GIRLS und PANZER〜少年は戦車道になにを望むか〜   作:紅葉久

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14.クルセイダーの上手い使い方

 

 

 

 

 

 練習と本番は違う。それは経験上知っていたが、改めて理解させられる。

 ハンドルレバーを握る河西忍の手に、僅かな汗が滲む。

 背後から怒涛に撃たれる砲弾の炸裂音、そして着弾する音。

 練習では修理の関係で実弾よりも照明弾を多く使っていたので、その実弾が生み出す音が忍の心を締め上げた。

 

 大洗の住宅街を八九式中型戦車甲型が走る。路地を曲がり、更に路地を曲がる。直線では左右に動いて砲弾に当たらないように気を張り続ける。

 

 絶えず聞こえてくる砲撃の音に、忍は戦車の操縦を間違えないようにするのに必死だった。

 

 後ろから来る圧迫感の中で、こんなことを冷泉麻子はやっていたのかと忍は驚いていた。

 尊敬さえできた。戦車に乗った期間は自分と変わらないはずなのに、ここまで差があることに忍は嫉妬心などではなく素直に尊敬の念を持っていた。

 

 

「後ろからスパイクの準備! アタックが来るぞ!」

「次の路地を右に曲がって!」

 

 

 典子からの警告。そして地図を膝の上で広げている通信手の近藤妙子から指示を受けて、忍が手足を動かす。

 路地を曲がった瞬間に砲弾が通り抜けていく音が鳴り響いた。

 

 

「キャプテン! 猛烈なアタックです!」

「耐えるんだ! もう少しでⅢ突がいる地点に着く! まずはそこまで軽快にレシーブ!」

 

 

 車内の後ろで典子と砲撃手の佐々木あけびが騒ぐ。

 いつもなら忍も二人のテンションに乗っていたが、正直なところそんなことをしてる余裕が彼女にはなかった。

 自分がミスれば車両が撃破し、全員が退場する。しかも自分から誘き寄せ役を言い出した以上、作戦が破綻するミスなんてしなくない。

 妙子の指示を聞き逃すわけにもいかない。忍は神経を使って操縦していた。

 

 

「こちらDチーム! そろそろⅢ突の地点を通ります!」

『了解した!』

 

 

 典子がエルヴィンに連絡する。その連絡にエルヴィンは待っていたと言わんばかりにⅢ号突撃砲F型の乗員に指示を出した。

 住宅の並ぶ中にある細い路地。そのひとつにⅢ号突撃砲F型が車体を潜めていた。

 そして典子の連絡から数分も経たない内に、Ⅲ号突撃砲F型に乗るエルヴィン達の耳に戦車の駆動音が聞こえてきた。

 

 

「良し、左衛門座。生徒会みたいにミスしないでくれよ。八九式が通ってから撃て」

「流石にそれはしない。エルヴィンも見間違えたら笑えない」

「そりゃそうだ」

 

 

 エルヴィンの煽りと左衛門座の返事に、二人揃ってが苦笑いする。

 最初の作戦でとんでもないミスをしてしまったが、運良くⅣ号戦車は撃破されなかった。流石にあの後で同じミスをするのは笑えない。それこそ和麻に何を言われるか分かったものではない。

 そんな二人の会話が終わるなり、エルヴィン達の耳に入る戦車の駆動音が大きくなっていく。

 すぐそこにいる。Ⅲ号突撃砲F型に乗る全員に緊張感が走った。

 

 左衛門座が照準器を顔を近づける。装填は既に万全。あとは覗く照準器の先に相手の戦車が見えたら引き金を引く。たったのそれだけでいい。

 

 そして遂に、エルヴィン達の前を八九式中型戦車甲型が通り過ぎて行った。

 八九式中型戦車甲型が通り過ぎてすぐに待ち望んだモノがやってきた。

 

 全員の目にマチルダⅡ歩兵戦車が映る。そして左衛門座の照準器の先にマチルダⅡ歩兵戦車の側面が見えた。

 

 

「撃てッ!」

 

 

