魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD 作:トータス
コレを書いてみてから、無印・A´sを書き始めたり。
向き合う二人。
今の自分では敵う筈もない相手を前に、唯一つ出来る事。
それは、その場から逃げる事。
その為の手段は用意してある。
・・・ ・・・
前日、出張組が出撃する前
【エリオ、一寸良いか?】
「え、何?」
【ああ、一寸魔力を貰うぞ】
「うん、構わないけど。何かに使うの?」
【まぁ、一寸試しておこうと思う事が有ってな】
「どんな?」
【・・・見せても、構わないかな?
その代り。見た事は内緒にな】
「うん」
・・・ ・・・
その手には、紅と黄の玉石が握られる。
【ヴィヴィオ。しっかりと、掴まっているんだよ】
「う、うん!」
「・・・何をするつもりかは知らないが、そう易々とは逃がさんぞ」
【さて、それは見てのお楽しみだよ。トー姉!】
そのままその玉石を口に含み、噛み砕いた。
それにより、一時的に二つの魔力をその身に宿す。
炎熱と雷電。その二つに、更に自身の変換資質とを掛け合わせる事で考えついた魔法。
【雷光石火】
一時的に、自分の周囲の空間を加速空間に変えるフィールド魔法。
それにより、トーレの目前から掻き消えた。
「ん? 成程」
目に止まらぬほどの速さだったが、それはトーレにとってはお家芸でもあった。
海面が不自然に波打たない場所が、一直線に出来あがって行く。
「だが、まだまだ。ライド・インパルス」
即座にその後を追いかけるトーレ。
・・・ ・・・
周囲の景色が緩やかに揺らめく中、海へ向って走り出した。
【ヴィヴィオ、大丈夫か?】
「ウ、ウン! でも、これは?」
【海面を固めて道を作ってる。あと、しっかり掴まってないと飛ばされるぞ!】
「わ、判った!」
ギュッと肩にしがみ付いたのを確認し、更に足を速くした。
だが、それも長くは持たなかった。
「・・・追いついたぞ」
【やっぱ、無理だったか・・・】
直ぐ横を並走しながら、トーレが声を掛けて来た。
【・・・じゃぁ、ここで、決着を付けようか】
「ふっ、観念したか」
・・・ ・・・
海上に佇む二つの人影。
一人は、水面の上に立ち。
もう一人は、水面より少し上に、浮かぶ。
【ははっ! やっぱ、敵わないな】
表向きはそう言いつつ、別口に通信する。
【メーデー・メーデー!
コチラ、危機的状況ナリ!
挽回する事は不可能と思われるが、本の一時でも時間を稼ぐ!
その為、
事後承諾となるが、使用を開始する!】
その返信は直ぐに返って来た。
【え!? そ、そんな事言われても、使用の許可はできません!】
慌てふためいた様子で、状況の確認に追われているのだろう。
【そこまでしなければ、多分・・・時間稼ぎにもならない。
それでも、稼げるか・・・】
【そ、それでも!】
【・・・ゴメン。コレしか、もう手が有りそうもない。
効果範囲内には他に誰も居ない。
あの子も、無事に逃がす。
・・・だから、後は・・・ヨロシク!】
それで通信を切った。
覚悟は決まった。
最悪を、最善に変えられはしないかもしれない。
だが、今よりは、マシになるかも知れない。
判る範囲では、最悪では無くなる、かもしれないだけの方法。
左眼に刺繍を施された眼帯を付けたデュオは、トーレに立ち向かう。
デュオの両腕は大きな籠手に覆われ。その先には、
「何を言う。そこまで強くなっているとは、見違えたぞ」
【でも、まだまだ敵わない】
「ふっ、そう易々とは負けてはやれないな。
我々の面子に賭けても、連れて帰る」
【だったら・・・これなら!】
そう言いながら、ズボンのポケットからフラスコを取り出し、
更に眼帯に手を掛け外した。
槍の穂先を足元の水面に突き立て、力を込め、捻る。
「・・・それが、お前の覚悟か?
ならば、存分に見せるが良い!
それでもなお、敵うとは思ってはいまい」
【それは判ってる。でも、時間を稼ぎだす位なら・・・】
「その時間までに、間に合えば良いがな」
【それは言わないで貰えると、有り難いかな?
もしかすると、間に合うかもしれないし。そうで無かったとしても、そこまでは、して置かないと、帰った時にどうなるか、判らないから】
幾らか苦しげに、途切れ途切れに飛ばす。
「なるほど、帰れると考えているのか。ならば、存分に掛って来るが良い!
