書いても中々UAが伸びないから伝わってるのかちょっと心配。
(新作とか考えてることも書いてるので)
あと今回、ギャグ多めです。
ラバナスタ・ダウンタウン。
外民身分の者達の居住区であり、治安の悪いこの場所は犯罪者のたまり場でもある。
そんな地下街の隅で3人の孤児達がひそひそと話し合っていた。
「ジャン、それってホント?」
「うん、さっき見たんだ。この前見たきれーなヴィエラ」
「……確か、仕事して帝国兵から逃げる為に前見ずに走ってたらそのヴィエラの尻に顔から突っ込んだよな」
2人の孤児がジャンを羨ましいとばかりに睨む。
するとジャンは叫ぶように反論した。
「そんな目で見るな! それにその後、そのヴェイラの連れの男に凄い目で睨まれたんだ!『子どもでよかったな』って許してくれたけどさ!」
「んで、その後、砂海亭で見た空賊バルフレアの手配書の似顔絵に男の顔が似ててムッチャびくついたんだろ」
「ポン!お前、一回あの人から睨まれてみろ!セアさんほどじゃないけど恐いよ!!」
「いや、セアさんより恐い人なんかこの世にいるの?」
「……いないだろ。だってセアさんが怒ってるときって、無茶苦茶爽やかで優しい笑みを浮かべてるのに、目が凍りついたように笑ってなくて、何もないはずなのにセアさんの背後にヤバゲな黒いミスト的なものを幻視して、地獄の底から響くような低い低音で話しかけてきて、凄まじい力で折檻してくるんだもん」
「「わかるわー」」
当時のことを思い出したのか震えながら言う、ジャンの言葉にポンとケンはうんうんと頷いた。
しばらくその状態が続くとふと思い出したようにジャンが言った。
「なんか話脱線してないか?」
「そうだな。って何の話してたんだっけ?」
「えーっと確か……フィロになにか頼まれてて……」
「「そ、それだー!!」」
ジャンとポンの2人が一斉にケンの方を指差して叫んだ。
ケンはあまりに突然に自分に向かって叫ばれたので、少し驚いた。
「そうだよ!そうだったよ!!」
「なんで俺らまだここにいんだよ!こんなとこにガルバナなんか生えてるわけないんじゃん!!」
「あ、そうだったね……」
2人の言葉を聞いてようやくケンもガルバナを持ってくるよう頼まれていた事を思い出した。
「とにかく急ぐぞ。フィロに頼まれてからけっこう時間がたってる!」
「この前、ダラン爺から聞いた話だと確か南門から出てすぐのとこに生えてるんだったよね」
「よくそんな話覚えてるな。ケン」
「南門ならダラン爺の家の方の出口が出た方が早いよね」
「ポンの言うとおりだ。行くぞジャン!」
「ああ、空賊予備軍ファイヤー!!」
「「ファイヤー!!」」
謎の掛け声をあげて走っていく3人組の孤児をダウンタウンの人達は何か哀れなものを見る目で見ていた。
セアとバッシュはそろそろ上に戻ろうとダウンタウンの道を歩いていた。
「あ、セアさん?」
聞き覚えのある声を聞いて振り向くとそこにはカイツがいた。
「やっぱりセアさんだ!ってことはヴァン兄も戻ってきてるの!?」
「ああ。馬鹿弟子ならミゲロさんのとこじゃないかな?」
「そうなんだ!僕、ヴァン兄とパンネロ姉ちゃんに教えたいことがあったんだ」
カイツはピョコピョコと飛びながらそう言って、初めてセアの隣にバッシュがいたことに気がついたようだ。
「あの、セアさん。隣の人だれ? アマリアさんみたいに一緒に旅をしてる人?」
「ああ。俺達と一緒に旅してるシュトルテハイム・ラインバッハさんだ。遠方の国の出の人でな。無口だがかなり強いんだぜ」
バッシュはあんまりな自分の説明――無論名前の部分について抗議したくなったが、主君殺しの上に、ダルマスカを滅亡に追いやり、2年前に帝国に処刑されている筈の自分の本名を名乗る訳にもいかず、釈然としない気持ちになった。
カイツはというとセアにシュトルテハイム・ラインバッハさんの半分嘘交じりの武勇伝を長々と聞かされて目を輝かせていた。
「すっげー!!あなたとっても強いんですね!」
「カイツ、大きい声だしすぎだぞ。目立ってる」
背後からの声にカイツが振り返るとそこにはヴァンとパンネロの2人が立っていた。
「なにってシュトルテハイム・ラインバッハさんのことだよ」
「しゅとるて――なんだって?」
「ハハハッ、馬鹿弟子!お前は未だにシュトルテハイム・ラインバッハさんの名前を覚えれてないんだな」
突如会話に乱入してきたヴァンがボロを出さないうちにセアがバッシュの偽名を言った。
そしてセアはバッシュを指差して、
「名前が長すぎるから覚えづらいのはわかるけど、そろそろ覚えてやれ」
