そこに遠征から帰ってきたレーヴァテインとパラシュがやってくる。
そこで、彼女らは寮の大部屋で親睦会を開く事になる。
ケーリュケイオンとカドケウスを加えたメンバーでお風呂に行き、寝ることになるのだが……
ファントムオブキルの二次創作です。
これで何話目でしたっけ?
図書、露天、贈り物、記念日……。
もう五話目ですね。
短編は毎回オチを考えるのが難しく、そして楽しいですね(笑)。
(半分ヤケ)
でもどんどん長くなってきているので、その内に連載っぽくしようかなとも考え始めてます。
今回は古参のレーヴァテインとパラシュが登場しました。だけど、もうこのマスターとは付き合いがとても長いので、二人とも完全にデレている状態です(笑)。
あと、またいつものように分割しようかなとも考えましたが、それは読む側も少し面倒なのかもと思い、長いままにしてます。
何か筆がのり、14000文字とかになってしまったので読むかたは頑張って下さい。すいません。
もちろん、途中で読むのをやめてしまっても構いませんが……ひそひそ(サービスカットは後半ですよ)。
ではよろしくお願いします。m(._.)m
昼休みの教室の窓際で、最近特に仲の良い三人が集まっていた。
クラス委員のシェキナーと図書委員のロンギヌスと、隣のクラスから遊びに来ているミストルティンである。
「ねえ、そう言えば知っているかしら?最近、私達が少し変な目で見られているって」
窓際に立つシェキナーが、空を眺めながら二人に訊ねた。
今日はとても良く晴れていて、本当に清々しい天気だ。こういった日は、何か良いことが起こりそうな予感がする。
時おり、心地よい風がふわりと吹いてきて、白色のカーテンとシェキナーの艶やかな赤い髪を軽くなびかせていた。
「えっ?」
窓側の自分の席に座るロンギヌスが顔を上げた。シェキナーの話を聞きそびれたようだ。
ロンギヌスはと言うと、目の前の席で後ろ向きに座っているミストルティンに、ずっと手を握られていた。
そのミストルティンは両手でロンギヌスの手を握り、じっと真剣な表情で、その手のひらを見つめている。
全体的にその二人の距離がかなり近いので、端から見ると、とても仲睦まじく見えた。
「だからね……」
シェキナーがロンギヌス達のほうに向き直り、さっき口にした事をもう一度言おうとすると、ミストルティンが興奮した様子でロンギヌスに告げてきた。
「……凄い!ロンちゃんの出逢いの運勢がここ何日か急上昇してるみたい。これはもしかしたら、意中の人から何らかのアプローチが来るかもしれないよ」
「えっ!?マスターから……?」
あうっとロンギヌスは慌てて口を閉じたが、顔は真っ赤になっていた。
シェキナーがそれは聞き捨てならないと身を乗り出してきた。
「それはどの辺がそうなのかしら」
ロンギヌスの手のひらを覗き込んでくる。
ミストルティンがロンギヌスの手のひらを指でなぞり、詳しく説明するも、シェキナー達にはよく分からなかった。
ロンギヌスは凄いくすぐったそうにしている。
むぅと唸ったシェキナーは今度は自分の手のひらを差し出してきた。
「今度は私の手相を見て欲しいわ。私も恋愛運メインでお願いね」
ミストルティンはくすりと笑って頷くと、シェキナーの手をとった。
気を効かせたロンギヌスが、少しお尻をずらしてシェキナーに自分の椅子に座る余地を分けてあげた。
シェキナーは微笑みながら遠慮なくそこに腰をかけた。
二人の体がかなり密着する姿勢になったが、お互いに全く気にする様子はない。
二人は体をピタリと寄せあってミストルティンの手相占いに集中していた。
クラスメイト達はその光景を、何か珍しいものを見るような目で遠巻きに眺めていた。
それもそのはずで、この三人のキル姫達の本来の性格では、一般的には三人が三人とも孤立しやすい傾向が強くあるからだ。
人見知りの激しいロンギヌス。
物静かで臆病な性格のミストルティン。
孤高のプライドを持つシェキナー。
この他人との関わりを拒絶しがちの三人が、ここまで一緒にいて仲良くしている光景など、今まで誰も見た事がないと言ってもよいほどなのだ。
そして、この学園には何人もの同じキル姫達がいるのだが、やはりどのロンギヌスやシェキナーやミストルティンも一人孤独に過ごしている事のほうが多かった。
だが、変わっていると言われるのは、この三人と言うよりも、この学園で臨時教師を勤めているマスターに率いられているキル姫達が、皆とても変わっていると周りから噂されていたのだった。
しかし、噂と言っても悪いほうの噂ではなく、とても仲が良くて羨ましいと言ったような感じの噂である。
