5000文字以内って本当に難しい(苦笑)
十六夜の問いに黒ウサギと―――万由里がドキリとした。
万由里が『隠している』という言葉に反応したのは、前の世界と同じ存在ならば、役目を終えれば消えてしまうかもしれないということを彼らに話していなかったからだ。
だがこれを伝えて彼らに情を持たれては前の世界の二の舞を演じかねないため、不安要素は伝えずに隠すことにしていた。
ゆえに万由里はポーカーフェイスを貫き、彼らに悟られないようにしているのだ。
それは黒ウサギも同じて、動揺を表情には出さずに返す。
「………なんのことです?箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームの事も」
「違うな。俺が聞いてるのはオマエ達の事―――いや、核心的な聞き方するぜ。黒ウサギ達はどうして俺達を呼び出す必要があったんだ?」
「それは………言った通りです。十六夜さん達にオモシロオカシク過ごしてもらおうと」
「ああ、そうだな。俺も初めは純粋な好意か、もしくは与り知らない誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。俺は大絶賛〝暇〟の大安売りしていたわけだし、万由里に至っては俺の監視役を担って来たわけだし、お嬢様も春日部も異論が上がらなかったってことは、箱庭に来るだけの理由があったんだろうよ。だからオマエの事情なんて特に気にかからなかったんだが―――なんだかな。俺には、黒ウサギが必死に見える」
その言葉に、黒ウサギは遂に動揺を表情に出してしまった。
瞳は揺らぎ、虚を突かれたように見つめ返す。
「これは俺の勘だが。黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねえのか?だから俺達は組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今の行動や、俺がコミュニティに入るのを拒否した時に本気で怒ったことも合点がいく―――どうよ?一〇〇点満点だろ?」
「っ………!」
黒ウサギは内心で痛烈に舌打ちした。
十六夜は気にせず続けた。
「んで、この事実を隠していたってことはだ。俺達にはまだ他のコミュニティを選ぶ権利があると判断できるんだが、その辺どうよ?」
「……………」
「沈黙は是也、だぜ黒ウサギ。この状況で黙り込んでも状況は悪化するだけだぞ。それとも他のコミュニティに行ってもいいのか?」
「や、だ、駄目です!いえ、待ってください!」
「だから待ってるだろ。ホラ、いいから包み隠さず話せ」
十六夜は川辺にあった岩に腰を下ろして聞く姿勢を取る。
黒ウサギの表情は優れない。今話したくないのだろう。
「ま、話さないなら話さないでいいぜ?俺はさっさと他のコミュニティに行くだけだ」
「………話せば、協力していただけますか?」
「ああ。面白ければな」
十六夜はケラケラと笑うものの、瞳は一切笑っていない。
十六夜は万由里の方を向き、
「オマエはどうする?一緒に聞くか?」
「え?………そうだな。私の役目はあんたを監視することだけど………聞いておいても損はないかな」
十六夜の提案に乗った万由里は、霊装を解いて純白の制服を着た姿に戻った。
そして万由里は十六夜の近くにあった岩に腰を下ろして聞く姿勢を取った。
黒ウサギは意を決したような顔つきで、されど内心は自棄っぱちに話し始めた。
「………分かりました。それではこの黒ウサギもお腹を括って、精々オモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせていただこうじゃないですか」
黒ウサギ達のコミュニティは『名』がなく、〝ノーネーム〟と呼ばれその他大勢扱い。
コミュニティの誇りである『旗印』もない。
中核を成す仲間達が一人も残っておらず、ゲームに参加出来るのは黒ウサギとジンだけ。
一二二人中、一二〇人が十歳以下の子供ばかりの崖っぷち。
そうなってしまったのは、箱庭を襲う最大の天災―――〝魔王〟によって子供達の親も全て奪われたため。
魔王は倒せば条件次第で隷属可能。
魔王は〝
黒ウサギ達は〝主催者権限〟を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティとして活動していくために必要な全てを奪われた。
新しく作らない理由は、改名はコミュニティの完全解散を意味するからであり、仲間達が帰ってくる場所を守るためにキープしているのだ。
「茨の道ではあります。けど私達は仲間が帰る場所を守りつつ、コミュニティを再建し………何時の日か、コミュニティの名と旗印を取り戻して掲げたいのです。そのためには十六夜さん達のような強大な力を持つプレイヤーを頼るほかありません!どうかその強大な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか………!?」
「………ふぅん。魔王から誇りと仲間をねえ」
深く頭を下げて懇願する黒ウサギ。
しかし十六夜は気のない声で返す。
黒ウサギは唇を強く噛み泣きそうな顔をした。
十六夜はたっぷり三分間黙り込んだあと、
「いいな、それ」
「―――――………は?」
「HA?じゃねえよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」
「え………あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」
「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねえのか?失礼なこと言うと本気で余所行くぞ」
「だ、駄目です駄目です、絶対に駄目です!十六夜さんは私達に必要です!」
「素直でよろしい。ほれ、あのヘビを起こして貰えるならさっさとギフトを貰ってこい。その後は川の終端にある滝と〝世界の果て〟を見に行くぞ」
「は、はい!―――って、まだ万由里さんの返事を聞いてないのですよ!」
「は?」
