流れ医師の流れ星   作:マルペレ

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今回は久しぶりに視点2つ


伸ばした手の周りには

「よく来たわね! 歓迎するわハマゴくん! あたしはハクタイのジムリーダー、ナタネ! よろしくね」

「ポケモンドクターのハマゴだ。よろしく」

 

 再びマーズと別れたハマゴは、消灯し静かになったハクタイジムのトップであるナタネと固い握手を交わし、挨拶もほどほどにソファへどっかりと座り込んだ。

 彼が通されたのは関係者用通路から近い応接室。樹木や葉を模したレリーフの掘られた見事なソファに座り、ナタネが愛飲している緑茶を差し出される。食後ということもあってチビチビと湯のみを傾けたハマゴは、開口一番に問いかけた。

 

「で、俺に何のようだ?」

「わお礼儀なし! ……じゃなくて、まずは一つ教えてほしいことがあるの。えーっと、その」

「ハッキリ言えっての」

 

 完全に上から目線のハマゴは何様のつもりだろうか。もっとも、ナナカマド博士にすらタメ口だった彼にとっては平常運転だが、彼の素の表情や独特の言い回しもあって、ナタネはビクリと背を伸ばす。普段こういった相手をジムリーダーの権限で拘束しないわけではない。ただ、今は頼む立場であるため少々気が引けているのだろうか。

 いや、原因はもっと別のところにあった。

 

「あの森の洋館だけど……いたの? 怪しい人影とか、ゆ、ゆ、…ゆう…!」

「幽霊か?」

「ひゃああああ?!」

 

 ハッキリと口にしてしまえば、その単語事態を恐れるように悲鳴を上げるナタネ。正直言ってジムリーダーの威厳もクソもない声が部屋の中を通って外へと漏れ出ていった。盛れた叫びを聞いて警備員が入り込む始末。もっとも、警備員も悲鳴の主がナタネであることに気がついたら、いつものことかと呟いて巡回に戻っていったが。

 後にハマゴが聞いたところによると、夜の消灯したジム内を歩くのですらビクついているらしい。おかげでナタネとは長い付き合いであるのだとか。まぁ、今はそのことは良いだろう。

 

 何だそのことかと言わんばかりに肩をすくめたハマゴは、懐をまさぐりながら言った。

 

「伝説の羊羹職人な幽霊なら居たぜ。ほら、これが土産だ」

「わあ、これが噂の森の羊羹…じゃなくて! いたの!? マジで!?」

「ありゃあ死んで50年は軽いな。ポルターガイストやら実体化やら、随分と能力を身につけてやがった。死人は物にさわれないのに、なあ?」

「ひいいいいいい」

 

 ちょっと楽しくなってきたハマゴは、真実をわざとらしく、オドロオドロしい口調で語ってみせた。知っての通り、ハマゴは少しだけSッ気が強い。体を張った芸人も真っ青なリアクションを見せてくれるナタネに対して、彼の嗜虐心が刺激されたのも当然の流れだったのだろう。

 

 それからナタネを怖がらせるように、しかし体験した出来事をシンオウの危機に関しては一部伏せた上で話した。ジムリーダーではあるが、街の評判を聞けば分かる。物事の解決に自分が自ら乗り出すシロナと同じタイプだ。

 これからシンオウ全土を巻き込むかもしれない大作戦を控えているマグマ団の活動で、人々の心の支えやシンボルにもなるジムリーダーが街から動くのはよろしくない。いつもは余計なことにフル回転している頭を捻り、ハマゴは森の洋館での出来事について語り終えた。

 

「そうなのね……でも良かった、害のあるような、ゆ、ユーレーじゃなくて」

「しっかしあれだ、分かんねえ事が一つ。なんで俺を呼んだ? 言っちゃあ何だが俺である必要はねぇし、さっきまで顔も知らなかった相手だぜ」

「シロナさんは忙しいのは分かってたし、口も硬いだろうから。それにマーズは元々ギンガ団の幹部だったから話しにくくて……だから、貴方ならもしかしたらそこであったことを教えてくれるかなって思って!」

