魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD 作:トータス
鉄拳
望んでの、シグ姉との模擬戦。
【シグ姉、悪いね】
「何、お前から模擬戦の申し込みなど初めてではないか。
それなりの自信が有っての事だと思ったのでな」
【・・・まぁ、負ける自信しか無いんだけどね。
今、何処まで出来るのかを知っておこうと思って・・・】
「それは良い事だ。
では、始めるぞ!」
・・・ ・・・
数十分前
ヴィータ姉とマン・ツー・マンでの模擬戦を数度、繰り返していた。
その模擬戦が終了した時。
【ヴィータ姉】
「何だ?」
【・・・オレ。シグ姉と模擬戦出来る?】
「・・・まぁ、出来ない事はないな。如何した?」
【一寸ね。試してみたい事が出来て・・・】
「まぁ、モノに依るが、出来なくはないぞ。
大怪我覚悟ならな」
【じゃぁ、試してみても良い?】
「あんまり勧められないぞ?」
【それでも、試しておきたいんだ。今後の為にも】
それに対し、一寸考えてから、応えを返してくれた。
「・・・無理にするなとは、言えないが。
その代り、立ち合わせろ」
【うん、ヴィータ姉に立ちあって貰えれば一番安心だね】
「な! 何言ってやがる!
あくまで、やり過ぎない様にだ!」
顔を真っ赤にしながら言って来るが、
あんまり時間が無いかな?
そろそろ痺れを切らすか、準備が整う筈だし、出来る手は打っておいた方が良いな・・・
・・・ ・・・
模擬戦開始
15m程の間隔をあけ、立ち合う二人。
シグナムは騎士服にレヴァンティン。
対するデュオは眼帯を取り、その隠していた隻眼を晒す。
右手にロッド、左手にステッキ。スタッフを背負い、腰にワンドを左右に二本差し、腿にも巻き付け、更に脛に二本。計6本仕込んでいる。
その中間点に立つヴィータ姉が模擬戦のルールを読み上げる。
「じゃあ、デュオは無制限で、シグナムはリミッター有りのAランク。
デュオがシグナムに一撃入れるか、私が判定を下すまで。制限時間30分で良いな?」
「ああ、それで良い」
【シグ姉、胸を借りるね】
「ああ、ドンとぶつかって来い!」
「・・・何か、それだと変な感じだな」
【あ、ヴィータ姉もそう思う?】
「な! 何を言ってるんだ!
何処が変なんだ!?」
「【・・・その胸にぶつかる事かな?】」
声と念話が被った。
「む・・・そんなに変か?」
【多分】
「まぁ、ぶつかったら窒息するな」
「そ、そうなのか?」
【あ、オレ窒息し掛けた】
「だよなー」
「い、何時の話だ!」
【ホンの子供の頃。今でもしそうだね】
「・・・否定は出来ないな」
「ヴィータ! お前まで!」
「だって、誰もがそう思うぞ?」
シグナムが辺りを見回すと、サッと目を逸らす面々。
チョッピリ顔が赤い?
・・・ ・・・
模擬戦・外野席
「ねぇ、何か凄いモノが見られると思ったら・・・」
「何か、恥ずかしい話になってるね」
何だか一寸揉めている様子を見て、ティアナとスバルが話していた。
「え? そうなんですか?」
「あー、キャロはそんな事知らなくても良いからね」
「???」
一寸はぐらかすティアナと意味が判らなかったキャロ。
「でも、デュオ兄がうらやま・・・いえ! 頑張れ! デュオ兄!」
羨望の眼差しと声援を送るエリオ。
「は、ははは。でも、デュオから模擬戦の話が出るなんて思わなかったね。フェイトちゃん」
「そうだね、なのは。
でも、このままじゃ駄目だって、自覚が出て来たのかもよ?」
「んー、そうかな?
デュオも、その気になれば、エリオ達と同じ位に働けると思うんだけど・・・」
「でも、本人は後方支援を主としたいみたいだよ?
それに、体質もあるし・・・」
「・・・そうだね、デュオにはデュオの事情が有るしね」
「うん、もし前線メンバーに加わる事があれば、盤石なんだけどね」
「そやね、そうなってくれるとどれだけ良いか・・・
あ、でもそれだと引っ掛かるか?」
脳裏でその手の計算が渦巻いている様子のハヤテを後目に、試合は始まる。
・・・ ・・・
陸戦シミュレーター
15m程の間隔をあけ、立ち合う二人。
「だぁ! いい加減、始めっぞ!」
【了解!】
「ああ、何時でも!」
「始め!」
「掛って来い!」
【じゃぁ、時間も稼がせて貰えたし、行くよ!】
そう言って、デュオはロッドを目の前の地面に叩き付け、そのまま引き起こした!
