魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD   作:トータス

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こうなったのではないか、こうなるのではないかと・・・


クリスマス・結末

「・・・オ! デュ・・・ デュオ! デュオ! 目ぇ覚ましい!」

 

 バチン!

 

【・・・痛イ】

 

 ゆっくりと起きると、ハヤテお姉ちゃんが手を振り上げ、更に叩こうとしていた!

 

「やっと目ぇ覚ましたか。行き成り降って来たと思ったら、グースカ寝てるんやモン!

どうなる事かと思ったで?」

【デモ、痛イ!】

「ああ、ゴメンゴメン! で、外の様子、教えてくれへん?

私もさっき目ぇ覚ましたばっかで、何や揺れてる事しか分からんのや」

【・・・エット、魔王《なのは》・雷様《フェイト》VS大怪獣 大戦争?】

「・・・そか、夢か。寝直そか」

 

 何だか夢を見ていて、それが混在しているのだと思いたい、らしい。

 

【・・・ビータ姉ハ? シグママ、シャママハ? ザフーラハ?】

「ああ・・・って! そうやった! なのはちゃんとフェイトちゃんに消されて、それで!」

 

 そんな事を話していると、上の方が罅割れて人が降りて来た。

 

「ハヤテ! デュオ! 無事だった!?」

 

 その声を聞き、つい出た言葉が有った。

 

【ア! フェイトママ!】

 

 何故そう言ってしまったのかが判らないまま、ついそんな念が零れた。

 

「へ? フェイトちゃんて、デュオのママさんなんか?」

「え!? ど、どうしたの? デュオ、呑み込まれて何かおかしくなっちゃった?」

【!? ・・・何デモナイ! 間違エタノ!】

「そ、そか、でも、フェイトちゃんがココに居るって事は、アレは、何か違うんやな」

「あ、その、ハヤテに言っておかなきゃ」

 

 その先を遮る様に、

 

「ああ、それはええんや。大体、判ってる。

デュオが信用してる相手が、そないな手ぇ使わんのも、判ってる」

【主ハヤテ、貴女がここから出る事は有りません】

「誰や!?」

「誰!?」

 

 一人、中空へと目を向けるデュオ。

それに釣られて二人もそっちへ目を向けた。

 

【我は闇の書の管理人格。

主ハヤテ、このまま、またお眠り頂く訳には参りませんか?

貴女にとって、外の世界は悲しみに満ちている。

このまま、幸せな夢の内に居る事こそ、幸せだと推測いたします】

「イヤや! ウチの事は、ウチが決める!

それが、例え不幸だと判っていても、どうするのかは、自分で決めたい!

そこまでウチを心配してくれるなら、ウチが不幸に負けんよう、手伝ってや!」

【・・・そこまで仰られるのであれば、私から何かを申し上げる事は無いかと・・・

そうされるのでしたなら、先ずこの結界を内から破らねばなりません。

それが出来ないかぎ・・・】

「ん? どないしたん?」

「ど、どうしたの?」

【・・・破られました】

「へ? それは?」

「え? ど、どう・・・

デュオ!? それは・・・」

 

 そこに居た筈の人影は、少し離れた所で何やら穴を開けていた。

小さいが、そこからは外が見え、向こうで何やら困惑した様子でこちらを伺う友人達が居た。

退屈だったから、穴を掘って見た様だ・・・

 

【??? 穴、駄目?】

 

 そう言いながら、開けた所に蓋をしようとする。

 

「だ、ダメや!」

「駄目!」

 

 そう言われ、しっかりと蓋をし、固定し直そうとする。

 

【主ハヤテ! それでは逆に取られては!?】

「そ、そうやった! 開けてえぇんよ! 開けたって!」

「そ、そう! 開けて!」

 

 そう言われ混乱するが、開けても良いらしいと判断し、穴は開かれた。

 

「はぁー、どないなるかと思ったら」

「デュオ、この結界、そんなに簡単に穴が空くの?」

 

 クニャ?  小首を傾げている。

 

 無自覚に穴を開けていた。

お話が難しく、退屈だったから・・・

 

【そ、そんな簡単には、開く筈が無いのですが・・・

ただ、こうなったのならば、主ハヤテの為に全力を尽くします】

 

 そうこう言っている間にも、結界は修復されつつあり、急ぎ穴を拡げ、飛び出す4人!

