有りそうでなかったので書いてみた作品。
なお書き出しの理由は久しぶりにシャーマンキングのOPを聞いてみたら再びはまったから
「はぁはぁ……」
夜も深まってきた頃、一軒家のお茶の間にたどりついた学生が荒い息を吐く。あたりは既に静寂に包まれている。これは夜だからというだけではなく、この家の敷地面積が広いがために外の他の家からの音が届いていないだけである。加えて時刻も遅いため、完全に明かりが消えている家も少なくない。
学生服の男子、赤銅色の髪をした少年は先程までの出来事を脳裏にリフレインさせる。
―――心臓を貫かれた。
比喩でもなんでもなく、自分の心臓が存在する左胸を情け容赦なく朱の槍で貫かれたのである。
あれは夢かとも思いたいが、制服の左胸部分に空いている穴とその回りに付着している血の跡がその出来事が事実であることを明確に指し示している。どう頑張ってもこれが何かのドッキリですなんてことはないだろう。その赤の痕跡からは血特有の鉄の臭いが微かに漂っている。
とりあえず、思考を落ち着かせるために台所まで移動し、そこに無造作に乾かしてあったコップを引ったくる。蛇口を回すと当然のようにいつもの何ら変わりない水が流れ出てくる。コップの半分ほどを水道水で埋め、蛇口を回して閉める。普通の何ら変わりない水であるそれを口に流し込む。口の中はほんの少し、血の臭いが未だに染み付いているので水の味が少し気持ち悪かった。
とりあえず、少しばかり冷静になれたところで先の事実について再び考える。
あの時、襲ってきたのは誰だったのだろうか。
あれは人と人との限界を越えた争いだった。
片方の紅い外套に身を包んだ
そして青タイツの男がこちらに気づき、命を狙われた。
運がねぇとか見られたとかなどと言っていたのを辛うじて覚えている。ということは、自分を殺すことは自分たちの都合だったのだろうか。あれは自分のような無関係な存在が見てはいけないものだったのだろうか。確かに、あのとき戦っていた二人の存在は特異すぎた。あのような戦いが人によって繰り広げられるものなのか。
今となっては考えても無駄なことばかりが、脳裏によぎっては消えていく。
そして何故、自分は目覚めたのだろうか。
それも知っている。記憶はおぼろげだが、後から来た誰かが自分を助けてくれたのだ。宝石が自分の近くに落ちていた。それを拾ってきたが、誰が持ち主だったのかは思い出せない。聞き覚えのある声がしたような気もしたが、そんなことを覚えていられるほどの余裕も無かった。
助られたのなら礼を伝えたいのだが、いかんせん、正体も何も知らないのだ。伝える術もない。
長い間思考に耽っていたようで、帰宅時刻も遅かったことが相乗し既に時刻は深夜に近い。
もう夜ご飯を今から作って食べる気にもならなかったので就寝準備を始めようと思う。明日からは新しい制服を卸さなくてはいけないだろう。魔術の鍛練でよく破くので、そのための予備があって良かった。
そう思い、大部屋を立ち去ろうとした。
そう、
―――チリンッ
「――――――!!」
その場から急ぎ跳び離れる。
その場所に、いきなり上から先ほどの槍の男、青の男が槍を突き刺している。一瞬の事だった。鈴の音が鳴らず、あと少しでも回避に移るのが遅れていればあの朱槍に再び貫かれていただろう。
青の男は槍を床から引き抜く。その際にほとんどの抵抗が無いことから本物の刃物であることが分かる。いや、自分を刺していた時からそんなことは分かりきっていたことだ。床との摩擦によって小さな金属音が鳴る。
―――シャラン、と。
「あーあ。見えていれば痛かろうと、俺なりの配慮をしてたんだがな」
青の男は勝手に話し出す。その手に握っているのは、一度自分の心臓を穿った朱槍。髪色も服装もすべてが青で統一されている男はこちらに向かいながら語る。
「一日に同じ人間を二回も殺すようなはめになるとはねぇ」
語っている間に足元にある丸まったポスターの筒を手に取り、相手に向ける。ただの紙だが、補強さえすれば何もないよりかはマシだ。
「いつのになろうと人の世は血なまぐさいというわけか」
その言葉と共に、正面からこちらに向かって槍を構える。
「―――
自分の、衛宮士郎の魔術の
それによって自分の手の中にあるただの紙は青の男の槍を数回だろうが受け止められるようになっただろう。
「ほう。今度こそ迷うなよ、坊主」