そのロッドの先端から直径1.5m程の地面が厚みをもって持ち上がり、直立した壁となった。
「ふ、そんな目暗ましなど、私には通用しない!」
その壁の陰から来るか、意表を突いて来るだろう事は目に見えていた。
その予想は的確であった。
「あ・・・」
想定した以上に・・・
呆気に捕られるヴィータの様子を見て、不審に思い。その裏側が見える所まで動いた。
そこでデュオは背を向け、海へ向って走り出していた!
「は?」
「む?」
そのまま海までひた走っていた!
「お、おい?」
「ふ、ふふふ! 相変わらずの様だな・・・
変わったと思ったのだがな!」
怒り心頭なシグナムに、念話が届く。
【イヤ、逃げた訳じゃないよ?
当たり前の空戦・陸戦じゃ、勝ち目は無いし。
だから、取敢えずは勝ち目のある場所まで移動させて貰ったよ!
ルールでは、シミュレーター上でって決めて無かったしね!】
海へと飛び出し、海面に着水したデュオ。
そのまま水面の上に立っている。
「・・・そうか。では、見せて貰おうか!」
その後を追い、海上へと向かうシグナム。海上30㎝程の所を飛んでいる。
【うん、見て貰うよ。
オレの、海戦を・・・】
そう言い、両手のそれをスタッフに持ち替え、スタッフの穂先をフュスキーナのそれに変え、海面に突き立て。そのまま捻り、持ち上げる。
その穂先には、巨大な水の塊が刺さる。変換資質による変質させた海水。
それを振るうと長く伸び、蛇の尾の如くのたうつ!
その鞭の如き攻撃を尽くかわし、迫るシグナム!
「ふ、やるな。だが、それだけではまだまだだ!」
【うん、それは承知してる】
そう言うと、スタッフを垂直にし、捻り廻す。
波状の螺旋横薙ぎ、それに対し、その上を飛ぶ事で回避するシグナム。
それに対し、腰、腿、足に付けられたワンドが水面に滑り落ち、刺さった。ワンドの柄頭とスタッフの石突が見えない何かで繋がる。
そのままスタッフを上下前後の縦回転に切り替える!
ワンドが刺さった水球がフレイルとなり、シグナムへ向け、迫る!
「む? やるな!」
少し、見直したといった感じに言いながら、それをもかわす。
その傍で水柱が起きるが、意に返さずに更に迫る!
【シグ姉も! ココまで圧倒的だと、もっと頑張らないとね!】
「そうだ、このまま打つ手も無く、やられても良いのか?」
【まだまだ!】
更に横薙ぎに振う!
広範囲に亘る横薙ぎ、それには流石に、後ろへ下がる事で回避するシグナム。
そのままもう一回転し、シグナムに向けフレイルを切り離す!
「やるな!」
それを、剣の一振りで掻き消す!?
「む?」
斬れた瞬間、刃が表面に触れると同時に、爆ぜ。
海水を撒き散らす!
「・・・成程、これは中々だな」
「・・・」
ヴィータが黙っている所を見ると、これはまだ有効とは見られていない。
「だが、良い手だ」
【・・・まぁね、褒めて貰えたって、考えても良いのかな?】
「ああ、上出来だ!」
【水全てを石に変換するんじゃなくて、表面的に操って固めてる】
「それでもって、重量と攻撃力を増し、更に時間を掛けて浸透させるか・・・
その浸透させた水を操り、纏わり付かせ、相手の行動を塞ぎに掛るとはな。
見事だ!」
そのシグナムの手足には、枷となるかの如く、水の鎖が纏わり付く!
「だが、まだまだ私は動けるぞ!
さらに、この水も私対策とは・・・?
・・・成程、考えたな。
水蒸気爆発か・・・」
【そう、急激に温められた水は爆発する。
それも、そんな風に閉じ込めた状態なら、尚更にね!】
そう伝えつつも、更なる一撃を加えんと剣戟が繰り広げられる!
それをも捌くシグナム!
捌かれつつも、フュスキーナで突き続ける!
動きを制限されているとはいえ、それを剣と鞘で以て相対するシグナム!
激戦が繰り広げられる!
フュスキーナが絡め取られ、巻き上げられた!
剣で絡められた時点で、即座に片手を背に廻し、ロッドを手にする!
ロッドを突きだし、剣を叩くべく繰り出す!
空高く巻き上がるスタッフから手を放し、ステッキに持ち替え、鞘を受ける!
硬質な音と共に、力比べとなった!
「中々、やるな!」
【そりゃ。自信が無きゃ、やろうとは思わない、よ!】
そう言いつつ、後ろへと飛び退く!
