにそびえる苔むした大岩と対面した。
見れば見るほど、どことなく漂ってくる神秘的な気配に呑まれそうになる。ここだけ、自然の力が凝縮されたような不思議な感覚。キュウコンもそれを感じているのだろう。心地よいそれに身を任せてゆったりと体を伸ばしリラックスしていた。時折クアッと大口をあける欠伸が、ハマゴのそれと似通っているのはご愛嬌といったところか。
ミミロルを探しながらも、まったりとした休憩を楽しんでいるその時であった。ガサガサと草木をかき分け近づいてくる気配がある。しかしキュウコンは一切警戒していないため、ハマゴは悪いやつではないだろうと判断して待つことにした。
十秒ほどが経って、がさりと彼らの目前にある茂みが揺れる。本人としては隠れているつもりなのだろうか、ぴょこんと見える黄色いボンボンのような体毛と、茶色くピンッと張った耳が丸見えだ。
(探しに行くまでもなく、来たか)
そんな珍しい物でもあったのかね、などと続けて、彼はバックパックをあさると、一枚の四角いものを取り出した。折りたたまれた野外用のシートだ。その端をつまみ、バッと一振りすれば広がって、ひと一人程度のスペースを作り出す。
椅子から欠伸混じりに立ち上がった彼は、シートの方に寝っ転がるとあくびを噛み殺すと同時に目を閉じ、メガネを外して胸の上に置いた。
「焦るこたねえ、今日くらいゆっくり寝るぞキュウコン」
そうだねと言わんばかりに尻尾をふり、体を地面に落ち着けたキュウコンはリラックスしたように瞳を閉じ、ハマゴ共々眠りについた――――
勿論嘘である。
睡眠はある程度取ってしまえば十分であるし、ジラーチを持っている以上、なんの援護も無いこの森のなかで無防備に寝ることなんてありえない。だが、彼の事情を知るはずもない長耳の乱入者は、その言葉を聞いてホッとした息をついた。
下手をすれば、仲間のように無理やり傷めつけられて捕われるかもしれない。仲間うちから連絡を受けて、偵察のためにきたこのポケモン――ミミロルは、彼らののんびりとした様子に胸をなでおろしてその場を去ろうとした。
この人間は自分たちに害ではない、と伝えるために仲間の居る方へと振り向いたミミロルは、またガサガサと茂みを掻き分けながら来た道を引き返していく。その背中に、小さなシールのような物を貼り付けて。
「……いったか?」
小声で確認すれば、キュウコンは薄目を開けて僅かに頷いた。
キュウコンが先ほど寝る前に尻尾を振ったのは、こちらに目を向けているミミロルに向かって発信機を投げつけたのだ。あれだけの尻尾だ、目的がはっきりしている以上、暗器や道具を仕込むのにうってつけな物もない。
「さぁて、追いかけんぞ」
急いでシートを畳み、バックパックを背負ったハマゴはキュウコンの背に飛び乗った。そして彼女は、人を背負いながら一切の足音を感じさせること無く軽やかなステップで木から木へと飛び移る。
時折吹く風とともに移動しているため、木上がざわめいたところで風のしわざだろうと言うカモフラージュができる。現に、後をつけられているミミロルに気づいた様子はない。
おおよそアサシンか、立派な犯罪者のような光景だが、ファウンスという場所では相手の犯罪者や密猟者も同じ手を使ってくるのだ。それを学ばずして、どうして戦う地質調査団の一員でいられようか。
そんなこんなでミミロルを追いかけていくと、中々森の奥まったところまで来ていることに気がつく。方位や場所は把握しているため帰る分には問題はないが、既に先ほどの演技で汚れてしまった白衣や音を消すため仕方ないとはいえ、葉っぱを体毛に絡ませてしまっているキュウコンを見て、マーズに小言を言われるなと内心辟易した。
「ここか、とまれキュウコン」
言われるまでもなく、完璧に止まってみせたキュウコンから降りたハマゴは、片手で樹の幹を支えにしながらミミロルが棲家の仲間と合流したところを観察しはじめた。斥候のミミロルが懸命に話し、それを聞いた他のミミロルもホッとした表情を見せている。
人気でカワイイポケモンは、何も考えていない子供や、優しい大人の説得で手持ちになるだけではない。当然、その筋の人間から狙われる要素が数多く、そのためにハクタイの森も周辺の警備がファウンスほどではないが厳重だ。
