ギフトゲームが終わり、黒ウサギがギフト鑑定の話を持ちかけようとしたところで、飛鳥が不機嫌そうな顔で白夜叉に言う。
「ちょっと待って。私だけ試練なしなのは納得できないんだけど」
「む?しかしのう………小僧共と同じ試練は小娘には無理じゃろうし、別の試練であっても小娘一人では私の相手は務まらんだろうしの」
「―――ッ、言ってくれるじゃないっ!私を舐めるとどうなるか、思い知らせてあげようかしら………?」
白夜叉の挑発めいた発言にカチンと来た飛鳥は睨み返した。
白夜叉はほう?と飛鳥の負けず嫌いな態度を評価して、スッと瞳を細める。
「ふふ。大した童だの。………面白い。其処まで言うのなら仕方がない。―――受け取れ」
白夜叉は笑って向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、虚空から輝く羊皮紙―――〝契約書類〟を顕現させてそれを飛鳥の下に舞い降ろさせた。
『ギフトゲーム名〝旗の奪取〟
・プレイヤー一覧
久遠 飛鳥
五河 士道
・ホストマスター
星霊 白夜叉
・ホストマスター側 勝利条件
制限時間まで旗を守りきること。
・プレイヤー側 勝利条件
制限時間五分以内にホストマスターから旗を奪取すること。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印』
「………?五河士道とは誰のこと?」
「―――!?」
飛鳥の呟きに万由里が驚愕の表情を見せた。
白夜叉はその反応にあえて触れず、飛鳥の呟きに答えた。
「うむ。私も今日逢ったばかりの客人なんだがの。あの小僧のギフトも見ておきたいと思ってタッグを組んでの挑戦にさせてもらった」
白夜叉はスッと両手を前に出して、パンパンと柏手を打ち―――
「―――うおっ!?な、何だ!?」
―――青色のショートカットの髪に茶色の瞳と襟元が黒い白の長袖と黒の半袖の上着に青の長ズボンを着て茶色の靴を履いた少年をゲーム盤に呼び出した。
急に景色が変わったことに驚いているのか、キョロキョロと辺りを見回しながら絶叫する青髪の少年。
白夜叉は一瞬でその少年の下へ現れると、状況説明をした。
「いきなり呼び出してすまんのおんし。ちと我が儘な小娘とタッグを組んで私のギフトゲームに挑んでくれんかの?」
「は?本当にいきなりだな!?」
白夜叉の頼みを聞いて再び絶叫を上げた青髪の少年。
しかしすぐに冷静になった青髪の少年は白夜叉の指差す方向を見て、
「………!?」
驚愕に瞳を見開く。
白夜叉が指差す黒髪の少女ではなく、その奥にいた金髪サイドテールの少女を見て。
青髪の少年は自分と同じくらい表情を驚愕の色に染めた金髪の少女を見つめ、確かめるように名前をゆっくりと呟いた。
「ま、ゆ……り?」
「し、士………道?」
同じように金髪の少女―――万由里は士道と呼ばれた青髪の少年の名前を呼ぶ。
その様子を十六夜・飛鳥・耀・黒ウサギは顔を見合わせ首を傾げる。
白夜叉だけは優しげな表情で万由里と士道を見つめる。
士道は泣きそうな顔でゆっくりと歩みを進めた。
「おまえ………本当に、万由里なのか?」
「そう、だけど………あんた、何また泣きそうな顔してるのよ」
「し、仕方ねえだろ!だって万由里はあの時、俺の目の前で消えて………それで………っ!」
「………あんたって本当にお人好しね。―――でも、ありがとう士道。あんたのおかげで、私は消えるために生まれた存在じゃないって………気づかされたから」
「万由里………」
じっと見つめ合う万由里と士道。
するとコホン、とわざとらしく咳払いをした飛鳥が二人を見回して問いただす。
「感動の再会みたいなところ悪いのだけど………あなた達は一体どういう関係なのかしら?」
「え?」
「そうだな。少なくとも同じ世界の住人ってのは予想がつく。問題は万由里が消えたとかいうのが意味深だな」
「っ………!それは、」
「うん、凄く気になる」
「YES!お二人の関係やその他諸々、洗いざらい吐いてもらうのですよ!」
「……………、」