ミストルティンがシェキナーの手のひらをじっと見ていると、彼女の手相にもロンギヌスと同じような相が出ているのに気が付いた。
不思議に思ったミストルティンがそれを二人に告げようとした時に、この教室に入ってくる二人のキル姫が目に入った。
それはレーヴァテインとパラシュだった。
二人とも学園の制服は着ずにいつもの戦闘時の服を着ている。
レーヴァテインは服の横が大きく開いた涼しげな白い服で、パラシュは茶色のミリタリー風の服だ。
彼女達は教室内を見回して窓側の三人のほうに目を向けると、そこに向かって真っ直ぐに歩み寄って来た。
ミストルティンはレヴァの鋭い視線に射竦められて、少し怯えたような表情を見せたが、シェキナーとロンギヌスは二人で何やら額を寄せて、話をしている最中だったので、彼女のその様子に全く気づいていない。
そしてついに、そのレーヴァテインとパラシュがロンギヌス達の真後ろにまでやって来た。
彼女達は完全に気配を殺している。
それだけでも彼女達が、どれほどの腕前を持っているのか推測できる。
真剣な顔をしたレーヴァテインが、後ろからそうっとロンギヌス達の首すじに手を伸ばしてきた。
ミストルティンは目を見開いて息を吸い込むと、二人に警告を発しようとした。
だがその時、レーヴァテインの後ろにいるパラシュが笑顔で口元に指を立てているのが見えた。
しーと言うジェスチャーだ。
ミストルティンはパラシュに黙っていて欲しいと楽しげにお願いをされてしまい、とりあえずはこの成り行きを見守る事にした。
そのレーヴァテインは勢い良く、がばっとロンギヌスとシェキナーに抱き付いてきた。
彼女のふくよかな胸に二人の顔がむにゅうと直に押し付けられている。
突然の事でロンギヌスとシェキナーはレーヴァテインの腕と胸の間で慌てたように手足をばたつかせていた。
「はわわ……」
ロンギヌスは、いきなり現れた横乳の吸い付くような柔らかい感触を頬に感じながら、すぐに昔の記憶を呼び覚ました。
この胸の見えかたと感触……!
そうだ。いきなりこんな事をするのは、もうあの娘しかいない!
「レヴァ!?」
ロンギヌスは頬に密着している横乳に向かって叫んだ。
「あったりー」
レーヴァテインは楽しげにそう言うと、すぐに二人を解放してあげた。
ロンギヌスとシェキナーが後ろを振り向くと、いたずらっぽく笑ったレーヴァテインの顔があった。
ロンギヌスが立ち上がって嬉しそうに言った。
「レヴァ!帰って来てたの?」
「うん、ついさっきね」
レーヴァテインも嬉しそうにしている。
そして、ロンギヌスはレーヴァテインの後ろに目を向けてパラシュの姿を見つけた。
「あっ!パラシュも」
「やあ、ロンギヌス。元気そうだね」
パラシュも笑顔で答えた。
ロンギヌスは興奮した様子で帰って来た二人を見つめていた。
もう何から話せば良いのかと迷っている感じだ。
実は、このレーヴァテインとパラシュはロンギヌスとシェキナーの昔からの古い同僚だった。
彼女達はここ最近ずっと「フレンド貸出し」と言う制度で他のマスターについて遠征していて、長い事この街を留守にしていたのだった。
シェキナーが親しみを込めた口調でレーヴァテインに話しかけた。
「お帰りなさい。レヴァさん」
「ただいま、シェキナー。みんなは元気?」
シェキナーは微笑みながら答えた。
「ええ、うちの隊はみんな相変わらずよ」
「あはは、それなら良かった」
ロンギヌスがパラシュに向かって訊ねていた。
「そう言えば、何でレヴァと一緒なの?二人って、別の地域に派遣されてたんでしょ?」
パラシュは頷いた。
「うん。その通りだよ。レヴァは北で、僕は西の地域に行ってきた。僕のところの遠征がやっと終わって、馬車で長いこと揺られて、今日の昼前くらいにようやくこの街に辿り着いたんだ。それで僕が馬車を降りようとしたら、目の前の馬車から何とレヴァが降りてきたんだよ。話を聞いたら、レヴァもちょうど街に着いたところなんだって。でも、本当にあれにはビックリしたよ」
「そうね。凄い偶然。それでもう、こうなったらすぐにでも、二人でマスターやみんなの所に会いに行こうって事になったの」
レーヴァテインは楽しげに言った。長旅で疲れているだろうに、そんな気配は全く感じさせなかった。
パラシュがロンギヌスとシェキナーに旅先での話を始めていた。
ふと、レーヴァテインは何か取り残されたように、ずっとこちらを寂しげに見つめている少女に目を向けた。
ミストルティンだ。
彼女はとても所在なさそうにしている。
「ねえ、ロンギヌス。彼女はミストルティンだよね?そう言えば、あんた達あの娘とかなり仲が良さそうだったね。珍しい」
少し素っ気ない言い方でレーヴァテインはロンギヌスに訊ねた。
