GIRLS und PANZER〜少年は戦車道になにを望むか〜 作:紅葉久
スコーンを摘まみつつ、紅茶を片手に今日の試合について感想戦を一通り終えたあと、ふと和麻が意を決したように口を開いた。
「こんな時に話すことじゃない気がするけど……この機会にみほ達に話しておきたいことがある」
「……かずくん? 急にどうしたの?」
先程まで穏やかだった雰囲気と変わって、和麻が神妙な表情を見せている。
そんな様子にみほが首を傾げていると、おもむろに和麻はダージリンを一瞥しながら言葉を続けた。
「今日こうして聖グロのみんなと会うことができたのは、みほ達のおかげだ。だから、ダージリン達が一緒にいる時に話しておくべきだと思ってた」
一体、なにを話そうをしているのだろうか?
唐突な彼の発言に、テーブルを囲む全員が怪訝に眉を寄せる。
その中で、彼の隣に座っていたダージリンが訊き返した。
「私達が一緒にいる時に、みほさん達に話すこと?」
その問いに、和麻が頷く。
そして、彼が紅茶を一口飲んだ後、ゆっくりと告げた。
「みほ達には、ずっと詳しく話していなかったんだ。俺が聖グロを離れた“あの件”について。それと……俺があなた達に何も言わずに居なくなって、大洗に行くまでのことをダージリン達にも話したかった」
その言葉に、みほ達が息を飲んだ。そしてダージリン達も同じく、息を飲む。
まさか、和麻からそんな話が出てくるとは思いもしなかった。
「かずくん。その話は……」
思わず、みほが口を挟んでしまった。
彼の話そうとしている“あの件”とは、間違いなく聖グロリアーナで起きた事件のことだろう。
和麻が話そうとしている意図は察せる。今まで、その件について和麻から詳しく話してもらったことはない。
だが、わざわざ話さなくても……その話はあまりにも有名過ぎて、とても当事者の口から聞ける話ではなかった。
「あの事件が知れ渡っていることは俺も知ってる。でも、みほ達には知ってほしいと思った。ただ結果だけしか広まらなかった、あの事件の全部を」
「結果だけしか広まらなかった……?」
和麻の意味深な言葉に、みほをはじめとした大洗の全員が首を傾ける。
しかし、そんな彼女達とは正反対に、ダージリンとアッサムは言葉が出ないと言いたげに目を伏せていた。
「ダージリン。あの件について、話すのが嫌だったら言ってくれ。多分、辛いことを話してもらうことになる」
あの事件について話すことは、ダージリンにとって辛い思い出を蘇らせることになる。
だが、それでも和麻は、みほ達に話すべきだと思った。
「でも今日、俺があなた達に会うことができたのは……間違いなくみほ達のおかげだ。あの件の所為で二度と戦車に乗らないと決めていた俺に、また戦車に乗る勇気をくれて、あなた達と再会できる勇気をくれた彼女達には話しておきたい」
それはみほ達に対する、和麻なりの誠意だった。
世間に広まった噂ではなく、本当のことをみほ達にも知ってほしい。
そう語る和麻に、ゆっくりとダージリンの肩が落ちた。
「和麻さんはズルいわね。当事者のあなたからそんな風に言われたら……嫌だなんて言えないわ」
「そういう言い方をしたからな。きっと、ダージリンなら断れないって」
「本当、ズルい人」
苦笑する和麻を横目に、ダージリンが紅茶を飲む。
そして苦笑混じりに、彼女は口を開いた。
「私も、いつか聞こうとは思っていたわ。和麻さんが入院して、いつの間にか消えてしまった“あの日”から……あなたがなにをしていたのか。それも私達に話してくれるの?」
ダージリンの疑問に、和麻が頷く。
その反応を見て、彼女も静かに頷いた。
「……わかったわ。その話を聞かせてくれるなら、和麻さんと一緒に話すわ。みほさん達には本当に感謝してるし、なにより私達が聞きたかった話を聞かせてくれるなら断る理由なんてないもの」