 

「フェイト!」

「フェイトちゃん、デュオ君! ハヤテちゃん!」

「皆、怪我は無いか?」

「う、うん! ゴメン、心配掛けたね」

「あ! なのはちゃん? えっと、どちらさんで?」

「管理局・執務官、クロノ・ハラオウンだ。

後で詳しく話を聞かせて貰いたい」

「えっと、ボクはユーノ・スクライア」

「あ、ハヤテ。こっちは私の使い魔のアルフ」

「よろしく!」

「そ、それより! アレは如何すれば良いの!?」

 

 皆の無事を確かめたは良いが、箍が外れ、暴走し続ける闇の魔獣。

内から開けられた穴が塞がる直前、それは起きた。

 

 穴のあった所から数条、黒い紐が伸びた!

闇の書の管理人格目掛け、伸ばされた!

 

 それを横から掴む巨大な手。

それに絡みつき、急速に巻き戻される!

 

「! デュオ!」

「デュオ君!?」

「な、に!?」

 

 即座に助けの手を差し伸べるが、その前に呑み込まれた!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

闇の書の闇・体内

 

 ト・トクン       ト・トクン        ト・トクン!

 

 トトクン!      ドトクン!       ドトクン!

 

 ドドクン!      ドドクン!       ド・クン!

 

 ドクン!      ドクン!    ドクン!   ドクン・・・

 

 

 ガッ・・・ツ! ガッ・・ツ! ガッ・ツ! ガッツ! ガッツ!ガッツ!

 

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 

 

 ぐぱぁ! ぐるるるぅぅぅう!

 

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

闇の書の闇・外部

 

 デュオが呑み込まれ、どうするかを話し合って居た時。

急に、動きが止まった。微動だにしなくなった闇の書の闇。

 

「な、何が?」

「何が、有ったんだ?」

「ど、どうしたのかな?」

「分かんない。でも、デュオが呑みこまれてから、おかしくなった」

 

そのまま、呑み込まれた辺りから、表面の色が変色しつつあった。

生き物じみた表面は、段々と硬質化し、砕けつつあった。

 

「! と、兎に角! 今の内に拘束して、デュオを助ける方法を!」

「そ、そうだね!」

「う、うん!」

【恩人を、見捨てるわけにはいきません! 我々も協力いたします!

主ハヤテ、ご指示を!】

「わぁっとる! 皆! 力ぁ貸して!」

 

 その一言で、ヴォルケン・リッターを再度呼び出し、指示を与える!

 

「兎に角、あん中にはデュオが呑み込まれてしもうた!

是が非でも、助けなアカン! 助けられっぱなしになってしまう!

そないな事、他が認めても、私が認めへん! こないな人生、後ろめとうて、生きとう無い!

だから、力を貸して! 頼む! 皆!」

 

 夜天の書に横抱きに抱えられたまま、出来る限り頭を下げるハヤテ。

 

「・・・主ハヤテ、お顔をお上げください」

「そうよ! ハヤテちゃん!」

「水くせぇ事は言いっこ無しだ、ハヤテ!

アタシはデュオの姉なんだから、弟を助けるのは、当然の事だ!」

「左様、当然の事をするまで!」

 

 そう言いながら、相手を拘束する為に奔走する!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 

 グルル・・・

 

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ!

 ガツガリガツガツ! ガツガツガツガツ! ガツガツガツガツ・・・

 

 

 ん、眠い・・・

お腹一杯・・・

 

 

 

 ふぁ! ん・・・

 

 ・・・暗い?