その想いの全て! 叩き潰してくれる!」
眼帯に隠された瞼を開き、異形な眼を晒す。
白目は赤く、金色で縦長の瞳孔。
槍を水面から引き上げ、縦一文字に構える。
その穂先には、巨大な四角形(キューブ状)になった海水。
それが分裂し、無数のブロックへと変わる。
それを確認し、相手を見据える。
周囲には、水を固めた群青の四角形(キューブ)の物体が、多数浮かぶ。
【当たったら、ゴメン】
「当たってから、その言葉は聞こう」
【手厳しいね。だったら、中てて見せるよ】
「中てられるならな、来い。稽古をつけてやる」
その言葉と同時に、穂先を相手へと向け、目指すべき相手を示す。
【ストーン・ブラスト・ファランクス!】
無数のブロックが密集し、標的へと連続して向かう!
・・・ ・・・
その本の少し前。
直後ろの背中に背負われているヴィヴィオに、言葉が響く。
【聞こえる?】
「う、うん!」
【これから、直に走れるね?】
「え? うん!」
【なら、こっちに背を向けて、走れるだけ走って。
陸まで真っ直ぐ走れる様に、道は作った。
振り返ったら、ダメだからね】
「わ、判った! でも・・・」
【じゃあ、よーい・・・ドン!】
有無を言わさぬその言葉と共に、走り出す!
背後からは、群青の光と共に轟音と水飛沫が背後から迫る!
その追い風のせいで、足が縺れる。
それでも、何とか走り続ける!
その進む先に、人影が見え、その腕の中に飛び込む事になった!
「ワプッ!」
抱き止められ、それが誰の腕なのかを確かめる前に、後ろを振り返った。
そこには、頭から一筋、血を流し、それでもなお毅然と立つトーレ。
その足元には、胸から血を溢れ出させ、膝を突くデュオ。
「イ、イヤ! いやぁぁぁ!」
・・・ ・・・
デュオは海上にて、息を荒げつつ膝を突き、槍で体を支える。
トーレはその傍に立ち。一筋、頭から血を流しながらもその事を意に反さない。
その手足には、枷となる様に水が纏わりつく。
「・・・中々、やる様になったな」
【それでも・・・敵わなかった、けどね】
「喋るな、傷に触る。負けたのだから、こちらに従って貰うぞ」
【アハハ・・・冗談、キツイなぁ・・・】
「だが、悪くは無かった。
私に掠らせ、枷まで付けて制限しようとは・・・」
【そう言って・・・貰えるのなら、頑張っただけの事は・・・有るの、かな?】
「いい加減、黙っておけ。重傷である事には変わりは無い」
【自分でやっておいて・・・】
そのまま、言い掛けの状態で横に倒れた。
意識を喪った様だ。
傷口や、臓器の表面は石化させ、状態は安定させたようだ。
「まったく、頑固者め。
誰に似たんだか・・・」
その意識の無い体を担ぎ、別の妹が抱き抱える幼子を確認し、帰還する。
・・・ ・・・
機動六課・跡地
事の顛末を聞き、そこで何が有り、何が行われたのかを、はやては報告から知った。
「・・・すみません」
「・・・謝る事やない。如何有っても敵わん相手に、そこまでして貰ろて・・・
結局、間に合いもせんかった・・・
責められるんやったら、私らの方や・・・」
「ですが! その結果が・・・」
「自分攻めたらアカン。
攻めるんやったら、出来る事やって、次に会うた時、胸張って会える様にせな!」
「・・・はい! 失礼します!」
それだけ言うと立ち去って行った。
去って行ったのを確認し、
「・・・行ったな?
そないな感じや。聞いとったな、二人とも」
「ヴィヴィオ! デュオ! ゴメン! そんな、そこまでして貰ったのに!」
泣き崩れるなのは、それを支え、涙を堪えるフェイト。
「泣かないで、なのは。
私も、間に合わなかった!」
「二人とも、そない泣く事を、あのデュオは望んでない筈や。そうやろ?
