人間不信も異世界から来るそうですよ?   作:茶々猫

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 だいぶ間が開いてしまってすいません。今回は短いですが読んでもらえれば幸いです。 では☆
 


黒ウサギ 「…ああもう、好きにしてください」

 

 あれから契約書類(ギアスロール)が出た途端、その場から這々の体で逃げ出したガルドは一先ず放っておき、後から箱庭入りした十六夜と彼を追って行った黒ウサギに漸く合流して、世間話でもする様にギフトゲームの件を報告する。

 その時の黒ウサギの反応はこうだ。

 

 「な、なんであの短時間に【フォレス・ガロ】のリーダーと接触して、剰え喧嘩を売る状況になったのですか!?しかもゲームの日取りは明日!?それも敵のテリトリー内で戦うなんて!準備している時間もお金もありませんよ!!一体どういう心算があっての事です!聞いているのですか四人とも!!」

 十六夜を追った時の様に髪や尻尾を桜色へと変色こそさせていないが、髪はワナワナと逆立ち一目で「私、怒ってます!」とわかるような怒り方をしている。それを見て少し子供っぽいなとか思ってない。

 だが、そんな黒ウサギの叫びも虚しく広場に響くだけで飛鳥達は全く意に介していなかった。…それどころか。

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

「黙らっしゃい!!!」

 

 三人で口裏を合わせて黒ウサギを煽っている。この手でよく弄られるな、黒ウサギは。それに合流した時の彼女は別れた時と比べて幾らか雰囲気が丸くなっていた。十六夜を追ってから向こうで色々(・・)あったようだし、その時彼に何か言われでもしたかな。

 「別にいいじゃねえか。見境無く選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この契約書類を見てください」

 やっぱり、随分と十六夜に対して甘く感じる。本人的には今のコミュニティから出て行かれないよう必死なんだろうけど。

 

 契約書類は『主催者権限』を持たない者達が主催者となってゲームを開催するために必要なギフトだ。

 そこにはゲーム内容、ルール、チップ、賞品が書かれており主催者のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。

 そして、十六夜が代表してあの時降って湧いた紙切れのそれを読み上げる。今回のゲームの賞品の内容はこうだ。

 「参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する、か。──まあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 因みに俺達のチップは罪を黙認する、というものだ。それは今回に限ったことではなく、これ以降もずっと口を閉ざし続けるという意味だ。

 

 恐らく、自分が全く歯が立たなかったと逃げ出したガルドはその多くの経験から話し合いの場を、わざと設けさせず公平な審判である黒ウサギが来る前に逃げ出したのだろう。自分の狩場という幾らか有利な条件だけを提示して。契約は絶対遵守。逃げることが叶わない奴なりの悪足掻きか。

 「時間さえかければ彼らの罪は暴かれます。だって肝心の子供たちは.....その」

 黒ウサギが言い淀む。確かに攫われ捕らえられていた子供達はもういない。だが問題はそこではない。

 「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの。 それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」

 「飛鳥の言う通りだ黒ウサギ。特にお前達のコミュニティは狙われる要素が多過ぎる(・・・・・・・・・・・)。なら後顧の憂いを絶っておいても損はないだろ?」

 その通り、ガルド一味のやり口は大抵が誘拐や弱みを集めて脅す姑息な行為ばかり。だが、人数だけは大型コミュニティに食い込む【ノーネーム】には、百人を超える未だ幼くゲームに参加できない子供達が山程いる。そんな彼ら一人一人を守るのは非効率的だ。だからこそ奴を明日、叩き潰さなければならない。

 どうせやるなら早い方がいいしな。

 「ま、まあ……逃がせば厄介かもしれませんけれど」

 「僕もガルドを逃がしたくないと思ってる。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 ジン君も同調し、黒ウサギは諦めたように頷いた。

 「はぁ....仕方がない人達です。まあいいのデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。【フォレス・ガロ】程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」

 ……何言ってるんだ?黒ウサギは。やっぱり彼には少し甘くなった気がする。惚れたか?

 自分が参加するわけでもないのに、その露出度の高い服で胸を強調……張る彼女は得意げにふんすっ、と鼻息まで荒くなる。だが言われた当の本人は怪訝な顔で否定した。

 「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

 「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 飛鳥もそれに同意して渦中の外にいた十六夜の参加を拒否した。と我ながら何いってんだと思うが、彼女達には彼女達なりの矜恃というものがある。だからどうせ、これ以上何か言っても黒ウサギは二人に却下されるだけである。