眠い・・・ZZZ

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

闇の書の闇・外部

 

「ど、どうしても、そうしないといけないんですか?」

「な、何で!? そんな事に!」

 

 なのはとフェイトは、声の震えを抑えきれない。

 

【ええ。そうするしか、もう手が無いの】

 

 通信越しに聞こえた会話。

 

「だからって、はいそうですかなんて、言えるかよ!」

 

 激昂するヴィータ!

 

「なぁ、何か、手は無いのかよ?

元々は、あそこから出て来たんだったら、何か分かんないのか?」

【済まない、アレは私であって、既に私では無い。

・・・独立した存在となっている。

それに、干渉する事が出来ているのなら、とっくにしている!】

 

 苛立ちを隠せない夜天の書。

ハヤテと融合し、一つとなって何とか状況を変えようとするも、力が及ばない。

吹き飛ばす事は出来ても、助けるには向かない。

例え、魔法技術の英知だとしても・・・

 

「だからって! アイツごと・・・デュオごと、今の内に消し飛ばすなんて事、出来る訳ないだろ!」

「だが、そうしなければ、我々が全滅する」

 

 クロノはそう言うと、もう一つのデバイスを展開し、構える。

 

「待て、何をするつもりだ?」

 

 その意味を察し、止めに入るシグナム。

 

「誰かがやらなければならないなら、僕が恨まれ役を買って出るまでだ」

 

 その目に、硬い意思を見ながらも、再度問う。

 

「それで、良いのか?」

「・・・良い訳が無い。

デュオを、尊い犠牲としてしまうなんて事、したい訳が無いだろ!

だけど、このままだと、何時、どうなるかなんて解らない!

暴れ出して、その手を、汚させない為にも、僕が手を汚した方が・・・」

 

 迷いが見える。

そうしても良いのか、そうする事が、本当に良いのか・・・

迷っている。

 

「それでも、恨まれるのは一人で良い。

デュランダル、氷結結界」

 

 その事を、覚え、悟り、覚悟した。

 

【OK BOSS】

 

 魔獣が凍て付き始める。

既に動きが鈍いのに、更に凍結による拘束が続く。

凍て付き果て、氷像と化す魔獣。

 

 そのまま、宇宙空間へと転送が開始された。

 

 

 その後直、艦砲射撃により、消し飛ばされた。

 

 

 その時、初めて理解する事が出来た。

嘗て提督が成し、そうする事がどんな意味が有り、どんな思いでそうしたのかを。

それを、何故母が責めなかったのか。

そう言う事も、呑み込める人だったから、赦す事も出来たのだろうか?

それとも、既に経験していたから、割り切る事も出来たのだろうか?

 

 自分は、許しているつもりだっただけで、赦す事が出来ていなかったのだと、思い知った。

本当の意味で赦す事が出来たと、今感じている。

だが、自分もまた、同じモノを背負い込んでしまった。

それとは、比べ物にならないモノを・・・

それに、押し潰され様としている自分が、居た。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「畜生! 何で、守れないんだよ・・・

何で、この手から零れちまったんだよ・・・」

「ヴィータ・・・」

「ヴィータちゃん・・・」

「・・・ヴィータ」

「わぁああああ!」

 

 ただ、そうする事しか出来ない。

優しく抱き止め、その気が済むまで、泣かせる事しか・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

ドクン!   ドクン!   ドクン・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

ビキビキビキ!

 

 結界にて封印し、転送して居なくなった筈のその場所が、石と化して行く。

 

「な、何だ?」

「如何なっているんだ!?

アースラ! そちらでこの現象は観測で来ているか!」

【・・・こ、・・ちら、・出来・・・】

「どうした!? また何か有ったのか?」

【ゴメン、クロノ君!

回線に妨害が掛ってた!

こちらでも確認しているわ!

あの闇の書の闇が居た辺りの中心から、魔力反応!

