GIRLS und PANZER〜少年は戦車道になにを望むか〜 作:紅葉久
この後の話を繋げると、かなり長くなるので……
その日は、午後から戦車道の選択科目の授業がありました。
今日は勿論訓練をする、と副会長が言ったのをキッカケに生徒会の人達が主導のもと、授業という名の訓練が始まったのですが……
「五両の並列運転⁉︎ いきなりそんな全体練習させる奴がいるか! まずは改めて個人の役割を決めて、各人の役割を把握させるところから始めるに決まってるだろうが!」
「うるさい! 生徒会の決めたことに文句あるのか!」
私達の目の前でかずくんと広報の川嶋先輩が言い争いをしていました。
そんな姿を私達全員は、引き攣った表情で眺めていました。
「文句しかねぇよ! 各役割の大切さを教えるところから始めるに決まってる! 無視して事故に繋がったらどうするんだ!」
「昨日の練習試合では問題なかった! だから省略したんだ!」
「砲撃手と操縦手の操作ミスで怪我人が出たらどうするんだよ⁉︎」
今日の全体点呼の時に、改めてかずくんこと百式和麻君の選択科目の戦車道を取ることが決まり、私達の大洗戦車道チームに参加することが決まりました。
全員にかずくんが自己紹介をして、早速練習が始まると思った矢先……二人は言い争いをしていました。
「まぁまぁ、かーしま。百式ちゃんが折角言ってくれてるんだから、聞いてやんなよ」
「しかし会長っ!」
言い争いをやめないかずくんと河島先輩に、会長が仲裁に入ります。だけど河島先輩が全体練習をすることを諦めないことに少し苦笑いすると、会長は私の方を見て、
「西住ちゃん的には、どっちに賛成?」
そう、私に訊いてきました。
思わず戸惑う私でしたが、答えは決まっていました。
私としては、かずくんの意見に賛成だったから。いきなり並列運転は、確かに難しいと思う。
こう言ったら失礼だけど、まだ初心者な人達が難しい訓練をするのも怪我や事故になりやすいかもしれないから。
「えっと……かずくんに賛成です」
「くぅ……‼︎」
河島先輩が悔しそうに顔を歪めていました。
かずくんは納得と言いたそうに頷いて、会長は「そっか」と言うと干し芋を頬張っていた。
「じゃあ百式ちゃん、西住ちゃん。今日はどんな練習をしたら良い?」
そして会長は私とかずくんを見るなり、そう言っていました。
私が「えっ……?」と言ってしまい、会長はそれを見て苦笑した。
「だってかーしまが決めた練習がダメなんでしょ? ならそうした百式ちゃんと西住ちゃんが決めるのが筋ってもんでしょ?」
「えっと……その……」
そんなことを言われた私は慌ててしまいました。
思わず私がかずくんの方を見ると、かずくんは肩を竦めて苦笑いしていました。
「別にこっちで決めて良いなら、そうさせてもらう。とりあえず、今日は担当毎に分かれて俺とみほで役割を教える」
「そんなことすぐに終わるだろう!」
かずくんに河島先輩が突っかかりました。
そんな河島先輩に、かずくんは目を細めて眉を吊り上げました。
あ……あれ、怒ってる時のかずくんだ。
「……あんたは戦車を分かってない」
かずくんが河島先輩に、静かに言いました。
いつもの優しいかずくんじゃなくて、アレは怒ってる時のかずくんの話し方だと私にはすぐに分かった。
「なんだと! 百式! 私を馬鹿にしてるのか‼︎」
河島先輩が今にも掴みかかろうとする勢いでかずくんを睨みつけます。
だけどかずくんは、そんな河島先輩に向き合うと静かに言いました。
「河島先輩。あんたは戦車をなんだと思ってる?」
「戦車がなんだと? そんなもの武芸の道具に決まってる!」
河島先輩の答えに、かずくんは首を横に振りました。
「ハズレだ。ただ婦女子を育成する戦車道の道具じゃない。ちゃんと扱わないと人が大怪我する“危険な乗り物”だ。
包丁と一緒だ。扱いを間違えたら怪我をする。アンタは、いきなり包丁の使い方を知らない子供に包丁を使わせるか?」
私はかずくんの言葉に納得していました。
確か、私も似たようなことをお母さんに言われたことがあった。
それにかずくんが言うと人一倍説得力があるのは、ハッキリとしていたから。
かずくんの右目の眼帯を見て、私はそう思ってしまったから。
「そ、それは……」
「戦車は、乗員全員が乗る乗り物だ。一人のミスが怪我に繋がりやすい乗り物なんだ。だから一人一人が自分の役割を理解して、基礎を学ぶことの大切さを言ってるんだ。
アンタはそこまで馬鹿じゃないだろう? ここまで言っても分からないのか?」
河島先輩が顔を歪めて悔しそうにします。
そうして河島先輩は、かずくんを睨むと「……わかった」と答えていました。
「今回はお前の言う通りにしてやる。だが、そこまで言ったんだ。ちゃんと今日の訓練をまとめるのはお前だからな!」
「本当にいちいちデカイ声を出すのをやめてくれ、耳に響く……わかった。今日は俺と“みほ”が受け持つから安心しろ」
……ん? かずくん今変なこと言わなかった?