「えっ、だってシュナイダーなんとかじゃなくてバッ――デガフッ!!」
ここまで話して、状況を察することができない馬鹿弟子に制裁を躊躇う必要はあるまい。
そう考えてセアはヴァンがバッシュの名前を言い切るより前にヴァンの喉を掴んで黙らせた。
「デイーゴだって?お前いい加減に間違えるのをやめろ」
「……その名前、なにかの本で読んだ記憶があるようなないような」
セアの嘘まみれの言葉にカイツは首を捻りながらその名前のことを考えていた。
「ヴァン、セアさんもそう言ってるんだし、いい加減にしなさいよ」
パンネロの微妙な言葉でヴァンはようやくバッシュを名前で呼んではいけなかったのだと思い出した。
だって生きてるはずがない人物なわけだし。
「ご、ごめん。えーっと……ギルデンスターンさん」
「シュトルテハイム・ラインバッハだぞ。馬鹿弟子」
「ああ、そうだった」
ヴァンは神を手でくしゃくしゃにしながら苦笑した。
「そういや、カイツ。2人に教えたいことってなんなんだ?」
ふと思い出したようにセアがカイツに問うた。
「あのさ、空賊を目指そう団ってあったじゃん」
空賊を目指そう団という名に心当たりがあったセアがすかさず話す。
「ああ、馬鹿弟子が率いてた孤児達だよな?ってかもっとまともな組織名は思いつかなかったのか?」
「だって皆空賊に憧れてたから……」
「だからって安直すぎるだろ」
「満場一致だったからいいだろ」
「私は反対した記憶があるんだけど」
「……パンネロはメンバーってわけじゃないだろ」
「なによ。あなた達が地下水路で修行とかしてた頃、治療してあげてたの私じゃない!」
「ほう、俺がお前を弟子にする前はそんなことを10才にもなってない孤児達としてたわけか……」
「べ、別に魔物退治してたわけじゃない。ただ
「俺の記憶が正しければそれは犯罪のはずなんだが……」
3人の思い出話をバッシュは微笑ましい顔で聞いてきた。
カイツはいうと話をどのタイミングで切り出したものかと真剣に悩んでいる。
十数分後、3人の思い出話はようやく一区切りついた。
「で、オレ達に教えたいことってなに?」
「あのさ、最近2人ともラバナスタにいないじゃん。空賊に弟子入りしたとかで」
「……なにそれ?」
「え?だってミゲロさんが『あんな空賊についていきおって何考えとるんだあの2人は』とか言ってたから空賊になる為の修行をしてるんじゃないの?」
ヴァンが助けを求めるようにセアを見た。
するとセアは意地の悪い笑みを浮かべた。
これは最近ヴァンとパンネロがあちこちに旅をしている孤児達への良い言い訳になると思ったからだ。
「あながち間違いじゃないだろ」
「あんな奴に弟子入りなんかしないよ!!」
「だけど色々空賊をやっていく知識を教えてもらってるんだろ」
「それはそうだけど……。まだ飛空挺の操縦の仕方を教えてもらってない」
「早すぎるって考えてるんじゃないか?聞いた話じゃお前のせいでゴーグ製のエアバイクが墜落したと聞いたぞ」
「あれはオレのせいじゃない!!」
「ちょっと!本当に墜落したの!?」
「ああ、ちょっと王宮に忍び込んだときにバルフレア達に……」
「そういえば、ヴァン兄。王宮に忍び込んだ時に手にいれた戦利品はどうしたの?」
カイツの純粋な質問にヴァンは返答に
まさか自分達の死刑の免除と引き換えに戦利品である【黄昏の破片】をギースに渡したなどと言えるわけもない。
「あ、あれは……その……」
「予想外にもあんまり価値がなかったからはした金で売ったんだよな」
「そ、そう。セアの言うとおり!!」
「そうなんだ。ナルビナ送りにまでなったのに残念だったね」
セアの出した助け舟にヴァンが全力で乗っかり、カイツがそれを信じてヴァンに同情した。
バッシュはというと嘘だと分かっているのだが王家の秘宝に価値がないと言われて釈然としない気持ちになっていた。
もっとも、その思いを表に出すことはなかったが。
「それで2人とも殆どラバナスタにいないから皆でヴァン兄が一人前の空賊になってきた時に部下になれるよう練習しようって頑張ってるんだ」
「はぁ、それで誰が仕切ってるんだ?」
「僕とフィロだよ。と言っても僕は最近
「魔法?カイツはなにか魔法使えるようになったの?」
「うん。といっても{ケアル}と{ファイア}を日に数回使えるようになっただけだけど」
「凄いじゃない!」
パンネロが驚きながら、カイツを褒めた。
この短期間で仮にも魔法を使えるようになるのは並大抵の事ではできない。
「うん。フィロからもそう言われたよ」
「随分と魔法の才能があるんだなカイツ。……今度稽古つけてやろうか?」