黒ウサギが言うと十六夜は呆れたような顔をする。
万由里はプッと小さく噴き出して答えた。
「バーカ。私の役目は十六夜の監視だって言ったはずよ?別のコミュニティに行く意味が分からないんだけど」
「………!じゃ、じゃあ!」
「うん。だからよろしく、黒ウサギ」
「は、はい!」
黒ウサギは嬉しそうに笑い、蛇神の下へ向かっていった。
こうして万由里は十六夜と共に黒ウサギ達のコミュニティ―――〝ノーネーム〟に所属することになったのだった。
蛇神から水樹の苗を貰った黒ウサギが大喜びしたり、万由里が黒ウサギの持つ特権〝
――――――――――――――――――――
「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」
「しかもゲームの日取りは明日!?」
「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」
「準備している時間もお金もありません!」
「一体どういう
「聞いているのですか三人とも!!」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
箱庭に先に入っていた飛鳥・耀・ジンと合流して彼らの話を聞くと、黒ウサギは怒って嵐のような質問を浴びせた。
それに対して飛鳥達は口裏を合わせたような言い訳をし、黒ウサギは激怒した。
万由里も半眼を作り呆れたような表情で見ていた。
十六夜だけはニヤニヤと笑って見ており、頃合いを見て止めに入った。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど―――はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」
黒ウサギがうんうん、と頷いて十六夜を見る。
しかし十六夜と飛鳥は怪訝な顔をして、
「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」
「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。勿論、万由里さんもね」
フン、と鼻を鳴らす二人。
黒ウサギは慌てて食ってかかった。
「だ、駄目ですよ!お二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」
十六夜は真剣な顔で黒ウサギを右手で制して言う。
「いいか?この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺や万由里が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、分かっているじゃない」
「………ああもう、好きにしてください」
黒ウサギは一瞬万由里に助けを求めようと考えたが、彼女の役目はあくまでも十六夜の監視なため無駄を悟り肩を落とすのだった。
――――――――――――――――――――
「―――それじゃあ今日はコミュニティへ帰る?」
「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら〝サウザンドアイズ〟に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹の事もありますし」
黒ウサギの言葉に十六夜達四人は首を傾げて聞き直す。
「〝サウザンドアイズ〟?コミュニティの名前か?」
「YES。〝サウザンドアイズ〟は特殊な〝瞳〟のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフトの鑑定というのは?」
「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」
同意を求める黒ウサギ。
四人は複雑な表情で返す。
しかし拒否する声はなく、黒ウサギ・十六夜・万由里・飛鳥・耀の五人と一匹は〝サウザンドアイズ〟に向かった。
日が暮れて月と街灯ランプに照らされている並木道を、飛鳥は不思議そうに眺めて呟く。
「桜の木………ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「………気合いの入った桜ってどんな花なのよ。私の所は十月だったから秋かな」
「私も万由里と同じ秋だったと思うけど」
「ん?」っと噛み合わない四人は顔を見合わせて首を傾げる。
ちなみに万由里が最後にいたところは白い空間だったが、十六夜達に言及されると悟って前の世界の季節を口にした。
黒ウサギは笑って説明した。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども………今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」
曖昧に濁して黒ウサギは振り返る。どうやら店についたらしい。
商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。
看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは滑り込みでストップを、
「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっていません」
………ストップをかける事も出来なかった。
黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつける。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!?」
キャーキャーと喚く黒ウサギ。
店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「なるほど、〝箱庭の貴族〟であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「………う」