「消去法か。なるほど、考えてんな」

「へっへーん。そう?」

 

 皮肉も見事に通じていない。

 話すだけ疲れるタイプでもあるなと、内心ハマゴは付け加えた。

 

(しかしあれだ、行くトコ先々で女、女、女ときた。十人十色とは言うが、肩身が狭いもんだ)

 

 未だに勘違いで鼻を高くしているナタネを見ながらに思う。むしろホウエンでは、アスナの祖父である元ジムリーダーのムラ爺や、ジラーチの解析を任せているバトラー、出立前に顔を合わせたオダマキ博士。新しい知り合いには男性も多かった。だが、こちらに来てから縁があるのは異性ばかり。

 肩身が狭い、とは思っているものの、彼自身は出会う人物が誰であろうと、その縁は大事にしている。だからこそ、まだ数回程度しか会っていないバトラーも心の底から心配し、一度しか会っていないスボミーのワルガキトレーナーも覚えている。

 

(スボミー、か。死んでなけりゃいいがな)

 

 あの時ガキ……ユンジに言った「一人ひとりに手を差し伸ばすほどお人好しじゃない」という言葉はどこへ行ったのか。結局のところ周囲の問題に首を突っ込んでるなと、ハマゴはこれまでの道を振り返っていた。

 今のところ、死の危機に瀕したポケモンに出会ったのはあれだけだ。自分が必要とされるほどの状況が起こっていないことをまずは喜ぶべきだが、これから先、マグマ団の動き方次第ではあっちこっちでドクターとしての手腕を振るわざるをえないだろう。そんな未来が来ないよう、シロナが上手く立ちまわってくれることを祈るのみだが……チャンピオンの名は伊達ではない。最悪の事態にだけはならないだろう。

 

「ちょっとー、聞いてる?」

「ん、まぁ極秘だ極秘。ジムリーダーだろうがなんだろうが、実質上の立場にあるシロナが伝えなかったってこたぁ、そうだと思っとけ」

「ダメかぁ……あたしもジムリーダーのひとりとしてシンオウの危機には立ち向かわなくちゃいけない。だから何かお手伝いできるかなって思ったんだけどね」

「下手に刺激すると爆発する危険もあるからな。限られた少数の中で情報を留めとくのが良いんじゃねえか?」

 

 懐のジラーチのボールを少しなでて彼は言う。そうだ、スズナとスモモにも話したように、多少の開示はしておいたほうが良いだろうか。仮にもジムリーダーなのだから、そのあたりの注意喚起くらいは、と思ってシンオウで動き出したギンガ団の事についてハマゴは語ろうとしたのだが。

 

「あ、そのことなら森の洋館に行く前のシロナさんに聞いたよ。……でもね、ハクタイからも行方不明のトレーナーやポケモンたちが居るんだ。その人達を無事に取り戻すまで、どうしても落ち着いていられなくて……あ、何人かは誰かのおかげで、コトブキシティに倒れてたのが無事に戻ってきてたんだよ! まだ洗脳の後遺症や、暴力を振るわれた痕があるけど、今は町の人達が一丸になって懸命に看病してるけどね」

「そりゃぁめでたい事で。しっかし、ギンガ団のやり方はやっぱ気に食わねぇな」

 

 などとほざきながら、内心で滴り落としている冷や汗が額に浮き出ないよう必死になる男がいた。コトブキシティで見つかった洗脳メンバーとは、つまりそういうことだろう。ハマゴのキュウコンが全力の破壊光線で焼き払い、彼の殺人的な肉体的沈静の餌食になった人たちである。

 後遺症が残らないようにはしたが、気絶は気絶。それだけの怪我を負っているのは確かである。今更人間を痛めつけることに罪悪感も、洗脳されているとは言え襲ってきた敵を退けることに忌避感も無いが、やっちまったという後悔は彼の中を渦巻いていた。

 