なんか私がかずくんと一緒に訓練をまとめるとか言っていた気がしたけど?
「か、かずくん? 私も?」
思わず、私はかずくんに訊いていた。
かずくんが私を見るなり、小さな笑みを浮かべると、
「お前もだ、みほ。砲撃手と装填手、通信手の方を頼んだぞ」
「えぇぇぇぇぇぇぇー‼︎」
かずくんの一言に、私は声を大きくした。
私が教官みたいなことするなんて聞いてないよ!
私、そんな人に教えたりしたことあんまりないのに!
近くにいた沙織さんと華さんの方を見ても、二人は苦笑いしてながら、
「みぽりん、諦めよ?」
「みほさん! 頑張りましょう!」
揃って頷いて、そう言っていました。
「西住殿! 頑張りましょう!」
あぁ、優花里さんまで……
「うぅ……わかったよぉ……」
逃げ場を無くした私は、諦めて頷くしか出来なかった。
「俺は車長と操縦手の方を担当する。あぁ、戦車はそっちで使ってくれ。俺の方は“今日は戦車は使わない”から」
「え、かずくん? 戦車使わないの?」
かずくんは私に不思議そうに首を傾げていました。
「砲撃のやり方とか、装填のやり方の復習に使うだろ? それに通信手も通信器具を使うんだから当たり前だろ?」
「でも操縦手の方も使うんじゃ……って、まさか……⁉︎」
私は操縦手で戦車を使わない基礎訓練について、頭に“あること”が浮かびました。
私の言葉に、かずくんは笑みを浮かべていました。
「まぁ、それは操縦手達の答え方次第だ。車長の方も話だけはしておく。三時間後に集合で」
「う、うん。分かったよ、かずくん」
そしてかずくんが指示を出すと、それぞれ担当のチーム毎に分かれて私とかずくんのところへ集まることに。
私の方は戦車が置いてある倉庫のところで、かずくんの方は集まるなり私達から離れると、校庭内の森林の中へ歩いて行きました。
去っていくかずくん達を見つめながら、私は「大丈夫かなぁ……」と呟いてしまいました。
「みぽりん、そんなに心配してどうしたの?」
「百式さんが久々に戦車道をされることが心配なのですか?」
沙織さんと華さんが、私に心配そうに声を掛けてくれる。
そんな二人に、私は困ったような表情をしてしまいました。
「いや……なんというか、その……」
「西住殿……もしかして百式殿。百式流のアレをやるつもりですか?」
たどたどしく話す私に、優花里さんが苦笑いしていた。
「優花里さん……もしかして、知ってるの?」
「一応……百式流の名物と言われてるらしいですし」
あ、多分優花里さんの思ってること、私と同じだ。
私と優花里さんの反応に、沙織さんと華さんが首を傾げていました。
「みぽりん? あっち、何かまずいことするの?」
不安そうにする沙織さん。
別にまずいことではないんだけど、あっちの人達はこっちより結構大変だなぁ……って。
「まぁなんというか、かずくんの方は結構大変だなぁって思って」
「え、何やらされるの?」
沙織さんが眉を寄せて訊いてきます。
その質問に、私よりも先に優花里さんが答えました。
「百式流の操縦手は、最初に“あること”をさせられるんです」
「あること、ですか?」
華さんが首を傾げる。
その質問に、優花里さんはかずくん達が去っていった方を見つめて、答えました。
「戦車は自分自身。それを身体に教え込むらしいです」
その答えに、沙織さんと華さんは不思議そうに揃って首を傾げた。
まぁ……普通は、そうなるよね?
私はかずくん達の方をあまり考えないようにして、自分の任されたことをすることにした。
砲撃手は照準方法の確認とかで。装填手は装填時の怪我とかの話とか。通信手は、通信器具の使い方と……
頭の中でぐるぐると色んなことを思い出しながら、私は自分のやることを考えるので精一杯になるのでした。
ようやく戦車道の練習が始まりました。
百式流、和麻の練習方法とは?
本編とは少し違った内容になりつつあります。
では次回でお会いしましょう。
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