ミストルティンは何かおどおどしている。
ロンギヌスはいけないと慌ててミストルティンの元に行って、彼女に謝ってからレーヴァテイン達に紹介をし始めた。
「紹介が遅れてごめんね、ミスティ。彼女はミスティ、私達の隊の仲間よ。レヴァ達が遠征に行った直後に入ってきたの。それでいま私がとても仲良くしてもらっているお友達の一人なの」
それを聞いてレーヴァテインの目付きが一変した。
よそ者を見るような目から、目の前の者がどんな人物なのか興味が湧いたような目付きになっている。
レーヴァテインが歩み寄ってきた。
「そうなんだ。私はレヴァ。みんなからそう呼ばれている。よろしく、ミスティ」
普通のレーヴァテインからはあまり聞けないような、とても柔らかい口調だった。
「はっ、はい!」
ミストルティンはどもりながらも返事を返した。
パラシュも近づいてきた。
「僕はパラシュ。これからよろしくね、ミスティ」
パラシュが手を差し出した。
「はい!よろしくお願いします」
彼女達は握手を交わした。
ミストルティンは二人にとても優しくされて、何か涙ぐんでしまっていた。
しかし、レーヴァテインがその握手の手を放す前にミストルティンに訊ねてきた。
「でも、一つだけ質問」
レーヴァテインの声が何か真剣さを醸し出していたので、ミストルティンは少し緊張した。
「……は、はい」
レーヴァテインはしばらくミストルティンを見つめてから言った。
「あんたはうちのマスターの事はどう思ってる?」
ふぇぇ……!?
いきなりそんな事を訊ねられてミストルティンは混乱してしまっていた。
これはどう答えたら良いのだろう?
もちろんマスターの事は大好きだけど、それをはっきりと言ってしまうのが正解なのか、それともこの場はお茶を濁すような答えですましてしまうか、もしくは嘘でも否定してしまうか……。
ミストルティンがレーヴァテインにじっと見つめられて、困り果てていると、視界の端に親友のロンギヌスの姿が見えた。
彼女はミストルティンと目が合うと深く頷いてきた。
色々とお互いに秘密を打ち明けあっているロンギヌスがそう言うならばと、ミストルティンは息を大きく吸い込み、一大決心をして言った。
「……大好きですっ!」
レヴァはひゅーと口笛を吹いてにっと笑った。
「そうこなくちゃ。うちの隊の信条は昔からマスターラブだからね。あの人のためなら何でもしてやるって感じでさ。ねえ、パラシュ?」
パラシュは微笑みながら深く頷いた。
「うん。その通りだね。僕はマスターの指示ならいつでも、そしてどんな死地にでも飛び込めるよ。……だけどマスターはそんな指示は絶対にしないけどね。たとえ僕らが窮地に追い込まれてしまっても、どうにか策を練ってくれて、いつも何とかしてしまうからさ。僕らのマスターはホントに凄いよ」
ふと気が付いたようにシェキナーがレーヴァテイン達に訊ねた。
「そう言えば、貴女達はもうマスターに帰還のご挨拶はしたのかしら?」
レーヴァテインは残念そうに首を横に振った。
「いや、まだなの。職員室にはさっき行ったけどいなかったから。だから、とりあえず先にあんた達に会いに来たのよ」
その時、この教室にワイシャツとスラックスを着た教師っぽい男性が少し息をきらしながら入ってきた。
そして教室内を見回して、窓際にいる5人組を見つけると、相好を崩して歩み寄って来た。
「ああ、やっぱりここにいたか」
ロンギヌスがその男性にいち早く気が付いた。
「マスター!」
皆がそっちに目を向ける。
この教師っぽい格好をした男の人こそ、ロンギヌス達のマスターだった。
中肉中背で見た目も普通な男だが、自分に従うキル姫達を見る目はとても優しかった。
「職員室でレーヴァテインとパラシュの二人が俺に会いに来たって聞いてさ。でも俺が不在と分かるとどこかに行ってしまったと言われてな。それで二人がどこに行ったか、こちらから探そうと思ったんだが……。まあたぶん、ここだろうと思って一番に来たら、やっぱりそうだったな」
マスターは笑いながら皆の元に歩いて来たのだが、その行く手にレーヴァテインがすっと立ち塞がった。
「……ねえ、何で今日出迎えてくれなかったの?」
レーヴァテインは上目使いでマスターに質問をした。何となく口がとんがっている。
マスターは苦笑いをしながら答えた。
「無茶言うなよ、レヴァ。先方から連絡が来たのが今日の昼間だぞ。って言うか、たぶんお前達のほうが早かったのかもしれん」
「ふん」
レーヴァテインは拗ねたように横を向いた。
「……悪かったよ。とにかくお疲れ様」
マスターはレーヴァテインの頭に手を乗せた。