「まぁなんだ、意気込むのも悪かねぇ。だがテメェは前ばっか見すぎて足元疎かにするべきじゃねえ、と俺は考えるぜ。チャンピオンが直々に事態の収束に動いてる以上はな。さっきも言ったかもしれねぇが、己の街を守り、待つってのがジムリーダーとして現状求められてる状態だと思うぜ」

 

 もちろん、人間もポケモンも。

 最後にそれだけ付け加えたハマゴは、湯呑み手に取り、口へと傾けた。

 

 シンオウ地方においては地位も何もない、旅人でしかないハマゴ。勝手知ったるホウエンと違う、シンオウという土地のジムリーダーへと言える助言は一般論しかない。しかし、言葉の節々から感じ取っていた彼女の印象。多少、手が口よりも先に出そうなナタネであるからこそ、一般的な価値観に基づいた言葉は彼女に染み込むだろうと思った。

 

 言われたナタネは、その瞳を揺らして口を閉ざす。直接にでも、すぐにでも、助けに行きたい。証拠を掴んだであろうシロナに協力する身となって、前線で洗脳された人間たちを開放したい。そんな思いがあるのは確かだ。

 だが、立場上、そして町の人間のシンボル的な存在だからこそ、そんな勝手な行動は許されない。分かっている。分かっているからこそ、こうしてハッキリと他人の口から語られてしまえば、はやる気持ちは押さえつけられた。

 

「あんたにあたしの何が分かるの」

「ん?」

「―――って言いたかったんだけど。無理だよね、当たり前だけど。うん、分かってるつもりだったけど、改めて言われるとやっぱりヘコむなあ」

「なんだ、ここで一発発破かかりゃ面白ぇんだが」

「むしろここで飛び出したらジムリーダー失格よ」

「そうかい」

 

 ずれたメガネを直して、彼はあくび混じりに口を開けた。

 元から帰ってくる言葉は分かっていた。ナタネは先走りしやすいが、バカではない。ときには止まり、時には戻ることすら知っている、立派なオトナだ。そして、これまで以上に敵が見えない現状では、下手に動くのはそれこそ下策。

 護りが薄くなった街の人間は、僅かながらも数を減らすことだろう。おそらく、今も潜んでいるであろう人さらい・ポケモンさらい専用の団員の手によって。

 

 そしてまだ誰も知らない事実であるが、マグマ団が実質ギンガ団残党を吸収してからは、各地での人員・ポケモン強奪の手口は更に過激になっている。

 

 ポケモン協会で予想されていた最悪の事態は、マグマ団の大規模作戦という謎によって引き起こされつつあるのだ。

 もっとも、ここに居るこの二人が知る由もないのだが。

 

 しかし、今一度決意を固めたナタネのいるこの街であれば、伸ばされた魔の手が握られる前に、その神経を断ち切ってしまうだろう。それほどまでなのだ。ジムリーダーの本気というものは。

 

 

 それから多少の雑談を挟んだ彼らは、すっかり湯呑みの湯気が消えるまで会話を続けていた。ハマゴ自身も、こうして面と向かって個人と会話する行為は嫌いではない。元々の見た目のせいで、じっくりと話せる人間が限られているのもあるからだろうか。

 会話も一旦の区切りが付いたところで、夜も更けてきた。ポケモンセンターとはそれなりの距離があるため、これ以上長引かせては夜道も危なくなるだろう。だから最後に、ナタネは悩んでいた事を切り出した。

 

「それとさ、今度はもう一つお願いがあるの。これはシロナさんの協力者じゃなくて、ドクターのハマゴくんへの直々のお願い」

「ドクターとして、か。いいぜ」

 

 二つ返事で受ける彼。ポケモンドクターとしての誇りはある。

 