それも、相当大きい!】

「それは、あの消し飛ばした中には、核が入っていなかったのか!?」

【ううん! 確かに、存在した! それはこちらでも確認して、間違いはない筈!

でも、それとは違うモノ見たい!

気を付けて!】

「ああ! らしいな!

聞いていたな! アレとは違う、別の存在らしい!」

 

 それを聞き、身構える者。

嘆きつつ、それを今は振り払い、新たな脅威を迎え討たんとする者。

 

「デュオの弔いだ、泣くのは後でも出来る。

今は、それすら邪魔をする奴を、ぶっ飛ばす!」

 

 息巻くヴィータ!

 

「う、うん! 今悲しんでも、返って来ない。

だったら、後からまた悲しんでも、良いよね?」

「デュオ、ゴメン。

今は、悲しんで居られないなの。

でも、今からそれを邪魔する相手を倒すから・・・

それからでも、遅くないよね」

 

 それぞれが其々の思いを胸に、新たな脅威へと立ち向かわんとする。

 

 ボコ! その固まった地面の一部が盛り上がる。

そこが、モゾモゾと動く。

 

「ハン! そんなモンでしか無いのなら、私等の邪魔すんじゃねぇ!」

 

 先手必勝とばかりに、ヴィータが飛び出し!

モグラ叩きの如く、ブッ叩く!

 

ゴワワァン! そんな音が響く!

 

「何だ!? この手応えは!?」

「如何した!?」

「あ、ああ。何か、硬いんだけど、粘土を殴ったみたいで、変な感触だった・・・」

「・・・少し、様子を見るか・・・」

「油断するなよ!」

 

 更に、周囲が盛り上がる!

辺り一面に罅が広がる!

盛り上がり続け、その全貌が現れた!

 

 群青の、大きな卵。

大人が三人ほど、優に入れるだろう大きさの卵。

 

「何だ!? あの闇の書の闇が産んだのか?」

【そ、そんな筈は・・・】

「だとしたら、生まれて来るんは、何や!?」

「そんなモン、関係ねぇ! 生まれる前に打っ潰す!」

【クロノ君! 対象の魔力反応の特定が出来たわ!】

「だから、どうしたんだ!?」

【良い! 良く聞いて、アレは、デュオ君と同じ波長を出してるの!

もしかしたら、アレはデュオ君の防御形態の可能性もあるの!】

「え? ま、待て!」

 

 ガツン! 既に叩かれたが、ほんの少し欠けただけで、そのモノは健在だった。

 

「硬ぇ、なら、もう一度!」

「待て! もう少し話を聞いてくれ!」

 

 ヴィータを羽交い締めにし、押し留めるクロノとユーノ。

 

「何しやがる! アレは、壊さなきゃ、ならねえんだ!」

「アレは、デュオかもしれないんだ!」

「だから、壊さないで!」

「は? 何言ってるんだ?」

 

ピキ!

 

 ほんの少し、罅が入り。

更に、内側から蠢く気配がする。

 

 ぐるる、ぐるぅ・・・

 

 低い唸りと共に、中のモノが外へと出ようとする。

だが、殻が硬いからか、容易に出てこようとしない。

 

「なぁ、手伝った方が・・・」

「だが、手伝っても良いのか?」

「でも、このままじゃ・・・」

「どないすれば・・・」

「えっと、取敢えず、魔法をぶつけて見る?

それで、硬さを確かめて見て、それから確かめても・・・」

「・・・そうして見る? 一応、バインドを掛けてあんまり動かない様にして見るけど・・・」

「うん! それでお願いなの!」

「チェーン・バインド!」

 

 巻き付く鎖!

 

ジャラン!  ビキビキビキ!    パリン!

 

 だが、その鎖は巻き付いた辺りから、ドンドン硬化して行く!

最終的に、完全に硬化しきり、砕けた!

 

「! 下がれ! 魔法を硬化するぞ!」

 

 そう指示を出すクロノ!

魔法で有れば、硬化・石化し、無効化する。

余り聞いた事のない能力。

 

「どいて!」

 

 ドン!

