不老不死の暴君【凍結中】   作:kuraisu

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今回の話はかなり趣向が異なり、一種の外伝のようなものとなっております。
なのでこの話を飛ばして読んでも何の問題もないと思われます。


The birth of the tyrant of immortality

平和とはあらゆる争いによって流された血を吸い上げ、死者の屍の上に咲き誇る一輪の花に過ぎない。

そしてそれは流れた血の量に比例して咲き誇るがやがては枯れ、再び争いがおこる。

何故なら人は争いつづけては生きていけないと同時に争わずに生きていくことはできないからである。

 

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クライス・セア・グローリア。

私、グレキア王国第一王子の名前である。

グレキア王国は非常に旧い国家であり、王家であるグローリア家はかつてロンカ王朝に仕えた地方貴族の生き残りであると伝承で伝わっている。

だから建国時期が不明ではあるが少なくとも千年以上の歴史を誇るバレンディア西部に覇を唱える大国である。

 

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結婚することになった。

相手は中堅国であるセルダ王国の第一王女であるエレーヌ・カヤ・セルダスだ。

所謂政略結婚という奴であり、セルダを味方につければ北の異民族国家シュターン帝国への自国領内の防波堤となる。

更にセルダはキャメロット王国とも国境を接しており、シュターンだけでなく、キャメロットへの牽制にもなる。

そう判断した父上がセルダ王に縁談を持ちかけてそんな話ができていたらしい。

その為、父上から自分の婚約者の話を切り出されたときは少々驚いたが、祖国グレキアの為、そのことに迷いはない。

 

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セルダ王国の王侯貴族を招き、王都ランチェスで2週間に渡って宴会を行った後、盛大に結婚式を行うらしい。

この時、初めて私は自分の婚約者であるセルダの王女エレーヌと会った。

不安げな顔をしながら、ギギギ……という効果音でも鳴りそうなぎこちなさをもって礼をしてきた。

……これは実に面倒な予感がひしひしと感じる。

とりあえず2人だけで話したいといって彼女と一緒に舞踏会に出席せず自室で語り合った。

 

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1週間位するとエレーヌもとりあえず普通に振舞える位には緊張はほぐれたみたいだ。

こうしてようやく今回のセルダとの宴会の主役である私達が舞踏会に出席することができた。

グレキア・セルダ両王国の重要人物もその様子を見てホッとした顔をしていた。

確かにこれで私達の仲が険悪なものだった場合、両国が戦争に突入していた可能性すらあるから当然だ。

実のところエレーヌ大国の王子というだけで異常に緊張していたしていただけなのだが。

因みに「1週間前とかなり王女の雰囲気が違うのですが、まさか結婚前に手をだしたんじゃありませんよね?」とか妙な勘違いした親衛隊隊長が訝しげに聞いてきた。

勿論していない。つーかキルティア教の教義に真っ向から背くまねを私ができるか!

腹が立ったので親衛隊隊長の妻宛てに「夫が貴族の奥方"達"と不倫している」という内容の手紙を送っておいた。

愚かなる親衛隊隊長に幸あれ、ファーラム。

 

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結婚式当日。

親衛隊に警護されながら私は式場に向かった。

……親衛隊隊長の頬にビンタされた後と思しき手形が浮かんでいた。

エレーヌは少々緊張しているようだったが、特に問題はなそそうだ。

「大いなる父の名において汝らふたりを夫婦であるとみなす。恵深き神の祝福が汝らの行く道にとこしえにあらんことを」

王宮内の神殿で大司教の文句とともに私とエレーヌは誓いの口付けをかわした。

こうして私達は晴れて夫婦となった。

 

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夫婦になったと言っても私が王都にいる際に同じ部屋で暮すようになっただけで今までの生活とさして変わらない。

東のキャメロットとは表向きは友好関係にあるとはいえ、月に一度は国境で小競り合いが起こる。

北のシュターン帝国とはキルティア教圏諸国とは違う宗教を信奉していることもあり、犬猿の仲である。

南の小国家群も絶えず争いを続けている。

安定しているのは海に接している東位なものだ。

そんなだからあちこち飛び回って、第一王子の私が王都にいる時間は意外と短い。

だからあまりエレーヌに構っている暇はないのだ。

だから常に王都にいる際は可能な限り優しく接しているつもりなのだが……

なぜかたまに不満げな顔でエレーヌが私を睨んでくる。

何故なのだろうか?