 その瞬間、エルヴィンの声が車内に届く。

 あとは手筈通りだった。左衛門座が引き金を引き、車体に砲撃の余韻が走ることになる。それを身体で感じたおりょうが即座にペダルを踏み抜けば良い。

 Ⅲ号突撃砲F型から砲弾が、元より大洗の車両の中で一番の威力を持つ砲弾が超至近距離から撃たれた。

 瞬く間に、Ⅲ号突撃砲F型の砲弾がマチルダⅡ歩兵戦車の側面装甲を抜いた。

 軽い爆発と煙が上がり、そしてマチルダⅡ歩兵戦車の車体から白い旗が飛び出す。

 

 戦車道に於いて、戦車から白い旗が飛び出した意味――それは行動不能による撃破判定だった。

 

 大洗の初めて敵車両の撃破。それをⅢ号突撃砲F型が行った瞬間だった。

 

 

「良しッ! マチルダⅡ撃破! 一時離脱する!」

 

 

 即座におりょうが車両を後方に退避させながら、エルヴィンがマチルダⅡ歩兵戦車から白旗が出たのを確認して、通信機に歓喜の声をぶつける。

 大洗の各車両から歓喜の声が響いた。これで聖グロリアーナに対して、車両数で有利を取れたと。

 このまま作戦が進めば、更に敵車両を撃破できるかもしれない。

 誘き寄せ役の八九式中型戦車甲型に乗る典子達は、更に士気を上げていた。

 この作戦の中核を担う自分達が活躍している。そのことに典子達は心を躍らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一両撃破されたことに、ダージリンの眉が寄せられた。

 町に入った時点で予想していたが、まさか本当に車両数で有利を取られるとは思っていなかった。

 マチルダⅡ歩兵戦車を待ち伏せて撃破したⅢ号突撃砲F型が路地の中に消えていき、変わらず自分達から逃げている八九式中型戦車甲型を見て、オレンジペコはポツリとダージリンに進言していた。

 

 

「やはり誘われてますね」

「えぇ、やっぱり地の利を取られるのはマズイわね」

 

 

 この時点でダージリンは大洗側の作戦をおおよそ理解した。

 あの一両を囮にして、残りの車両を待ち伏せさせている。そしてその地点を通過する度に撃破していく。

 地の利を生かした良い作戦だ。それに逃げるという点で、操縦を生かす百式流は更に相性が良い。

 八九式中型戦車甲型の運転を後ろから見ているが、まだ拙いながらも淀みなく左右に動いているのを見れば目の前の車両も間違いなく百式流の教えを受けていると分かる。

 

 アッサムからの情報では、Ⅲ号突撃砲F型は百式流の技術を習得していない。今のところ、危険視する必要があるのはⅣ号戦車だけ。

 

 しかしダージリンの知る限り可能性は“かなり低い”が、他の車両も百式流を使えると想定した方が良い。

 

 そもそも操縦して一ヶ月も満たない操縦手が百式流の技術を使えるのがおかしいのだ。

 

 ダージリンもアッサムと同意見で百式流を使うために最低限必要なのは、相手の放つ砲弾を正面から見ても怖がらないこと。

 これを初心者ができること自体が戦車道経験者からすればあり得ない。試合に慣れた選手でも、近距離で正面から砲弾を撃たれれば戦車の車内に居ても怖いと思う選手は多いのだから。

 

 

「普通に追い掛けても不利になるわ。そうね……なら、私達も仕掛けてみるのも良いわね」

 

 

 まずは砲撃して逃げていくⅢ号突撃砲F型に一両向かわせなくてはならない。そしてダージリンは通信機を手に取った。

 

 

「アッサム、どうかしら?」

『今、地図を広げてますが……流石に道を短期間で全部覚えるのは困難です』

 

 

 想定の範囲内。ダージリンは特に表情を変えずに続けた。

 

 

「遊撃、できそう?」

『それは問題ありません。元々、クルセイダーはその為にありますから』

「なら私達は八九式を追い掛けるわ。アッサムとローズヒップは“とりあえず”Ⅲ突を追って。その後は遊撃として動いてもらうわよ。良いわね?」

『了解でございますわ! アッサム様! いっきますわよ!』

『だから静かにしなさいとあれほど……』

『さっきは油断しただけですわ! この聖グロの疾風が簡単に負けるわけありませんのよ!』

『はぁ……』

 

