不老不死の暴君【凍結中】   作:kuraisu

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アルシドが相変わらず壊れてます。
というかこの作品でアルシドは常にこんな調子です。


第三十八話 もうひとつの遺産

「仮に姫が平和的解決を訴えたとしましょう。グラミス皇帝なら戦争回避を優先したでしょうが―――相手はヴェイン・ソリドール。姿を現した姫を、偽者だとか断定して―――解放軍を挑発するんじゃないですかね」

 

そこでアルシドは一瞬ラーサーを見て、またアーシェに視線を戻して続ける。

 

「ヴェインは戦争を望んでいる。都合の悪い事に、あいつは軍事的天才だ」

『(私も夢に告げられた。そなたが姿を現せば戦乱を招き、ヴェインが歴史に名を(のこ)す)』

 

アルシドとアナスタシスから告げられた予測はアーシェにとって辛いものだった。

最早二大帝国の激突は目前まで迫っている。

 

「帝国軍は全軍あげて開戦準備を進めてましてね。うちの情報では―――」

 

アルシドは侍らせている美女から渡された書類を見て、読みあげていく。

 

「ヴェイン直属の西方総軍が臨戦態勢に移行し―――新設の第12艦隊が進発。それと本国の第1艦隊も戦艦オーディーンの改装終了を待つばかり。でもってケルオン派遣軍の第2艦隊が―――第8艦隊の穴埋めに駆り出されますな。―――つまり、どえらい大軍だ」

「それってどれくらいの数なんだ?」

 

アルシドの言葉にヴァンが疑問を呈する。

 

「2年前のガルテア戦役の際にアルケイディアで編成されたガルテア鎮定軍は第8艦隊を中心に西方総軍の3分の1で編成されていた。馬鹿弟子にも分かりやすいように説明するなら帝国がナブラディア・ダルマスカに侵攻した時の兵力の最低でも3倍以上。それに本国軍やケルオン派遣軍からも増援がくるとなると5倍はいくんじゃないか?」

「そんなに・・・?」

 

パンネロがあまりの数の多さに絶句した。

2年前のガルテア戦役の時にダルマスカにアルケイディアが侵攻させた兵力の最低でも3倍以上。

明らかにアルケイディアの狙いがダルマスカ王国再興を目的とする解放軍の鎮圧ではなく、解放軍への協力を大義名分に参戦してくるであろうロザリア帝国軍を迎え撃つことだというのが動員した兵力から子供でもわかった。

 

「そして、切り札は破魔石」

 

アーシェの言葉にアルシドは頷いた。

アーシェはアナスタシスの方を向き、話しかける。

 

「大僧正猊下。王位継承の件は、しばし忘れます。力を持たない私が女王となっても、何も守れません。より大きな力を身につけてから、あらためて」

『(そなたが夢見るのは、破魔石の力か?)』

「破魔石以上の力です」

 

その言葉を聞いてアナスタシスは目をカッと開き、初めて肉声で話し始めた。

 

「力をもって力に挑むか。まこと人間(ヒュム)の子らしい言葉よ」

「私は覇王の末裔です」

「ならばレイスウォールが遺したもうひとつの力を求めなさい」

「そんなものがあるのですか!」

「パラミナ大峡谷を越えて、ミリアム遺跡を訪ねなさい。レイスウォールが当時の大僧正に委ねた力が眠っておる。破魔石を断つ【覇王の剣】」

 

その言葉を聞き、ミリアム遺跡に行こうとアーシェは出口の方に向いた。

その様子を見てアナスタシス僅かに神の意思に背きながらアーシェに語りかける。

 

「おのが覇業を支えた破魔石を砕く力を―――なぜ子孫ではなく他者に託したのか。剣を手にして悟らなければ王国再興の夢は、夢のままよ」

 

その言葉を聞いてアーシェはレイスウォールが他所に【覇王の剣】を託した事に疑問に思いながらも今は力が必要と言う事で考えないことにした。

そうして神殿の外に出ようとしたときに呆然としているラーサーが目に入った。

アーシェもラスラや父が亡くなったと聞いて同じような状態になったことがあるので同情する。

だが、こういうものは落ち着くまで時間が必要だと思いながら外へ出た。

セアも先程の【覇王の剣】を他者に託した理由について考えていた。

彼は早くも自分なりの結論を出していたがそれを認められずに不機嫌そうな顔をしながら外に出た。

 

『(私の夢も、やがて醒めるか―――)』

 

アナスタシスは瞑想を再開して一言呟いた。

 

 

 

神殿の外でセアはアルシドと久しぶりに話し合いをしていた。

 

「そういえばクライスさん。アダスの奴が会いたがってましたよ」

「そうか。でもロザリア帝国に入るのは・・・」

「なぜ?」

「・・・俺って諜報部を抜けたとき周りからなんて言われた?」

「辞職したって聞きましたが?」

 

アルシドが質問の意味が分からず首を傾げる。

 

「いや、本当は辞職願を上司に提出したんだが拒否されてな。だから夜逃げして国境を越えたんだよ」

「え・・・?」

「だからさ、その~、ロザリア帝国に入ったとたんに首をはねられる危険性があるからあと十数年くらいしたら行くって言っといて」

「わかりました」

 

実はセアが話したことは半分嘘で上司に辞職を拒否され、「どうしても辞職したいなら皇帝陛下に提出しろ」と言われて上司の言葉通りにその時のロザリア帝国皇帝の部屋に侵入し、辞職願を出した。

結果は不敬罪の罪を着せられて処刑されかけた・・・というかされたのがロザリアに行きたくない理由である。

既にロザリア帝国の記録上は故人であるから別に行ってもいいような気はするが念のためもう少し時間をおきたい。

 

「ところで話は変わるが・・・」

「・・・なんですか?」

 

アルシドは何か嫌な予感を感じて身構える。

 

「お前の部下はどうなっているんだ?」

「・・・というと?」

「だからなんでお前の部下は美女ばかりなんだ?」

 

セアが横目で下にいるアルシドの部下達を見る。

色気たっぷりのカナートを筆頭に美女ぞろいのアルシド直属の部下が14名。

 

「た、たまたま能力で選んだらそうなっただけで・・・」

「よし、質問を変えよう。ここにいるお前の部下何人に手を出した」

「・・・・・・・・・・・・全員です」

「俺が上司だった時より悪癖が悪化してるとは・・・な」

「いや、あの頃と違ってちゃんと彼女達は有能ですよ本当に!!!」

「そうか、そうか。まぁお前が侍らしてた奴も中々の腕だったしな」

「そうです!!」

「で、お前と今まで関係を持っている女性は何人だ?」

「え、え~と、ちゃんと数えた事はありませんが、3桁を少し越えたくらいで・・・」

「・・・呆れるほどの女好きだな。お前は」

 

セアは虫でも見るような目でアルシドを睨みつけた。

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