ズズイ、っと詰め寄る問題児達三人とウサギ。
万由里は観念したように白旗を上げ、士道に目配せした後、意を決したように話し始めた。
士道と万由里は同じ世界に存在していた。
万由里は<
万由里と<
万由里は夜刀神十香・四糸乃・五河琴里・八舞耶倶矢・八舞夕弦・誘宵美九の六人の精霊の霊力から生まれた存在。
その六人の精霊の霊力を士道が封印した事によって万由里は現界し、彼を監視及び裁定することになった。
これは一定以上の霊力が一所に集まった際自動的に生まれ、その裁定を下す。それが万由里の役目であるからだ。
器が、その霊力を手にするに相応しいか否か。即ち、これは六人の精霊の霊力を有する士道の事を指している。
そして万由里と<
「―――以上が士道との関係と、私の正体よ」
「……………、」
万由里の話を聞いて沈黙する一同。女性陣の黒ウサギ・飛鳥・耀の三人は絶句して言葉を失っていた。
システムということは、役目が終われば用済みの決められた時間しか生きられない存在ということだ。
士道の監視と裁定の役目を終えたからこそ、万由里は外界で消滅してしまったのだ。正確には万由里の天使<
飛鳥達が沈黙していると、十六夜がふと疑問を口にした。
「………なあ、万由里。まさか俺の監視の任が解かれたら同じように消えちまうのか?」
「何!?」
士道がギョッとして万由里を見る。
万由里はスッと瞳を閉じて、
「そうかも、しれないわね。私が十六夜の何を監視するのかは分からないけど、役目が終えれば〝無〟に還る。それが私だから」
「………ッ!!!」
それを聞いて士道はギュッと唇を噛む。
十六夜達もただ無言で、悲しげに目を伏せる。
万由里は困ったような顔をして士道達五人を見回した。
「そんな顔しないで。あくまで私が消滅するか否かは仮定の話よ。まだそうとは決まってないわ」
「………ッ、そうだな。万由里が消えるなんてまだ決まったわけじゃない!希望はきっと残っているはずだよな………!」
士道の言葉に一同は頷く。そもそも此処は外界ではなく箱庭だ。仮定なら、まだ消えると決まったわけじゃない。士道達はそうありたいと願う。
飛鳥がふといい案でも思いついたか、万由里を見つめ言う。
「それなら今のうちに思い出を沢山残しておきましょう!万由里さんも十六夜君の監視者だからって硬い表情のまま過ごすなんて勿体ないわ!」
「あ、それいいかも。万由里も私や飛鳥の友達になろ?」
「え?」
「そうですね!黒ウサギも皆さんと友達になりたいのですよ!」
「「え?嫌だ」」
「なにゆえ!?何故黒ウサギは駄目なのですか!?」
黒ウサギがショックを受けていると、飛鳥と耀がウサ耳を撫でて笑った。
「「冗談(よ・だよ)」」
「………ッ、か、からかわないでくださいお馬鹿様方!!」
スパパァーン!と黒ウサギが何処からともなくハリセンを取り出して二人の頭に奔らせる。
その漫才みたいな様に万由里は思わず笑みが零れた。
それに気づいた士道は頬を緩ませ、十六夜がニヤニヤと笑い、
「………はは」
「何だよ。やっぱりそういう顔も出来るんじゃねえか」
「―――っ」
万由里はまたやってしまった、というような顔をして、パンパンと両頬を叩き表情を元に戻した。
士道は残念そうな顔をして、
「なんだ、可愛かったのに」
「………う」
士道のその言葉に万由里は頬を赤く染め視線を逸らした。
その様子を十六夜がニヤニヤと笑って見つめた。
白夜叉は万由里達六人を温かい瞳で見つめたのだった。―――裏に悲しい表情を隠して。
――――――――――――――――――――
「………ところで試練の方はどうするかの?」
「!!そ、そうだったわ!勿論やるわよ。良いわよね、えっと………五河さん?」
「ああ。俺は別にいいよ。あと俺の事は士道で構わねえよ」
「そう。なら私の事も飛鳥でいいわ。よろしくね、士道君」
「おう。よろしくな、飛鳥」
握手を交わす飛鳥と士道。
その様子を微笑ましそうに白夜叉が見つめ、
「―――さて、それでは試練を始めるとするかの」
開戦の宣言をした。
――――――――――――――――――――
