異世界にて最強問題児を監視するそうですよ!?   作:問題児愛

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十一章 異変と決意

 翌日。飛鳥・耀・ジン・黒ウサギ・十六夜・万由里・士道と三毛猫は〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの居住区に向かっていた。

 少し遡り屋敷を出る前に、十香が消えていたことで一騒動あったのだが、士道曰く〝俺が眠ると自動的にギフトカードの中に戻るみたいだ〟とのことだった。

 現在、十香はギフトカードから水晶のネックレスとなって顕現しており、士道の首にかけられている。これでギフトカードを取り出さずとも『十香』の名を叫べば即召喚出来るそうだ。

 話を戻し、〝六本傷〟の旗が掲げられた昨日のカフェテラスでウェイトレスの猫娘が声をかけてきた。

 

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

 

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢たちの討ち入りやで!』

 

 それを聞いた猫娘は三毛猫に微笑むと、飛鳥達に駆け寄り一礼する。

 

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この2105380外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

 ブンブンと両手を振り回しながら応援する猫娘。飛鳥は苦笑しながらも強く頷いて返す。

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「おお!心強いお返事だ!」

 

 満面の笑みで返す猫娘。だがしかし、急にヒソヒソと呟く。

 

「実は皆さんにお話があります。〝フォレス・ガロ〟の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

 

「居住区画で、ですか?」

 

 それに黒ウサギが返事すると、飛鳥は初めて聞く言葉に首を傾げる。

 

「黒ウサギ。舞台区画とは何かしら?」

 

「ギフトゲームを行うための専用区画でございますよ。他にも商業や娯楽施設を置く自由区画。寝食や菜園・飼育などをする居住区画などがございます」

 

「そう」

 

 黒ウサギの説明に相槌を打つ飛鳥。猫娘はさらに続けた。

 

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

 

「………それは確かにおかしな話ね」

 

 飛鳥に同意した一同は顔を見合わせ、首を捻る。その反応にうんうんと頷き、猫娘は忠告した。

 

「でしょでしょ!?例のゲームかは知りませんが、とにかく気をつけてくださいね!」

 

「分かったわ。ありがとうね店員さん」

 

「お安いご用ですよ!ではでは!」

 

 猫娘は熱烈なエールを送ると、店内に戻っていった。

 元気が良すぎる猫娘に苦笑した一同は〝フォレス・ガロ〟の居住区画を目指す。

 

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 

 黒ウサギ達は一瞬、目を疑った。なぜなら居住区が森のように豹変していたからだ。

 ツタの絡む門を擦り、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「………ジャングル?」

 

「………ジャングルだな」

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

 

 耀の呟きに同意する士道。それに肩を竦ませて言う十六夜。しかし、ジンは小首を横に振り、

 

「いや、おかしいです。〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

 ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動のようなものを感じさせた。

 

「やっぱり―――〝鬼化〟してる?いや、まさか」

 

「鬼化?」

 

 ジンの呟きに首を傾げる万由里。ジンがはい、と頷き説明しようとしたが、飛鳥の声に遮られた。

 

「ジン君。ここに〝契約書類(ギアスロール)〟が貼ってあるわよ」

 

「え?」

 

 ジン達は飛鳥の指差す方に目を向けると、その門柱には羊皮紙が貼られており、今回のゲームの内容が記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

 ・プレイヤー一覧

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件

 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法

 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具

 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げると、飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります………!」

 

 黒ウサギの言葉に飛鳥が険しい顔で問う。

 

「………どういうこと?」

 

「〝恩恵(ギフト)〟ではなく〝契約(ギアス)〟によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、お二人の力を克服したのです!」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに〝契約書類〟を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

 

 ジンは悔しそうにローブを握り締める。十六夜は軽薄な笑いのまま呟く。

 

「敵は命懸けで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

 彼の発言に万由里は微かに眉根を寄せる。ここは観客視点でモノを言うのではなく、同士に激励を送ってやるべきだと思ったからだろう。

 

「気軽に言ってくれるわね………条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

 そう呟いた飛鳥は厳しい表情で〝契約書類〟を覗き込む。すると黒ウサギと耀は飛鳥の手をギュッと握って励ます。

 

「だ、大丈夫ですよ!〝契約書類〟には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されなければ、ルール違反で〝フォレス・ガロ〟の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

 

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

 

「………ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためには、コレぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

 愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる耀。飛鳥は二人の檄で奮起する。

 その様子を見ていた士道と万由里は安心したが、士道は申し訳なさそうに言った。

 

「悪い。俺も仲間なのに一緒にゲームに参加出来なくて」

 

「え?あ、士道君はあの場に居合わせていなかったのだから参加出来ないのは仕方がないわ」

 

「うん。謝る必要なんてないよ。でも、その気持ちは受け取っておく。ありがとう士道」

 

「そっか。絶対に勝ってこいよ。けど油断はするんじゃないぞ。大怪我なんかしたら元も子もないからな」

 

「うん」

 

「ええ」

 

