トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。   作:袖野 霧亜

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この作品の終わりまでの流れが決定されました。


由比ヶ浜、クッキー作るってさ 〜①〜

「そういう訳で、新しく奉仕部に入ることになった比企谷だ。仲良くしてくれたまえ」

 

 何がそういう訳なのかは本当にわからないが、要はあれだ。平塚先生に半脅迫地味たことをされて入部をすることになってしまったのだ。残りの半分は自分の過ちを正すために、自らの意思で入部を決意した……のだが、

 

 

 

 ──あのすみません。俺何かしましたっけ? 

 

 

 

 いや、俺にはまったく身に覚えが無さすぎて困惑を禁じ得ないんだけど。平塚先生に聞いても「それは自分で気づいて自分でなんとかしないといけない」とか言って何も教えてくれないし。

 いやまぁ、たぶんだけど、俺がやらかした? 事に雪ノ下と葉山が関わってんのかなーとか予想はしてるんだけど、特に何もなさそうじゃない? 寧ろ昨日感謝されてたじゃん。何かあるはずが無い。……と思いたい。そんな人生だった。

 少し判断を早まったか? でも平塚先生が思わせぶりな事言うしなー。はっきり言って凄く気になる。あれ? そもそも本当に俺が原因でこの2人に何かあるのか? 小学校時代にですらちゃんと話したことないぞ?

 あれれ? もしかして俺、先生にハメられた? 

 

「………………」

「先生、そういう事は事前に言っておいてください。雪乃ちゃんが死んじゃいます」

 

 えぇ、俺が入るのそんなに嫌なの? うっかり俺も後を追いたくなっちゃうからそうであって欲しくはないんだけど。

 

「いやすまない。決まったのがほんの数分前だったから、連絡するのも億劫、ではなく面倒でな」

「取り繕う気無いですね……」

「そんで葉山。俺は入部していいのか? ダメなら帰るけど」

「え、あぁ。もちろん歓迎するよ。でもいいのかい?」

「何がだよ?」

「ほら、いつも一緒にいる人達がいるじゃないか」

 

 あー、何となく言わんとしてることはわかるが、

 

「さすがにアイツらと年がら年中ずっといるわけじゃねぇよ。それに俺が来れる日だけ出ればいいって条件付きだしな」

「そうか。ならいいんだ」

 

 言葉では納得の意を出したが、表情からは疑念のようなものが滲み出ていた。

 ふっ、甘いぞ葉山。色んな意味で視線や男子からの嫉妬を集めに集めまくってしまった中学時代。あれのせいで他人からの視線や顔の表情である程度の情報を手に入れる技術を身につけた俺に隠し事は中々出来ないぞ? 

 ……ちなみにその男子からの嫉妬にはあのBL君も入っている。名前は結局最後まで折本のガードによって知ることはついぞ無かったが、懐かしいなアイツも。俺の事はもう忘れてくれているかな? いや忘れていてくださいお願いします。ていうか俺も忘れたいので忘れさせてください。

 とはまぁそんな独り寸劇をしていたら葉山が雪ノ下を「雪乃ちゃーん。そろそろ起きてー」とか言いつつどこから取り出したのかわからんがそこそこ音の大きいクラッカーを鳴らして正気に戻そうとしていた。良い子のみんなはクラッカーを鳴らす時は絶対に人に向けたり耳元で鳴らしたりしないようにしよう! 八幡お兄さんとの約束だぞ☆

 

「っは!? ここは……」

「起きたか雪ノ下」

「はい。それで何があったんですか? 比企谷君が入部するという夢のまた夢のそのまた夢のような出来事があったような気がしなくもないのですが……」

「俺がここに入ることがそんなに不思議か?」

「きゃっ」

 

 あら可愛らしい悲鳴。本当に悲鳴だったら泣きたくなるけど。そして流れるように部室に置いてあった椅子に隠れるようにしてひょっこり顔を出し、

 

「ゆ、夢ではなかったようね。まさかこれが現実で起きた現象だなんて……。もしかして今見ているこの光景ももしかして夢なのではないかしら? そんな事が起きるはずがないというのに。いいえ、ダメよ。雪ノ下雪乃ともあろうものがこの程度で動揺してはいけないわ。少しは姉さんのあれを見習わないといけないわね。癪ではあるけれども、あれはあれで使いようによっては充分強力ですもの。そうと決まればすぐに連絡を──」

「おい葉山。大丈夫か、コイツ?」

「……大丈夫だよ」

「目をそらしてんじゃねぇよ」

 

 心配になってきた。主に雪ノ下とちゃんと話せるようになる日が来るのかとか。

 

 その後、しばらく雪ノ下がぶっ壊れてたが治すの面倒だからそれまで葉山と雑談をして暇を潰してたら雪ノ下がどこかに電話をしようとしたがすんでのところで葉山が止めに入るまでの流れは端折らせてもらおう。これから先もどうせあるだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコン。

