浦島太郎は、ただの漁師ではない。玉手箱が出てこない浦島太郎の痛快な物語。

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浦島太郎

 1XXX年。とある海岸にて騒ぎが起きた。

「か…亀が……亀が…ぐふっ」

そこらじゅうに横たわる数多の肉片。それらはかつて無邪気に遊ぶ子供達というものであった。勇敢な政府軍10万を今も踏襲し続ける亀。開戦から実に1ヶ月が経過していた。

「まもなく海軍より援軍がくるとの事です。」「それは昨日も言ってたな。殿、我が軍はいまや残すところ3万。あのバケモノにはいかなる武器も通用しないと来ております。ここは今一度火計による攻撃を試みるが上策かと。」

 

しばらくして軍議中に一人の男が現れた。

「我が名は浦島太郎。我、拳を極めし者也」言うなり姿を消し、亀がいる海岸に向かった。炎を吐き、空を飛び、亀とは言いがたい速度で動き回り浦島太郎をかく乱するが、浦島太郎は的確に亀の顔面を殴りつけた。たまらず、顔を引っ込め甲羅に籠もるが

「去ねい!!」

一瞬の出来事だった。

甲羅は砕け、血肉となった亀は尚も苦しそうにもがき続ける。この光景を目の当たりにした政府軍は震え上がり、いっせいに逃げ出した。その後浦島太郎の姿を見たものはいないとされている。

一連の事件から数日後、一時を騒がせた亀をはるかに凌ぐ体格の亀が海岸に現れた。全身を光らせ天に何かを祈るようなしぐさを取った。どこからと無く浦島太郎は姿を見せた。

「仇討と在らばまみえん。」

「急くな、迎えに来た。」

浦島太郎は亀にまたがり亀は海の奥底へと沈んでいった。海中には鮫、鯱と言った魚が多くいたが亀を襲おうとするものは無かった。「乙姫が貴様を見たいと仰せである。」

「是非もなし。」

浦島太郎にはわかっていた。これは亀の仇を取らんとする乙姫の策謀である事。これから向かう先で想像を絶するような大群との海の中での対決。承知の上でもぐりこむ浦島の目的は一つ。自らを越える者をまみえんがためである。

龍宮城に到着である。

「浦島様のご活躍、この龍宮城にも届いておりまする。乙姫様はそんな浦島殿のお姿を人目みたいと仰せです。どうぞ、ごゆるりと御寛ぎ下さいますよう。」

痺れ薬入りの酒を注ぎながら笑わせてくれる。浦島太郎にはバレバレである。

酒にも料理にも手をつけず、目の前を踊る美人、360度水槽となっている部屋の中での宴会は実にお祭り騒ぎのそれであった。

美しき部屋の中で美しき舞姫。しかし、浦島にはどれも興味の無い話だった。

「乙姫よ、汝が目的示して見せよ。」

と、おもむろに舞姫たちは舞を止めた。

「かかれ!」

舞姫たちは得物を手にいっせいに浦島に襲い掛かる。

数秒後、血の海に佇んだ浦島は乙姫をさらに挑発した。

「部下を殺されて尚逃げもせずそこに居座る気か。笑止。」

屏風の陰から一人の女が姿を現した。

「亀だけに留まらず、我が最愛の同胞たちをも……」

乙姫は足を広げ、超高速の回転蹴りを放った。それを難なくかわし、なぎ払う。乙姫は退かずに猛スピードの蹴りを放った。

傍目には足が何本にも増えて見えるであろう速度である。そして、間を取り、両手を突き出した掌から光の球が放出された。しかし、浦島も対抗して全身に赤黒いオーラを浮かばせながら巨大で青黒い光の球を発射した。

光の球を飲み込み漆黒の気が乙姫を飲み込む。「うううううううううううあああああああああああ!があああああああああああああああああ!」

全身を蝕む焼け爛れる感覚が乙姫を襲う。

「いいいいいいいいいいいいいいいいやあああああああああああああぁぁぁぁぁ」

一体どれほどの時間が過ぎただろうか…血だるまとなった乙姫はなおも立ち上がる。

「去ねい!」

いつぞやに見せた技である。

一瞬のまばゆい光が瞬きを促し、瞬きをした瞬間には相手は全身打撲状態で地面に伏すというあの技である。

しかし、それを以てしても乙姫はうつろな目のまま立ち上がる。

「同胞を思うゆえに立ち上がるか。」

浦島の姿が消えた。

乙姫がうつろな目で浦島の姿を探す。そして頭上に浦島太郎の姿が現れたが……浦島の着地した場所が何メートルもの深さを持つ巨大クレータとなり、乙姫の頭蓋は割れていた。

死臭に満ちた部屋を後に残った龍宮城の兵士、召使を一人残らず亡き者として地上に舞い戻った。地上に舞い戻った浦島太郎はそこに一人の男の姿を見た。桃の刺繍が施された鉢巻を巻いた男である。

「我が名は桃太郎。拳を極めし者也!!」

偶然か宿命か。元ネタが見事にかぶっている二人の対決は互角だった。浦島太郎が青黒い光の球を放てば桃太郎は灼熱の光球で応戦。ぶつかり合った光の球は大爆発を起こし、半径10キロメートル四方を焼き焦がした。

この事態を重く見た政府側の対応は

「日本中の兵を集め、この二者を討ち取る」

というものだった。しかし、戦国の最中に大名らは兵を出すもの、拒むものとに別れた。そして終結した兵の数は実に100万。三国志で有名な赤壁の戦いのパクリと思われるかもしれないが100万人の兵士が一同に集結したのである。

作戦は鉄砲隊と弓矢隊合計10万が四方を囲み、謎の二人組みを打ち滅ぼすというものだった。そして、号令と同時に攻撃が開始された。命中はする者の二人ともあたった事にすら気づかず実際に傷も付かない。時にオーラをまとっている時など矢が触る前に燃え尽きてしまう有様だった。

「大砲隊。進めーーーーーーっ」

大砲が飛び交っても尚浦島と桃太郎が怯む事は無かった。やがて二人は間合いを取り構えを崩した。

「先に。」

二人は仲良く軍勢の方を向き浦島は青黒く、巨大な光の球を桃太郎は灼熱の、巨大な球を軍勢に向かって放った。爆風と炎が100万の軍隊を飲み込み、もはや血の河ができることなく蒸発し、骨さえ残らぬ灼熱の地獄が大地を染め上げた。

浦島と桃太郎は意外なコンビネーションのよさに戸惑いつつも

「我ら提携して修羅を求めん。」

どうやら意気投合したらしい。かくして二人はいずこか知れず旅立った。

場所は変わってとある山奥の老人宅。ここに第3の修羅の影が見えつつあった。川でクリーニングの仕事をしていたお婆さんの所にお椀が流れてきたのである。

「桃の次はお椀じゃわい。またヘンなのが出てこなければ良いのじゃが…」

願いむなしくそこに一人の小さな少年がいた。「婆、一夜の宿を頼みたい。無論できることは何でも手伝おう。」

何でも手伝うといわれても掌に乗るようなヤツに言われても困るのでとりあえず家に連れ帰ったのだった。


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