 士道の言葉に飛鳥と耀は強く頷いて笑う。士道はやっぱり優しいな、と万由里は頬を緩ませながら見つめる。

 が、ハッと自分の役目を思い出して表情を戻すと十六夜の方へ視線を向ける。

 そしてその彼はジンに昨日の事を話していた。

 

「この勝負に勝てないと俺の作戦は成り立たない。だから負ければ俺はコミュニティを去る。予定に変更はないぞ。いいな御チビ」

 

「………分かってます。絶対に負けません」

 

 こんなことで躓くわけにはいかない、とジンは心に決めて飛鳥と耀と共に門を開けて突入した。

 

 結果は〝ノーネーム〟の勝利。飛鳥が(ガルド)を木々で拘束して、指定武具〝白銀の十字剣〟で貫き倒した。

 

――――――――――――――――――――

 

 ゲーム終了と同時に十六夜達は走り出した。士道は黒の霊装を纏った万由里が抱きかかえて飛翔し二人の後を追う。

 

「おい、そんな急ぐ必要ねえだろ?」

 

「大有りです!黒ウサギの聞き間違いでなければ、耀さんはかなりの重傷のはず………!」

 

「な、マジかよ!早くしないと危険なほど重傷なのか!?」

 

「はい………」

 

 黒ウサギの沈んだ表情に士道の顔は青ざめる。すると、ジンの叫び声が四人に届いた。

 

「黒ウサギ!早くこっちに!耀さんが危険だ!」

 

 廃屋に隠れていたジンの下へ黒ウサギ達は辿り着き、耀の容体を見て思わず息を呑んだ。

 

「すぐコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器が揃ってますから。お四人は飛鳥さんと合流してから共に帰ってきてください」

 

「わ、わかったよ」

 

 ジンが頷くと、黒ウサギは耀を抱えて全速力で工房へ向かった。黒ウサギが踏み込んだ地面にはクレーターの様な亀裂が走り、通った後には土埃が渦を巻いて立ち昇る。

 一拍置いた後にその軌跡は強風となって辺り一帯を揺らした。

 十六夜は値踏みするような双眸で黒ウサギを見送り、獰猛な微笑を浮かべていた。

 

「おい御チビ。黒ウサギは春日部を救えるギフトを持っているのか?」

 

「いえ、僕らの工房に置いてある治療用のギフトです。しかし扱いが難しいため、彼女しか使えない物ばかりです」

 

 ジンが答えると、十六夜はその答えに満足そうに喉を鳴らして笑い、独り言のように呟いた。

 

「やっぱりアイツが一番面白いな。俺並みには程遠いも、〝ノーネーム〟じゃ明らかに別格だ」

 

 その呟きを聞いていた万由里は呆れたような顔で口を挟む。

 

「あんたって何処までも自分が格上発言してるわよね。黒ウサギがどんなギフトを持っているのか分からないのに、彼女を下に見るのは早すぎるんじゃない?」

 

「へえ?オマエは俺より黒ウサギの方が上って言いたいのか?」

 

「別にそうは言ってないわ。ただ彼女のギフトを全て見た上で優劣決めないと痛い目見ても知らないわよ?―――って言いたいだけ」

 

「なるほどな。確かにアイツがどんな素敵ギフトを隠し持っているかは俺にも分からねえ。………だが強えなら是非とも手合わせ願いたいね」

 

 ヤハハと笑って黒ウサギが去っていった方角を見つめる十六夜。

 そればっかりね、と万由里は溜め息を吐く。

 十六夜はふと万由里の隣にいた士道がいつの間にか消えていたことに気づき訊ねる。

 

「ん?そういやあのキス魔はどこ行ったんだ?」

 

「ぷっ、………こほん。士道なら飛鳥が心配だからってあっちの方へ行ったわ。あんたも彼の優しさを少しは見倣ったら?」

 

「ハッ、嫌だね。俺はどっちかっていうと美少女精霊達の口説き方をアイツに教わりてえな。どんな手を使ってキスまで至ったかをじっくりと根掘り葉掘り聞き出してよ」

 

 ニヤリと笑って万由里を見つめる十六夜。万由里は危機を察したのか彼から数歩下がって距離を取った。

 その反応に肩を竦ませた十六夜は、ふとジンの方に目を向ける。すると目が合った途端、ジンは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「ん?どうして頭を下げる?」

 

「だって僕は結局………何も出来ず仕舞いでした」

 

「ああ、そういうこと。でもお前達は勝っただろ?」

 

 十六夜は皮肉でも、嘲りでも、称賛でも、慰めでもない声で言う。

 ジンは不思議そうに十六夜を見上げると、彼は続けて補足した。

 

「お前達が勝った。なら、御チビにも何か要因があったんだろ。少なくとも春日部が生き残ったのは御チビが的確な処置を施したからだ。そうだろ?」

 

「は、はい」

 

「ならそれでいいんじゃねえの?それより、初めてのギフトゲームだったんだろ?御チビは楽しめたのか?」

 

「………いえ」

 

 苦い顔で首を横に振る。勝利したものの、彼にとってのデビュー戦は危機の連続ばかりで良いスタートを切れたとは言えない結果だ。幼さもあるが、自分自身の無力さに失望していた。