レーヴァテインは黙ってその頭に乗っている手をそのままの状態で握りしめて、すっとマスターのほうに身を寄せた。
マスターには見せないが、レーヴァテインのその顔はとても嬉しそうだった。
次にパラシュが近づいてきた。
「ただいま、マスター」
「おかえり、パラシュ。長旅お疲れさま。何も問題はなかったかい?」
「うん。とりあえずは何とかなったよ」
「そうか。まあ、お前なら特に心配はいらないのかもな」
パラシュは小さく首を横に振った。
「ううん。色々と大変だったよ。マスターの指示のほうが断然いいと思った事がもう何度もあったし。あとは……そうだね、やっぱり僕はマスターと離ればなれになるのは寂しいよ」
マスターは嬉しそうな表情を見せた。
「俺も寂しかったよ、パラシュ。久しぶりにお前の頭も撫でさせてくれないか?」
「うん!」
パラシュは笑顔を見せて近づこうとしたが、ピタッと立ち止まった。
「……あ、でもまだ旅から帰って着替えてもいないから少し匂うかもしれない」
パラシュは恥ずかしそうに、自分の服をくんくんと嗅いでいる。
マスターは笑って急かすように言い出した。
「パラシュ、大丈夫だよ。お前の匂いなら俺は何でも大歓迎さ」
「うー」
パラシュはおずおずと近付いた。
マスターはパラシュの頭に手を置いた。そして撫でながら少し引き寄せると鼻を近づけた。
「パラシュは何となく薔薇の香りがするよな」
「えへへ」
パラシュは幸せそうにしている。
ロンギヌスとシェキナーとミストルティンは、羨ましそうに、黙ってその光景を見守っていた。
三人とも、やっと帰って来たレヴァ達とマスターの、久し振りの再開を邪魔する訳にはいかないと思ったのは言うまでもない。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴り出した。
マスターは二人に一端教室を出ようと言い、そしてずっとこちらを見守ってくれていた三人に笑って手を振った。
「じゃあまたな、シェキ、ロンギ、ミスティ」
「はいっ!」
三人は声を揃えて返事を返した。
マスターはレーヴァテインとパラシュを従えて教室を出ていった。
ただ、レーヴァテインだけはずっと同じ格好で、マスターの手を頭の上で掴んだ状態で歩いていたのだが。
教室内の生徒達は呆気にとられて彼らを見送っていた。
あんなに人懐っこいレーヴァテインやパラシュはあまり見掛けないからだ。
これでまた、あの臨時教師に従うキル姫達の噂が増えるのは間違いなかった。
この日の放課後、レーヴァテインとパラシュはロンギヌス達と落ち合って一緒に寮に帰っていった。
そして、色々と積もる話しもあるので今夜は寮の大部屋を借りて、皆で布団を敷いて寝ることにした。
このお泊まり会と言う名の親睦会に集まったのは、同じ隊の仲間であるレーヴァテイン、パラシュ、シェキナー、ロンギヌス、ミストルティン、ケーリュケイオン、カドケウスの七人だ。
みんなでわいわいと楽しく夕食を食べて、皆でお風呂に入る事になった。
そして揃って大浴場に向かおうとすると、カドケウスが突然言い出した。
「あっ!そうだ、お風呂にアヒルのおもちゃ持っていこうと思ってたんだ。忘れてた。先に行ってて、後から行くから」
カドケウスはそう言い残してどこかに駆けていった。
その時カドケウスは姉と視線を一瞬合わせていた。
ケーリュケイオンはすぐにピンときて口元に笑みを浮かべたが、とりあえずは何も言わずに黙っていた。
ファンキル学園の寮の離れに彼女らが目指す大浴場はあった。
この大浴場は、申請すれば貸しきりに出来るので、親睦会等ではよく使われる施設である。
大浴場の前でケーリュケイオンが皆にお願いをしてきた。
「少しだけあの娘の事を待って貰えないかしら?多分その内に来ると思うのだけど」
皆は快諾してくれた。
だが、カドケウスはなかなか現れない。皆で20分ほど立ち話をしながら彼女を待っていた。
あの人は今夜は寮の宿直室にいるはずだ。
ケーリュケイオンは密かに、これ位時間を稼げば良いだろうと思い、皆に向かって言った。
「……しょうがないわね。もう先に入りましょう」
「いいの?」
とロンギヌス。
「ええ、もうそろそろいいでしょう」
「?」
その答えに、ロンギヌスは不思議そうな顔をしている。
大浴場の暖簾をくぐると、そこは広く明るい脱衣場になっていて、何段もある木製の棚に籐籠がいくつも並んでいた。
そこで各自が思い思いに服を脱いでいく。
やはり、レーヴァテインが一番に裸になって浴室に入っていった。タオルは肩にかけて、まるで肌を隠そうともせずにとても堂々とした態度だ。
次がパラシュとケーリュケイオンで、彼女達は一応形だけだがタオルで胸元は隠していた。