 

 アッサムとローズヒップの騒がしい会話を最後にダージリンが通信機を終える。

 隊列の一番後ろにいたクルセイダー巡航戦車が、Ⅲ号突撃砲F型が消えていった路地に曲がっていくのをダージリンとオレンジペコが見送った。

 

 

「このまま追っても大丈夫なんです? またこちらの車両が撃破されるかもしれませんよ?」

 

 

 思わず、オレンジペコがダージリンに進言する。

 ダージリンは紅茶を飲みながら、オレンジペコの言葉に首を横に振っていた。

 

 

「ペコ、私達の流儀は浸透強襲戦術よ。その流儀を変える気はないわ。私達は、私達の流儀で大洗を倒すだけ……でも今回はその流儀に加えて、少し変わった手で行くわ」

 

 

 聖グロリアーナの得意戦術――浸透強襲戦術。敵の陣地にその名の通り“浸透”する作戦。相手の陣に乗り込み、内側から相手の陣形を崩すことだ。

 今まさに聖グロリアーナの戦車達は、大洗が敷く陣形に乗り込んでいる。あとはこの陣形を、相手の作戦を崩す手を出せば良いだけだと。

 そんなダージリンがカップをソーサーの上に置くと、オレンジペコに小さな笑みを見せていた。

 

 

「それに誰も八九式が走る道順通りに走るなんて言ってないわ……ねぇ、ペコ? こんな言葉を知っているかしら? 視点を変えれば不可能が可能になる」

「ハンバニル・バルカですね」

 

 

 オレンジペコの返事に、ダージリンが満足そうに頷いた。

 ダージリンの視線の先に、八九式中型戦車甲型が走るのが見える。

 敵から逃げているという点、誘われているという点を不利とは捉えず、他の見方をすれば新しい見方が出てくる。

 

 

「見方を変えれば、八九式の進む先に相手の車両はいるのよ」

「……はい?」

 

 

 オレンジペコが首を傾げる。当たり前なことを話し出したダージリンの話が、彼女は意味がいまいち分からなかった。

 

 

「この大きな町で隠れてて探すのが大変な車両のいる場所をわざわざ教えてくれるのなら、こっちにもやり方はあるわ」

 

 

 楽しそうにダージリンが通信機を手に取る。

 そしてダージリンが全車両に向けた指示を聞いて、オレンジペコは目を大きくした。

 そんなことができるのかと、オレンジペコがダージリンに訊いてしまう。

 ダージリンはくすくすと笑うと、楽しげに答えた。

 

 

「忘れてはいけないわ。誰もクルセイダーチームだけが和麻さんに教わったわけじゃないの。私も、和麻さんから色々なことを教わったのよ」

 

 

 クルセイダーの上手い使い方を。

 そう最後に言ったダージリンの言葉に、オレンジペコは素直に驚くばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事、一両撃破できましたね! みほ殿!」

「うん! 磯部さん達が頑張ってくれたからだよ!」

 

 

 エルヴィンからマチルダⅡ歩兵戦車を撃破したと連絡を受けて、Ⅳ号戦車ではみほ達が喜んでいた。

 早速、みほが開いていた地図に印をつける。まずは一両撃破。

 ここから次の五百メートル離れた地点にはM3リーが待機している。超至近距離でなら、M3リーでもマチルダⅡ歩兵戦車を撃破できるかもしれない。

 

 しかしみほは忘れていた。

 

 今の自分達の大洗では、みほ以外が初心者ということを。

 目の前の大きな戦果を得た時、人は油断する。

 

 だからこそみほは耳から聞こえた通信を聞いた瞬間、そのことを思い出してしまった。

 大きな戦果を得た後でも油断してはいけないと指示を出さなかったことをみほは悔やむことになる。

 

 

『先輩! M3リーが撃破されました! 本当にごめんなさい!』

「えっ……⁉︎」

 

 

 梓の通信に、みほの背筋に寒気が走った。

 

 

「澤さん! 全員怪我はありませんか‼︎」

『全員大丈夫です!』

「良かった……! どの車両に撃破されました⁉︎」

 

 

