トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。 作:袖野 霧亜
「あー、こほん。改めて紹介するぞ比企谷。こっちにいる2人は雪ノ下と葉山だ」
「「ど、どうもお騒がせしました……」」
「お、おう。まぁ気にすんなよ」
やっとこさ教室に入れた俺は中でてんやわんやしていた二人とようやくご対面の形をとることが出来た。いや長ぇよ三十分も外で待たせるなよ普通に帰ろうかと思ったわ。いや、マジで。外で待ってる途中とか折本に連絡取って合流しようとしたくらいだわ。あー、アイツ等今頃は家かな〜。俺も早く家に帰ってダラダラしてぇ……。
「それで先生。なんで俺をここに呼んだんですか?」
「あぁ、それはだな」
「──せんしぇっ、んんっ、先生。ここからは私達から説明します」
平塚先生の言葉を遮るように雪ノ下が後を引き継ぐようだが大丈夫かこいつ。若干不安が残るんだが……。
「まずは比企谷君。先程は取り乱してごめんなさい。隼人君も頭を下げなさい」
「え、いや俺は関係ないというか寧ろ止める立場にいたから──」
「隼人君」
「はいごめんなさい」
おぉ、完全に尻に敷かれてるな葉山のやつ……。一体この数年でどんな変化があったんだ。
「……んで、要件はなんだ。まさか今更昔話しようって訳じゃねぇよな?」
「そのまさかよ。比企谷君、貴方には謝らなくてはいけない事が三つ程あるわ。そして謝って欲しい事が一つ」
「…………は? いや待て何の事だ? 俺謝られる事とか謝らないといけない事したっけか?」
「まず私達が謝らなくてはいけない事の一つ目よ」
無視ですかそうですか分かりましたよ全部聴くから後で俺の話もちゃんと聴いてね。良い子のみんな、八幡お兄さんとのお約束だよ。
「一つ目、あの日、貴方に助けて貰ったのに礼を言えなかったこと」
「その件に関しては全くのお門違いだから気にすんな。お前はなんにも悪くない」
「二つ目、葉山隼人とかいう私の隣に図々しくも立っているこの似非紳士をあの時までに御しきれていなかったこと」
「おい葉山、こいつ今とんでもない事言ったぞ。気のせいか?」
「三つ目、やっと同じ高校になれたにも関わらず貴方の前に姿を出す勇気を出せなかった事よ」
「三十分前の出来事が物語っていたな。何? 俺と会うのそんな緊張するイベントなの?」
「比企谷。今彼女に君が話しかけても無駄だよ。緊張のし過ぎで殆ど聞こえてないみたいだから」
なんと、さっきから主観的に見ても余計だと思われる茶々を入れてみたが無視されてたわけじゃなく本当に聞こえてなかっただけなのか。
それにしたってアガりすぎだろ。今もなんかペラペラ喋り続けてるし。よく噛まずにそんなに喋り続けられる──あっ、噛んだ。うわっ、痛そー。
「んで葉山。これだけの為に俺は平塚先生にドナドナされたのか?」
「そのまさかだよ。本来なら去年の内にこっちから行くつもりだったんだけど、雪乃ちゃんがあんな感じで引きずるから平塚先生が見かねてね。この事についてもすまなかった比企谷」
「まぁこの件についてもその件についても俺からしたら気にするなって感じだし、寧ろアイツは自分で何とかしてただろ? だから詫びも礼もいらないんだよ」
「それでもだ。ありがとう、比企谷。君がいなければ俺はずっと昔のまま停滞をしていたし、雪乃ちゃんと今もこうしていられることは無かったかもしれなかったから」
「そうかよ」
頑固すぎるだろ、コイツも、雪ノ下も。何年前の出来事を律儀に礼を言おうとしてたんだよ。俺なら半月で諦めるね。機会があれば言うかもしれんが。
「んんっ、二人だけで話を進めるなんて失礼じゃないかしら?」
「もう舌は大丈夫なのか?」
「私からもあの時の事の礼を言いたいのよ。それなのに貴方達ときたら私を無視して話を進めるんですもの」
「いやだから舌噛んで話せなかったろお前」
「知ったことではないわ。次からはハブるの止めなさい。トラウマを掘り返すわよ、私の」
「倒置法で強調するなよ。俺が悪かったから」
「ごめんね雪乃ちゃん。先に話をしてしまって」
「本当よ。トラウマを抉り返すわよ、貴方の」
そこはお前のじゃないのか。
「さぁ比企谷君。観念して私に謝られなさい」
「おうはよしてくれ」
若干疲れてしまったから返事が辛辣気味になったが許せ。
「ええ、比企谷君。あの時、助けてくれてありがとう。それとごめんなさい。言うのが遅すぎたわ」
「あぁ、まぁ、いい」
「さて、これで私の要件は八割を終えることが出来たわ」
ん? 残り二割って何? ……あぁ、そういえば謝って欲しい事があるとか言ってたな。はて、なんだったか。俺特に悪い事してないよな? ……ないよね?
「貴方に一つ、聞いておきたい事があるのよ。その返答如何で長くなるわ」
「雪乃ちゃん。もうそろそろ下校時間になるから手短にね」
時計を見てみるともう下校時間の十分前だった。そりゃ疲れるわ。こんなに学校に残ったの中間と期末テスト期間の勉強会くらいじゃないか?
「……仕方ないわね。それでは比企谷君、質問するわ。何故、あの日貴方は何故あんなマネをしたのかしら?」
「……それを聞くか」
「当然よ。私には貴方の行動を理解する事が出来なかったから」
「そうか。じゃあ端的に言うと雪ノ下が泣いてる所を見て我慢ならなかったから、そんだけだ」
「……泣いてた? 私が?」
あれ、雪ノ下さんの後ろから黒いモヤみたいなのが出てきたよ? 疲れてるのかな。
「……とりあえずそれは置いておくわ。それで、貴方はそれだけの理由で自分にも被害が出るような事をしたのかしら?」
「そうだな。まぁ他にもっといいやり方があったかもしれんが、俺にはそれしか思いつかなかったんだ」
「そう。わかったわ。だけどね比企谷君。これだけは言っておくわ」
「…………」
「貴方が傷つく事で傷つく人がいるのだから、二度とあんなマネはしないで」
「…………あぁ、スマン」
あの頃は小町にもかなり心配させちまったからな。こればっかりは反省をしなくちゃいけない。それに今はアイツ等だっているんだ。やらかそうものなら二、三時間程こってりと絞られてからのラーメンを奢らにゃならん事態になりそうだ。
「ええ、許すわ。それじゃあ今日はこの辺で解散しましょう」
「終わったか。戸締りはしておくから早く帰りなさい」
あ、そういえば平塚先生もいたんだっけか。すっかり忘れてた。
「ありがとうございます。帰りましょうか、比企谷君」
「あ、俺も同行していいかな?」
「あら、まだ居たのね。とっくに帰ったものだと思っていたわ」
「今日はいつもより切れ味が増してるな雪乃ちゃん……」
…………。
「なぁ最後にこれだけ聞いてもいいか?」
「「何?」」
「お前等って付き合って──」
その後の記憶は何故か無くなっていて、いつの間にか自室で次の日の朝を迎えていた。
書きました。どうも、主の霧亜です。
初めに出すのを遅れてしまい、申し訳ありません。完全にサボりもありますが忙しかったのは事実なので許してください。
もう、後書きを、書く気力も……無いので…………終わります…………ごめん、なさい。