まさか、それが今日とは思いもしなかったけど。
そう小言を漏らすダージリンに、和麻が苦笑いを見せる。
しかし彼女から了承を得たことで、和麻は改めてみほに視線を向けた。
「みほ、聞いてくれるか?」
「……うん。かずくんがそう言うなら、聞かせてもらう」
そこまでの決意があるなら、聞かないわけにはいかない。
正直に言えば、みほ自身も詳しく知りたいと思っていた。母親から聞いた話や噂でしか知らなかった聖グロの事件について、和麻を思いやる気持ちから知りたいと。
同じテーブルを囲む沙織達も、みほと同じ気持ちだった。
もう彼は大洗の仲間であり、友達の和麻がどんな辛い思いをしてきたのか知りたいと思っていた。それは哀れむためではなく、ただ同じ気持ちを共有したい気持ちがあった。
それが良き友達の在り方だからと。
「――聞き耳を立てる必要なんてない。聞きたい奴は椅子持って集まって来い」
ふと和麻がそう言うと、一斉に立ち上がる音が鳴った。
大洗と聖グロ。その全員が和麻達の座るテーブルへと集まっていく。
そして各々が運んできた椅子に腰を落とすと、その光景にダージリンが小さな笑みを浮かべた。
「大洗の方々は分かるけど、全員聞きたいのね。和麻さんの口から」
「……当然でしょう。私も、同じ気持ちです」
以前に、聖グロではダージリンから一年生に話してあった。去年に起きた事件の顛末を。
しかしそれは聖グロ側の、ダージリンから見た視点の話であり、和麻の話は聞いたことがない。
確かに、彼女達の立場なら同じことをするだろう。
頷くアッサムに、そう思いながらダージリンは頷いた。
「みんな、聞く準備はできたみたいね……なら、始めましょう」
まずはあなたから。ダージリンから視線を向けられて、和麻が察する。
そうして、和麻は昔を思い出しながら――ゆっくりと口を開いた。
「あの事件が起きたのは、俺が聖グロから特別入学の依頼を受けて、入学してから半年くらい経った頃だった。先にみほ達に話しておくが、俺はダージリン達には歓迎されていたけど……一部の上級生には歓迎されていなかった」
「え? それっておかしくない? だって百式君って聖グロからお願いされて入学したんでしょ? それなのに歓迎されてないって変じゃない?」
まず初めに和麻から聞かされた話に、沙織が言葉を挟んだ。
そう思うのも当然だろう。女子校である聖グロリアーナが男子生徒を特別入学させた。それは強引にでも百式和麻を我が校に引き入れたかった意思の現れである。
ならば、聖グロは入学してくれた和麻を歓迎するのが普通である。
その当然の疑問に、ダージリンが答えた。
「それについては、当時の私も信じられない話だったわ。私の知る限り、周りでは和麻さんを慕ってる人ばかりだったもの。確かに最初は殿方が戦車道をすることへの偏見は強かった。でも和麻さんは類稀な操縦手の腕前で、その偏見を容易く覆したの」
和麻が聖グロに入学した当初は、確かに酷かった。
男が戦車道をすることに対する悪い偏見は、根強くある。
戦車道を汚す日本の恥とまで言われるほどだ。
しかし、和麻はそれを操縦手の腕前で黙らせた。
「……なにをされたんですか?」
そっと手を上げて、オレンジペコが質問した。
以前に事件の件について聞いていたが、その話は聞いたことがない。
あまりにも興味が湧いて、思わず聞いた彼女に、ダージリンは嬉しそうに答えた。
「簡単よ。当時の隊長、アールグレイ様の案で練習試合をしたの」
「練習試合ですか?」
「えぇ、チャーチルとマチルダの五両編成チームと和麻さんの乗るクルセイダーのみで試合をしたの」
「はい?」
あまりにも突拍子もない話に、オレンジペコが呆気に取られた。
その組み合わせは、まったく試合にならないのではと?
