不老不死の暴君【凍結中】   作:kuraisu

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今まで多分一番多い文字量。
……普段が少なすぎるだけか?


第五十九・五話 ラバナスタの人々

セア達と別れた後、ヴァンとパンネロはラバナスタのムスル・バザーを散策していた。

 

「父さんや母さんが生きていた頃ほどじゃないけど……、前と比べて活気が戻ってきてるね」

 

パンネロはバザーを見回しながら呟いた。

バザーは人込みで溢れ、商人たちは熱心に客の呼び込みをしている。

今までなら駐屯している帝国兵がそれに水を差していたのだからこれ程活気のあるバザーは久しぶりだった。

 

「そうだな」

 

ヴァンが少し複雑な表情をしながら肯定した。

以前、神都で帝国の理不尽はヴェインによって改善されたとセアから聞かされているからだ。

活気が戻っているのはヴァンも嬉しいのだが、なんともいえない感情を持て余していた。

2年前の戦争といい、とことんダルマスカ人たちのやることは無視されて、ラバナスタに対して理不尽を行うのも、それを正すのも全てアルケイディア人がしている。

そのことに大国と小国の違いをヴァンは感じずにはいられなかった。

 

「あ、お久しぶりです」

 

パンネロが通りを歩いていたヒュムの男とバンガに話しかけた。

昔からヴァンやパンネロと家族ぐるみの付き合いがあった人達だ。

 

「おお、パンネロ。それに……ヴァンか」

「……その微妙な間はなに?」

 

男が自分の名前を呼ぶまでの微妙な間が気になって質問した。

 

「いやな。最近お前を見ると一瞬レックスかと思っちまってな。もう2年もたってんのにな」

 

男が少し理由を話そうかどうか迷った仕草をした後、気まずそうに言った。

するとヴァンは首を傾げながら、

 

「オレ、兄さんとそんなに似てるかな?」

「お前等は兄弟だろ。それにもうお前は俺が最後にレックスを見た時と同じくらいの歳だからな」

 

男は感慨深げに言った。

それに対してヴァンはそういうものなのかな?と思った。

ふと男がなにか思い出したように、

 

「そういや、お前達。妻から聞いたんだが最近街にいないらしいな。なにしてるんだ?」

 

男の質問にヴァンは口篭った。

まさか死んだ事になってる自国の王女と一緒に行動しているなんか言えない。

ヴァンがなにか適当に理由をでっちあげようと思ったところで、

 

「ヴァンと一緒にあちこち旅してるんです」

 

パンネロがヴァンに助け舟を出した。

 

「あちこちってどこにだ?」

「西の砂海に行ったり、南のガリフの集落とかです」

「……結構遠いな。そんな場所まで2人で行ってるのか?」

「2人じゃありません。セアさんや他の大人の人達に混じっていってるんです」

 

パンネロの説明に男はホッとした表情を浮かべた。

 

「よかった。妻もなんか危険なことやってるんじゃないかって心配してたんだ」

「そんなに危険ことしてないよ」

 

ヴァンが何のためらいもなく言い切った。

その言い切りようにパンネロが内心非常に驚いた。

イヴァリースに割拠する諸国に指名手配されている空賊が2名、国王暗殺の濡れ衣を着せられた将軍が1名、亡国の王族が2名というとんでもない人達とともに旅をしているのだが、ヴァンはその危険度をはっきりと認識していなかった為である。

立場的にはともかく根は良い人ばかりなのもそれに拍車をかけている。

 

「そりゃ、よかった」

 

男が安心したように言った。

 

「それにしても懐かしいな。お前よくこの辺で悪さしてはレックスに叱られていただろう」

 

バンガが笑いながら言った。

パンネロも当時のことを思い出して笑い、ヴァンは赤面した。

 

「レックスが死んでから、お前は空賊になるだの言って、帝国兵相手にスリばかり繰り返していて心配だったが、セアやパンネロの他にも一緒に遠くへ旅をできるような仲間ができたんだな。……自分の足で歩けるようになったってことか。レックスも喜んでると思うぞ」

 

バンガはヴァンの顔を真っ直ぐに見ながらそう言った。

それを聞いてヴァンはさっきとは別の意味で赤面した。

 

「そ、そうかな」

「大方、旅の間になにかあったんだろう。見違えたよ」

「ああ、随分といい顔するようになったと思うぜ」

 

2人にそういわれてヴァンは気恥ずかしくて頭を掻いた。

するとバンガが少しおどけたような声で言った。

 