青い男が初めてこちらに興味を持ったようで、素直に関心の声を口にしている。
「微量だが魔力を感じるな。貴様、心臓を穿たれて生きているってのはそういうことか」
そう言うことがどのようなことなのかは分からないが、こちらとしては彼に対抗する術がないと
「―――っ!、構成材質・補強」
紙の強度を引き上げる。魔術師なら誰でも使えるという強化の魔術、それによって紙の強度をさらに引き上げる。誰にでも使えるそうなのだが、自分はこれでさえギリギリのラインだ。
「変わった芸風だな。だがまぁ、少しは楽しめそうじゃねぇか」
槍が繰り出される。そのスピードは、普通の人間の瞬間的に発揮できる力では繰り出せるようなものではない。
だが、ギリギリ見切れないというほどではない。穂先の向かってくる位置に合わせてポスターを置く。槍はこちらの心臓を的確に狙ってきており、それを逸らして受け止める。
当然、槍が繰り出されるのが一度だけと言うことなどは無い。
何度もこちらに向かって穂先が飛んでくる。その速度は銃弾のそれよりかは遅いのだろうが、十二分にこちらを貫くに足る速度と威力を持っている。
それらを避け、弾き、受け止める。
お茶の間にあったふすまを蹴り倒し、外に向かって走り出す。
すぐに追撃が来るが、それを壁の陰に走りこむことによって避ける。少しばかり走り、外の庭に接している廊下の窓ガラスに突進し、外に飛び出す。この建物の敷地が広いからか、ガラスの破壊音に気付いた人はいない様だ。
息を吐く。
あの男の攻撃速度はそれこそ人間の出すようなレベルの話ではなかった気がする。藤ねえの竹刀を何回か受けたこともあるが、先の攻撃はそれの比ではない威力と速度を持っていた。一体、何者なのだろうか。そう考えていたからか、
「ガッハ―――!?」
後ろから叩き込まれた回し蹴りを、綺麗に脇腹に喰らってしまった。
庭を転がり、ほとんど反対側まで飛ばされる。強化したポスターは握った手から離さなかったが、全身の筋肉が痛みで苦悶を上げている。
「――――――」
青い男が何か喋っているようだが、こちらとしては気にしてもいられない。
顔を上げれば、目の前にはいつも魔術の鍛錬をしている離れの蔵があった。
ふらつきながらもそこに転がりこむ。
後ろから風切り音、自分の後ろからその突きが来ているので棒状のポスターではガード出来ない。防御範囲が限定され過ぎており、正確に槍に合わせて防御することは不可能だ。なので、
「―――っぐ!!」
「ほぅ」
ポスターを広げて防御した。
これによって防御範囲は広がり、どうにかその一撃を止めることには成功した。が、唯一の武器はその反動によってバラバラになってしまった。元から脆かった紙だ。魔術で強化してもその強度は計り知れている。ましてや、その脆いものを薄く広げて青の男の突きによる衝撃を受け止めた上で物体の構成が無事ということはなかった。
蔵の中に弾き飛ばされ、一本の大きな支柱に背中を預ける形になる。
青の男は今もこちらに向かって進んできており、自分の命の時間の猶予は刻々となくなってきている。
「機転は利くのに魔術はからっきしとは解せねぇが、お前はここでお終いだな。死んでくれや」
「…ざけるな」
「あ?」
士郎は自分の内から出る怒りをぶちまける。
「ふざけるな……!助けてもらったんだ。助けてもらったからには簡単に死ねない。助けてもらったかには義務がある。生きて、その義務を果たさなければいけない。だから、」
左手を握りしめる。
「お前みたいなやつに殺されるわけにはいかない。簡単に人を殺す、」
最期に、いや、最期にならないために自分の感情を爆発させる。
「お前みたいなやつに―――!!」
瞬間、蔵の中で魔力が瞬間的に暴増する――――――!!
「七人目のサーヴァントだと―――!!???」
魔力が爆発する。
衝撃が青の男を襲い、蔵の中から弾き出す。
士郎は目を開ける。いや、開けようとしたが、何か見え方が変な気がする。
(なんだ、これ……)
なんというのだろうか、自分の見ている風景を外側から見ているような感覚。自分の身体が、自分のものでないような感覚。自分の視点が、いつもとはズレているような感覚。
『サーヴァント・セイバー、召喚に応じ参上しました。今は非常時のようでしたので、体をこちらの判断でお借りしています。』
(は……?)
理解が追い付かない。
……サーヴァント?
……借りる?