そしてシェキナーは片腕で大きな胸を抑え、タオルは手に持っているだけの姿だった。
最後に残った二人は同じようにのろのろと服を脱ぎ、タオルでなるべく肌を隠しながら下着を脱いでいた。
そして最後にはきっちりとタオルを裸の体に巻き付けてから浴室に入っていった。
この風呂は大浴場と呼ばれるだけはあり、浴室の中央に10人位は入れる大きさの湯舟があった。その湯舟は色柄のタイルが綺麗に貼られていて、とてもモダンな感じがする。
それに、浴室の壁の一面が大きなガラス窓になっていて、明る目な浴室の風景と合わさって全体的にとても解放感があった。
皆がさっそく洗い場に行って髪や体を洗い始めたが、ケーリュケイオンだけは少し暑いわねと言って、浴室の一番端のガラス窓を少しだけ開けてから洗い場に向かっていた。
全員が湯舟につかる頃になって、やっとカドケウスが裸で元気良く浴室に飛び込んできた。
だけど、彼女はわざわざ取りに行ったはずのアヒルのおもちゃは持っていない。
少しだけ楽しみにしていたロンギヌスが疑問に思って訊ねた。
「ねえ、カドケウスちゃん、アヒルさんは?」
「えっ?あっ、何か探しても見つからなかったから、諦めちゃった」
「ふーん」
ロンギヌスは少し残念そうにしている。
レーヴァテインがそうっと、そんなロンギヌスの背後に忍び寄ってきた。そしてがばっと抱き付いてロンギヌスの胸を揉んだ。
「ひゃうっ」
ロンギヌスは変な声をあげてしまった。
レーヴァテインは胸を触りながらロンギヌスに言った。
「あんた、見なかった間に胸が何か大きくなってない?」
「もうっ、レヴァやめてよねー」
ロンギヌスは抵抗するもレーヴァテインの手を振りほどけない。
その内に、胸を隠そうとするその手を、逆にレーヴァテインに捕まれてしまった。
「あうう~……」
そこにパラシュも湯につかったまま寄ってきた。
「うん。実は僕も少し気になってたんだ」
パラシュはあらわになったロンギヌスの胸をじっと見つめている。
「もう、パラシュまで……」
ロンギヌスは隠そうとするのをやめて諦めの心境で言った。
ロンギヌスのそばにいたミストルティンはおろおろしながら見守っている。
その時、カドケウスが笑いながら言い出した。
「ロンギは頑張って、ちゃんとバストアップ体操しているもんね」
レーヴァテインとパラシュはほんと?とロンギヌスを見つめた。
ロンギヌスは急いで俯いて目をそらした。だが彼女の耳たぶは真っ赤になっていた。
更にケーリュケイオンが笑顔でそれに付け足してきた。
「しかもその体操のお師匠様はあのシェキナーお姉様よ」
な、なんですって~!?
その言葉に皆がシェキナーのほうに目を向ける。
と言うか、彼女の豊満で形の良い胸のほうに。
その体操とやらは、実際にかなり御利益がありそうだと感じられた。
シェキナーはと言うと、我関せずと言った風にのんびりと湯を肩にかけてくつろいでいる。
その体操仲間のミストルティンも自分の控え目な胸を見てから、シェキナーのあの大きな胸を羨ましそうにそっと遠くから見つめていた。
ロンギヌスを囲んでそのバストアップ体操の事で話が盛り上がっていた。特にパラシュが、そのやり方を真剣に聞きたがっている。
ケーリュケイオンは微笑みながら皆の話を聞き、他の人にばれないように、始めに開けたガラス窓のほうをそっと窺った。
窓の隙間は少しだけ前より広がっている気がする。
ケーリュケイオンは笑って、もう少しだけ、窓の隙間の奥の人にサービスをしてあげる事にした。
ケーリュケイオンは皆に声をかけた。
「待って、みんな。胸が大きいだけではマスターは落とせないわよ。必要なのは、エロ可愛い感じよ。これは私が長年のマスター研究で見いだした結論。どう?一度みんなでやってみない?私がジャッジしてあげるわ」
「どうすればいいの?」
レーヴァテインが一番にのって来た。
ケーリュケイオンは頬に指を当てて考えながら言った。
「そうね、私がマスターだと思ってエロ可愛いポーズをとってみて。たぶん私はマスターの好みは分かると思うから」
とりあえず何か面白そうだから一度皆でやってみようと言うことになった。
審査をする側のケーリュケイオンは湯から立ち上がるとそのまま窓際に移動していった。
もちろん少し隙間が空いている窓のそばだ。
そして湯気で曇ったガラス窓にお湯をかけて中の様子と自分の姿が、遠くからでも光で反射して見えるようにした。
そしてケーリュケイオンは、窓ガラスに映る自分の裸をじっと見つめてから、腰を屈めてポーズを決めて可愛く投げキッスをして見せた。
審査員の彼女がまず始めに、こうやるんだと自らお手本を示したのだった。