「懐かしい。ダージリンに言われて、その時の私はクルセイダーの砲撃手に乗っていたわ」
「あなたなら一緒に乗れば分かると信じてたのよ。和麻さんの実力は本物だって」
「アレを見せられて認められない操縦手なんていないわ。あの時の感動は、今でも鮮明に思い出せる」
アッサムとダージリンが懐かしそうに語り合う。
その会話に、オレンジペコはすかさず聞いてしまった。
「えっと、その試合の結果は……?」
「もちろん、和麻さんのクルセイダーが五両撃破して勝ったわ」
即答したダージリンに、その件を知らなかった人間は素直に驚いた。
五両対一両。その戦力差で勝てるとはまったく思えなかった。
「たった一両で……そんなことができたのですか?」
「和麻さんのクルセイダーならできるわ。それに当時の対戦相手は百式流に対する対抗策を準備してなかったの。そんな相手に和麻さんは負けないわ」
オレンジペコが驚いた表情で和麻を見つめる。
しかし和麻は、ダージリンに呆れた表情を向けていた。
「アレはズルだろ。あの人達に俺が何をしてくるかアールグレイさんは言ってなかった。百式流について詳しく知らない相手なら撃破するのはかなり簡単になる」
「当然でしょう。だって、あの時に和麻さんの対戦相手に選ばれた人達はアールグレイ様が選んでいたの。殿方が戦車道をしていることに否定的な方々ばかりを集めていた。そのほとんどが上級生の方々でしたけどね」
つまるところ、たとえ男でも自分達より上手い選手を否定するな。そういうことだった。
「一番早く和麻さんを周りに認めさせるには、その実力を示すしかなかった。殿方だろうと関係ない。たとえ女性ではなくても百式和麻の持っている実力は、我々聖グロリアーナにとって欠かせない力になると証明する必要があった」
百式和麻の存在は、聖グロリアーナにとって絶大な成長をもたらす。
その確信を、全員に認めさせる必要があった。
「だから、あの練習試合で和麻さんは力ずくで認めさせたの。この人の実力は本物だって。だからこそ、みんなが認めた。特にクルセイダーチームは一瞬で和麻さんを慕うようになったわ」
「あの和麻様の雄姿を見せられて、認められないほどクルセイダーチームは愚かじゃないわよ。卓越した操縦技術もそうですが、和麻様の人柄も素晴らしい方だと思ったからこそ、私達は和麻様を慕うようになったの」
当時、まだクルセイダーチームに所属していたアッサムが嬉しそうに語る。
そして昔を思い出すように目を瞑りながら、彼女が言葉を続けた。
「聖グロの中で誰よりも操縦が上手いことをひけらかすわけでもなく、その実力は日々の研鑽によって作られていると和麻様は言ってくれたわ。本当にお優しい方で、教えを受けたいと相談すれば昼夜問わずいつでも真摯に向き合ってくれた。どんな些細なことでも丁寧に教えてくれて、自身の持っている技術を隠すことなく私達に教えてくれる和麻様の立ち振る舞いは……心から尊敬に値する方だと思ったわ」
その教えを受けた者として、アッサムは心から和麻を尊敬している。
はじめて彼の操縦を見た時から、憧れてしまった。
この人のような、自由自在に戦車を操れる操縦をしてみたいと。
その技術を包み隠さず教えてくれる彼のことを、尊敬できないはずがなかった。
「……本当に勘弁してください。そこまで大袈裟に言われると頭が痛くなりそうになります」
「いえ、何度も言います。この先も、私はあなたのことを心から尊敬しています。あなたから操縦を教わることができたあの日々は、私の誇りですわ」
「別に大したこと教えてなかった気がするんだけどなぁ……アッサムさんの場合、ほとんど教えることなかった気がしますけど」
「そんなことはありません。基礎的な技術でも勉強になることも多く、そして百式流まで私に授けてくれた。それを大袈裟と言われる方が私には心外ですわ」
これは何を言ってもダメだと、和麻が参ったと両手を上げる。
そんな二人の会話にクスクスと笑いながら、ダージリンが話を戻した。