 

「ごめんなさい!」   ドッカン!

「な!?」

 

 突き飛ばされ、ふらつくが、踏みとどまるも、更に突き飛ばされた!

 

 その突き飛ばした二人は、そっとその卵に近寄るが、引き留められる!

 

「アリサちゃん! 危ないなの!」

「すずかも! 今はまだ近寄らない方が・・・」

 

 なのはとフェイトに引き留められる二人。

 

「判ってる! でも、どうすればいいのかは、聞いたの!」

「う、うん! デュオ君のお爺さんから、私たちなら、大丈夫だって!」

「え? ど、どうやって?」

「如何してそんな事が?」

「うん、なのは達には言って無かったけど、デュオの持病として、こんな事が有ったら連絡して欲しいって。

通信機を預かってたの!」

「それで、連絡して見たら、直こっちに向かってるけど、私達で有れば、影響は出ないんだって」

「え? それって・・・」

「まぁ、魔法の影響が少ないから、呼び掛ければ出て来るかもしれないって」

「えっと、その・・・私達は敵とは見なされない筈だから・・・

呼べば大丈夫かもって・・・」

「それに、この通信機が有れば、症状も緩和できるって!

そんな機能も付けられてるって!」

 

 そう言われても、俄かには信じられないで居る人々。

 

「じゃあ、その証拠として、ここから動かしてみるね?」

「う、うん、それでも問題ないって、言ってたよね」

 

 そう言って、スイッチを入れたアリサ。

A・M・F 起動 そんな文字が浮かんだ。

 

「え!? ええ!?」

「な、に!?」

「何が!?」

「ど、どうなって!?」

 

 急に、体が重くなった様に感じる魔法使い・使い魔達。

その事に戸惑うが、二人は平然としている。

 

「ど、どうなってるの?」

「わ、分かんない! でも、見て!」

 

 そう言われ、見た先では。

卵に無数の罅が入り、内側から破られた。

 

 中からは、八足の大蜥蜴が、ズルリと体を滑らして、出て来た。

翠の体の側面には、目の如き模様。

顔に当たる部分には、眼に相当する部分は見当たらない、つるりとした顔で有った。

鰐より大きく、山羊ほどの高さが有る。

人を一呑みに出来てしまうかの如き、大きな口。

 

「え? デュオ?」

「デュオ、君?」

【! 下がって! アレは!】

 

 いち早く事態に気付いたのは、闇の書改め、夜天の書。

 

【アレは! 嘗て、滅びた筈のモノ! 何故、アレが・・・】

「知っているのか? アレは、何なんだ!?」

「何が、どないなってるんや!?

デュオは、どないなったんや!」

【アレは、石毒竜《バジリスク》。

見たモノを、石へと変える魔獣。

そもそも、既に滅びている筈のモノが何故・・・】

「待って、それが確かなら・・・

管理局で厳重保管されていた筈だよ?

その化石が・・・」

 

 横からユーノが口を挟む。

 

「他のモノだとは?」

「無い。そもそも、個体そのモノが物凄く少ない事と、薬になるって事で乱獲されて・・・」

「じゃあ、アレは、どうやって?」

「それが分かれば、苦労はしないよ!

でも、それなら、如何してデュオがそうなったのかが判らない!」

 

 そうこうする内に、二人へと近付く。

その、目の無い鼻面を、そっと押しつける。

まるで、撫でてと言うかのように。

 鼻を押し付け、乗る様に急かしたりも。

それは一寸、甘えているかのごとく、見えもした。

 

「え? あは! くすぐったいでしょ!」

「きゃ! もう! そんなに急かさないで!」

 

 それでも、お構いなしに二人を乗せ、周囲をクルクルと走り回る。

 

「え、えっと、兎に角、止めた方が良いのなの?」

「ど、どうなんだろう?」

「・・・先ずは、二人を降ろして。それから、抑え込んで何とかするべきなんだろう」

 

 そんな会話を聞き付けたのか、鱗が逆立つ!