「ごめんなさい」
速攻でカイツはその申し出を断った。
以前、セアがヴァンを稽古で半殺しにしていたのを見たことがあるからだ。
当然ながらちゃんと後でセアが魔法で治療したのだが、その場面を見る前にカイツは命の危険を感じて逃げてしまったのだ。
余談だが、そのせいで後日、ヴァンと会った時にカイツがヴァンをアンデットの類と勘違いした。
「あ、それでヴァン兄が率いてくれないなら空賊を目指そう団じゃないってジャンが言い出して、フィロや他のみんなも賛成したから組織名も皆と一緒に新しくしたんだ。皆と一緒に考えたんだよ」
「それもそうだな。以前の名前が安直すぎたし」
「そんなふうに言うなよ。なんて名前にしたんだ?」
ヴァンが尋ねた。
セアもどんな名前にしたんだろうと少し期待を込めて耳を傾けている。
「僕らの慕ってるヴァン兄とパンネロ姉ちゃんの名前をとって」
「名前をとって……?」
「空賊予備軍ヴァンネロって名前にしたんだ!!」
カイツが胸を張って答えた。
ヴァンは自分はここまで慕われていたのかと感激していたが、他の面々は違った。
「ヴァンネロって……」
「空賊予備軍……そのまんまだな」
「馬鹿弟子を慕う奴もネーミングセンスがなかったか」
3人とも微妙な表情をしながら思い思いの言葉を呟いていた。
「あー!!」
「「ヴァン兄!!パンネロ姉ちゃん!!」」
ヴァン目掛けて3人の孤児ジャン・ケン・ポンが突っ込んできた。
幾ら十歳にもならない子供達とはいえ、3人が一斉に突っ込んできたらタックルにも等しい衝撃がヴァンを襲うことになった。
「どけよ!痛いッ!!」
そのままヴァンの上に乗ったままになってた3人はその声で一斉にヴァンから降りた。
ヴァンは少し文句を言ってやろうと3人を睨むと、3人の孤児が持っているものに注意を引いた。
「それ、ガルバナじゃないか。どうしたんだ?」
「ヴァン兄のお兄さんのお墓の花が枯れてるからお兄さんが好きだったガルバナを探して来いってフィロに言われてたんだ」
そう言われてヴァンは軽い衝撃を受けた。
今まで墓の花が枯れるほどの長い期間、レックスの墓参りをしなかったことなレックスが死んでからのこの1年間ほぼなかったからだ。
レックスが死んでからというものなにか嫌な事があるとヴァンはレックスの墓を訪れていた。
だが、ケルオン大陸での数ヶ月に渡る旅の最中は色々なことがあってすっかり忘れてしまっていた。
「そうだヴァン兄。聞いてくれよ!!」
孤児達の声にヴァンは意識を戻した。
「なんだ?」
「フィロの奴、人使い荒すぎるんだよ!訓練だって異常な程厳しいし」
「そうだよ。ヴァン兄から一言フィロに言ってよ!!」
3人の絶叫にも等しい訴えにヴァンは少し困惑した。
カイツの方に目線を向けるとカイツは目線を逸らして口笛を吹いている。
どうやらフィロは相当厳しく孤児達にあたっているようだ。
「わかった。オレも兄さんの墓参りしたいしな。セア、パンネロ、バ―――」
「「「「バ?」」」」
カイツとジャン・ケン・ポンの三人が不思議そうな顔をしてヴァンを見た。
ヴァンはというとバッシュの偽名、なんだったけ?と必死に記憶を探っていた。
「えーあー、セア、パンネロ、ゲフャッハー。先に戻っ―――ぎにゃああああ!!」
「ゲフャッハーじゃなくてシュトルテハイム・ラインバッハだぞ馬鹿弟子!!」
ヴァンに右ストレートを決めながらセアはそう叫んだ。
バッシュは自分の偽名、自分でも覚えるのが大変そうだと思いながら、なんでこんなことになっただろうかとため息をついた。
【名前の元ネタ】
>ジャン・ケン・ポン
小学校の頃に読んだ絵本『海賊ポケット』の登場人物。
この絵本の章の終わりにあるお題がいつも無理難題ばっかだった気がする。
というか本当にお題全部クリアして読み切った奴は尊敬に値する。
>シュトルテハイム・ラインバッハ
『幻想水滸伝Ⅱ』で選べる偽名でシュトルテハイム・ラインバッハ3世ってのがあってね……
それにしても身を隠す為に偽名で貴族の名を騙っちゃっていいのだろうか?
どうでもいいがあの作品のルカ強すぎ。
>ギルデンスターン
『ベイグラントストーリー』のキャラ。スタッフによればザルエラのモデルになってるらしい。
買おうとしてた頃に松野さんがイヴァリース作品じゃないと発表したので買う気なくした作品。
>ゲフャッハー
『ヴィーナス&ブレイブス』のキャラ。選択次第でこの名前になるのだが妙な異彩を放っている。
因みに他の候補は【アレフ】【アッシュ】【エイド】
あと未だに主人公の過去が気になる作品。(どっかの国の騎士だったみたいだが……)