トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。   作:袖野 霧亜

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由比ヶ浜、ハピバ ~④~

「由比ヶ浜さん、今日は家に帰れないと思うことね」

「雪ノ下さん、お願いだから言い方をもう少し考えてくれないかな」

 

 由比ヶ浜の誕生日当日の朝。ホームルームも終わった我らが2-Eに突如として現れた雪ノ下雪乃は、あろうことか大人のお持ち帰り宣言をかましやがった。ナイスツッコミだぞ葉山。お前がいなかったら大惨事だったぞ。

 ていうか、アイツ今雪ノ下のこと名字で呼んでたな。場所で気でも使ってんのかな? 何のかは知らんけど。

 

「えー……っと、私、どこに連れていかれるのかな……?」

「ちょ、雪ノ下さん! 結衣にナニしようとしてんだし!」

「あら、何故そんなに取り乱しているのかしら? ただのお誘いじゃない」

「お、お誘い……!?」

 

 あらー、あんなにハデハデな……誰だっけ、まぁいいか。金髪縦ロールがめちゃくちゃ取り乱しちゃってるじゃん。見た目完全にビッチっぽいのに。

 

 

「は、隼人! まさか、隼人も雪ノ下さんのそれに……!」

「大丈夫、優美子、誤解しないでほしいんだけど、ただの誕生日パーティーの誘いだからな? 結衣、今日誕生日だろ?」

「えっ、う、うん。あー、なるほどね? ビックリしちゃったよ……ホントに」

「……それならそうと早く言うし! も、もちろん? あーしはわかってたけどね! もちろん!」

 

 そんな顔面真っ赤にして言われても説得力が皆無なんだよなぁ。なにあの子、もしかしてとんでもなく清純派ギャルだったの? ギャップ萌えが過ぎるんじゃないのか?

 

「それで、どうかしら由比ヶ浜さん。もし先約があるなら別の日にセッティングするけど」

「あー、えっと……」

「いいよ、結衣、行ってきな」

「え……、いいの?」

「いいから、あーしらとは明日にでも祝ったげるから。今日は雪ノ下さん達と楽しんできな」

 

 へー、意外といい人だな。人って見かけによらないってこういうことを言うんだろう。好感度高いですね、これは。なんで実況者みたいな立ち位置になってんだ、俺は。

 

「礼を言うわ、三浦さん。この借りは必ず返すわ」

「雪ノ下さんが言うとなんか違う意味に聞こえるんだけど……」

「気のせいよ。じゃあ、由比ヶ浜さん。また放課後に奉仕部でね」

「うん、またねゆきのん」

 

 長い黒髪を翻し、教室から出ていこうとする雪ノ下……だったが、なぜか急旋回して俺の席にスタスタと歩いてきた。

 何、どうしたの、なんかあった?

 

「比企谷君、おはよう」

「お、おう、おはよう」

「……じゃあ、また」

「おう、また部室でな」

 

 それだけのやりとりをするためにわざわざ来たのかコイツ。去り際に「よし、噛まずに話せた」って小さい声で呟きながらガッツポーズしてるのが見えたけど、知らないふりしといてあげよう。いったら絶対壊れるだろうしな。

 

「あれ、雪ノ下さんいたの?」

「おう、折本か。どこ行ってたんだ?」

「数学の教科書持ってくるの忘れたから刻に借りてきたんだ~」

「は? 忘れるなんて概念あるのか? 置き勉してないのか?」

「比企谷には関係ないかもしれないけど、今日までの宿題あったかんね?」

「ほーん、そうなんか」

「興味なさすぎでウケる!」

 

 高校受験までは頑張った数学だが、学年が上に行くたびに訳が分からなくなり、ついには刻にお手上げだと言われてしまう始末になった。みたか、これが俺の実力だ、エッヘン。

 

「じゃあ今日の宿題は」

「当然やってない」

「だよね、ウケる」

 

 緩い会話を朝のHRが始まるまで続けた。

 そして、午前の授業をすべて終わらせた後、気付いてしまった。

 

「……由比ヶ浜の誕プレが、無い」

 

 おかしい、確かに昨日バッグの隣に用意しておいた……。

 

「やっべ、バッグ入れるの忘れてた」

 

 本当にやらかした。

 仕方ない、雪ノ下に連絡して時間稼ぎするよう頼んでおくか。

 あと、折本にも後から合流することを伝えておくか。

 

「折本、すまんが」

「比企谷ごめんっ! 先に行っててくれない? 結衣ちゃんの誕プレ持ってくるの忘れた!」

「いやお前もかよ……」

 

 なんでこうもタイミング悪く折本まで忘れてんだよ。カップルかお前等……カップルだったわ。

 

「なら早く取りに帰るぞ。あまり遅くなったらドヤされちまう」

「だね〜。ひひっ、二人して誕プレ忘れるとかウケるっ」

「ウケなくていいから、行くぞ。実は怒らせるとおっかないんだからな、雪ノ下のヤツ」

「マジ? じゃ、早く帰んなきゃじゃん。すぐ比企谷の家の前に行くから先に行ってるね」

「おう……いや待てわざわざ合流しなくても──」

 

 って、早すぎるだろアイツ。もう見えなくなったんだが。

 あの調子だとスマホも見ないだろうし、俺も早く家に帰るか。折本が俺の家に来る前にはさすがに着いてないとマズイしな。




 精神が死んでました霧亜さんです。
 いや、普通に忙しかったのもあるんですが、他の方々の作品読み漁ったり一次創作裏で書いたりAPEXしたりしてたらいつの間にか七月に突入してました……申し訳ない。

 今回で結衣ちゃんのハピバ終わらせようと思ってたんですけど、誕プレ何にするか悩みまくった結果先延ばしになりましたサーセーン(ºωº)

 ちなみに誕プレは決まりかけてるので大丈夫です。次で終わります。

 そんなわけで後書きもそこそこに終わります。次回も首をキリンにして待っててね♡

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