「そういえばお前達、ミゲロさんが心配していたぞ。帰ってくるのが遅いって」

「あ、そうか。今回の旅は追加でブルオミシェイスにも行ったからミゲロさんに伝えた日数よりだいぶ長くなったんだった」

「ブルオミシェイスって……お前等、巡礼しにいくほど経験なキルティア教徒だったか?」

 

男は怪訝な顔をして2人に問いかけた。

神都に行く人間など難民か、巡礼しに行くほど酔狂――もとい敬虔なキルティア教徒位だ。

2人とも巡礼目的でブルオミシェイスに訪れた訳ではないのでヴァンとパンネロは首を横に振った。

 

「そ、そんなことより、ミゲロさんに帰ったって伝えにいこ。それに今度のことも言っておいたほうがいいし」

「うん? ああ、そうだな。じゃ」

「おう。無茶すんじゃねぇぞ」

 

ヴァンとパンネロは2人手を振りながら、市街地の方に走って入った。

バザーからヴァンとパンネロの姿が見えなく男はバンガに話しかけた。

 

「ヴァンもいい顔になってきたな。レックスにも見せてやりたいぜ。お前が命に代えて守った弟は、こんなに立派に成長したぞって、な」

「ああ、まるであの頃のレックスのようだ。ずいぶんとたくましくなったもんだ」

 

2人は互いに談笑しながらバザーの人込みの中に消えていった。

 

 

 

市街地にあるミゲロの店にヴァン達は入った。

 

「いらっしゃーい」

 

店員が声をかけて近づいてきたが、ヴァン達の顔を見ると何故か疲れた顔をした。

 

「お帰り。ミゲロさんが帰るのが遅いからなにか事故にでもあったのかって心配してたよ」

「いや、色々あってさ」

 

ヴァンが頬を掻きながら言った。

 

「とにかく、ミゲロさん呼んでくるからちょっとまってて」

 

そう言って店員は店の奥に入っていった。

しばらくすると青い肌のバンガであるミゲロが出てきた。

 

「おお、ヴァン、パンネロ。無事じゃったか」

 

ミゲロはヴァンとパンネロのそう言って何度も触った。

 

「なにすんだよ」

「ガリフの里に行くだけにしては1ヶ月は長すぎる。なんでそんなに時間がかかったんだ?」

「そ、それはアーシェが――」

「それ以上言うな!!」 

 

ヴァンの言葉を掻き消すようにミゲロは叫んだ。

第8艦隊壊滅後にミゲロはセアからヴァンが空賊以外に死んだ事になっているダルマスカの王女と将軍が同行している事情を説明されている。

だからその名を軽々しく口にしようとしたヴァンを叱咤したのだ。

周りの店員や客は何事かという風にヴァン達3人組の方を見ている。

店内にいる人間の視線が自分たちに集まっていることを悟ったミゲロは疲れた声で言った。

 

「ヴァン、パンネロと一緒に裏の倉庫へ行きなさい」

「え、あ、ああ」

「ヴァン、行くよ」

 

ヴァンの手を引いてパンネロは店から出て行った。

そして店の裏にある倉庫に入る。

2分ほど倉庫で待っているとミゲロが倉庫の中に入ってきた。

 

「ヴァン。お前さんは自分がどれだけ危ない事に首をつっこんどるのかわかっとるのか?」

「つい、いつもの癖で」

「……ということはお前は普段は王女を呼び捨てでよんどるわけだな」

「え、だって皆普通にそう呼んでるし」

「……本当なのかパンネロ?」

「えっとセアは王女様って呼んでるし、バッシュ小父さんは殿下って呼んでる」

「フランは……自分からアーシェに話しかけているとこ見たことないから知らない」

「無防備すぎないか?」

「でもアーシェなんて珍しい名前でもないから大丈夫だろ」

 

ヴァンの言う通り、ラバナスタに住んでるアーシェさんだけでも探せば25人前後はいるだろう。

別に珍しい名前でもなんでもない。

 

「そうかも知れんが……それだと【殿下】とか【王女様】と呼ばないほうがいいんじゃないか?」

 

その言葉を受けてヴァンとパンネロはハッとした表情をした後、黙り込む。

気まずい沈黙が倉庫内を包み込む。

 

「とにかく、それはセアや王女様にお任せするとして、いったいどうしてガリフの里に行くだけでこんなに1ヶ月もかかったんだ?」

 