 「だ、駄目ですよ!皆さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」

 言葉の意味が浸透するまで時間が掛かっていた彼女は、慌てて両者の間に割り込むことで説得しようとするが、それすら十六夜に止められる。

 「いいか?この喧嘩は、こいつらが売って、奴が買った。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

 「あら、わかってるじゃない」

 そして何故か意気投合する彼ら、十六夜と飛鳥の二人に言いたい。あの場で俺も喧嘩を売ったがそんな下手なプライドは持ち合わせていない。一緒にするな。

 「...ああもう、好きにしてください」

 と黒ウサギは今日で問題児達に散々振り回されて疲れてるのか、その場で脱力して諦めていた。そんな彼女に心の中で合掌することしか出来なかった俺は悪くないと思う。

 

 

 「と、…そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎するために素敵なお店を予約して、色々とセッティングしていたのですけれども...不慮の事故続きで、今日はお流れになってしまいました。また後日、きちんと歓迎を──」

 「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」

 飛鳥から言われた聞き捨てならない内容に黒ウサギは驚きながらジン君を見る。すると彼の申し訳なさそうな顔を見て何かを悟ったようだった。

 

 「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが……黒ウサギ達も必死だったのです」

 「もういいわ。私は組織の水準なんてどうでもよかったもの。耀はどう?」

 飛鳥の言う通り、俺達四人は誰一人騙されたことに関して怒ってはいない。寧ろ感謝していると言ってもいい。確かに元の世界より厳しく危険が多いだろうが俺達の様な特殊な力を持つ者達にとっては周りと違うというだけで孤独感を感じるものだ。

 だから、そんな退屈で理不尽な世界から救い上げてくれた彼女の存在は、感謝してもしきれない。俺を含め他の三人も絶対に口には出さないだろうが。

 「私も怒ってない。そもそもコミュニティがどうの、というのは別にどうでも……あ、けど」

 耀も案の定否定していたが、突然何かを思い出した様子で顔を上げる。

 「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕らに出来ることなら最低限の用意はさせてもらいます」

 彼女の様子から、色々と吹っ切れたのかジンがまるで店員が不手際を謝罪してお詫びを客に尋ねる様な、ていうかまんまな対応に少し慌てて目の前で手を振る耀。年下に畏まられて気恥ずかしくなったか?

 「そ、そんな大それたものじゃないよ。ただ私は……毎日三食お風呂付きの寝床があればいいな、と思っただけだから」

 それを聞いたジンの表情が固まり、その理由を察した耀が慌てて取り消そうとしていたがここで何やらウズウズとした黒ウサギが、彼女よりも先に嬉々とした顔で言った。

 

 「それなら大丈夫です!十六夜さんがこんな大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから!これで水を買う必要もなくなりますし、水路を復活させることもできます♪」

 「十六夜、世界の果てはどうだった?」

 水樹の苗を掲げて喜び、頰ずりまで始めた黒ウサギとふぅと安心した様子の飛鳥達を横目に十六夜に頼んでおいた果てでの話を聞くことにする。

 「ああ、凄かったぜ」

 「ふーん、やっぱり俺も行きたかったなぁ」

 ニヤッと不敵に笑う十六夜の心の揺れを感じ取り、それがどれ程のものか知ることができる。この大陸とも言える巨大な浮島一つが惑星級の巨大さを誇り、その周りの蒼穹へと流れ落ちる大瀑布はさぞ絶景だったろう。こういうのは人伝に聞くよりも一度見た方がいいと言うが、俺にはこれで十分だ。

 「今度連れてってやるよ。それと苗を持ってた自称蛇神の蜥蜴もいたから退屈しないね」

 「神様までいるのかよ」

 「自称だけどな」

 

 そう言って笑いあう俺達が話し込んでいた間に、ジンと別れて案内役に黒ウサギと【サウザンドアイズ】と呼ばれるコミュニティに、恩恵を鑑定をしに行くことが決まっていた。

 「ギフトゲームが明日なら先に【サウザンドアイズ】に行って皆さんのギフト鑑定をしなければなりません」

 「【千の眼(サウザンドアイズ)】?それがコミュニティの名前か?」

 十六夜が尋ねれば待ってましたとばかりに黒ウサギは飛び跳ねながら説明する。

 「YES。【サウザンドアイズ】は特殊な『瞳』のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 「ギフト鑑定というのは?」

 「もちろん、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することデス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

 黒ウサギはそう言うが、他の三人はともかく、俺は自分の『力』を理解してるからあんまり行く意味ないんだよな。だけど彼女が頼りにする存在には会っておいて損はないだろう。色々知ってそうだし。

 「じゃあ、早く行こうぜ。あ、ジンは水路とかお風呂の掃除しといてくれ。耀も飛鳥も風呂に入りたかったみたいだし、黒ウサギが言うに水樹の苗があれば水には困らないだろうから」

 「わかりました。では皆さんお気をつけて」

 

 

 あ、余談だけど『箱庭の貴族』である月の兎達、つまり黒ウサギの前で規則を破る様なことをすれば爆発四散するらしい。…ナニソレコワイ。

 

 

 

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