 

「ん? 誰か来たのか?」

「そのようね。どうぞ」

「し、失礼しまーす……」

 

 入ってきたのはピンクでお団子ヘアーの女の子だった。身体的特徴を述べるとそうだな、雪ノ下と真逆のわがままボディな感じ。おっと、この事は絶対に誰にも言わないでおこう。折本に聞かれたりしたら「へぇ……」の一言と光のこもってない目で見られそうだ。いや、そうだじゃなくて見られてるな。一回だけそれらしき事してこんな事がありました。いーじゃん! 俺も健全な男なんだから! いやダメですよねあの時に学びました。その後なんか俺が言ったらすぐに元に戻ったけども。いや、あの時の折本怖かったなぁ〜。

 

「平塚先生に言われて来たんですけど……。って比企谷君と隼人君だ。おいっす!」

「やぁ結衣。どうしたんだい?」

「あ? 誰?」

「二年F組の由比ヶ浜結衣さんね。比企谷君、貴方と同じクラスのはずよ?」

「いや、俺はE組だ」

「なんで微妙な嘘をつくんだ。俺も一緒のクラスなんだから騙されるわけないだろう?」

 

 あ、コイツ俺と同じクラスなんだ。まだ全員の名前とか確認してないからわからんかったわ。俺が知ってるのは折本達のクラスくらいだし。

 ちなみに俺と折本は同じクラスで刻達はお隣のE組だ。まぁ別のクラスになったと言っても休み時間とか普通に集まってるから自分のクラスとかどうでもよくね? ってなってる。

 

「てか俺のクラスのやつまで覚えてんのな。もしかして全校生徒覚えてんじゃねーの?」

「あら、それだけでは無いわ。ちゃんと教師陣まで網羅しているわ。何かあった時のためにね」

「何があったら必要になるんだよその情報……。葉山、三行くらいで例を挙げてみてくれ」

「夏草や

 つわものどもが

 夢の跡

 そして輝く

 ウルトラソウル」

「誰が短歌を歌え──いや待てそもそもそも俳句じゃねぇかそれに何だよ唐突にB'zもぶっ込んでくるなそれと三行でまとめろって言ったろそもそもそのネタニャル子さんだろお前も読んでんのか読んでないのにやったのかそうだったらフォークで刺すぞ」

「それで、由比ヶ浜さんはなぜここに来たのかしら?」

 

 無視しないでください雪ノ下さん。今俺すっごく頑張って息継ぎ無しで噛まずに言い切ったんだからそこだけでも褒めてくれてもいいのよ? 

 

「あ、うん……。えっとね……。クッキーを作りたいから手伝って欲しいんだ……」

「「クッキー?」」

「それなら調べればいくらでもレシピが見れると思うのだけれど?」

「うぅ、実は何度か作ってみたんだけど全部失敗しちゃってさ〜」

「ほーん。それなら雪ノ下か葉山が教える事は確定したから安心しろ。この二人なら確実に教えられるだろ」

「待ちなさい比企谷君。さり気なく自分の事を省かないで頂戴」

 

 いやだってクッキーとか作ったことないんだもん。そんなやつが人に教えられるわけないでしょ? それにクッキーって分量ミスったら焦げたりなんだりするんだろ? なら下手に俺が手を出すより傍観していた方がいいだろ。適材適所にやっていこうぜ。

 

「じゃあ比企谷には味見役を頼もうかな。甘いものが苦手じゃなければだけど」

「あぁ、それなら任せてくれ。不味いか不味くないかで完璧に判断してやるよ」

「なんで不味いか不味くないかで!? 普通そこは美味しいか美味しくないかでしょ!」

「ここに来る前に失敗し続けたやつが最初から美味しいクッキーを作れるわけないだろ」

「うっ」

「もういいかしら? 早くしないと時間が無くなってしまうわ」

 

 おっと、それはいけないな。仕事なんてものはさっさと終わらせてしまうべきだ。さすが雪ノ下、俺のポリシーを抑えた上での発言ならスタンディングオベーションものだ。決してそういうものでは無いとは分かっているが。

 

「そしたら俺達は飲み物買ってくるよ。雪乃ちゃんはロイヤルミルクティーで結衣はレモンティーでいいか?」

「えぇ、お願いするわ」

「あ、ごめんね。ありがとう!」

「じゃあ俺はテキトーなコーヒーでいいぞ」

「比企谷も来るんだぞ?」

 

 何故だ、と言うよりも早く葉山に手を掴まれて教室から引きずり出される。おい待てどこまで手を握ってるつもりだ離せこの野郎。廊下に出たんだからもういいだろ。逃げないから、この手を離そう、な? お願い離して十円あげるから! 

 




主「というわけでしばらくはこっちを優先で書こうと思う」

美咲「許さん死刑」

主「また次回、お楽しみに」

美咲「無視すん(ry」

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