そのまま距離を取り、向かい合う。
「・・・刃は、どうした?」
ロッドとスタッフ、そこには刃が無かった・・・
【・・・そこまで、器用じゃないんでね。ここまでが精一杯】
そう言いながら、石斧と石刀へと姿を変えていく。
【それに、コレを形成するには時間が掛るしね】
「成程、シャマルが言ったとおりだったな」
嘗て、速効向きでは無いと言われていた事が思い出される。
【そう言われてたから、時間の稼ぎ方と、即座にやられない為の方法を身に着けたんだよ】
「フ、そうだったな。だが、見事だ!」
剣を鞘へと収め、抜剣の構えを取るシグナム。
巻き付いた水の鎖は意に返さない。
お互いの中間点辺りに、巻き上げられたスタッフが、海へと落ちる。
その水飛沫と共に抜剣し、シュランゲ・フォルムを取るレヴァンティン。
その迫る連結刃を石斧と石刀でいなし、凌ぎ、引っ掛ける!
更にそれらを掻い潜り、シグナムに迫る!
途中、斧は持って行かれ、刀も弾かれた!
そのままワンドを両手に持ち、抑えながら、弾きながら、短さの利点と数を生かし、掻い潜る!
【! 貰った!】
無手に為りつつ、その両手を石化し、爪《クロー》へと変える!
相手の右下から斬り上げる!
が、硬質な音と共に、鞘で阻まれた!
そのまま相手の左脇を潜るかの様に周り、脇・胴を狙う!
・・・迫る拳と、硬いモノが砕ける音を最後に、目の前が暗くなった・・・
・・・ ・・・
ズキズキする痛みと共に、目が覚めた。
【・・・痛たた!】
「あ! デュオお兄ちゃん! まだ寝てて!」
起き上がろうとする自分に、そう声を掛けられた。
辺りには、治癒魔法を掛け始めるキャロ。
心配そうにこっちを見るエリオ。
目をキラキラさせながら興奮気味のスバル。
それを抑えているティアナが居た。
【あー、負けたか】
「うん、でも、シグナムさん。スッゴイ褒めてた!」
そうエリオが言って来たから、
【エリオ。あの後、どうなったか教えてくれ】
「う、うん! デュオ兄が左脇から攻撃しようとして、シグナムさんが剣を持ったままデュオ兄の頭を・・・」
【シグ姉の手は?】
「あ、う、うん。大丈夫みたいだけど・・・
デュオ兄の方は?」
【ああ、石頭だからな。文字通り】
「アレって、本当に石にしてたの?」
そう尋ねて来るティアナ。
【・・・まぁ、必要に駆られてね。
質量兵器で狙われた事が有ってさ、咄嗟にヘルメットみたいに頭を覆う位ならなんとかな】
「デュオ兄。でも、その石を砕かれてたんだよ!」
【あー、ヤバかったか・・・】
「うん、やり過ぎたかって、大慌てだったよ!」
【まぁ、想定の内だったしね】
「だからって、アレは流石に・・・
なのはさん達も大慌てだったし・・・」
・・・ ・・・
そんなこんなで、負けました。
思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・
以下、蛇足です。
格好付け過ぎた・・・
・・・ ・・・
ヴィータとシグナムの二人が並んで歩いている。
「・・・シグナム。手は、大丈夫か?」
「ああ。だが、やるな」
「まぁな、まさかあそこまでやるとは思ってなかったけどな!」
「ふ、だが、あそこまで育つとはな・・・」
「シグナム! アナタ、手を出しなさい!」
血相を変えて走って来るシャマル。
「イヤ、そう大した事じゃない」
「そんな筈ないでしょ!
兎に角! 手を見せて!」
その剣幕に押され、渋々手を差し出す。
その手は、赤く腫れていた。
「やっぱり、デュオの石頭を砕けるまで殴るから・・・」
「いや、大丈・・・」
「そんな筈は無いわ。
それに・・・」
「・・・毒か。そっちの心配はしなくても良い。
その代りに、魔力をごっそり持って行かれたがな」
ボソリと一言。
それを聞き、はっと顔を上げるシャマル。
「! ・・・知ってたの?」
「薄々な。あの姿を見た時から気付いては居たさ」
「だったら尚更・・・」
「なぁ、何だよ? その、毒って・・・」
その話しに出て来た事を聞き咎めたヴィータ。
シャマルはしまったと思いつつ、もう隠す事も出来ないと観念し、告げる。
「・・・デュオの内に、憑いている相手よ」
「は? どうして、それが毒なんて物騒なモン持ってるってんだ?」
「デュオの内に憑いた相手は、石毒竜《バジリスク》だ・・・」
「・・・な、何なんだよ。・・・そいつ」
「ベルカでも、既に風化しかかってる程に古い文献に出て来る位だから、知らないのも仕方が無いわ。
既に滅んだ筈の種だから・・・」
「それを、融合騎として作り替えた物が、憑いている様だ・・・」
「・・・取り出せないのか?」
無言のまま、ゆっくりと顔が横に振られる。
「じゃぁ、如何為っちまうんだよ!
なぁ! 教えてくれよ!」
ガクガクと揺すりながら問い詰めるも、何も返っては来ない・・・
一寸今しんどいので、明日すてーきな戦いを挙げさせていただきます。