しかし、それらを擦り抜ける者ほど残虐だったり、狡猾だったり、とにかくポケモンにとって害悪であることは間違いない。このミミロルたちは、そうした心がなく、己の欲望にのみ従う身勝手な者共の犠牲者なのだろうか。
(流石に心の病気までは癒しきれねえや)
荒療治で、経過観察もしていない。シンオウに来てすぐ出会ったスボミーの少年を思い出した。そういえば、最後の忠告ぐらいは聞いたんだろうか、それとも煩い大人の戯れ言を忘れてまたスボミーを殴り飛ばしているのだろうか。
ほんの一瞬だけ思い出に浸った彼は、すぐさま考えを振り払ってミミロルたちをみた。平穏無事に暮らし、しかし怯えながら毎日を過ごさなくてはならない野生のポケモン。……正直、ミミロルたちにこの地の愛着が無ければナナカマド博士なんかに引き取ってもらったほうが良いかもしれない。
「ま、押し付けはよくねーや。そうだろ、相棒」
キュウコンの口元を撫でると、彼は木の上から降りる態勢に入る。
「よっと」
しっかりと手袋を嵌めた彼は、樹の幹を上手く滑り降りてミミロルたちの前に躍り出た。またこれか、とすべてを悟ったように目を閉じ、大きな息を吐いたキュウコンもそれに続く。ハマゴと違って一足とびで地面に降り立ったことで、ミミロルたちを体操驚かせた。
「よう、どうもはじめましてだ」
メガネの位置を直しながら言うハマゴの姿は、まるっきり悪役である。ミミロルは斥候役だったミミロルにどういう事だと問い詰めるように声を上げるが、ハマゴが一歩踏み出したところで言葉を切って後ずさりする。
当たり前のように見慣れた光景だ。患者のもとに赴いては、何度も泣き喚かれることも少なくはない。一部の気性の荒いペットが医者の前では大人しくなる現象のようなものだろうか。
怯えながら、キュウコンとの力の差を理解してミミロルたちは立ち尽くす以外に選択肢は無かった。ここまで接近を許したとなれば、仲間の誰かの生殺与奪は既に握られていると言っても良い。
観念すると言わんばかりに項垂れ、または涙ぐむミミロルたちを別段表情を変えずにハマゴはよく観察する。
そんな中、一匹だけハマゴから目を逸らさない勇ましいミミロルがいた。
「………ほぉ」
ハマゴのつぶやきでビクリと体を震わせるが、懸命な勇気を振り絞る。やがて歩き出したハマゴは、己を見つめるミミロルのもとへと一歩ずつゆったりと歩いて行く。その近くに居る仲間たちは横からいきなり攫われるのではないかと、気が気ではなかった。
そしてハマゴは己を見上げる勇気あるミミロルを―――通り過ぎた。
「…?」
不思議に思ったが、既に見えるのは彼の凶悪なツラではなく白衣の背中。
まさかと思い、勇気あるミミロルが振り返って見たのは、仲間の中でもまだまだ幼い生まれてすぐのミミロルたちだ。体格も一回り小さく、人間が近くにいるという恐ろしさすらまだ知らない年齢。
不味い。冷や汗を垂らし、恐怖などすっ飛んだ勇気あるミミロルはなんとしてでもこの人間を止めなければならないと、足に力を込める。「でんこうせっか」でハマゴを吹き飛ばそうとしたのだ。
だが、そんなことは人間のパートナーが許さない。
突然ガチガチに体が固まったかと思うと、ミミロルは技を中断させられる。そう、キュウコンが放った「じんつうりき」の仕業だ。締め付けるような痛みはないため、拘束程度に威力が落とされているが、その分持続性は十分。
結局、勇気あるミミロルは決意に結果が伴うことはなかった。
「よぉー、そこのチビ助」
屈んだハマゴがメガネを抑え、子ミミロルの一匹に手を伸ばす。あの子は、生まれながら足が弱い子だ。不味い、守らないと。
そのまま引っ掴んで連れ去ってしまうのだろうか。勇気あるミミロルが歯噛みしながら、なんとか神通力を破ろうと四苦八苦するも、どうあがいても彼の手が子どもたちに届く方が早い。
彼の手は―――ぽん、とミミロルの子供の頭に置かれた。
「足が弱ってんのか? ああ、しかもロクに動けてねぇのか筋肉もしぼんでやがる。温室育ちは人間に飼われる哀れなポケモン共で十分だっつの。ほら、これ食え」
なにを、言っているんだこの人間は?
