作者の中では今でも色褪せない、オリジナルストーリーもとい、自伝である。
なにげない日常で、今日もSNSを開いた。いつの間にか登録している友人の数が100人を越えていた。その中の1人が、掲示板でメル友を募集していた。
コメントや個人メッセで親交があったので、この人とメル友になることにした。
メールを重ねて行くうちに様々な情報が私のもとに入って来た。喘息があること、今かかっている精神科医とは長い付き合いで信頼がおけること。他には体の一部が激痛で何年も続いていることだ。
彼女と話していて、最初にぶつかった問題が排尿困難だった。私は彼女の処方されていた薬を全て調べあげた。結果、セロクエルという薬が犯人だったようだ。彼女がセロクエルを封印したら、ウソのように快適になったそうだ。
次に聞いた話しは睡眠薬の処方が、ヒルナミンからレボトミンに変わったという話だった。
私は怪しんだ。ヒルナミンもレボトミンも同じ、レボメプロマジンという物質であり、製造者が違うだけで効果は全く同じものだ。
そこで、私の行き着けの医者を勧めた。悪い医者では無いので、セカンドオピニオンとしてもいいアドバイザーになってくれる…。そう思って紹介した。道案内もした。
しかし、結果は悲惨なものだった。医者に冷たくあしらわれたそうだ。こんな医者など二度と行くものかと、ここでセカンドオピニオン計画は頓挫した。
だが、一緒に歩きながら、お互いに意識が芽生えたのか、始終いい雰囲気であった。この日はそのまま夕方に解散した。
日を改めて、再び会うことになった。目標は横浜、みなとみらい。
みなとみらいの観覧車を目指した。運動音痴の私にはキツい道のりだったが、なんとか、観覧車を楽しみ、夕方に解散と思いきや、一休みするためにホテル街にやってきてしまった。本人いわく、現実逃避だそうだ。
私は部屋の中で距離を開けつつ麻雀の参考書を読んでいた。彼女はベッドの上でご機嫌だ。
ダブルベッドなので、近くに来るように言われた。
ここでも、麻雀の参考書をゴロゴロ読んでいた私にとうとうお声がかかった。
私は懇切丁寧を心がけて、ひと時を過ごした。
そのあとは、彼女の地元、日吉に向かい、串焼き屋に案内された。たかが焼鳥屋とバカにしていたら、まず、フワフワのレバーが出てきた。うますぎる…。彼女は順々に注文していた。ことごとくうまい。
スーパーにあるような焼鳥をイメージしていたから、まさにこの味は革命的だった。
結局ベルトを緩めるほど食べてしまった。
数日後、彼女の家に招待された。かわいらしいウサギが飼われている。ウサギは臆病な生き物だから、まずは指先だけで挨拶。慣れたら頭をなでたり、体をさすったりする。喜んでるのかイヤイヤ耐えてるのかもわからないが、イヤなら逃げるはずだ。
一人暮らしの彼女は孤独に耐えきれず、私を呼んだのだ。
そして、一夜を明かして日中に帰宅した。
翌日も遊びに行く予定だったので、彼女の家に向かっていた。しかし、いきなり電話が来た。受話器越しでもわかるほどのヒュー音…重度の喘息発作だ。救急車を呼ぶという話しになった。
私は救急車を呼び、彼女は速やかに救急車に乗せられた。酸素マスクをつけて、いくらかラクになったようだが、相変わらず苦しそうだ。
自慢じゃないが、私は付き添いとして救急車には5回くらい乗っている。医者の付き添いには慣れている。
運ばれた先では応急処置だけ施して、落ち着きを取り戻し、その日は帰ってもよいと言われたので帰ったはいいが、車代が4000円くらいに膨らんだ…。
翌日もやはり同様の状態になり、別の救急病院にタクシーで向かった。たくさん待たされた。彼女は点滴と吸入をしながら必死に戦っている。
吸入薬が強すぎるのか、吸入中なんども戻していた。中身が無い分余計に苦しいはずだ。
痛々しい姿は私の心にもかなり響いた。
喘息についてはこれを最後に重い発作は出なくなった。
次の課題は体の痛みだ。私は整骨院などの医者の資料を集めた。病院に電話をして、確認もなんどもした。
だが、彼女はその痛みを受け入れてしまった。
戦う意識すら、痛みのせいで出ないのだ。
ロキソニンを多めに飲んだら軽くなったらしい。
痛みの問題もこれでどうにかなった。
私は近所に麻酔科があるので紹介したのだが、最後までこの医者の門を叩くことはなかった。
ある日、彼女の家に遊びに行き、他愛もない話をしながらのどかな1日を過ごした。
深夜か早朝に彼女の母親が訪問していたらしい。
私が目を覚ますとグラタンを食べていた。
数分後、
「3日間くらい寝ていたい」
そう言って睡眠薬を飲んでいた。気がつけば六日分の薬を一度に飲んでしまった…。
私はたかが睡眠薬とタカをくくり、救急車は呼ばなかった。1日眠ればケロリと起きると信じていた。
深い眠りを妨げないように、私は帰宅した。
翌朝、いつものように電話が鳴る。出動要請と思ったら、発信者は母君だった。
息をしていないという。
ウソだ…。今からでも救急車を呼べば…
数時間後に確認のために、母君にメールをした。
帰ってきた答えは、不幸の知らせであった。
今でも信じられない。信じたくもない。
あれから一週間。彼女からの連絡はない。
旅先には電話が無いようだ。
死に化粧はキミにはまだ早すぎる。まだまだ似合う年齢でもない。
キミに死に化粧は似合わない。