『今は敵の排除を優先します。話はそのあとで』
視界が一気に移動する。
その速度は、先の男の速さにも劣っていない。自分の視界が勝手に動くことに対して少しどころかかなりの違和感を感じるのだが、それに対してどうこう出来るわけでもなく、成り行きをただただ見守っているしかない。
自分の手にはいつの間にか何かしらの得物が握られていたらしく、それを両手で握りながら青の男に肉迫する。それが何か分からないのは、何故かその武器が目視出来ないからだ。自分の視界には入っているはずなのだが、その周りが少し揺らめいているのが分かる程度で、武器の大きさや形が全く分からない。
青の男に対して剣を振るう。
自分には剣の才能はそこまでないと藤ねえに言われていたのだが、この剣筋は剣に詳しく無い自分でも分かるくらいに綺麗なものだった。
槍の男が剣を受け止める。
剣を振るう。
剣を受け止める。
剣を振るう。
剣を受け止める。
一瞬にして凄まじい数の剣戟が繰り広げられ、その結果、こちらが青の男を弾き飛ばす。
こちらの剣が、あの青い男の槍さばきを圧倒しているようだ。
「貴様、己の武器を隠すとは何事か―――!!」
そう、こちらの武器は不可視。相手にはこちらの間合いが分からないのだ。だから攻勢に出ることが出来ない。こちらの剣戟を受け止めるにも、先の長さが分からないので安全をきさなくてはいけないという事実がこのやり取りの有利不利に直接影響している。
「そういう貴様はその場で止まっていていいのかランサー?槍兵の名が泣くぞ」
こちらは自分の声だ。
だが、自分が喋っている訳ではない。それは話し方を感じれば簡単に分かることだろう。衛宮士郎と言う人間はこのような話し方はしない。
「っち。やはり貴様、サーヴァントか」
「それがどうした、ランサー」
「いんや、それならそれでいいが」
士郎には意味の分からない、理解不能な会話が繰り広げられる。
そもそも今この瞬間も自分の身体を誰か別の人が動かしているという事実に頭が追い付いていないのだ。冷静になれと言われても、落ち着ける訳がない状況である。
「ここらで分けるつもりはねぇか。こちとら今日は様子見でな、これで終わるなら終わってもいいんだが?」
「ほざくな。貴様はここで落ちろ、ランサー」
自分の声が随分と暴言を吐いているようだが、士郎としてもここで逃がすというわけにはいかない。簡単に人の命を奪うような奴を自由になんてしておけない。
「そうか」
青の男はそれを簡単に受け止め、
「じゃあ、こっちも本気で命を貰わなきゃな」
(あの構えは……!!)
ここに来る前に紅の双剣使いと相対しており、自分が気付かれる直前に取っていた青の男の必殺らしい構えと同じものだ。
魔術に疎い自分でも感じられる、いや、もはや可視化されているほどの暴力的な魔力がその槍には込められている。
(あれを喰らったらマズい……!!)
自分の身体を動かそうとするが、一ミリたりとも動かない。
この、自分の身体を動かしている存在はあの槍を受けとめるか切り落とすかするようだ。そんなことが出来るのかという疑問が脳中によぎるが、先ほどまでのやり取りも化け物じみたものだった。心配するだけ無駄なのだろうか。
『いえ、あなたの感情は伝わってきていますマスター。あれがマズいのは分かりました』
自分の考えとは全く違い、自分の思考などはこの存在に伝わっているようだ。
(じゃあ何であれを撃たせるんだよ!?)
その存在は青の男を正眼に捕らえたまま、
『騎士は逃げません。彼の攻撃は受け止めます』
―――それが、騎士の矜持だから
士郎には騎士の云々はよくわからなかったが、
それが綺麗なものに感じられた。
「その心臓、貰い受ける―――!!」
青の男が投擲モーションに入る。いや、距離的には突きのモーションだろうか。
「
剣を正眼に構える。これだけで不思議と安心感を得るのは、その構えが堂々と、綺麗な構えをしているからだろうか。
「
槍がこちらに向かって突き出される。
それは今までの突きの比ではない力と速度をもって、こちらに向かって空気を裂きながら突き進んでくる。狙いは先ほどよりかは甘いらしく、心臓に向かって来てはいなかった。が、それ自体が超強力な攻撃なので、体を穿たれればそれは致命傷になるだろう。
「―――はぁ!!」
剣を正確に振りだす。
横薙ぎに一閃、その刃は槍とぶつかり合い、
―――ギィィィィンッ!!!