 

「昨夜の作戦………僕を担ぎ上げて、やっていけるのでしょうか?」

 

「他に方法はないと思うけどな。御チビ様が嫌だと仰るのなら、止めますデスヨ?」

 

 からかうような尊敬語で話す十六夜。ジンは一拍黙り、首を横に振った。

 

「いえ、やっぱりやります。僕の名前を全面に出すという方法なら、万が一の際に皆の被害も軽減出来るかもしれない。僕でも皆の風避けぐらいにはなれるかもしれない」

 

「………あっそ」

 

 ジンの意外な言葉に少し驚いた十六夜は、本当に面白い場所に来た、と哄笑を必死に噛み殺すのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

 一方、士道は道中で飛鳥を発見し、駆け寄って声をかけた。

 

「飛鳥!」

 

「あ、士道君。………そんなに慌ててどうしたの?」

 

「そりゃおまえが心配で様子を見に来たに決まってるだろ」

 

「え?」

 

 驚く飛鳥。士道は走ったことで荒くなった呼吸を整えながら続けた。

 

「おまえが、耀の怪我のことで落ち込んでるんじゃないかって、心配になって来たんだよ」

 

「………っ!」

 

 その言葉に飛鳥はハッとして士道に問いただす。

 

「春日部さんは!?春日部さんは無事なの!?」

 

「まだ分からない。黒ウサギの様子から分かることは、一刻の猶予もない感じだった」

 

「………っ、そんな………!」

 

 泣き崩れる飛鳥。そんな彼女を慰めるように士道が言う。

 

「だが大丈夫だ!黒ウサギが治療するために耀を抱えて工房に向かったよ。だから俺達は耀の傷が一日でも早く治ってくれる事を祈ってあげないとな!」

 

「………そ、そうね。春日部さんならきっと大丈夫だわ。………だけど」

 

 飛鳥はフッと表情を曇らせて言う。

 

「だけど、私がもっとしっかりしていれば………春日部さんをあんな目に遭わさせずに済んだのに………!」

 

「………飛鳥」

 

 後悔と自分の愚かさを嘆き唇を噛み締める飛鳥。どうしてあの時、耀も連れて逃げる選択をしなかったのだろう、と。

 士道はそんな飛鳥を真っ直ぐに見つめて言う。

 

「そんなこと言うなよ飛鳥!おまえは選択を誤って失敗したのかもしれない。だけど耀の仇は取れたんだろ!それじゃ駄目なのか!?」

 

「そ、そうだけど………でも!」

 

「でも、なんだ?失敗することは悪いことなのか?ああ、確かにそうかもしれない。だが失敗は誰だってする!失敗をしない完璧な奴なんていねえ!耀はおまえの失敗を許さないと思うか?いいや、俺は思わない。まずおまえの無事を喜ぶはずだ。それと同時に、大怪我を負ったことでおまえらに迷惑をかけたと後悔してるはずだからな!」

 

「………!?」

 

 飛鳥はハッとして顔を上げる。耀も飛鳥とジンの助けを借りずに一人で挑み、結果、大怪我を負って二人に迷惑をかけることになってしまったのだ。

 彼女のプランではガルドの撃破まで一人でやるはずだった。だがそうすることは出来ず飛鳥に危険な役を押しつけてしまった。耀はそのことを後悔してるはずなのだ。

 士道はその事を飛鳥に気づかせると、最後にこう締め括る。

 

「今回はおまえだけじゃなく、耀も失敗をおかしていたんだ。だから自分のせいにするなよ。………けど、それでも自分を許せないんなら、何がいけなかったのかしっかり反省して次は失敗しないように解決策でも考えるんだ!次は成功させるためにな」

 

「………士道君」

 

「もし解決策が思いつかなかったら、その時は俺も一緒に考えてやる。だから元気出せ。何時までも留まらないで前に進め!おまえなら出来る!俺はそう信じている」

 

「………!」

 

 士道はそう言って飛鳥に手を差し出す。まるで闇の中から彼女を救いだそうと照らした一筋の光のように。

 その差し出された彼の手を、飛鳥は決意して掴み取る。

 

「………そうね。何時までもウジウジしてたらそれこそ春日部さんに失礼よね」

 

 飛鳥は立ち上がり、ニコリと士道に微笑んだ。

 

「ふふ、ありがとうね士道君。貴方のお陰で元気が出たわ」

 

「おう。それは良かった。………じゃあ、万由里達が待ってるし戻るか」

 

「ええ」

 

 笑みを交わして二人は歩き出し、万由里達と合流するのだった。




士道が飛鳥にフラグを立てたようです←

忘れてはならない、十香はあくまでギフト扱い。
一々カードを取り出して召喚なんかしてたら隙がうまれるやもしれぬので、水晶のネックレスとして顕現させてみた。

他の精霊達も装飾品として顕現させる予定。(ネックレス以外で)

追記。
おかしなところがあったので訂正しました。まるで士道が飛鳥達の戦いを見ていたかのような書き方になっていたので(汗)
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