ミミロルたちの頭に浮かんだのはその一言だった。
おもむろに、彼は懐から一枚のクッキーのようなものを取り出して、ミミロルの子供にかじらせる。まだまだ善悪の区別もなく、このような場所で閉鎖的に暮らしているせいでお腹も空いていたミミロルの子供は喜んでそのクッキーらしきものに食いついた。ちなみに味は薄めのモモン味だ。
「おうおう、何枚か置いてってやるから1日に1個ずつ食えよ。そしたらそこの目付きの悪いミミロルみてぇにスゲェ速さで駆け回れるからな」
誰が目付きの悪いやつだ。キュウコンのじんつうりきに縛られながら、勇気あるミミロルは悪態をつく。
さて、話は変わるがインドメタシン、というポケモンの基礎能力を底上げするドーピング剤がある。いわゆるプロテインのようなもので、継続的に食べることでポケモンの重要な6つのステータスのうち、素早さを集中的に上げることが出来るシロモノだ。
今食べさせたのは、インドメタシンを原料に混ぜた栄養クッキーの一つだ。もちろん、この世の不思議な生き物であるポケモンにとって即効性があるが、しっかりと体に溶けこむまで時間もかかるデメリットもある。
ハマゴはトレーナーではないため、そうした能力の底上げには興味はない。しかし、思ったように火を吹けないブーバー、体がすぐに崩れてしまうイワークなど、決して完全な存在ではないポケモンたちを普通の体に戻すため、いくつかこういった薬品を利用した物も作ることが可能だ。
彼なりの調整で、1周間でそういった異常もある程度は普通の個体程度には治るよう、インドメタシン以外にも我々が知らない名前の薬品やら、栄養が混ぜられている。味に関しては、フエンの漢方薬を反面教師にしたが故の努力の結果だ。
「一日に1枚以上食べたら逆に歩きづらいからな。美味いからって食い過ぎるなよ?」
ハマゴはピンと人差し指を立てると、口の周りにクッキーの欠片がこびりつけて笑顔になっているミミロルに顔をゆっくりと近づけた。目つきの割には優しい視線を尖らせ、彼は言った。
「いいな?」
あまりの凄みに、その子はこくこくと何度も頷いた。
ハマゴが与える恐怖は、こういうところに役に立つ。先程は怖がられたが、一長一短ということだ。短所を短所のままに捉えていては、ポケモンドクターとして資格をとることすら叶わないのである。
そのミミロルに残り6個のクッキーと、あまり食事ができていなさそうな集落に幾つかの食用かつ栄養のある木の実を渡した彼は土を払って立ち上がった。
「さて、邪魔したな。俺の旅に連れてく助手を募ろうと思ったが、てんで駄目だ。まぁ未来あるポケモンに道を開かせたんだから良しとするが……帰るかね」
そう言うと、彼はキュウコンのもとに戻る。
去り際にチラリと、あの勇気を出したミミロルを見る。多少の見込みがあったんだがなと心のなかで呟いたが、それだけだ。目を閉じたハマゴはキュウコンの背にまたがると、戻る道を見据えてすぐさまその場を飛び立たせた。
緊張が途切れ、恐怖と困惑に満たされたミミロルたちはその場でぐったりするように地面に倒れこんだ。だが、あの人間ならこの場所を言いふらしたりはシないだろうという謎の安心感もある。ドクターという言葉には聞き覚えもなく、渡されたクッキーや木の実も怪しいが……その優しさが篭もった言葉にどことなく、ミミロルたちの心は絆されていた。
「……」
勇気を振り絞って戦おうとしたミミロルはというと、他のポケモンたち以上に腰が抜けてしまった様子を見せていた。あの時でんこうせっかを放とうとしていたが、実際、このミミロルにあるのは度胸だけ。戦う力は平均よりもずっと下のほうに位置している。
大丈夫か、と労るように差し出された仲間の手をとって立ち上がろうとし、やはり腰が抜けていて立てなかった。そのおかしな様子に、生まれた時から一緒の友達が笑ってくるが、勇気を出したミミロル自身は乾いた笑いしか出てこない。
「…?」
しかし、なんだろうか。的確にあの子を治そうとした……ドクターとか言った人間は。なんだか惹かれるものがある。自分でも出来そうだと言う野生には通じない甘い考えも浮かんでくる。もしかしたら、あれを極めれば自分だけの持ち味というものが出来るのでは?
