「………は?お、おまえ、まさか………十香か!?」
「む?―――おお、シドー!こんなところにいたのだな!捜したぞ」
士道の声に気づいた十香と呼ばれた黒髪の少女は、振り向き喜びの声を上げた。
「急に消えたから皆心配していたのだぞ?」
「わ、悪い。それより何で十香が此処に?」
「む?うーむ、そうだな………何故なのだ?」
「いや。俺に聞かれてもな………」
首を傾げて聞き返す十香に、士道は困ったような顔をして頭を掻く。
しかし十香はスッと瞳を細めるとジト目で飛鳥を睨み、
「ところでだシドー。その女は誰なのだ?」
「え?」
「それはこっちの台詞よ。貴女こそどなたかしら?士道君のこと知ってるみたいだけど、もしかして万由里さんとも知り合いなの?」
睨み返す飛鳥。士道が説明しようと口を開きかけ、十香が『万由里』と聞いて驚愕の表情で問いただした。
「何?おまえ、今万由里と言ったな!?あの女もいるのか!?」
「え?ええ、いるわよ?―――あそこに」
飛鳥は面食らいながらも万由里のいる方角を指差す。十香は万由里を発見して驚愕に瞳を見開いた。
「ほ、本当だ。だが万由里は消えたのではなかったのか?」
「ああ。万由里はたしかにあの時、俺達の目の前で消えたよ。………だけど悪い十香。今は詳しい説明をしている暇はないんだ。力を貸してくれるか?」
「む?………別に構わんが。せめてあの女が何者なのか教えてくれシドー」
「お、おう、そうだな。飛鳥。悪いけど自己紹介頼む」
士道の言葉に頷いた飛鳥は、自己紹介した。
「私は久遠飛鳥よ。貴女は?」
「うむ。私は十香だ!よろしくだぞ飛鳥!」
「………いきなり呼び捨てなのね。まあ、いいわ。よろしくね、十香さん」
「うむ!」
挨拶を交わす飛鳥と十香。それを見てホッと胸を撫で下ろす士道。
しかしのんびりしている暇はない。残り時間も二分を切っている。
滞空する白夜叉を見上げた士道は声をかける。
「悪いな、待たせちまって」
「ふふ、別に構わんよ。その小娘が何者かは後でじっくり聞かせてもらうがの?」
ニヤリと笑う白夜叉に、冷や汗を流す士道。十香はジーッと白夜叉を見つめ、
「………あの女を倒せばよいのだな、シドー?」
「いや、倒すんじゃなくて………白夜叉が持ってる旗を奪うんだよ」
「旗?うむ、了解したぞ!」
十香は頷き、自分の足下の地面に踵を突き立てた。
「―――<
瞬間、雪原の大地が隆起し、そこから玉座が現れる。
その玉座の肘掛けに足をかけるようにして、ゆらりとした動作で、玉座の背凭れから生えた柄のようなものを握ったかと思うと、それをゆっくりと引き抜く。
それは士道の持つ巨大な剣と同じ天使―――<
十香は<
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「―――なんの!」
裂帛の気合と共に振り抜かれた十香の<
十香は一瞬だけ驚きの顔をするが、すぐに真剣な表情で目にも止まらぬ速さで<
白夜叉はそれらを全て扇で受け止めてみせると、少し力を籠めた一撃で十香を<
「くっ………!」
十香は一旦士道の下に降り立ち、白夜叉を睨め上げた。
「あの女強いな!扇一つで<
「………まあ、白夜叉は神様だからな。俺も<
士道は苦笑しながらも<
『神様』という単語に驚く十香は、スッと瞳を細めて士道を見つめた。
「神様が相手となれば<
「………!おう!」
十香の言葉に返事した士道は、共に並び立ち<
本来であれば一振りしか存在しないはずの天使。決して対面するはずのない『形を持った奇跡』。
士道と十香は、そんな奇跡を、同時に振り抜いた。
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
士道と十香、二人の放った輝ける斬撃が、空中でクロスし、白夜叉を襲う。
白夜叉はそれらを真正面から見つめ、火球を纏う事で受け止めた。
鬩ぎ合う光輝と灼熱。しかし星霊である白夜叉の纏う火球は破れる気配がしない。
士道と十香はさらに力を籠めようとしたその刹那、
「あ、が………っ」
「し、シドー!?」
士道の全身に凄まじい痛みが走り、思わず顔を歪めて片膝をついてしまう。