「ここから少し、ハクタイの森を奥に行ったところに草ポケモンが集まる大きな樹が生えているの。とても大きくて、地面に深い根っこを下ろした雄大な樹」

「まさかそれを直せって言うのか?」

「違うよ。その樹の周りには草ポケモンたちが集まって、平和に暮らしてたんだけど……最近、何者かに痛めつけられてるみたいなの。森のポケモンたちは仲間意識が強いから、普通なら敵意をもったトレーナーくらいならすぐ追い返しちゃうんだけど、なぜか既に2ヶ月近く弱りきってて……そこまでジョーイさんの使うような設備は持っていけないし、あたしの持つ知識や道具じゃ全然元気にならないんだ」

 

 だから、お願い。

 ナタネは懇願した。

 

「あの子たちを元気にしてあげてほしいの。犯人はあたしの方で見つけるからさ、お願い」

「……なるほど、な」

 

 この時点でハマゴはおおよその見当がついていた。

 ポケモンたちが痛めつけられている理由。そして野生のポケモンたちの硬く、時には脅威にすらなりうる結束を越えて、ピンポイントに対象のポケモンを傷つける事ができる方法。

 ファウンスでの経験は、ここシンオウに来てからほぼ全ての事件で役に立っている。だが、今回ばかりは危険な匂いを感じずにはいられない。……だからといって、危機に瀕するポケモンを見捨てるという選択肢は無かった。ハマゴは、ポケモンドクターなのだから。

 

 ナタネのお願いのすぐ後、話を一旦打ち切って、彼はハクタイジムを後にした。

 満点に浮かぶ夜空を見上げながら、白んだ様子の見えない真っ暗な町並みを眺める。まるで自分の進む道が、暗雲に立ち込めているようだと感じた。もっとも、それにしては街頭や信号機の明かりが目につくのだが。

 

「穏便にすみゃいいがな……」

 

 後頭部をバリバリと掻くと、レンズ越しの瞳が空を映し出した。小さく呟いた言葉は空の中に溶けていくのを感じながら、ナタネにはもう一つ勉強させる事になるだろうなと、嫌な予感を拭えずにはいられない。

 厄介事ばかりが迷い込んでくる、しかしそれだからこそ。後に続く言葉は胸の内に仕舞い込んで、ハマゴはアスファルトに転がる小石を蹴り上げた。

 

 

 

 

 飛来した石が額に赤い跡を残し、石を受けた人間はその場に倒れ伏した。

 あまりに圧倒的。あまりにも別格。その脅威と対峙するマグマ団のメンバーは、次々と盗んで洗脳したポケモンを繰り出しては使い捨て、その圧倒的な黒と金の権化に立ち向かっていた。もっとも、拮抗などというワードはまったく当てはまらないのだが。

 

「くそっ! もっと増援と駒を寄越せ!! 聞こえてるか!」

≪無茶だ馬鹿野郎! あんなのにいくら送り込んだって……ぁ!? うわああああああああああ!!! 奴ら、どうやってここに―――≫

「切れやがった!? コイツだけじゃねぇのかよ!」

 

 元ギンガ団残党の真のアジトにて。

 圧倒的な実力を古いながら、敵の最深部でその武を振るうたったひとりのトレーナーに為す術無く蹴散らされていくのは新生マグマ団と銘打たれた、新入のならず者たちだった。

 

 彼らは、この元ギンガ団のアジトで一人の女と一人の老人を囲い、逃げ出さないよう見張っていれば高い報酬と、好きなだけポケモンを使える権限を与えられていた。思慮の足りないならず者たちは、破格の報酬に飛びついて、豪遊とポケモンの虐待で楽しんでいたところ―――この襲撃を受けた。

 

 まるで魔法のように、上のダクトから現れた女にならず者……いや、マグマ団の新入りたちはあっという間に殲滅されていく。彼女が、シンオウチャンピオンであるシロナが現れてまだ10分も経っていない。だが、既にこの場所で行われた戦闘により、マグマ団側の戦力は4分の1にも満たない数に減らされていた。

 

≪こちらAチーム! 管制室に辿り――な、なんだテメェら! ポケモンも出さずに舐めてんのぎゃあああああああああああああ!≫

「彼らもホントよくやってくれるわね。……ダークさん、そいつらはふん縛って捨て置いて構わないわ。それより隔壁とマップの照合をお願い」

 