「そんなことがあって、無事に和麻さんは仲間として認められたのだけど……一部の上級生はそうではなかったの。当時の私は気づけなかったけど、和麻さんは気づいていたわ」
「……って言っても、ほとんど勘だったけどな。たまに感じる時があったんだよ。俺のことが邪魔だって向けてくる嫌な視線が」
それは、男が戦車道をしていることに対する悪意を幾度となく向けられてきた和麻だからこそ感じられたことだろう。
聖グロリアーナで、自分のことをよく思ってない人間がいると。
「俺だってみんなに認められようと頑張ったよ。公式戦に出れない俺ができることなんて教えることと裏方の作業くらいしかできなかったし」
それでも全員に認められようと努力する和麻の姿勢には、話を聞いていたみほ達も素直に尊敬できた。
全員に好かれることは難しい。聖グロリアーナなら戦車道チームに所属している人数も多いだろう。多少なりとも、仲の良くない人間が居てもおかしくない。
特に戦車道をしている男なら、そのハードルは高くなる。
その中でも努力を続けた彼の姿勢は、感心すらしてしまう。
「でも、それでもダメだった。だから……あの日、俺は砲撃を受けた」
その最後の言葉に、周囲の全員が息を飲んだ。
遂に、その言葉が出てきたと。
「あの日は砲撃手の練習だった。なんてことない普通の練習で、クルセイダーチームが使う砲撃の的を準備してる時に……急に俺の身体が吹っ飛んだ。本当に何が起きたかまったく分からなかったよ」
一瞬で気絶したから、その時のことは覚えてないけどな。
そう言って和麻がダージリンに視線を向けると、彼女は表情を強張らせたまま口を動かした。
「あの時のことは、本当に……私もなにが起きたか理解できなかったわ。突然、鳴るはずがない砲撃の音が鳴ったと思ったら、なぜか和麻の身体が宙を舞っていた」
その時の光景を思い出したのか、ダージリンの目が鋭くなる。
しかし、それでも彼女は話を続けた。
「本当に、言葉通りの意味で……あの時の練習場は空気が凍ったわ。でも、それも一瞬だった。私達は一斉に和麻さんの元に駆け寄った。それで……倒れている和麻さんを見て、背筋が震えたの」
ふと、ダージリンが和麻の眼帯を一瞥する。
「和麻さんの身体中が火傷に侵されていたわ。顔の右側が焼けて、右目には何かが刺さっていて、血もたくさん出ていた。思わず和麻さんを抱き寄せた時、本当に思ったの……あ、この人は死んでしまうって」
今でも、その感触が手に残っているのか、ダージリンが自身の両手を見つめる。
少しだけ、彼女の手が震えていた。
その様子に、見かねてアッサムが割り込んだ。
「和麻様が砲撃を受けた瞬間、即座にアールグレイ様が学園艦の医療班を呼んだの。身体に重度の火傷と頭部の右目に裂傷と、和麻様の容態が本当に危ない状況だと判断されて、緊急手術が行われて、どうにか一命を取り留めた」
「……それで一週間くらい、俺は寝たままだったらしい」
戦車道を嗜む者なら、それは本当に理解できない事故だった。
みほを除いた大洗の全員も、今なら理解できた。人に向かって砲撃を撃つ、それがどれほど危険なことか。
「和麻さんが寝ている間、学校は慌ただしかったみたいよ。和麻さんを砲撃した戦車を特定して、その乗員四名をアールグレイ様が問い詰めたの。当時の私は寝たきりの和麻さんに付き添っていたから詳細は知らないけど……その時の尋問は、本当に酷かったとだけ聞いているわ」
その件について知る人間は、アールグレイと尋問を受けた四名しかいない。
しかし、その問い詰め方が尋常ではなかったことだけ知られていた。
「それで、その四人が全部話したわ。あまりにも馬鹿げたことを」
思い出すだけで、怒りが込み上げてくる。
そう言いたげに、ダージリンが表情を怒りで歪める。
はたして、その理由はなんだろうか?
話を聞いていた全員が疑問を抱いていると、その答えを告げた。
「ただ、驚かせたかっただけだって言ってたの」
「えっ……?」
みほから、唖然とした声が漏れた。
それだけのために、人に向かって砲撃を撃った?
