東方忘鏡録   作:雨の日の河童

22 / 29
邪鬼は吠え、少女は詠う

風の様に鬼の元から村娘を救い出し鬼と対峙する。奴は少しばかり驚いた顔をしていたが、こちらを見て心底楽しそうに嗤う。

 

「何だ?これまたずいぶんとかっこいい登場じゃねぇかァ・・・」

 

「・・・」

 

今、真が三体の敵を引き付けてくれている。

素早く相手を写し、能力を真似る。

 

なるほど、『弾く程度の能力』か。最悪だな・・・。

 

顔に出ないようにしながら心の中で悪態をついてしまう。

 

俺が今使える最大の術はあくまで防御や足止め、幻術しかまともに使えない。こいつには、妖力弾や符術は効かず直接攻撃など以外は有効打にならないみたいだな。

 

「ちょうどいい。実は、俺はなぁ?かなりむしゃくしゃしてたんだよォ。兄貴がよくわからない小僧に倒されちまってなぁ?せっかく、人間共との殺し合いがむだになっちまってよォ」

 

「それで俺と殺しあいたいと?」

 

「よくわかってんじゃねぇかァ!!」

 

鉄槌の様な拳をこちらの顔面に向って振り下ろしてくる。

 

(速いッ!だがこれなら!!)

 

拳の下を潜り抜け心臓めがけて奴自身と同じ威力の拳を叩き込む。

 

だが、

 

「ああん?なんだ意外といい拳してんじゃねぇかよォ。これなら、楽しめそうだ、なァ!!」

「ごひゅ!?」

 

確かに入れた拳は、奴の心臓にまで威力が届かず効き目が薄い。

 

「げほ、げほ」

 

野郎・・・。今ので、内臓が逝かれたかもな・・・。

 

素の状態なら即死だった。

今は辛うじて動けるが何時までも戦えないだろう。短期戦に持ち込む。

 

「はっ!これぐらいかよ?たいしたことねぇな、それでも鬼か?」

「ぎゃははは!!よく言った!なら、もう少し威力上げるゼェ?」

 

挑発は成功。

なら、次にやることは一つ。

 

「おらおらおらおらおらァ!!どうした?避けてばかりでこの腰抜けがァ!」

「っく」

 

先程より速くそして鋭くなった拳を避け続ける。

足は地面に触れさせてとにかくかわす。

 

「ああ、しゃらくせェ!!おら!」

「なっ!?」

 

今まで拳だけだった攻撃が足による攻撃に変わる。

そのせいで、身体のバランスが崩れ地面に座り込んでしまう。

 

「くそ!!」

「なあ、最後に言い残すことはあるかァ?」

 

座り込んだ俺を上から見下ろしながら問う。

 

「なあ?今どんな気持ちだぁ?威勢よく出てきてこの俺につぶされる。ほら聞かせろよ。負け犬の遠吠えをよぉ」

 

勝ち誇った表情でこちらを煽る。

俺は下見ながら・・・

 

 

 

 

 

封印術を発動させた。

 

「なァ!?」

 

奴の周りに風の檻が出来上がり、動きを封じる。

 

ふう・・・。何とかなった。

 

「よっこいせ」

 

俺は、立ち上がり鬼の側を離れる。

 

ん?何で封印術を使えるのか?まあ、十回に一回しか成功しないのだが俺は運が良い様だ。

 

「ぐおおおぉぉおお!??」

 

叫びながら風の檻から抜け出そうともがく。だが、無理だろうな。

 

「何だこれはァ?!つ、土が身体にィ!?」

 

そう、これは土を主体とした封印術と風の足止めの術を混ぜたもの。風がやむころには大きな土塊の出来上がり。

 

「八咫、此方は終えました。大丈夫ですか?」

「いやー、かなりまずいな。あはは・・・」

 

心配そうな真に苦笑いでごまかす。

何とか立ち上がり真に近づこうと・・・

 

「なぁあめるなァァァ!!」

「真!!」

 

封印したと思っていたがやはり不完全だった。

奴は俺じゃなく真に向って正拳突きを放つ。

 

まずいッ!!間に合わない!?

 

目の前の風景がゆっくりと流れる。身体は鉛の様に重く、沼にはまったかのように動きが鈍い。

 

やめろ!?やめてくれ!!

 

このままでは真に向かう拳は確実に当たる。

 

動け!動け!動けよ!!

 

幾ら身体に命令しても何も変わらず無慈悲に拳は進み・・・

 

「甘いんですよ」

 

九十度直角に折れた。

 

「は?」

 

その声は鬼が出したのかそれとも俺が出したのか分からない。

 

「うぎゃああああ!??」

「全く、八咫は爪が甘すぎます。例えるなら、お団子並みですね」

「わ、悪い?」

 

叫ぶ鬼を無視してこちらに説教を始める真。

それを何が何だかわからないまま返事を返す。

 

え?今、折れた?いや、折った?あの鬼の硬い皮膚をものともせずにか?

 

「ああ、そういえば」

「はぁ、はぁ、はぁ!?」

 

真はこちらに背を向け鬼にいった。

 

「吠えてくださいよ。今まで弄んできた人間に負けたんですから。いいたいことすきなだけ吠えてください。犬の様に、ね?」

 

気温が一気に五度ぐらい下がった様だった。

余りの迫力に鬼は言葉すら出ない様だ。

 

「『土を持って平定とする 悪しき者よ そのまま固まり砕けろ 土塊破城』」

 

真の祝詞は美しく響いた。鬼はそのまま岩の様な土塊になりそのまま動かなくなった。

 

最後まで鬼の思考を切ってなかったのでわかるのだが、あの土の中ですり潰された様だ。

 

「さて、八咫。少し休んでいてください。私が後はしておきますから」

「・・・悪い。ありがたく休ませてもらう」

 

俺は、疲れのせいでまぶたを閉じた。

今回で分かった事は、滅茶苦茶真が強いという事。そして、真にあの鬼を殺させてしまった事。やはり、俺には力が必要だと再認識して眠りに落ちた。

 

 

 




誤字脱字、感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。