最初に行動に移したのは、飛鳥だった。
飛鳥は白夜叉を鋭い視線で睨みつけ、
「
「!?」
瞬間、白夜叉の動きを封じた。この不可解な戒めに白夜叉は眉を顰めた。
それを確認した飛鳥は士道に叫ぶ。
「白夜叉の動きは私が封じたわ!行くわよ!」
「は?………お、おう!」
士道はどういう原理かさっぱりだが、白夜叉の動きが封じられているなら後は一直線に白夜叉の下へ駆けて旗を奪うだけだ。
飛鳥と士道は同時に駆け出し、白夜叉の持つ旗に手を伸ばした。が、
「………ふふ。中々やるようだが―――甘い!」
白夜叉は簡単に飛鳥の力ある言葉に逆らい戒めを解くと、そのまま上空へ舞った。
飛鳥は嘘!?と言った表情で白夜叉を見上げて立ち止まる。人間の小娘程度では、星霊である白夜叉の動きを封じることは出来ないようだ。
それを見た士道も立ち止まり、右手を前に突き出す。目に見えない何かに縋るように。あるいは―――何かを掴み取るように。そして叫んだ。
「―――頼む、力を貸してくれ………!<
するとその瞬間、士道の視界が眩く光り輝き―――右手に、何かを握る感触が生まれた。
目を灼く光が薄れたとき、士道の手には、淡く輝く巨大な剣が現れていた。
それは―――幅広の刃を持った、巨大な剣だった。
虹のような、星のような幻想的な輝きを放つ、不思議な刃。
天使<
「………!やった!」
士道は思わず声を上げた。万由里を救うために、天使<
今の場合は飛鳥を守りたいとか、そういう気持ちで力を望んだわけではなく、『この試練に勝つ』という想いで天使を顕現させたのだ。
驚く飛鳥を余所に、士道は<
それを見た白夜叉は、士道が発現させた天使を見つめ、考察した。
「(サンダルフォン、か。たしかユダヤ教に於ける天使の名に、そんなのがいた気がするが………何故剣なのだ?)」
白夜叉が無言で士道を見つめていると、士道は<
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
―――裂帛な気合と共にそれを白夜叉に向かって振り抜く。すると、その太刀筋から光が放射状に広がり、白夜叉に向かって一直線に突き進む。
「……………」
しかし白夜叉は焦らず、<
「―――フン!」
腕の一振りで掻き消した。
「―――………は!?」
素っ頓狂な声を上げる士道。それもそのはず、絶対の力を持った天使の一撃が、たった腕の一振りで掻き消されたのだから。
そして士道は白夜叉が腕を一振りした際に発生した突風を受けて吹き飛ばされた。
「ぐっ………!」
「きゃあ!?」
その突風は近場にいた飛鳥も吹き飛ばし、地面に叩きつけられた。
「………うっ、」
「な、飛鳥!?」
コホ!っと咳き込む飛鳥に士道が駆け寄る。飛鳥は右手で士道を制した。
「へ、平気よ。貴方こそ大丈夫なの?」
「ああ。俺は大丈夫だ。………クソ!俺の力じゃ駄目なのか!?」
士道は悔しそうに<
その様子を飛鳥が心配そうに見つめる。
「(俺じゃ、俺じゃ駄目なのか………!?―――ッ、畜生!………十香)」
士道が<
その瞬間、士道と飛鳥の視界を紫色の光が支配した。
「………は?」
「え?」
士道とそのすぐ傍にいた飛鳥が疑問の声を漏らす。
その紫光は薄れて現れたのは―――
「………む?」
歳は士道と同じか、少し下くらいだろうか。
膝まであろうかという黒髪に、愛らしさと凛々しさを兼ね備えた貌。
その中心には、まるで水晶に様々な色の光を多方向から当てているかのような、不思議な輝きを放つ双眸が鎮座している。
装いは、これまた奇妙なものだった。布なのか金属なのかよくわからない素材が、お姫様のドレスのようなフォルムを形作っている。さらにその継ぎ目やインナー部分、スカートなどにいたっては、物質ですらない不思議な光の膜で構成されていた。
そして、この少女こそが士道がたった今思い浮かべていた<
指摘・意見・感想お待ちしております。
デアラキャラの登場の仕方を変えてみました。
呼ばれたのは士道だけで、士道の想い(ギフト)に答えて十香達6人が召喚される仕様です。