一転して言葉に詰まる黒ウサギ。
しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。
「俺達は〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」
「ほほう。ではどこの〝ノーネーム〟様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ぐ、」っと黙り込む十六夜。
これに万由里は微かに眉を寄せた。
旗印がないことを分かっていながら聞いてきた性悪店員に嫌気が差したのだろう。
全員の視線が黒ウサギに集中する。
黒ウサギは心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。
「その………あの…………私達に、旗はありま」
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
黒ウサギが呟いていると、店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女にフライングボディーアタックして、黒ウサギと少女は共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。
「きゃあーーーーー…………!」
ボチャン。そして遠くなる悲鳴。
十六夜達は瞳を丸くし、店内は痛そうな頭を抱えていた。
「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
真剣な表情の十六夜。
真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。
十六夜は隣にいる万由里の方を向き、
「じゃあ監視者のオマエでいいから、抱きつきサービスを是非」
「じゃあって何よ、じゃあって。たしかに私はあんたの監視者だけど、触れ合うつもりはないわ。変態だったら尚更お断りよ」
危機を察した万由里は十六夜から距離を取る。
十六夜は残念そうに肩を竦ませた。
一方、フライングボディーアタックで黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすりつけていた。
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」
スリスリスリスリ。
「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」
白夜叉様と呼ばれた着物風の服を着た少女を無理矢理引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。
クルクルと縦回転した少女を十六夜は―――
「万由里、パス」
「ゴバァ!」
「え?………!」
万由里に向かって蹴り飛ばした。
万由里はそれを咄嗟に回避して、
「………!こっちに飛んで来ないでくださいオーナー!」
「ゴブハァ!?」
飛んで来た白夜叉を、女性店員は近くにあった看板で叩き落とした。
白夜叉はまず十六夜と万由里の方を見て、
「………お、おんしら、飛んで来た初対面の美少女を足で蹴り、受け止めずに躱すとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
「あんたが変態じゃなかったら受け止めてたけどね」
ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。
先程黒ウサギに変態行為をしていた白夜叉を見ていた万由里は、冷たい視線で白夜叉を見つめた。
白夜叉は少し不機嫌そうな顔をして女性店員に振り向く。
「そしておんし!なにゆえ受け止めずに看板で叩き落とした!?私はこの店の幹部なのだぞ!」
「じゃあこっちに飛んで来ないでくださいオーナー」
言い返して看板を片付ける女性店員。
一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に問う。
「貴女はこの店の人?」
「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」
看板を片付け終えた女性店員が冷静な声で釘を刺す。
セクハラ発言をした白夜叉を万由里・飛鳥・耀の三人が冷ややかな視線で見つめる。
濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がってきた黒ウサギは複雑そうに呟く。
「うう………まさか私まで濡れる事になるなんて」
「因果応報………かな」
悲しげに服を絞る黒ウサギ。
反対に濡れても全く気にしない白夜叉は、店先で万由里達を見回してニヤリと笑った。
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の下に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
万由里は白夜叉に間違いを指摘した。
「私は人間じゃないわ。精霊で―――<
「何?」
白夜叉は万由里の言葉に眉を顰めたが、すぐに理解したのか、
「………なるほどの。
「………え?」
「ああ、いや。此方の話だ」
誤魔化す白夜叉を怪訝な顔で見つめる万由里。
白夜叉はコホン、と咳払いをし店に招く。
「まあいい。話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは旗も持たない〝ノーネーム〟のはず。規定では」
「〝ノーネーム〟だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」
「む、」っと拗ねるような顔をする女性店員。
そして女性店員に睨まれながら、五人と一匹は暖簾をくぐった。
指摘・意見・感想等お待ちしております。
次回はオリジナル戦に入れたら入ります。
内容は、
十六夜&万由里VS白夜叉(試練)
問題は飛鳥の空気化ですね。どう回避しましょうか………