仲間からおおっと拍手が送られる。
そして大浴場での、マスター悩殺ポージング大会が始まったのだった。
まずはレーヴァテインが前に出てきた。1番手である。
彼女は髪をかきあげて腰に手をやり少しお尻をつき出すような姿勢をとって微笑んだ。
凄く格好良く色っぽい感じである。
次にシェキナーが出てきた。二番手だ。
彼女は最大の武器である大きな胸を腕で挟み前屈みになってウインクをした。
かなり色っぽいお姉様な感じだ。
パラシュが前に出た。三番手。
彼女は後ろを向いて、形の良いお尻を見せながら、手を体に巻き付けて振り向いて、はにかんで見せた。
胸からお尻にかけてのラインが綺麗で、何かとても健康的に色っぽい感じだ。
四番手のカドケウスは、自分の姿がガラス窓に映らないほど前に出て、窓際の床に寝そべる姿勢をとった。そして手の先を丸めての服従のポーズで窓の隙間のほうにニコッと笑いかけた。……これはもう反則で審査対象外であろう。
ロンギヌスの番になった。五番手。
みんなタオルなしでのポーズをとっているので、今更自分だけが使うわけにはいかない。
ロンギヌスは考えた末に、恥ずかしそうにタオルをとり、その場で四つん這いになると、背を反らして潤んだ瞳で前を見つめた。
ただそれだけなのだが、清純そうな感じが醸し出されてて凄くいい。
最後にミストルティンの番になった。六番手である。
彼女もタオルで前を隠していたが、思いきってそれを床に落とすと、両手を頭に持っていき手でウサギの耳を作った。そして真っ赤な顔ではにかみながら、手をぴこぴこ動かした。
めっちゃエロ可愛い感じだ。
全員がポージングをやり終えてケーリュケイオンの出す結果を待っていた。
ケーリュケイオンが眉をしかめて悩みながらガラス窓の前を歩き回っている。
そしてケーリュケイオンは大きめの声で言いだした。
「さて、マスターが一番好きそうなポーズを決めたのは誰にしようかしら……」
その時、窓の隙間からケーリュケイオンにだけ聞こえるような小さい声が、ぼそりと呟いてきた。
「……六番かな……」
ケーリュケイオンはミストルティンを指差した。
「……決めたわ、ミスティよ!」
わっと皆がミストルティンを祝福する。
ミストルティンは恥ずかしそうにしていたが、とても嬉しそうだった。
あんな感じが良いのねと皆でミストルティンの真似をし出していた。
そしてケーリュケイオンはこれでおしまいと言った感じで窓ガラスを閉め始めた。
そして彼女は気を付けて帰ってねと、外に向かって呟くのだった。
風呂からあがり大部屋に皆で戻ってきて、布団を敷き並べ始めた。
でも、何か楽しくて全く眠気が訪れそうもない。
なので各自、枕を胸に抱いて車座になって座り、色々と語る事にした。
布団と枕と、色とりどりの皆のパジャマとネグリジェ姿がテンションを高めてくる。
パジャマ派はロンギヌス、パラシュ、カドケウスで、ネグリジェ派はシェキナー、ミストルティン、ケーリュケイオンであった。その他としてレーヴァテインだけがTシャツにショーパン姿だ。
話題は尽きなかったが、その内に自分達の着るコスチュームの話になった。
古参の三人のレーヴァテイン、パラシュ、ロンギヌスが戦闘時に着るコスチュームは何種類もあり、特に皆から羨ましがられていた。
シェキナーはぼやくように言った。
「私もこの業界はけっこう長いのにまだたった2種類だけよ」
ミストルティンも小さな声で呟いた。
「私も、二着だけです。……私服っぽいのが……」
ケーリュケイオンは隣のカドケウスをちらりと見て言った。
「私もそうよ。カドケウスは何故か3種類もあるのに。でもシェキナーお姉様のもう一着は可愛い水着じゃない?」
「それはそうだけど……でもそれを言ったら、ロンギヌスさんやレヴァさんも、そういった水着は持っているのよ」
レーヴァテインとロンギヌスは黙って目をそらしている。
衣装持ちの自分達には、この話題は何となく肩身が狭い。
気まずい沈黙の中でカドケウスが言い出した。
「でも、みんなが着ていた衣装で、一番何が着たいって言われたら、やっぱりアレだよね~。ねえ?お姉ちゃん」
ケーリュケイオンも頷いた。
「そうね、アレに優るものはないわね」
皆はそれは一体何だろうと思ったが、二人がじっとパラシュを見ているのに気付くと、すぐに理解した。
そう、花嫁衣装だ。
この中ではパラシュしか持っていないプレミア的な衣装である。
パラシュは皆の視線を一身に受け、照れたように笑って言った。
「ああ、あれかい?純白のウエディングドレス。あれは凄く綺麗だよね。……そう言えば、マスターからあの衣装を贈られたときはホント驚いたよ。そのドレスに着替えている最中、僕はこのままマスターにお持ち帰りされるんだなって思って、ずっとドキドキしてた」
