付喪神視点
・・・・・・・付喪神警戒中・・・・・・・
音を出来る限り殺しゆっくり近づく。
あれが囮だという可能性も考え周りの確認も欠かさない。一歩、また一歩、と距離を詰める。
なぜ、わざわざ罠かもしれない場所に踏み込むのか?それは、日が落ちるとこの身体では戦うことはできても逃げることは難しく何より、朝と夜とでは妖怪の危険度が全く違う。夜、それも丑三つ時は妖怪にとって満月の夜の次位に力が強まる。まあ、それでも少し調子が良いな、くらいだが・・・。最悪なことに、月も満月に近いのだ。
そんな夜道を俺が歩くとどうなるか?絶対に高確率で襲われる。それに、大妖怪も朝より夜の時間帯に活動するはずだ。
よって、ここを逃すとかなり不味い。主に俺の命が。
辺りを警戒しながら遂に、木の根元に横たわる先客の姿を見ることが出来た。
「これは・・・」
そこに居たのは白い翼生えた少女であった。
華奢な身体には、どこまでも飛ぶことが出来そうな立派な翼。服装は少し汚れてはいるが山伏の格好をしていおり、幼くも凛とした雰囲気が出ている。
俺はこの少女が妖怪だと分かっているがあまりの美しさに言葉も出ない。もし神や神の使いがいるのならまさしくそれであろう。
・・・が、その少女をよく見るとその顔色は悪く肩にもかすり傷だが矢が掠ったような跡がある。
俺は、生憎と薬師ではないので如何すればいいのか分からずとにかく自身の能力を使うことにした。
和鏡の付喪神である俺の能力は『映し取る程度の能力』である。その名の通り相手を映すことで発動する。効果は、相手の力と姿を自分に与える能力だ。そして、この能力『映す』だけでなく『写す』ことも可能なのだ。
映す対象の傷や病、思考すら文字通り『写す』ことが出来る優れもの。
さて、自分よりこの少女妖怪は弱そうだしこのまま死なれるのは気分が悪くなる。助けるとするか……
・・・・・・・付喪神治療中・・・・・・・
???視点
迂闊だった。
朦朧とする意識の中、私は己の失態を思い出す。天狗でありながら黒い翼ではなく白い翼を持つ私は里の中でも避けられていた。「あいつは、忌み子だ。きっとこの里には悪いことがおこる」根も葉もない噂がどんなに私を苦しめたか。親も物心つく前に居なくなった私には味方などほとんどおらず苦しい日々の連続だった。唯一の救いは天魔様が親身になってくれたことだ。幼く脆い私をいつも励ましてくれた。そのおかげで、私は腐らず強くなり妖怪の山では五指に入るほど強くなった。
私はこれからも、天魔様に仕えるのだろうとそう思っていたのに・・・・。
今から一か月ほど前に天魔様が病に倒れその二週間後に亡くなられた。死んだと聞いたときまるで目の前に雷が落ちた様に目の前が白くなった。
だが、周りの者は直ぐに新たな天魔を決める会議を始めた。統率力、妖力、知恵。この三つは組織を動かす為には必要最低条件である。しかし、私を含めた五人の天魔候補はそれらをすでに満たしており幹部会ではお手上げの状態になった。そこで、いま亡き天魔が遺言で五人に試練を与えそれを乗り越えた者を新たな天魔にすると残していた。そして、誰よりも早くその試練を乗り越えた私は新たな天魔となるため天狗の里に帰ろうとした時だった。
わたしの事を認めることの出来ない者達が襲い掛かってきたのだ。
五人の烏天狗は顔を隠し手にはそれぞれの獲物で攻撃してきた。。
万全の状態なら片目を閉じてでも勝てる相手だが試練により妖力の大半を使いきって弱っていた私には難しく、何とかその不届き者達を倒すも毒矢を受けてしまった。
私は気力を振り絞り何とか里まで向かおうとする。
しかし、現実は残酷で毒が身体に回りそのまま木にぶつかりこうして息絶えようとしていた。動かない身体で私は自身の運命を嘆く。
いったい私は何のために生まれたのか。なぜ、こんなにも惨めな最期を迎えなければならないのか・・・。
途切れ、途切れの意識の中この世の不条理を嘆いた。しかし、もうそれも終わりであろう。
身体の感覚がなくなりつつある…。
ああ、……叶うならばもっと生きていたかった。
私はこの世で最後の言葉を胸の中で呟き意識を失った。
さて、この少女が目覚めた時、鏡の付喪神はどうなるのでしょう。
助けたことに感謝するのか。そのことに気づかず誤解が産まれるのか・・・