夜魔―理々禍流奇譚   作:罠ビー

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 メルヘン×リリカル。字面だけ見ればかわいらしいですね。完全に見切り発車ですがよろしくお願いいたします。誰かmissingのSS書かないかなぁ


理々禍流奇譚―1

 それは私のいつもの日常がちょっと愉快なものに変わる程度の出来事だった。

 

 

 

 今日も今日とて私は日課の散歩に出かけた。私が今よりも幼い時に、一人だった私にできた友達に会うためだ。家のみんなが忙しくて邪魔しないように一人でいたとき、ここであったお姉さんが教えてくれた優しいお友達。

 

「こんにちは、ブランコの妖精さん」

「こんにちは、魔女さん」

 

 ブランコの妖精さんはたまに一人でブランコで遊んでる子の隣でブランコに乗ってあげる優しい妖精さん。私以外のみんなはなぜかすぐに離れちゃうけど。

 

「妖精さんも遊びたいんだよね」

「寂しいけどいつも魔女さんが一緒に遊んでくれるから平気よ」

 

 

 

 近所の松井さんのお家に置いてある鉢植えの中にあるお野菜はいつも小さい小人さんによって管理されている。今は何も植えられていないので小人さんはせっせとクローバーを育てていた。

 

「こんにちは小人さん」

「こんにちは魔女さん」

「いつも育てたクローバー抜かれて悲しくない?」

「クローバーを育ててるわけじゃないんだ。俺たちはクローバーの根っこを育てているんだ」

 

 根っこを育ててるってなんの意味があるのだろうか。あの鉢植えの中が気になる。

 松井さんがお出掛けなのかおめかしをして玄関から出てきた。

 

「こんにちは松井さん」

 

 松井さんは何も言わずに家の中に引っ込んでしまった。

 

 

 

 お家に帰るとお母さんにお父さん、お兄ちゃんにお姉ちゃんが食卓についていた。

 

「ただいま、お母さん」

 

 お母さんは私を見ない。

 

「ただいま、お父さん、お兄ちゃん」

「……座りなさい、なのは」

「……ああ、おかえり」

 

 二人はぎこちなくだが返してくれた。その間にお姉ちゃんは部屋に戻ってしまった。

 

「ただいま、隙間の人」

 

 棚と冷蔵庫の隙間から私たちをじっと見ている目に挨拶をする。

 

「ただいま、電球揺らしさん」

「ただいま、天井の」

 

「もうやめてよなのはっ!」

 

 お母さんが大きな声をあげながら泣きそうな目をして立ち上がる。

 

「どうしたの、お母さん」

「なのはには何が見えているの?何も居ないじゃないっ!!」

 

 お母さんは天井を指差しながら叫ぶ。差された天井裏の小人さんは怯えて走り去ってしまった。

 

「いたよ?今はいなくなっちゃったけど」

「嘘をつくのはやめなさいなのは。何も居ないじゃない」

 

 お母さんにしかりつけられるが私は知っている。お母さん以外には見えているということを。

 

「いたよね、お父さん」

「あなたっ」

「なのは、お母さんが怖がるからやめてくれないか」

「でも」

「なのはっ!!」

 

 怒られたから私は押し黙る。でも挨拶しないのはやっぱりおかしい。元気に挨拶をしなさいと言ったのはお父さんだ。なのでごめんねと心の中で口にする。

 

 ――いいんだよ、魔女さん

 

 どうやらみんな許してくれるらしい。やはりみんないい人だ。

 ……だけど私は知っている。みんなは本当は怖くてきっとお母さんなんかは知らないうちに食べられてしまうかもしれないのだ。そしてお兄ちゃん達はみんなからお母さんみたいな人を守っていることを。

 

 でも彼らとは仲良くなれると思うの。だから私は彼らに挨拶をする。

 

「……こんにちは」

 

 お母さんの泣き声が大きくなった。

 

 

◇◇◇

 

 

「こんにちは。暗い顔してどうしたの?」

 

 その出会いは突然だった。

 

 夕暮れがオレンジ色から青に変わり始めたころ、私はお父さんが入院していてお母さんやお兄ちゃんが忙しいからいい子で居ようと独り公園に居たときだった。周りで遊んでいた子ども達は遊びたりないといった感じを残しつつも迫り来る夜から逃げるようにお家への道を歩いていった。

 私も帰らないといけないはずだったんだけどその日はどういうわけか私はその場から動こうとはしなかった。

 でもそんな私に声をかける人はいない。何故なら私には友達がいないから。だからとても驚いた。それと同時に不思議だった。何で私に声をかけてくれたんだろう。

 

「それは貴女が寂しそうにしてたからだよ」

 

 ――寂しそう?

 

「そう、貴女の周りにはいっぱいの友達がいるのにそんな寂しそうな顔をしてるんだもの」

 

 ――いっぱい友達がいるの?

 

「うん、貴女が見えてないだけでみんな貴女と友達になりたがっているよ」

 

 そう言われて下を向いていた顔を上げる。辺りは一面暗くなっており周りに先程までいた子ども達はまったくいなくなっており代わりに目の前にいたのは中学生くらいのお姉さんだった。白いワンピースを着た、携えた深い微笑みが印象的だった。そしてぞわぞわと何かが私に纏わりつくような感覚がする。そうか、これがお姉さんの言う友達なんだね。

 

「ふふ、もう寂しくないでしょ、『不屈の歯車さん』」

「うん。こんなに私を見てくれて、触れてくれて嬉しいの」

 

 私の答えにお姉さんは浮かべていた笑みを深くした。つられて私も笑顔になった。

 

「ねえ、お姉さんの名前はなんて言うの?」

 

 

 

「十叶 詠子だよ、『不屈の歯車』さん。」

 

 

 そう言った詠子さんは笑い、私も笑いながらお友達に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 忘れられないその日のような綺麗な夜に私はまた運命的な出会いをした。

 

 

「君は?」

 

 

 

「私は高町なのは。魔法も使えないし、空も飛べないけどたくさんのお友達がいる魔女だよ。喋るイタチさん」

 

 


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