ロンギヌスが顔を赤らめて言った。
「お持ち帰りなんて……」
ミストルティンもその光景を想像して呟く。
「……されてみたいです」
皆が次の花嫁衣装は自分の番なはずだと言い張っていた。
そしてこれは一度、マスターに直訴するべきだと言う結論に至った。
それを聞いたカドケウスがすっと立ち上がった。
「しょうがないなぁ。ちょっと待ってて」
そう言い残してスタタっと駆け出して、部屋の外へ出ていった。どこへ行ったのだろう。
出ていったカドケウスを待つあいだ、残った皆でマスターのここが好き選手権を開催していた。
マスターの良いところを言い合う大会だ。
だが、さすがマスターラブを自称する強者が集まっているので、なかなか勝負がつかない。
息をきらしての激論の途中で部屋の入口の扉が開いた。
皆の視線がそこに集まる。
そこにはなんと、カドケウスに手を引かれた自分達のマスターの姿が見えるではないか。
さっきからずっとマスターの事を好きだ好きだと話していたので、そのマスターの姿を見ただけで、皆の胸がキュンと締め付けられたように感じてしまった。
皆ぽーっとした目で、部屋に入ってきたマスターを見つめていたが、レーヴァテインがいち早く立ち直って、マスターに向かって素早く駆け寄った。
戦闘時並みの速度である。
そして、マスターにがばっと抱き付いた。
「マスターだぁ」
もういつもの口調ではなくなっている。
そして、とろけるような笑顔だった。
パラシュも負けじと立ち上がると一気に駆け出した。
彼女は昼間のスキンシップだけでは物足りないとずっと思っていたのだ。
「たー!」
そしてレーヴァテインとは逆のほうからマスターに抱き付いた。
パラシュはマスターの胸に顔を埋めて幸せそうに笑っている。
マスターはよろけながらも、その二人の突進に耐えていた。
「なんだ?どうした?お前たち。いつもと違くないか」
マスターはテンションの高い彼女らにたじろぐようにして言った。
ケーリュケイオンがいつの間にかマスターの元へとやって来ていた。
そして、そばにいたカドケウスと目を合わせると、布団のほうにちらりと目を向けた。
カドケウスは目をきらきらと輝かせて頷いた。
そして、二人でぐいぐい手を引いてマスターを布団がある地点まで導いていった。
マスターが布団の中心部に立ったのを見越して、今度はカドケウスがマスターの足に抱き付いてきた。
マスターの両足を抱え込むようにしてきたので、バランスを取りづらくてしょうがない。
「おい、こら!カドケ!やめぃ」
両脇にレーヴァテインとパラシュ、足元にカドケウスがしがみついていて、何とかギリギリで立っている状態だった。
「わっ!……ちょ、あぶ!危ないって」
ケーリュケイオンがマスターの正面に歩いて来て、立ち止まるとニコリと静かに笑った。
マスターは何となく察しがついて冷や汗をかき始めた。
「……まて!ケーリュ。押すなよ!いいか?絶対に押すなよ!?」
微笑んだケーリュケイオンは黙って頷くと、マスターの胸を軽くトンと押した。
マスターは踏ん張れずにそのままゆっくりと布団に倒れ込んだ。
柔らかい布団のお陰で衝撃はあまりない。
そして、ケーリュケイオンは呆然とこちらを眺めている残った三人に向かって言った。
「今がチャンスよ。マスター成分を補給したいならこの時を逃してはならないわ!」
三人の間に動揺が走る。
そして、ロンギヌスとミストルティンはお互い顔を見合わせると覚悟を決めた顔で頷きあった。
「行きます!」
「はいっ!」
二人は布団の上で揉み合っているマスター達の元へと駆けていった。
一人取り残されたシェキナーはそれを唖然とした表情で見送っていたが、もうやけになって、自分の柄ではないがそれに参加することにした。
自分だって本当はマスターに触れたいのだ。
みんなが布団の上で揉みくちゃになっていて、もう誰がどこで、これが誰の手足で、誰がどこを触っているのか分からないような状態になっていた。
マスターは必死にもがいていた。
「わー!おい、待てって、落ち着けっての。ひょえっ!おま……どこを触ってるんだ!この手は誰……、この目の前の尻は誰んだ~?」
マスターはだんだん本気になってきた。
「お前らなぁ。いい加減にしないと……」
束縛から次第に逃れ始めている。
キル姫達に焦りの色が見え始めた。このままでは逃げられてしまう。
烏合の衆という言葉がキル姫達の頭によぎった。
そうだ、今は皆が勝手に動いているから駄目なんだ。意思を統一しないとこの強敵(マスター)には勝てない……!