泣くとしても、デュオの期待に応えんと・・・」
「うん、そうだね」
「ええ、せめて、ヴィヴィオを助け出さないと、顔向けできないよね」
六課の中では、殉職したモノとして捉えられた。
未だ、生死不明だが、状況がそうであり。
それ以外は、有り得ないと考えられた・・・
・・・ ・・・
一方・・・
「やあ、気分は如何だい?」
ガラス越しにでは有るが、久しぶりに祖父と対面した。
コチラ側は、薬液に満たされ、各種コードに繋がれている。
【良い訳が無い。胸に穴を開けられたんだから】
「ハハハ! そうは言うが、大人しく言う事を聞かないから、そんな目に遭うのだぞ。
それで、目的は達成できそうだったかね?」
【・・・駄目、だったのかな?
多少は、変えられたのかもしれないけど、その基準が判らないし・・・
まだ、諦めても居ない】
「・・・そうか。ならば、頑張って見たまえ。
期待しているよ! ハハハハハッ!」
【・・・爺ちゃん】
「何だ?」
【・・・変えられる、のかな?】
「何を言う! 不可能を可能にするため、科学は発達したのだ!
不可能な事に挑戦する事は、決して間違ってはいない!
実験・実証する事こそ、科学の醍醐味と知るのだ!
・・・それが、間違っていたとしてもだ!
そうしなければ、間違っているのかすら、判らない・・・」
【・・・判った。俺にとっての最悪を変えられるかが、鍵だからね。結果として、爺ちゃんは捕まっても大丈夫そうだったし・・・】
「ははは、捕まる事が前提かね?」
【あっちでは、割とそれでも大丈夫そうだったけど?】
「・・・そうなのかね?」
そうなる事も、ある程度は覚悟はしているが、そう言われてしまうと心配にもなる。
「まぁ、気にはなるが、言わないで貰えるとそれも楽しみではあるかな?」
【爺ちゃんは、そのままでいて貰えると有り難いかな?
他の皆は、如何か判らないけど】
「その事については、黙っていて貰おうか。
そこまでが私が出来る譲歩の範囲内だからな」
【・・・判った。
ルー姉や、ビビオ姉には内緒だけど、謝る位までは、良いよね?】
「・・・まぁ、その位までなら。許そうか」
【じゃぁ、もう暫くしたら、会わせて貰える?】
「・・・ハハハッ、その位までなら、良いだろう。
それ以上なら、このままにするかと考えたが、お前の願いであるなら、その位なら良いだろう」
【悪いね。我が儘ばっかりの孫で】
「フハハハッ! 孫は我が儘なモノでは無いのか?」
【・・・まぁ、世間一般の孫とは、かなり差が有ると思うよ?】
「だが、可愛い孫の願いだ。
叶えるだけの価値は有る。
だが、全てを話す事まではしないと、信じているぞ?」
【・・・まぁ、信じては貰えないよね。
信じてくれたのは、爺ちゃん位だし】
「ああ、荒唐無稽のモノでしか、ないからな」
・・・ ・・・
ガラス越しに、少年と幼子は話をする。
【ビビオ姉、ゴメン。
・・・負けちゃった。
如何にかなるかも知れなかったけど、敵わなかった】
「・・・どうして、そんな事、言うの?
そんな、大怪我をしてまで・・・守ってくれたのに」
その目に映るのは、大怪我をしてまで、自分を逃がそうとしてくれた恩人としての姿。
切り裂かれた胸元、骨は露出し、その傷口からは、臓器が見え隠れしている。
【・・・ゴメン、話せない。
もし、勝てたら。そんな目には、遭わせずに済んだかも知れなかったんだけど・・・負けちゃった】
「ウウン、そんな事・・・言わないで。
・・・
そこまで、しなくてもよかったのに・・・」
【ホントに、ゴメン。
勝算は無いに等しかったけど、何とか成るかと考えてた、自分が甘かった。
ゴメンね。これから辛いかもしれないけど。必ず、どうにかして見せるから(=なのは姉達が)、我慢していてね】
それを聞き、顔を明るくする幼子。
「うん! 待ってる!」
【どうにか出来れば、良いんだけど。ホントにゴメンね】
すまなそうな顔をしつつ、そう繰り返す。
「じゃあ、デュオ兄! 責任取ってケッコンして!」
【・・・えっと、何処からそんな結論が?】
「え? 違うの?」
不安を隠しきれない様子でこちらを伺って来る。
【・・・あー、分かった。
十年後、君の気持が変わらなかったなら・・・】
「絶対だよ!」
そう言って、ヴィヴィオは去って行った。
【その頃には色々知って気持ちが変わってると良いかな?】
問題を先延ばしにして見た。
