紫は神気を解放した元・八咫鏡を見て素早く戦術を組み立てながら心の中で愚痴をこぼしていた。
八雲紫視点
全く、誤算だった。
たかが、百年程度の付喪神が現人神になる術を完成させるなんて、本当に誤算だったわ。
しかも、当の本人は代償かはたまた奪われたか知らないけれど本物の神器になっているし・・・。
「はぁ、本当に嫌になるわ・・・」
空間を丸ごと浄化するような神気に肌が焦げるような痛みを発する。
既に、『肉体と精神の境界』を引いて相手を攻撃しているが結果はあまり良くないらしい。
出来れば、あの付喪神を手に入れて月攻略の尖兵にしたかったがあきらめるしかないわね。
扇子を閉じ無駄な思考をはじき出す。
「さて、もういいか?」
「あら、貴方を倒す策は既に出来ているわよ」
「そうかい。それなら、始めますか!!」
宣言通り無数の霊弾が放たれる。
それを難なく躱し攻撃に移ろうとして、自身の背に『接触と反射の境界』を展開して反射してきた霊弾をあらぬ方向に飛ばす。
更に、跳ね返ってきた霊弾を避けながら『妖力弾と相手の距離の境界』を零にして放つ。
「がっ!」
神器はいきなり現れた妖力弾をまともに受ける。
しかし、その顔には苦痛と嘲笑が混ざっていることに気づき
「ぐっ!?」
自身の腹部に鋭い痛みが走り驚愕する。
なぜなら、神器と同じ部分、正確に表すなら己が当てた部位と同じ場所に痛みが走ったからだ。
追撃とばかりに霊弾が迫り慌てて避ける。
理由はわからないがこれ以上の攻撃は不味いと考え自身の周りに妖力弾を迎撃に使用するため浮遊させ相手の出方を待つ。
神器視点
待ちに入ったか。
なら、面倒だがこちらから攻めるとしよう。
神気を薙刀の形に変え突撃する。妖力弾がこちらに飛来するが構わない。
躱す事さえせずにその身に妖力弾を受ける。
かなり、痛いが神気が剥がれるよりはましだ。それに・・・
「ッ!」
ほら、お前が撃った攻撃はお前に帰る。
奴の首が神気の薙刀の間合いに入った。
「これで、終いだ!!」
そのまま渾身の勢いで振りかざし・・・・
真視点
「はは・・・。なんだお前もう使いこなせるのかよ・・・」
私は、鎖状の神気で偽物の心臓を貫きそのまま、奴の力を奪い取る。
「はぁ・・・。ホント、ついてない」
そうこぼし偽物は空気に溶けるように消え去る。
そう、跡形も無く、だ。それを意味することは・・・。
答えに気づき膝から力が抜けたように地面に座り込んでしまった。
・・・ああ、八咫が消えてしまった。
優しく、抜けている私の式。
母と別れてから苦しいだけの日々を変えてくれた大切な人。
「ふぅ、助かったわ」
「・・・」
「・・・そのお礼にいいことを教えましょう」
側にやってきた八雲が何かを言っているがどうでもよい。
私が望んでいるものはもう二度と帰ってこないのだから。
「はぁ・・・。もういい加減にしなさい!貴方の大切な八咫鏡は生きているわ!!」
「え?」
初めて聞く怒鳴り声に驚き、その後の言葉に思考が固まった。
「え?じゃなくて、あの付喪神は生きているの!ただ、どこか別の場所に飛ばされているだけ。しかも、妖力を全部失くしてね。・・・だから、その辛気臭い顔やめなさい」
疲れたように肩で息をする八雲を見る。
「・・・それが素なの?」
「聞くのそっちじゃないでしょ!」
もう何なのよこの子・・・・。とぶつぶつ言っている八雲。
何だかおもしろい。
「八咫が戻るのはどれくらいかかるの?」
「・・・早くても数百年でしょうね。神様の道具に代償祓ったのだから」
「・・・そう」
数百年、か。
目まいがするほど長いが大丈夫だ。八咫が生きているのだったら幾らでも待とう。
そして、帰ってきたら死ぬほど文句を言って死ぬほど色々な話をしよう。
「そこで、貴方、私の作った楽園に『幻想郷』にいなさい。そこなら会える可能性も上がるわ」
「なんで・・・?」
「そこにはね、使われなくなった物が行きつく場所があるの。正確には外で使われなくなったものだけど。それに、外は段々と妖怪や神が生きづらい場所になる。だから、どっちみちこの楽園にたどり着くわ」
「・・・・なるほど」
「そ・の・か・わ・り!!貴方には手伝って貰うことが沢山あるから覚悟しなさいな」
「わかった」
よし!藍、ら~ん!!迎えに来てー!っと騒ぎ始める八雲。
八咫、帰ってきたら沢山、話そう。そしたら、また一緒に旅を・・・。
こうして、真は紫と共に幻想入りするのであった。
大切な人との出会いを心待ちにして。
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