剣と槍が膠着状態に陥る。
威力は槍の方が高い。勢いよく助走から突き付けられた槍の方が大きなエネルギーを持っているのだろう。だが、こちらは剣であり手元で握られている。槍は突き出されており力がこれ以上入ることが無いという事実に対して、こちらはあらん限りの腕力を振り絞り槍を弾く。
その甲斐あってか、こちらが少しずつ槍を押し返し始めた。まだまだ油断ならないが、こちらの方が有利になってきた。
――――――その瞬間、
――――――ゾクッ……!!!
怖気が全身を這い回った。
「―――
体が、衝撃で弾き飛ばされる……!!
体が痛い。屋敷にたたきつけられた衝撃が全身を襲っている。それはただの衝撃だが、それだけに心身に大きなダメージを与えた。
「貴様。避けたな、我が必殺の一撃を……!」
そう、あの槍は回避することに成功した。
あの瞬間、こちらの心臓を穿ちそうになった槍を風圧によって弾き、腕を掠る程度の被害で抑えたのだ。そのおかげで腕からは軽く血が流れているが、それ以外に大した影響はない。
士郎はここにきてようやく、自分の身体が扱っていた得物を見ることが出来た。
(これは……!?)
綺麗だ。
一瞬でその感情が浮かんできた。黄金の輝きはそれが華美であるとは感じられず、むしろその黄金が剣であるとばかりに自己主張をしている。刃は透明に近い銀色で、夜空に浮かぶ月の光でさえも反射している。
「呪槍。いや、因果逆転の槍か…。さらに槍の名前がゲイ・ボルグ。御身はアイルランドの光の御子か……!!」
アイルランドの光の御子。
たしか、クー・フーリンという英雄の俗称だったはずだ。ケルト神話で無双を誇る英雄。その戦いぶりは自分が半分死にかけている状態で大軍を相手に戦ったという、まさに大英雄とは彼を指すような言葉である。
(この男が、英雄……?)
この男は自分のようなわけも分かっていないような人を殺す、簡単に言えば
「っち。この槍を出したからには一撃必殺じゃないといけないんだがな」
槍を回して肩に担ぐ。
そして、
「これで勝負はお預けだ。今日の所は撤退していやるよ。それがマスターの意向なんでな」
「まて!そもそも
「まぁ、色々あってな。あと、追いかけてくるなよ。追いかけて来るならば、」
塀の上で立ち上がり、こちらを鬼のような形相で見つめてくる。
「決死の覚悟を抱いてこいセイバー。それならば、この槍が貴様を貫くだろう……!!」
槍の男は連続で跳躍を繰り返し、この場から離脱していく。
一応の危機は去った、のだろうか。
そして、
「あっ、身体が戻った!?」
視界がもとに戻った。
それによって腕などの身体も自由に動かせるようになっている。痛みが消えるわけではないが、自分の身体を動かせるという当たり前の感覚に少し驚いてしまう。
『すいません。緊急時でしたので、とっさに体を借りてしまいました。御許しを、マスター』
声が聞こえてくる方向を見る。
そこには、金髪の美少女が居た。
纏めてアップにされている髪は月の光を受けて光沢を放っており、騎士甲冑に身を包んでいる。ドレスアーマーというのか、ドレスに外の甲冑をくっ付けたような姿をしている。
「あんたは……?」
『遅れましたが、サーヴァント・セイバー、召喚に応じ参上しました。これより我が剣はあなたと共にあり、あなたの運命は私と共にあります』
「いや、それはいいんだが……」
流してはいけない大切なことを言っているような気がするが、今はどうでもいい。それよりも重大な、気になることがある。
「なんであんた、透明なんだ……?」
そう、この少女、向こうが透けて見えるのである。確かにここにいるということは見えるのだが、ここに確かに存在しているという物質的な物が無いのだ。
手を恐る恐る近づけてみたが、少女の方からこちらに来た。
「うわっ!!???」
手が少女を通り抜けた。
自分の手は体を突き抜けて反対側まで出ており、少女から血が流れるというようなことも無い。
『それはそうです。私は
「は……、」
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!????」
この日から、
衛宮士郎の聖杯戦争は始まった―――!!
この後、リンはランサーとの戦闘での疲れによって現れることはなく、セイバーに聖杯戦争について説明してもらう。
セイバー、君四次に出てたし出来るよね?
ランサーが実体化してるのは令呪によって、なお1つで一、二時間というクソコストでござんす。麻婆神父だからできる超力技(?)
なお憑依合体でオーバーソウルと読むのは武器化は全く出番無いからでござる。宝具は付いてくるのじゃ
あとヒロインは多分イリヤ√になるかな?続くなら
感想、意見などお待ちしております(´・ω・`)