「・・、起き・さい。八咫、起きな・・」
ゆさゆさと身体を揺すられる。
うーん…、誰だよ?まだ身体が睡眠を欲しているんだ。寝かせてくれ。
「はあ・・・。起きませんか。そうですね・・・。この状況は試すのに、ちょどういいですね。では、『我が式、八咫に命じます。すぐに起きなさい』」
「うお!?」
自分の意思とは関係なく身体が起き上がる。
いや、そんなことより真は今何ていった!?
「おい、今『式』っていったか?」
「?いいましたが?」
まるで、それが何か?っと言う感じでこちらを見ている真。
「はあ!?俺が何時、何処で、お前の式になった!しかも、俺はお前にそんな術式をかけられた覚えがないぞ!」
あの爺の記憶では、『式』にするには一定の間自身の霊力を送る必要がある。真が霊力を送ってくる事など無かったし、そんなことをされる隙も見せなかったはずだ
「だって、先ほどかけましたから」
「なっ!?」
さっきと言うと俺が寝ている間か!?滅茶苦茶、隙を見せていた。
「まあ、諦めてください。だいたい、あてのない旅など自殺するようなものです。それに、八咫は自分の力をまだ上手く制御できないでしょう?ですから、私が行くべき場所を決めながら八咫の能力を上手く使えるよう指導するために『式』にしました。何か問題でもありますか?」
「はあ・・・。確かにそれは必要だが・・・。けど、それなら先に言ってくれよ」
「いったら拒否するでしょ?」
するな。何で分かったんだこいつ?
「顔に書いていますからね。ほら、ここの主人がご飯を作ってくれましたから行きますよ」
こうして、俺は真の式にされたのだった。いや、本当に迂闊だったわ・・・。
「「御馳走様でした」」
「はい、お粗末様でした」
幾らか料金を払い朝まで泊めてもらうことにする。何処で金を稼いだか?・・・都の貴族から頂いた。だって、使わない金などただの金属の塊でしかない。
そういうわけで、路銀は意外とある。
そして、真は身体を清めるといって俺に見張りを頼んで身を清めている。
ついでだから、俺も井戸の水を頭からかぶりさっぱりした。
そして、再び寝ようとしたのだが・・・
「なあ?」
「はい。何ですか?」
「何でまた俺の布団に入ろうとしているんだ?そっちにもう一個だしてあるだろ?」
何故かまた俺と寝ようとしている真を止める。
「はあ・・・。解っていませんね。今私たちは兄妹としてここに泊まっているんですよ?なら、兄妹が一緒に寝るのは当たり前です」
当たり前じゃないと思うのだが・・・。
「それに、式が落ちるといけませんし」 ぼそっ
「聞こえたからな?」
やっぱりな。はあ、何をそんなに怖がっているんだか・・・。
「なあ、真」
「はい、何ですか?」
真にしっかりと目線を合わせる。
「別に、お前が自分から離れない限り俺はいなくならないぞ?俺はお前を置いて行ったりしないから。だから、安心しろ」
「ッ!?」
真には悪いが先程、少しだけ能力で心を写した。
真の心は、置いて行かれないか、独りぼっちにならないかなどの不安と恐怖が大部分を占めていた。
やっぱり、人間は脆い。こんなことを胸にため込んで一人で苦しむのだから。
「・・・やっぱり、八咫の能力はずるいですね・・・」
「ま、妖怪だからな?だから、一緒に寝なくても大丈夫だ・・・」
「それは、だめです」
「なぜ!?」
言葉の途中で、駄目といわれた。結局、今夜は二人で一緒の布団で寝ることになったのだった。
だが、まあ、真が安心して眠れるならいいか。
そんなことを考えながら俺は再び眠りについたのだった。