 無言でシロナの要請に答え、彼女の手に持つ小型端末にプルートの提供したマップデータと、現在の基地のデータが重ねられていく。そして大量に存在する研究室のうち、プルートが捕らえられているであろう入り口の場所が判明したとの一報が入った。

 騒ぎ立てる雑魚をミカルゲの「あやしいかぜ」で吹き飛ばし、壁に叩きつけた直後、トゲキッスの「でんげきは」が彼らの意識を刈り取っていく。

 

「狙いはあのジジイだ! 急げ! 報酬が無くなっちまう!」

「俗物ね……」

 

 あくまでも報酬のため、人間をなんとも思っていない言葉にシロナは不快感を掻き立てられた。だが、今から助けようとしている人物も、元々はそんな考えを持っていた老人である。何となく心のなかにあるわだかまりを今は無視して、彼女はプルートの捕らえられている研究室にたどり着く。

 

「ルカリオ、はっけい!」

「アァッ!」

 

 ひとしきり気合を込めたルカリオの攻撃は、扉を傷つける事無く向こう側にあったロック機構のみを物理的に満遍なく破壊した。ランプが消失し、エアロックが漏れ出た事で緩んだ扉は、ルカリオが無理やり横に押し入れることで開かれる。本来ならポケモンの膂力すら上回る力で閉じられる扉だが、肝心の機構はたった今破壊されたばかり。ただの金属の板と成り果てた扉が、侵入者を止められるはずもなかった。

 

「プルートさん! 聞こえますか!? プルートさん!!」

 

 研究室とはいっても、研究棟と言ったほうが良いかもしれない。地下に作られたこの場所は、森の洋館にあった研究室を更にグレードアップさせたような作りをしている。ここはまだ部屋の入り口に過ぎないということだろうか。

 だが、ここから地道に探したのでは、金に取り憑かれたようなしつこい新入りのマグマ団員に身柄を持って行かれてしまう。腰のボールに手を掛け、ダークトリニティのメンバーも二人ほど使って捜索してやろうと思ったときだった。

 

「…………」

「ルカリオ…そうね、波導で探して!」

 

 制したルカリオが言いたいことを察知しての指示。

 ルカリオの耳元に存在する器官が、水平に伸ばされる。

 そして目を閉じたルカリオの視界には、青くなった世界が映し出されていた。

 

 波導の世界。ありとあらゆる物が持つ固有の振動が移された世界。

 やがて自分が移動しているかのように、2つにも3つにも分かれて隅々まで探し回ったルカリオは目を開けると同時に駆け出した。シロナに一度だけ吠えることしかしない辺り、既にプルートは確保されてしまっていると思ってもいいだろう。

 

「いいわ、先に行って!」

「ッ!」

 

 力強く頷いたルカリオは、ポケモンの身体能力を発揮してグイグイとシロナとの距離を引き離していく。シロナもミカルゲの要石を肩に乗せると、気配に敏感なミカルゲの特徴を上手く使いルカリオの軌跡を辿っていった。

 

 やがて辿り着いたのは、地下から地上へと繋がる斜めのエレベーターがある搬入路だ。いざという時爆破して証拠ごと押しつぶすことが出来る施設から脱出するための手段として、これまで見てきた基地にもあったもの。

 ルカリオは逃げ出すマグマ団員と、顔を殴られ地面に伏したところを担ぎ上げられたプルートの姿を確認する。その瞬間、足に込めた力で一気にその場へと飛び込んだ。

 

「うぉっ!? こいつは……」

「侵入者のポケモンか! いけゴローン! だいばくはつでぶっ飛べ!」

 

 ポケモンを使い捨てにする彼らなりの最大の攻撃。

 だが、その選択はあまりにも悪手に他ならない。鍛え上げられたルカリオと、素人同然のゴローン。そのレベルの差はあまりにも大きく、素早く繰り出された「ボーンラッシュ」の2撃で戦闘不能にされたゴローンは、持ち主の元に弾き飛ばされ諸共爆発した。