 

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結婚から2年後、私が17歳の時。

シュターン帝国の大軍を率いてグレキア王国領に侵攻してきた。

戦争自体はシュターン軍に大打撃を与えて、撃退することはできたものの父上が戦死した。

父上の死が悲しくなかったといえば嘘になるが私は王族であり、悲しんでいる時間などない。

戦後、すぐに私の戴冠式が行われ、弱冠17歳の身で大国グレキアの国王になってしまった。

王として若すぎる故、私を侮る者は国内外に多数存在した。

だが、王に即位して数週間後におきたランスの地での反乱を早期終結させた私の功績の前に多少改善された。

そしてキャメロットの"キルティア教圏の秩序を乱した異教徒への制裁"という大義名分で行われているシュターン帝国侵攻を支持してキャメロットの関心が北に向かっている間に国内の安定と軍事力の回復させようと試みた。

こうして周辺諸国がグレキアにちょっかいをかける余裕がないように調整した。

そして伝統に則りブルオミシェイスの大僧正へ、国王に即位したという挨拶に赴かねばならない。

慌しく駆け回り、半年近く国を空ける準備が整ったのは年の中頃であった。

 

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南のケルオン大陸のヤクト・ラムーダにある神都ブルオミシェイス。

キルティア教の創始者が没した聖地。

この神都ブルオミシェイスほど、煌びやかな神殿はイヴァリース中を探しても見つからないだろう。

そうして景色に見入っていると不意にエレーヌから声をかけられた。

振り返るとエレーヌの顔色が少し悪いような気がした。

心配していると彼女は私を真名で呼んだ上、「愛する男性にそういう態度をとられるのは悲しいです」などと言われた。

私は互いの国の利益の為にエレーヌは私と結婚したのだと思っていたので愛されているなどとは考えた事すらなかった。

その後に続くエレーヌの言葉に私は羞恥で顔を真っ赤に染め上げて気を失った。

なんとも情けない話である。

 

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気を失い倒れたので、大僧正と会談する予定の日が一日ずれた。

大僧正は理由を聞いてきたがまさか妻からの告白で頭が真っ白になったなどと言えるわけがない。

仕方なく、「長旅での疲労がブルオミシェイスに着いた途端噴出したのかもしれませぬ」と答えておいた。

一応、長旅の疲労が溜まっていたのは事実なので完全に嘘というわけではない。

別に疲労が溜まっていたなかったらエレーヌからの告白に気を失うことはなかった……はず。

その後、軽く世間話をした後、キルティア教会との不可侵条約及び政教分離協定を更新をおこなった。

そして……夜に妻から仮名ではなく真名で呼べと言われた。

 

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ヤッちまった。

昨夜、妻のエレーヌ……じゃなくてカヤと臥所をともにしました。

……今思えば初体験がキルティア教の聖地ってのは教義的にどうなんだろうか?

いや、時の神・転生神ゾーラとて夫婦の関係は円満であるべきとされているじゃないか。

問題はない……はずというかないと思いたい。

おお、母なる女神よ。どうか我を許したまえ。ファーラム。

 

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ブルオミシェイスから戻ってきて1年後。

私とカヤの間に子どもが生まれた。

名前はクライス・ティア・グローリアという。

可愛いな。こいつめ。

 

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ティアが生まれてからも私は王としての国務が忙しい。

はっきり言って十代の少年にやらせる仕事量じゃないだろうと思う。

宰相がかなり頑張ってくれているが、それでも仕事量は膨大である。

東の大国キャメロットの動向に目を配りつつ、北の異教国家シュターンを警戒しつつ、内政を行わねばならぬのだ。

更に南の小国家群が互いに衝突している為、南からくる難民も警戒しなくてはならない。

本当に忙しすぎる。

ただ、王都を離れることが殆どない為、ほぼ毎日愛しい妻や子に会えることが救いである。

 

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近頃、南が不穏である。

ある小国が凄まじい速さで他国を併呑していっているのだ。

我が国の影響下にある国家も幾つか力ずくで併合されいる。

その小国は昨年、レイスウォールとかいう貴族が王家を打倒して成立した国家だ。

いまはまだ小国といえる規模ではあるが、このまま放置しておれば面倒なことになる。

 

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キャメロットと同盟を結び、レイスウォールを倒す為、戦争を行うこととなった。

というのも母上の生国である国にレイスウォールが軍勢を率いて攻め入ったからだ。

ことここに至って私は宣戦布告し、それを知ったキャメロットも援軍を申し出てきたのである。

いまだレイスウォールが治める国はグレキア・キャメロットの10分の1にも満たぬ領土しかないとはいえ、たった1年でこの成長は異常だとこの大陸の列強である両国が手を結び、大軍を派遣したのである。

これだけの大軍だ。レイスウォールもひとたりもないだろう。

 

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なんということだ。

列強2ヵ国による連合軍が高々数千程度の軍勢に敗れるなど夢にも思わなかった。

更にキャメロットが緒戦の大敗を受けて、全面撤退を決め込み、国境の守りを固めている。

噂ではレイスウォールとの間で内密に休戦協定が成り立ったという噂だが、真偽は不明だ。

とにかくレイスウォールの軍勢はキャメロットなど眼中にないかのようにグレキアの領土を蹂躙している。

こちらも必死に防戦を試みたが結果は連戦連敗であり、王都にまで追い詰められた。

向こうが王都に攻めてくるなら討ち死にするまで戦い続けると会議で決まった。

そのことをカヤとティアにも話した。

するとカヤが「ここまでくればもう降伏した方がよいのではありませんか?その方が助かる命は多いと思います」と言ってきた。

……私は何も答えられなかった。

 

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敵襲を告げる声、私も王宮にある剣を掴み、外へ出ようと走り出した瞬間。

凄まじい光と衝撃が私を襲った。

薄れゆく意識の中、戴冠の際に受け継いだ王の剣が不気味に輝いているのを見た気がした。

 

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ここはどこだ?星空?浮いているのか?