あまりにも馬鹿げた話に、みほは理解することすらできなかった。
「本当は、もう少し離れた場所に着弾させたかったらしいわ。その戦車に乗っていた四人の三年生は、和麻さんのことをよく思っていなかった。だから、ほんの出来心で和麻さんに嫌がらせをしようと考えたそうよ」
大洗の全員が、その言葉に絶句した。
ただの嫌がらせで、そんなことを本当にしたのかと。
「その人達、普段から和麻さんに嫌がらせをしようとしてたみたい。でも、まったくできなかったから練習中にって企てた。それもそうよ。だって、そんなことが間違っても起きないように、常に和麻さんの傍には私やアッサム、ローズヒップが居るようにしていたから」
「……そんなことしてたのかよ」
「当然よ。あなたは、聖グロリアーナが懇願して頂いた大切な方なのよ。あなたから大事な高校生活を頂いた以上、あなたには思ってほしかった。この学校来て、本当に良かったって。たくさんの学校から入学依頼が来ていたなかで、聖グロリアーナを選んで良かったって」
その願いも、もう叶わなくなってしまった。
たった一発の砲弾が、全てを壊してしまった。
それが、今でも悔しくて堪らなくなる。
作った拳に、力が入る。しかし、その後悔をしたところで意味がない。
そう自分に言い聞かせながら、ダージリンは話を戻した。
「話を戻すわ。とにかく彼女達の嫌がらせは……本人達も予想しなかった結果を生んでしまった。ほんの少し、砲撃手の手元が狂った。それが原因で、和麻さんの真横に砲弾が着弾したの。それが聖グロリアーナが起こした、決して許されない事件の原因よ」
噂だけでは実感がなかったが、こうして詳細を聞かされてしまうと……なにも言葉が出なかった。
黙って、みほ達が耳を傾ける。
そしてダージリンが話し終えたタイミングで、次はアッサムが続けた。
「その事件を起こした四名の生徒は、当然ですが重い処分を課せられました。たとえ意図してなくても、戦車道の名家・百式流の長男である百式和麻に対する非人道的な行為をしてしまった彼女達には、学校側も……百式流の家元である和麻様のお母様も大変お怒りでした」
それは、至極当然の話だった。
学校側は、人身事故を起こした生徒に対する処分は重く考えなくてはいけない。
更に、和麻の家族である百式流も子供に大怪我を負わせられて、怒らないはずがない。
「そこで百式流と学校で、ふたつの決断がされました。まずひとつは、今回の事件の原因となった四名には学校から退学処分が下され、百式流からは和麻様に今後に残る後遺症を残したことで多額の損害賠償を請求していましたが……その額を下げる条件として、その四名に二度と戦車に乗らない誓約書を書かせました」
学校側の判断としては、妥当な決断だろう。聖グロリアーナのような名門の学校で、今回の事件を起こした生徒を残しておくわけがない。
しかし百式流の判断については、みほ達には正否の判断はできなかった。多額の損害賠償などという言葉は、高校生では聞き慣れない言葉でしかない。
「そして、ふたつ。今回の事件を起こした聖グロリアーナの戦車道チームを未来永劫解体すること。それが学校が下した決定事項でした」
それも、また当然の判断だった。
人身事故を起こした部活を続けさせるほど、学校は寛容ではない。
しかし、そこで大洗の全員が疑問を抱いた。
今、こうしてダージリン達は戦車道を続けている。
それは、どうして?
「え、でもダージリンさん達は戦車道を続けて……」
「みほさんの疑問は当然ね。本当なら、私達は戦車道ができなくなっていた。それを回避できたのは……和麻さんのおかげよ」
ダージリンの声に、全員が和麻に視線を向ける。
そんな彼に、ダージリンが問いかけた。
「本当なら私達の戦車道は、あの日で終わるはずだった。でも、そうならなかったのは……あなたが何かしたからでしょう? 和麻さん、あなたは何をしたの?」
「……簡単だよ。ただ、お願いしたんだ。俺の母さんと戦車道連盟の蝶野さんに」
その疑問に、和麻が答える。
そして、彼は語り始めた。
ダージリン達も知らない。今まで誰にも語ることがなかった、あの日のことを。
読了、お疲れ様です。
過去編を書こうかと思いましたが、書くと恐ろしいほど話数を使うと判断して彼女達に語ってもらいました。
今まで断片的にしか出てこなかった聖グロリアーナで起きた事件の顛末と、次回で和麻の行動が出てきます。
重い話になってますが、お許しください。