 

 せめてプルートは連れていき、報酬を独り占めしてやろうと。ゴローンを繰り出した団員の相棒だった者は、すぐさまパネルを操作して地上へ一気に登ってやろうとしたが、生憎ルカリオのスピードに、搬入用のエレベーターが勝てるわけがない。

 呆気なく、ひと跳びでエレベーターに降り立ったルカリオは「しねんのずつき」を団員のスキンヘッドにぶち当て、エレベーター上にあった木箱を破壊する勢いで吹き飛ばした。箱の中にあった大量のモンスターボールに囲まれながら目を回す男を一瞥すると、パネルを操作してプルートの容態を確認する。

 

 またもや波導の力を使った彼は、プルートが栄養不足であること、老化による身体能力の低下があることなど、大雑把な情報を読み取っていく。後に命に別状は無いことを確認すると、ホッと息をついて気絶しているプルートを背中に背負い込んだ。

 

「ルカリオ! よくやったわ」

 

 エレベーターが元の場所に戻ると同時、姿を表したシロナは感謝の印にルカリオの頭を撫で回した。喉を鳴らして気持ちよさそうに目を細めていたが、シロナが最後に微笑んだと同時に再び臨戦態勢に入る。いつまた襲ってくる輩が湧いて出るかもわからない状況であるからだ。

 

「任務は完了した。自爆プログラムも完全に破壊した。施設の制圧は完了だ」

「ありがとうダークトリニティ。ポケモン協会からの増援があるまで、残党を無力化しておいて。トリトドン、ミカルゲ、トゲキッスをそれぞれ貸しておくわね」

「了解……」

 

 ボールを受け取ったダークトリニティは、代表した一人の言葉と同時にすっとその場から掻き消える。まるでもりのようかんに居た幽霊のようだな、と余りにも卓越した隠形の技術に関心すると同時、彼女は地上で待機しているポケモン協会から命を受けて待機しているジュンサー達に連絡を取る。

 

 プルートの奪還作戦はなんとか成功した。だが、気になるのはジュピターの姿が見えなかったことと、ここに真のマグマ団員が一人も居なかったことである。彼らはまた別のところに、拠点を作ったということだろうか。

 

 自分が制圧したギンガ団残党の最後の基地を見るが、結局奴らの上層部が考えている「大作戦」とやらの全貌はまだつかめていない。管制室や、研究所を直接制圧したダークトリニティと後で合流し、彼らの情報を待つのが現状できる唯一の手段。

 だが、本当に尻尾は見えるのだろうか。片付いたはずの問題だが、その先のヒントが何一つとしてないモヤモヤした感覚を覚える。実態のない雲を手で掴んだは良いが、何の意味もない水滴が手にこびりついただけ。

 

「せめて、これが何か意味がある一滴なら良いんだけど……」

 

 潜入した時とは、別の意味で騒がしくなり始めたギンガ団残党のアジト。戦いのさなかで硬く握られた手の汗を見つめながら、まだまだ終わらない敵の存在を感じる。まるで、あの伝説のポケモンが顔を出したときのようだ。

 普段踏みしめている大地そのものがひっくり返るような脅威が迫っている。どこにでも居て、しかしその全てを掴み取れないマグマ団の行動に、彼女は大地のポケモンの影を見たのであった。

 




シロナ側が関わるととたんにシリアスになる。
次回更新はかなり遅れます。ご了承ください

ナタネ怖がり
・口調とか前に出した人物と丸かぶりだし難しい。

ハマゴくん経験豊富
・人と自然を同時に相手に出来るお仕事をしているんだからそりゃあねえ

波導万能説
・映画だと波導、ゲームだと波動
 字の響きが良いから前者使います

シロナさん無双
・ごろつき、ならず者程度じゃなぁ……
 ワタルくんの破壊光線じゃないけど「わざ」を人に当てるのは基本

ダークトリニティ有能
・味方についたときこいつら程頼れる奴らもそうそう居ないと思う。
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