その問いにヴァンとパンネロは今回の旅でのことを話した。

ガリフの里でラーサーと出会い、ダルマスカ再興させて帝国との友好を訴えて、二大帝国の激突を止める為にブルオミシェイスに行ったものの、アルケイディアでヴェインが政権を握り、それが不可能となっただけではなく、ブルオミシェイスそのものが帝国軍の襲撃で壊滅状態に陥った事を。

そして今度は【黄昏の破片】を砕く為に帝都アルケイディスに行く予定であることも。

 

「なんと……よく2人とも無事だったのう」

 

ミゲロが疲れた声で言った。

死んだレックスやパンネロの家族に代わって、ヴァンとパンネロの世話をしている身から言えばこれ以上旅をさせぬようとめるべきではと思う。

しかし……もうこれはどう言ってもとめられないだろうとミゲロは思った。

2年前、志願兵として軍に所属したレックスと同じような目を2人ともしていたからだ。

 

「とめはせんが、2人とも無事にラバナスタに戻ってくるんじゃぞ」

 

ミゲロの言葉に2人は頷いた。

 

「それはそうとお前さんらを慕ってる孤児達も心配しておったから会っておきなさい」

「「わかった」」

 

そう言って元気よく倉庫を出て行く2人を見送りながら、ミゲロはため息を吐いた。

 

「中年の男をあんまり心配させんでおくれよ」

 

ミゲロの年齢はヒュムに換算すると既に50手前である。

そんな歳の人物に自分の子同然の子ども達が危険な旅に出ている心労はかなりのものなのだ。

だが、八つ当たり気味に街の警邏をしている帝国兵相手にスリをしていた時よりヴァンは生き生きしているように見える。

ならばこの程度の心労は耐えねばなるまい。

 

「さて、ヴェインさんが代官として残していった部下に渡す商品を王宮に送らんとな」

 

ミゲロはそう呟くと倉庫をあさり始めた。

因みにミゲロがヴェインをさん付けでいう理由はヴェインがラバナスタの執政官に就任した際の歓迎の宴会を手配したのはミゲロの商会でその時にヴェインと顔を合わせた際に、以下のようなやりとりがあったのだ。

 

「ミゲロと申します。次期皇帝となられます殿下のお迎えできることは、まさに(ほま)れ。市民一同、まことに――」

「殿下はよせ」

 

ヴェインはミゲロの歓迎の言葉をそういって遮った。

 

「私は陛下の子ではあるが皇子ではない。わがアルケイディア帝国の皇帝は市民が選ぶもの。……私はただの候補にすぎんのだ」

 

この200年近くに渡ってソリドール家の人物が帝位についている為、よく誤解されているが、アルケイディア帝国の皇帝は血筋によって決まるわけではない。

軍部独裁時代に軍部の暴走を許した反省として、皇帝は血筋ではなく帝都の市民の選挙によって決まる。

なので現皇帝の息子が必ず次期皇帝となるわけではないのだ。

 

「これは失礼をば」

 

自分の失言に気づいたミゲロは頭をさげて、謝罪する。

 

「かといって……【執政官閣下】などとは呼ばんでくれよ」

「は?」

 

ヴェインの言葉にミゲロは不思議そうな顔をして見上げた。

するとヴェインは微笑みながら、

 

「私も今日からラバナスタ市民だ。ヴェインでかまわんよ」

「しかし、それでは――」

「呼び捨ては抵抗があるか? ならば今夜は、君が私をヴェインと呼ぶまで飲んでもらうぞ」

 

その日の夜の宴会でミゲロはヴェインからやたら酒を飲まされて、泥酔寸前のミゲロは折衷案としてヴェインさんと呼び、ヴェインがさん付けか……と軽く笑ったところで解放軍が王宮を襲撃したのだ。

その後もミゲロの商会はラバナスタ有数の大商会であったこともあり、毎日というわけではないがヴェインがグラミスによって帝都に召還されるまでかなりの頻度で顔をあわせており、ヴェインの人柄の良さもあってさん付けで呼ぶことに全く抵抗がなくなったのである。




>アーシェなんて珍しい名前じゃない。
オリ設定ですよ。勿論。
つーか、原作でも普通にヴァン達は普通にアーシェの名前で呼びまくってるよね?
もう少し隠そうという努力をしたほうが……

>ヴェインの人柄の良さ
ヴェインって仕事が関係なければ気さくな人だと思うんですよw
あくまで個人的なイメージですけどwww
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