・・・ ・・・
ルーテシアが、デュオの元を訪れた。
【ルー姉、ゴメン。
(レリック)見付からなかった。捜しては見たけど、まだ未発見か、秘蔵されてるのかもしれない】
「・・・そう。
でも、そこまでして貰っても、返せるモノは無いけど、何で?」
【・・・ずっと、前の事だけど、ルー姉には、色々と良くして貰ったんだ】
「・・・そんな筈は、無い。
こっちが面倒みて貰った事しか、無い」
【でも、俺の記憶にあるルー姉には、色々と助けて貰ってるんだ。
その半分位は返せればと思うんだ】
「それでも、貰い過ぎだと思う」
【だけど、そっちのルー姉には返せないからさ。
せめて、こっちのルー姉に返させてよ】
釈然としないまでも、そうしたいという事を、無下にする事も出来ず。
「・・・判った。せめて、どう言った事なのかだけでも、教えて」
【・・・ゴメン、話せない。爺ちゃんとの約束でね】
「・・・どうして?」
【どうなるか判らない、曖昧な話になって来るから。
出来るだけ、知らない方が良いかもしれない話なんだ】
納得は行かないが、そうする事が妥当だというのであるなら、それを信じて見ようと決めた。
「・・・判った。でも、何時かは、話して貰える?」
【・・・判った、全てが終わって。
話せる時が来たのなら。その時話すよ。約束する】
「・・・約束」
そう言って、小指をガラス越しに着ける。
その事に対し、理解出来たのか、ガラス越しにではあるが、小指を合わせる。
【・・・コレで良いかい?】
コク
小さく頷きを返し、後に続く呪文を唱えるルーテシア。
「指切りげんまん、嘘吐いたら、蟲千匹呑ーます。指切った!」
その文句を聞き、確実にそうされる事を予期した!
だから、それを回避するべく、すかさず文句を付け加える!
【・・・死んだら、ゴメン】
「・・・それはズルイ!」
【だけど、約束する。小母さんは助かる様に頑張るから】
「・・・それなら・・・でも・・・責任とって!」
【約束するよ。必ず、爺ちゃんの名に賭けて!】
「うぅう! 必ずだからね!」
【もし、如何にか出来る様であれば、ここに連絡して見て・・・
爺ちゃんとまでは行かないけど、相応の技術を持った人が居るから・・・】
そう言って、示しだされたのは、管理外世界の座標と住所。
「・・・ここは?」
【爺ちゃんの次に、凄い人が居る所】
「分かった、もしもの時は、ココね」
【多分、力にはなってくれるはずだから。
俺の名前を出せば、協力はしてくれるはずだから・・・】
・・・ ・・・
それから、入れ替わり立ち替わり、姉達が見舞いに来た。
チンク姉はもう暫くは動けないとかで、話も出来なかった。
だが、自分が存在した時代と変わらず、皆一度は敵対していたにも関わらず、帰って来た事に対し、喜んでくれた。
以前とは違う一面を見せてくれる相手も居たが・・・
話しは8年前に遡る。
本来なら、存在しえない筈の自分が存在する事。
それ自体が、有り得ない事なのだ。
コレは、ただの夢物語かもしれない。
あの、無力感に苛まされた、自分の夢でしか、ないのかも知れない。
だが、今が有るのであるなら、それを変えられるかもしれない。
そんな、胡蝶の夢でしか無いモノが叶えられるのであるなら、大いに活用するべきなのかもしれない。
自己満足でしか無い、夢の如き物語であったとしても。
一時の満足感でしかないとしても叶えたいモノが有る。
だからホンの一時の夢だとしても、叶えたいと思える願いが有る。
だから、全力を尽くしてでも、意にそぐわぬ結果だとしても。
そう有ったならばと、願うモノである。
叶うかもしれない、叶わぬままで有るかも知れない。
それでも出しきってなお届かぬ願いであっても、諦められないかもしれないが前に進む事は出来るかもしれない。
今の自分は、十年前のあの時から、時を刻み始めた。
今暫く後(のち)の、あの時から、過去へと、別の在り方に、誘(いざな)われた。
・・・ ・・・
思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・
108部隊ナカジマ部隊長による昔語りが語られる頃・・・
その当事者による語られぬ事実・・・
では、また来襲! ・・・夏バテでへばっているのでどうなるか・・・
天国と地獄。
地獄の釜に相当する仕事場で仕事をしています。
目前で
羨まし過ぎて、良く乱入したくなる。