ただ、食べたくなっただけだった。

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精霊の味はかく語りき

ああ、食べたい。

ただただ貪り尽くしたい。

よくある官能小説のように性的に食べたいのではなく、ただ物理的に喰らい尽くしたい。

 

目の前の少女を食べたかった。

何故と言われても、本能から求める事だからしょうがない。押し止めようとする心も、もう折れた。だからこれは必然だ。

 

私は彼女を見る。

恥ずかしそうに俯くその顔に私は歓喜を覚えた。私にむけられたその感情に喜んでしまったからだ。

 

その可憐な立ち姿に私は見蕩れた。儚げで可憐なその姿が私の好みドンピシャだったからだ。

 

その蠱惑的な瞳に私は囚われた。今の今まで未知の技術に触れてばかりいた故に、女性の不思議な魅力に触れることがなかったためだからだ。

 

 

 

その魅力的な存在感に――食欲をそそられた。

上記のモノとは違う思い。出て来た理由は簡単で五臓六腑で感じ理解したからだ。この子は人間とは超越した存在で、私の力が餓え、求めていたものだった。

 

 

 

 

腕時計の矢印に雫がポツリと落ちた。

雨が降るのかと思った時には遅くすぐさま本降りとなる。何処か雨やどりが出来る場所を探すため走った。

暫くしてようやく見つけた雨宿りの場所は昔使われていて今は廃家になった倉庫のようだ。

今どきこのような場所は天宮市では珍しい。

 

目の前をスッと通っていった無人車を見てそう思った。

 

 

天宮市、よくわからない場所だ。

とある震災の影響で先進的な技術を詰め込まれ作られた場所。

私にとっては有難い都市である。何しろ他じゃ味わえない新しい技術に触れることが出来るからだ。

 

触れた技術は様々で、空中投影ディスプレイ。

自立稼働の車、介護補助ロボット、そして未知の力を使い操作する顕現装置。

 

これだけでも此処にいる意味はある。

私の事を考えずにこれらの技術に触れているだけで逃避が出来る。

 

己とは何か、此処は何処か、この喪失感は何か。

 

一度だけ考えた事はあるが、頭が痛くなったのと強烈な餓えを覚えた事がある。

 

それ以来、身体と心が逃避を進めてくるように未知を見せてくれた。

故にここを離れる理由は、ない。

 

 

そんな日常を過ごしていたある日の事だった。

あの娘と出会ってしまったのは。

 

 

 

「お嬢さん、どうして泣いているですか?」

 

「ひううううう」

 

『 お兄さんゴメンねぇ、四糸乃は恥ずかしがり屋でね。こんな様子だけど恥ずかしがってるだけだから仲良くしてよ』

 

彼女達と初めて出会い、暖かさを覚えた。

 

 

『 へいお兄さん!こっちこっち!』

 

「ちょっと待ちましょう、そっちは崖ですよ...あっちょっと!落ちますからね!?」

 

「た、助けて...お兄さん!!」

 

彼女達と色んな場所に出掛けた

 

 

「やはり炬燵はいいですね。ほら四糸乃これを食べてください、みかんですよみかん」

 

「甘くて美味しい...です」

 

『良かったねよしのん、お兄さんの隣に入れさせて貰って、このままお兄さんを染めてこうよ 』

 

「ちょっとよしのんやめてよぉ」

 

彼女達と長い時を過ごした。

 

 

 

 

「お兄さん綺麗です、このラベンダー畑。連れてきてくれてありがとうございます」

 

『いやーラベンダーの香りが凄いね、こう...なんと言えばいいのか...うんまあ凄いね!』

 

「連れてきた私に何か無いのですかね?」

 

彼女達と笑って過ごした。

 

 

 

そして、崩壊は訪れる。

 

必然で、当たり前の結果だ。この力の特性上しょうがなかった。必死に目をそらし続けていただけだった。

 

――彼女の身体から匂う、とても美味しそうな匂いに。

 

 

 

その日は雨がシトシトと降る日のこと、彼女との出会いを思い出させる日のことだった。

 

「あ、お兄...さん?」

 

「...逃げて下さい、私はもうダメだ。四糸乃では逃げられない、だからハヤク」

 

目の前の少女が

 

『お兄さん?ちょっと怖いよ〜四糸乃に迫るならもうちょっといい場所で』

 

只の獲物にしか見えなくなる。

 

嫌だ嫌だダメだダメだダメだ、言葉は溢れ出ず頭の中に響く。

変わりとばかりに口の中から雨と混じりながらヨダレがこぼれ落ちる。

 

そしてそして────ソシテ

 

 

「イタダキマス」

 

カプリと、呆気なく、躊躇う気も起きなくなり、彼女の手に付いている人形事、手を喰った。

 

ボタボタと血が落ちる。彼女の手から血が落ちる。徐々に勢いはましていった。

彼女は呆然としていたのだろう。

本来ならば普段通りなら、こうはならなかっただろうから。

 

彼女が美味しそうではなく美味しいになったから。

 

彼女が香ばしい匂いを漂わせるから。

 

私はもう彼女を獲物としか見えない。

 

ならばもう彼女を食べようかな。

 

 

状況に反して私は冷静で冷徹で、非情だった。

 

 

能力『半自立喋人形』 を取得しました

能力『氷結操作(強)』 を取得しました

能力『保護欲』 を取得しました

 

そして、そのアナウンスが脳裏に流れ

 

 

「ああ、ああ...アアアアアアアアア!!!!! 」

 

――しとしと降る空の恵みは、真っ赤に染まり凍り付いた

 




「反・転────血を謡う魔氷狼」

こんな感じの短編です。────以上。

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