「「ケーリュケイオン(ちゃん)指示を!!」」
自分達をちょうど見おろす位置にいたケーリュケイオンが目に入り、皆が声を合わせて彼女をリーダーに指名した。
「分かったわ」
彼女は即座に請け負った。
そして、ケーリュケイオンはこの混沌とした状態を俯瞰した視点で見つめた。
「ではまず、レヴァさん。貴方は右腕を」
「分かった!」
レーヴァテインがマスターの右腕だけに集中してしがみつく。
「なあっ?」
自由だった右腕をがっちり抑えられてマスターは、また身動きが取りづらくなってしまった。
「ロンギヌスさん。貴方は左足を」
「はいっ!」
ロンギヌスは足の裏でカドケウスを引き剥がそうとしていたマスターの左足にぎゅっと抱き付いた。体全体を使ってその動きを封じる。
「むむっ?」
また一つ自由が封じられてマスターは唸った。
「カドケウスはそのまま右足をお願い」
「ほいほいっと♪」
カドケウスはそのまま抱き付いた状態で、蹴られた仕返しにマスターの太ももに噛みつこうとしている。
「おい、こら!ちょ、噛むなって」
暴れるマスターの胴体を見てケーリュケイオンは次の指示を出した。
「ミスティさん、その上に乗っちゃって」
ふぇぇ?
ミストルティンは躊躇しながらもマスターの腹の上にお尻を乗っけた。
「あの、ごめんなさい。マスター」
軽いので苦しくはないが、ほんとに身動き出来なくなってきた。
「パラシュさんはそのままその左腕を抑えてくれてれば良いわ」
「分かった」
パラシュは言われる前から手と、それに足までも使ってマスターの左腕を完璧に抑え込んでいた。
もうこれは自分のものだと言った感じに。
マスターは動かせる指先で彼女に反撃していたが、くすぐったそうするだけで効果は少なそうだった。
「それじゃあ、シェキナーお姉様。貴方はマスターの首の動きを封じて下さい」
シェキナーは驚いたような目でケーリュケイオンを見た。
「えっ?……でも、どうすれば良いのかしら……」
「簡単よ。マスターの頭のそばで正座して、そのまま体をずらして、太ももで頭を挟み込めば大丈夫」
シェキナーはその通りにしてみた。
だが、その格好はマスターとまともに顔が向き合ってしまい何かとても恥ずかしかった。
マスターはシェキナーを見上げて苦笑しながら言った。
「シェキナーがここまでやるとは……驚いたよ」
シェキナーは顔を赤らめて答えた。
「申し訳ありません。何かテンションが上がってしまいまして……。でもとても楽しいですよ」
マスターは爽やかに笑った。
キル姫達各自が、マスターに触れたり触れられたり、スリスリしたりくんかくんかしたりして、濃密なマスターとの触れ合いを、心行くまで堪能していた。
たぶんもう、明日のみんなのお肌はつるっつるになっているだろう。
ケーリュケイオンは、完璧に身動きを封じたマスターの体を見て、満足げに頷いた。
「さて、これでほぼ完成ね。それでは……と、この指揮をした対価として、マスターの残った部分を、私がありがたく抑えさせて貰う事にするわ」
皆はふと、あとマスターのどの部位が残っていたっけと考えた。
右腕、左腕、右足、左足、胴体に首……もうどこも残ってなさそうだが。
ケーリュケイオンはびしりとその部位を指差すと、高らかに宣言した。
「その場所とは勿論……、マスターのそのもっこりした股間よっ!!」
そう言って彼女は何の躊躇もなく、その場所に手を伸ばしてきた。
「「そ、それは、駄目~~!!」」
焦ったキル姫6人とマスターは声を合わせて、力一杯そう叫ぶのだった。
{終わり}
……この後、どうなったのでしょう。
秘密にされているので誰も知りません。
気になるかたは各自で妄想お願いします(笑)。
この後書きまで辿り着いた方、ほんとお疲れ様でした。
そして、読みきっていただきありがとうございます。
次も何か書きましたら、よろしくお願いします。
では、また。