 撃破された車両はその後は審判に撃破判定を確認された即座に隊員は退場となる。そして退場した後の選手は試合中にまだ試合に参加している車両との連絡は禁止される。しかし上空にヘリコプターで監視している審判に撃破判定が確認される前の僅かな時間で、みほは情報を聞き出していた。

 そして梓がすぐに答えた。その車両の名前を聞いて、みほは眉を寄せることになる。

 

 

『クルセイダーです!』

 

 

 その言葉を最後に、梓からの通信が途絶える。

 みほはすぐに本来クルセイダー巡航戦車を追っていたはずのⅢ号突撃戦車に連絡していた。

 

 

「エルヴィンさん! クルセイダーはどの地点で居なくなりました⁉︎」

『すまない! 逃げていたらいつの間にか居なくなっていた! こちらの確認不足だった!』

 

 

 エルヴィンの返答を受けて、みほは広げた地図に目を向けた。

 

 

「磯部さん! 今そちらに何両追いかけて来てます?」

『三両追って来てます!』

「M3リーが撃破されるのは見ましたか!」

『いきなり路地から煙が出てきたのしか見えなかったです!』

 

 

 地図を見ながら、みほが頭の中で先程の話を思い出す。

 M3中戦車リーが撃破。Ⅲ号突撃砲F型を追っていたはずがいつの間にか姿を消した。そして典子が話していたことから察するに相手は突如どこからともなく現れてM3中戦車リーが撃破されたと。

 細い路地から前方しか見ていない状況で、目の前からクルセイダー巡航戦車が現れて撃たれるとは考えられない。

 つまり相手は、M3中戦車リーが隠れていた路地の後ろから攻撃をしたとしか考えられなかった。

 

 そこまで考えて地図を広げたみほが、ハッと息を飲んだ。自分ならどうするかと考えて思いついた策、まさかそんな手を聖グロリアーナが使うことがあるのかと。

 

 地図の上に指を当てて道をなぞっていく。そして何かに気づいたみほはすぐに通信機から全車両に連絡した。

 

 

「全車両! いますぐその場から離れてください! このままだと背後にクルセイダーが来ます!」

 

 

 みほはそう指示出して、地図と睨み合う。

 そんな慌てて様子のみほに、沙織達が困惑していた。

 

 

「みほ、一体そんなに慌ててどうしたの? たまたま見つかって撃破されただけじゃ……?」

「そうですよ、みほ殿。こんな大きな町で隠れてる戦車を意図的に見つけるのはほぼ不可能です」

 

 

 沙織と優花里がみほの慌てように首を傾げる。

 しかしみほはそんな二人に首を横に振っていた。

 

 

「いえ、違います。このままだと確実に相手にバレてしまいます」

 

 

 みほがそう断言した。

 そんな慌てていたみほを見て、麻子がおもむろに沙織が持っていた地図を手に取る。

 その地図には各車両が隠れている地点が記入されていた。そして進む予定のルートも細かく書かれていた。

 Ⅲ号突撃ほ居た地点からM3中戦車リーが隠れていた地点のルートを麻子が目で追っていく。

 そしてなるほどと気づいた麻子は、淡々とみほに告げていた。

 

 

「そういうことか……外周りで走って来てるのか、クルセイダーは」

 

 

 麻子の発言に、みほは驚いて頷いていた。

 

 

「そうです。よく気づきましたね、麻子さん」

「地図を見てたらわかった。これならこっちの位置がバレてもおかしくない」

 

 

 みほと麻子が互いに分かっているように話しているのを、他の三人がキョトンと顔を見合わせた。

 

 

「みほさん、どういうことですか?」

 

 

 思わず、華がみほに訊いていた。

 みほは全員に地図を見せて、地図に指を当てて説明した。

 

 

「相手は八九式の走っているルートをそのまま走って来てます。そのルートの路地にこちらの車両は隠れてましたが、このルートの左右の道を見てください」

 

 

 沙織と優花里、華がみほの広げる地図を見つける。

 みほが指差す色で線を引かれたルート。それに合わせたようにもう一つの道が書かれていた。

 

 

「相手は八九式が走ってるルートに合わせて、クルセイダーを外周りの要領で走らせたんです」

「……つまり、こっちの隠れてる車両の背後を取れるように走ってるってことですか⁉︎」

 