 

「きゃ! ちょっと! 痛いわよ」

「ど、如何したのかな?」

 

 顔はクロノの方を向き、威嚇するが如き音を発する!

 

「え? え?」

「何か、有ったの?」

 

 大きく開かれる口。

その、舌のある辺りには、小さな目の如き器官が有り。そこから、光を発する!

 

 クロノは咄嗟にシールドを張り、防ぐがシールドが石と化し、クロノを下敷きに・・・倒れた!

 

 その上を、行ったり来たり。

念入りに踏みつける、八足で、後から二足増えた・・・

呻き声は聞こえるから、大した事では無い様だ・・・

流石に、動き辛い様だが・・・

 

「え、えっと、今の、聞いてたの?」

 

 恐る恐る、聞いて見るユーノ。

 

 ゆっくりと上下に動く頭。

 

「じゃあ、デュオ。意識はあるの?」

 

 コク!

 

「えっと、じゃあ・・・なのはの所に向かってみて」

 

 フルフル!

 

「え? 何でかな?」

【マオーハコアイ!】

 

 あのB・Jの状態だと、何故か恐怖心が出て来てしまう。

制服だと、何とか?

 

「じゃあ、フェイトは?」

 

 コキュ? と小首を傾げながら、

【雷様?】

「じゃ、じゃあ! ウチは?」

 

 一寸どう思われているのかが、気になったハヤテ。

 

【豆狸?】

「何じゃ! それは!」

【キャー! 豆狸ガ怒ッタ!】

 

 そんな言葉を通信機越しに背中で聞いていた二人。

 

「じゃ、じゃあ、私とすずかは?」

【・・・アリサオ嬢様! スズカ姉様!】

「・・・その間は、何かな?」

【・・・教エテアゲナイヨ! ジャン!】

 

 CMでやっていた文句を使って見た!

殴られた! 怒られた! 痛かった! コアカッタ!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 その後直に、変装したドゥーエによって、その状態を抑止する為のモノ(リミッター)が届けられた。

周囲の魔法力を分散し、集結し難くする事で、元の姿へと戻った。

イメージがそのまま形へと置き換わっていただけで、変身や変態したわけでは無かった。

 

 その際、詳細を聞かれたが、具体的な事は告げずにはぐらかしたが、どういった経緯で生まれ、引き取ったのかだけは伝えられた。

 

 納得は出来ないがそう有ったとあれば、引き下がらざるを得ない説明で有った。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 夜天の書は、悩んでいる。

このままで有る事は出来ない。

かと言って、今のまま流される事は、再度また主を危険に巻き込みかねない。

 

 だとしても、主の幸せを願う自分に出来る事は何か、考え続ける。

 

 その結果、答えが出た。

 

 己が消える事。

そうなれば、全ては自分が引き起こしたものとし、自分が責任を取れば、納得させる事が出来る様に考えた。

ただ、問題としては、いかにして消えるか。

 

 騎士達の手を借りてしまえば、内部粛清としてしか、見られない。

 

 管理局の手を借りるのでは、証拠隠滅。管理不行き届きとして見られかねない。

 

 騎士達でもなく、管理局でもなく、第三者の手を借りる・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 日の出《いずる》頂き。

 

 そこでは、大小様々な人影が有る。

 

「では、お願いしたい。

同じ資質を持つ、御身で有れば。この身を封じるに適したものと捉えます。

お二人には立会人として、ご足労願いました」

「まぁ、そうしなきゃならないんだったら、そうすれば良いけど・・・」

「でも、それで良いの? まだ、大丈夫だと思うんだけど・・・」

 

 そこには、アリサとすずかの二人。

二人とも、これから何が行われるのかは知っていたが、それで良いのかについては、疑問を持っていた。

 

 騎士達も、これから行われる事に関しては納得しているが、納得したくはない。

 

