ケルオン大陸バンクール地方ガリフの地ジャハラにて。
宴も終わり夜の帳があたりを支配しているとき、アーシェはラーサーとの会話のことを思い出していた。
確かにラーサーの言うとおりこのままの状況が続けば解放軍とアルケイディア軍が戦端を開く。
そしてロザリア帝国は解放軍への協力を大義名分にアルケイディア帝国に宣戦布告する。
そうなれば主戦場となるのは二大帝国の狭間に位置するダルマスカだ。
更に帝国は2個も破魔石を持っている。
【夜光の砕片】2年前に使われているが【黄昏の破片】がまだある。
となればダルマスカが第2のナブディスになるのは避けられない。
だから私がダルマスカ王国の復活を宣言し、帝国との友好を訴え、解放軍を思いとどまらせる。
そうすればダルマスカは戦禍から逃れる事ができる。
そう、頭ではわかっている。だが・・・
死んでいった者達に誓った復讐を成し遂げることは出来ない。
この前ラバナスタで復讐を改めて誓ったばかりだというのに・・・
そんな事を思いながらアーシェは里を歩いていた。
すると目の前に最愛の夫の姿が見えた。
「ラスラ・・・」
アーシェはラスラの幻影の方に走る。
すると
「あの人が見えたのか?王墓の時みたいに」
ヴァンに声をかけられた。
アーシェは少し驚いた。
「やはり、あなたにも・・・でも、どうして」
「変だよな。オレ、アーシェの顔だって知らなかったぐらいで・・・王子のことなんてなにもわからいのにさ」
ヴァンは橋から水面を見ながら自分の考えを言う。
「もしかしたらオレが見たのは兄さんだったのかもしれない」
「バッシュから聞いたわ」
「降伏間際に志願したんだ。馬鹿だよ。負けるってわかってたのに」
「守ろうとしたのよ」
「死んで何が守られたっていうんだ。お前は納得できたのかよ。王子が死んだ時」
ヴァンの言葉にアーシェは思わず顔を背けた。
その様子を見てヴァンはまた喋りだす。
「帝国が憎いとか、復讐してやるとか・・・怨みばっかりふくらんで。・・・けどその先は全然。どうせなんにもできやしないって気がついて空しくなって。その度に兄さんのことを思い出して・・・。オレそういうの忘れたくてとりあえず【空賊になりたい】とか・・・景気のいいこと言ってたんだろうな」
ヴァンはそう言うと少し間をおいて
「兄さんの死から・・・逃げたかったんだ。アーシェについてここまで来たのもきっと逃げたいからなんだ」
ヴァンは幼い頃に両親を流行り病で亡くした。
だから兄のレックスはヴァンにとって親のような存在でもあった。
レックスが軍に志願したときヴァンは必死にレックスを止めた。
でも国のためだと言われ渋々認めてしまった。
それでダルマスカを守れたなら、いや国のために戦って死ねたならここまで兄の死に囚われなかっただろう。
実際には違うが反逆者バッシュの仲間として扱われ、帝国に拷問され、廃人のようになって帰ってきた。
そして一年後・・・レックスは亡くなった。
ヴァンはその理不尽から逃げたかったのだ。
レックスが死んで数日後に東ダルマスカ砂漠に魔物狩りに行ったのも無力な自分が許せなかったからだ。
「でも、もうやめる。逃げるのはやめる。ちゃんと目標みつけたいんだ。オレの未来をどうするかその答え。アーシェと行けばみつかると思う」
「みつかるかな・・・」
「みつけるよ」
そう言うと二人は夜空を眺めた。
ヴァンは過去を受け入れ、前に進もうと決めた。
アーシェは過去だけを見ずに未来もみようと考えた。