いや、堕ちている!!

ガアァッ!い、息が苦しい。

プハァ、ここはどこだ!?海か!!?

だ、誰だ!?私に話しかけるのは!!?

とにかく私を元の場所に戻せッ!!

な!なんだ!?

み、水が……体が……沈む……

苦しい……く、空気を……

 

━※━━━━━━━━※━

 

私は王宮の一室で目を覚ました。

なんださっきのは?変な場所にいてそれで……

?なにがあったんだったけ?

よく思い出せない。

夢だったのか?あれは?

まあ、そのことはどうでもいい。

しかし、いったいなにがあったんだ?

敵襲を告げる声が聞こえたところまでは覚えているのだが……

なにやら奇妙な霧も出ているし……

そうして周りを見回してみると、ある人影が私に向けて剣を振り上げているのが見えた。

曲者だと思い、持っていた剣でそれを斬り捨てる。

斬ったモノをみて私は足元が崩れていくような脱力感に襲われた。

ティアじゃないか……いったいなぜ……?

しばし目の前の光景が信じられずに呆然としていた。

我を取り戻した時には私は囲まれていた。

アンデットと化した親衛隊の隊員達に。

私は泣く泣く彼らと戦い、勝利した。

だが、虚しさと嫌な予感しか沸きあがってこない。

私はそれを否定したくてベランダから街の様子を見ようとした。

果たしてその結果は……私の予感が的中していた。

生ける屍となった民達がミストの漂う廃墟と化した王都を徘徊している。

……私は自分でも理解できぬ感情に駆られ、街を駆け回った。

そして片端からその屍共の首を飛ばしていく。

消えろ!消えろ!消えろッ!!

そう咆哮し、涙を流しながら、私は王都中のアンデットを消していった。

そうしてアンデット化した者達を全滅させた。

されど、自分の中で肥大化していく感情に私は恐怖した。

その恐怖のまま私は剣で自分を何度も貫いた。

剣が自分の体を貫通する度に激痛がはしり、血が流れたがそんなことは気にもならず、何度も貫いた。

しばらくして……私――否、俺は灼熱の憎悪をもってこのような地獄をここに出現させた元凶に辿りついた。

 

……殺してやる。

殺してやる!殺してやる!殺してやる!!

殺してやるぞ!!レイスウォオオゥルゥウウ!!!!!!!!!

 

━※━━━━━━━━※━

 

あれから幾十年。

……この数十年は長すぎたようにも思えるし、一瞬のようにも思える。

レイスウォールへの憎悪のみがこの数十年の全てといっても過言ではない。

幾度となく奴を殺そうとしてが常に失敗に終わった。

そうこうしている内に……寿命で憎き仇が死んでしまった。

そのことを知った時にどういうわけか俺をあれ程支配していた憎悪が消えうせた。

いや、消えうせたというは語弊がある。

正確には憎悪だけに囚われなくなったというべきか。

そして冷静に今を見てみた。

イヴァリースは統一され、戦争など知りもしない大人も珍しくない。

それ程までの平和が目の前にあったのだ。

レイスウォールがどのような方法で王都ランチェスを消し飛ばしたかは知らないが、仮に俺が国王だった時に、その力を手に入れていたならばどうしただろうか?

考えるまでもない。あれほどの力があるならば他国との戦争も外交も幾らでも有利に進められる。

俺も一国の君主として、レイスウォールと同じようにあの力を活用していたのだろう。

所詮人など己の大切なものを守るためならばいくらでも非情な存在になれるのだ。

俺にとって大切なものがグレキア王国という国と民であり、あのレイスウォールにとっては自分の国と民だった。

ただそれだけのことにすぎないが、理屈ではわかっても感情はどうにもならない。

古今東西、感情を理屈より優先する君主は歴史に暴君の烙印とともに記されている。

その通りならば俺は国も民も……家族も失い、暴君と成り果てたわけだ。

……既にグレキア王国の名を知る者も少なくなり、その存在すら忘れられてしまったかのようだ。

そんな忘れられた国の為に戦い続けることなど憎悪の根源と呼べる存在がこの世よりいなくなった今となっては俺には無理だ。

虚無感に支配された心のままにイヴァリースをさ迷っているといつしかランチェスの廃墟に俺は立っていた。

もう知っているものは誰一人いないのだ……

そう思うと同時に孤独感に苛まれ、人と関わらぬ生活を送るようになった。

それはさる森であるヴィエラと出会うまで変わることはなかった。




本編から700年以上前の出来事の真実の一端が描かれています。
(最近執筆時間がないからネタ帳から寄せ集めてでっちあげたのは内緒の方向で)

感想・評価お願いします。
それと活動報告ってもっと頻繁にしたほうがいいのでしょうか?
偶にしても殆ど読んでくれないみたいだし……
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