「そうも言っては居られない事情もあります。

この身は、いずれまたあの様な事を引き起こす恐れが、未だに残っております。

なればこそ、完全にその芽を摘まなければ成りません。

・・・では、お願いいたします」

 

 そう言うと、その小さな体を抱き上げ、願う。

 

 

 この身が朽ち様と、その魂は主の元へと帰らん事を・・・

 

 

 そう願いながら、その細い首に巻かれたモノを外し、四肢に巻かれたソレを外して行く。

徐々に、ゆっくりとしたペースではあるが、自身の体が硬化して行くのが判る。

 

 

 あぁ、自分は、今の主と巡り合えた事が幸せだった。

その先へと、共に歩む事は出来ないが、来世こそ、共に歩みたい。

 

 

「待って!」

 

 高台の下の方から、そう引き留める声が有った。

 

「なのは!?」

「駄目!」

「フェイトちゃんも!?」

「待って! 行っちゃ、嫌や!

何で、ウチから離れてしまうん?

何で、ウチだけ、置いて行かれなアカンね!」

 

 ハヤテに乞われ、二人掛りで何とか連れて来た様だ。

 

「・・・主ハヤテ、申し訳ございません。

こうする事こそ、主を悲しませる結果となってしまいますが、これ以外に、方法が浮かばなかったので・・・」

「そうや! ウチは哀しい! 折角家族になれたのに、また直にお別れだなんて・・・」

「申し訳ございません。

ですが、貴女の様な主に出会えた事を、私は誇りに思います。

その事を胸に、次こそは、貴女のお力に成れる自分で有りたい。

今のままでは、私は貴女を害してしまいかねません」

「それでも、かまへん!

一緒に居てくれるのなら、そんなん、気にならへん!

だから!」

「いけません!」

 

 毅然とした態度で、それを遮り、続けた。

 

「それでは、そのままで宜しいのだとしても、私が耐える事が出来なくなってしまう。

また、主を恣意虐してしまう事は、もうしたくありません。

だから、分かって欲しいとは、思えませんが。そのお気持ちだけを、共に持って行かせて頂きたい」

 

 ハヤテはその決意を見て取り、決めた。

 

「ほなら、せめて名前を送らせて。

リィン・フォース、・・・祝福の風や。

それも、一緒に持っててや!」

「・・・ありがとうございます。

ですが、その名前は、次の子にこそ、送って下さい。

私はそ・こに、宿りた・・い」

 

 言い切ると同時に、硬化が終わる。

終わると同時に、罅が入り、強き風によって、舞い上げられる。

 

 辺りを、キラキラした、細かな砂が舞い散る。

ホンの一時では有ったが、誰もが息を呑む光景であった。

 

「わぁ、綺麗・・・」

「凄く、綺麗だね・・・」

 

 

 

「行っちゃったなの」

「行っちゃったね」

「行ってもうた・・・」

「・・・主ハヤテ。これより再度、我々の剣を受けて欲しい」

 

 シグナム以下、騎士達も跪き、それに倣う。

 

「今は亡き、リィン・フォースの願いを叶える為、我ら自身の願いでもあります。

我らは貴女を主としたい」

「うん、でも、ウチは家族として、皆には居て欲しい。

それでも、エエか?」

「「「「はい!」」」」

「ありがとう。それだけで、ウチは嬉しい!」

 

 そう言って、ハヤテは皆を抱き締める。

抱き締められ、抱きしめ返す。

 

「デュオも、ありがとうな。

けったいな事、させてもうて。

でも、前に私の願いが何か、聞いてくれたやろ?

これが、私の願いや。

自分の家族を持つ。

これが、ウチの欲しいモンやったんよ」

 

 そこには、涙の跡は有るが、満面の笑みを浮かべる姿が有った。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・




次回 その後・・・

様々な出来事が起こります。
忍に、ユーノに災いが・・・降りかかります?
・・・さほどでもないかな?

それを以って、As編は完了いたします。
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