地面に体を投げ出し、悩む勇気のミミロル。そんな彼女の顔を、友達のミミロルがぽんと叩いた。何をするんだと怒るが、もう一度友達の顔を見た彼女はハッとする。友達は笑っていたが、どこか寂しそうな表情をしている。
ふと周りを見回してみるが、仲間も、あの斥候役のミミロルも、彼女と目があう度に頷いてみせた。
彼女らは、ミミロルは―――ポケモンだ。
切っても切れない不思議なキズナが、人間とポケモンの間にはある。勿論、それが一勝つながらない者も多くいるし、本当に繋がったものたちは必ず、その世界に名を轟かせることになるだろう。
そんな不思議な縁があったのだと、仲間たちは言葉を使わず彼女に教えていた。
自分の手を見て、握りしめる。
勇気を出したミミロル。その意思は決まった。
「で、まーた買い物してやがったのか」
「ふふん、面白いアプリもあったし収穫はバッチリよ」
ポケモンセンターに戻る頃には、夕方も近い時間だった。
センター近くの飲食店に入った二人は、少し早めの夕食を取っている。この後二人共にそれぞれ予定が入っているから、今のうちに一緒に済ませておこうと言う魂胆である。早速注文したいものを見つけ、店員を待っていた二人は昼までの情報を交換していた。
「あんたが向こう行ってる間に、オダマキ博士って人から伝言ね。ジラーチの短冊は解析済みだけど、データにする前にバトラーって人が気絶しちゃったからしばらく待ってて欲しいってさ」
「なるほどな。こっちは反対に収穫ゼロだ。まぁミミロルも旅してりゃどっかに居るだろ」
「気楽ねえ。旅するには向いてるかもしれないけど」
先に運ばれていた水の入ったグラスを傾け、笑うマーズ。
そんな二人に店員が近づいてきた。
「お待たせしました~。ご注文をどうぞ~」
「えーっと、あたしは……」
各々の注文を確認した後、店員はバインダーの用紙の一部を千切って彼らに渡した。
「今週、当店ではカップル割引を行っております。ご利用なさいますか?」
「お、ラッキーじゃねえか。やっといてくれ」
「お願いねー」
「承りました。それでは……」
注文票になにやらを書き込んだ店員はゆったりした足取りで席を離れていく。
しかしこの二人、平然と赤面しそうなサービスに対応するものだ。どっちも経歴上はある程度ドライになれるとはいえ、同様ひとつすら何もないと言うのは健全な男女として如何なものだろうか。
「カップルとはなあ、俺もいい嫁さん見つけてぇもんだ」
「あんた……そう言う感情あったの?」
「ひでぇなテメェこの糞女」
なんとも気の抜けるやり取りである。ともかく言えるのは、この二人にそんな甘い展開は訪れないということだろう。
「この後はジムリーダーんとこだっけ?」
「一応な。朝の方にアポ取ったら夜に来いってよ」
「ジムリーダーはご多忙だものね」
「あいつらはドンドンやることが増えていくからな。なんせ、街の看板であり挑戦を受ける役だ。それでいて、人に教える才能も必要。最後は街の抱える問題に自ら当たっていき、頼られるのが当たり前になる。大変だぜ」
「ふぅーん?」
そこで思い浮かべるのは、マーズのよく知るあの二人だ。
「スズナとスモモみたいなのは?」
「武者修業ってのもよくある話だ。ジムリーダーだって人間だ。一つの場所に縛り付けられてるわけじゃねえ」
ポケッチを押し、ハマゴはテーブルにタウンマップを表示させる。
「そうだな、まぁリーグに出るには規定の8つを集める必要があるとはいえ、程よい腕試しの場である必要もある。一つの地方にジムが8種類しか無いわけじゃねえ。有名な街じゃなくとも、ジムだけが建ってる絶海の孤島やら、火山の中やら……つまりは、幾つかが地方のポケモン協会に休暇を申請して、空けんのもオッケーだ。羽根を伸ばして、更に成長してくるんなら万々歳だからな」
そんな二人の会話も聞こえない店舗の外。
ガラス越しに青い髪の青年を見つめる、長耳のポケモンの姿があった。
ポケモンアニメによくあるオリジナルジム。ショウタも2つほど、本編にはないバッヂ持ってたからね。じゃないと過去作のジムリーダーがビーチの別荘や他の地方に来てる理由がわからない。
現在続きも半分ほど執筆チュウです