 

 優花里が目を大きくした。沙織と華も同じように驚いていた。

 

 

「そうでなければ説明できません。待ってるこちらの車両に戦車の駆動音が至近距離から聞こえたら、前と後ろから両方聞こえても注意してなければ気づけません」

「でも外周りで走ってるなら普通は追いつけないんじゃないの?」

 

 

 沙織が疑問をみほに告げる。

 本来の道より遠回りになるような道を走っているなら、移動する距離が多い時点で追いつけるはずがない。

 しかしみほはそれは聖グロリアーナにいる一両の車両がいるからこそ可能にしたと判断した。

 

 

「それはクルセイダーならできます。整地ならクルセイダーの速度はかなり速いです。しかもかずくんと同じ百式流を使える人なら、細い路地も苦もなく最速で曲がれます……多分、本来走ってるルートの車両より少し早く走れてるかもしれません」

 

 

 そうでなければ先手を打たれた説明ができない。

 聖グロリアーナのチャーチル歩兵戦車とマチルダⅡ歩兵戦車が八九式中型戦車甲型の走るルートをクルセイダー巡航戦車に逐一報告し、そのルートに合わせて並走していなければ大洗の待ち伏せている車両の背後を先手で取れない。

 

 

「そんなことできますか? あちらは大洗の町を知らないのに……戦車が隠れてる路地を簡単に探すのは無理では?」

 

 

 華の意見も確かだった。

 八九式中型戦車甲型が予定していた走るルートは僅かにズレている。敵車両からの砲撃を逃れるために不規則に路地に入ったりなどをしているので、そのまま順当にクルセイダー巡航戦車に外周りで走りせても普通なら簡単ではない。

 しかし聖グロリアーナがそれをしている可能性があるとすれば、安易に考えて今の作戦を続行しても大洗の車両が撃破される確率の方が高い。

 みほはその判断をした。聖グロリアーナがわざわざ隊列から外してクルセイダー巡航戦車を遊撃に回している。それだけでその可能性が強いと判断していた。

 

 

「待ち伏せは中断です! 次の作戦です! 全車両はその場から離れ次第、地形を利用して敵を撹乱して応戦してください!」

 

 

 そしてみほが通信で全車両に指示を出す。

 本当なら二両から三両まで撃破してから使いたかった作戦を前倒しで使う。

 この町を知る大洗の人間だからこそできる手。視野の狭い住宅街で相手を分散、そして撹乱させて撃破する。

 これで決定的にこちらに有利にできなければ、大洗の敗北が彼女達の背中に張り付いてくる。

 

 

「私達のⅣ号戦車は一番離れている位置なのでまだここに居ても大丈夫。でもこのままだと他のみんなが……」

 

 

 みほが顎に手を添えて考える。

 しかし今から使う作戦は、各車両の自由行動になる。

 みほが把握できる範疇を超えている。それこそ頭上から相手と味方の車両をすべて把握でもしてなけれな不可能だ。

 そしてみほの乗るⅣ号戦車より、残る三両は聖グロリアーナの車両と近い距離にいる。

 互いに残る車両は四両。とりあえずは先に大洗が聖グロリアーナの車両を撃破したい。

 

 

「麻子さん、この町の地形は覚えてますか?」

「大体は覚えてる」

「わかりました。では私達Ⅳ号も向かいましょう。こちらが着く頃には相手の車両が分散していれば戦います。分散していなければこちらの火力でまず一両倒します」

「了解」

 

 

 みほの指示を受けて、麻子がⅣ号戦車を走らせる。

 それに合わせるように華はいつでも砲撃が撃てるように身構え、優花里が装填準備を開始し、沙織が地図を膝の上で広げる。

 大洗の住宅街で、計八両の戦車の鬼ごっこが始まった。




読了、お疲れ様です。

今回、頑張るアヒルさんチーム。喜ぶ大洗。
そして聖グロの反撃。クルセイダーが本気出す。
ウサギさんチーム、退場。

こんな話ですかね?笑

作戦の説明がちゃんとできているか不安仕方ないこの頃。

さて、大洗と聖グロ戦の住宅街編も折り返しくらいです。
ここから聖グロのクルセイダーの本気が見えていきます。


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