先に<
天使という人には過ぎた力を扱う代償。士道の全身は、この一太刀でボロボロになってしまっていた。
次いで、士道の身体を、炎の中に放り込まれるかのような灼熱感が襲う。とある精霊の力を封印することによって得た炎の再生能力が、傷ついた士道の身体を半ば強制的に癒しているのである。
「ぐ―――!」
「し、シドー!大丈夫なのか!?」
顔を苦悶に染め、<
「あ、ああ。大、丈夫………だ」
士道はなんとか体勢を立て直し、白夜叉に向けて<
十香は士道を離してもう一度白夜叉に<
士道は十香に目配せして、
「時間がない………もう一度、やるぞ!」
「う、うむ!シドーがそういうのなら私はそれに従うまでだ!」
そう。残り時間はもう既に一分を切っていた。
もう一度白夜叉に向かって<
「「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」」
重なる裂帛の気合。二人の放った輝ける斬撃は、再び空中でクロスし、白夜叉の纏う火球に炸裂する。
しかし白夜叉の纏う火球は先程と同じでまるで破れる気配がしない。
度重なる強硬使用によって、天使ではなく扱う本人―――士道の身体に限界が訪れようとしていた。
二人は破れぬ壁を前に諦めかけた、その時。
―――灼熱と鬩ぎ合っていた光輝の斬撃が、
――――――――――――――――――――
飛鳥は悔しかった。目の前の士道と十香が必死に白夜叉と戦っているのに、自分は見ている事しか出来なくて。
喩え白夜叉の動きを先のように封じられたとしても、星霊である白夜叉ならまた簡単に打ち破って見せるだろう。
飛鳥はこの力ある言葉以外は、ただの非力な人間の小娘にすぎない。二人の力になることは出来ないのだ。
しかし白夜叉に自分の力ある言葉は通用しない。この非力な自分の唯一あるこの
―――それでも飛鳥は諦めなかった。白夜叉に効かないなら、せめて二人の力になれる方法はないか………と。
飛鳥は考えに考えて、そして辿り着いた答え。それは―――
―――士道と十香の放ったあの輝ける斬撃に、
だが飛鳥は思った。そんなことが、果たして可能なのか?と。思った、が………深く考えるよりも先に口が動いた。
『もっと………
飛鳥の、二人の力になりたいと思う心が、想いが、願いが詰まった一喝。
そして、飛鳥の願いが届き―――――光輝の斬撃は爆発的な輝きを放った。
――――――――――――――――――――
「「え?」」
「何!?」
士道と十香は驚きの声を漏らし、白夜叉は驚愕の声を上げた。急激に、爆発的な輝きを放った光輝の斬撃を見て。
白夜叉は飛鳥の方に眼を向ける。士道と十香の反応からして、犯人は飛鳥しかいないと踏んでの視線なのだろう。
飛鳥の力ある言葉は士道と十香が放った輝ける斬撃の威力を上げ、これ以上にない輝きを放った。
そして―――
「………む、ぐぅ!」
白夜叉の纏う火球を四分割に斬り裂き、白夜叉に直撃した。
残り時間、十秒。
白夜叉に光輝の斬撃が直撃した事によって零れ落ちた旗を取りに駆ける飛鳥。
残り時間、僅か三秒にその旗を掴み取った飛鳥。
そしてこの瞬間、勝利条件『制限時間五分以内にホストマスターから旗を奪取する』を満たしたことにより、飛鳥と士道の勝利となったのだった。
――――――――――――――――――――
ギフトゲームを終え、崩れ落ちた士道に十香と万由里が駆け寄る。
「大事はないか、シドー!?」
「士道!」
十香と万由里に支えられて起き上がる士道。苦悶の表情を見せながらも笑みを浮かべた。
「平気だよ………ってのは無理があるよな」
「全くね。………そう言えば士道。あんた<
「ああ。あの時は無我夢中だったからな………。それにさっきみたいな使い方をして戦った訳じゃなかったし、多分その違いじゃねえのか?」
士道の言葉に万由里はそ、と返す。『無我夢中』と言われて少し嬉しそうなのは万由里と神のみぞ知ることだが。
十香は士道から万由里に視線を移し、
「しかし、万由里とまた会えるとは思わなかったぞ」
「そうね。私もよ、十香。あんたまでこの箱庭に来るなんて思いもしなかった」
「うむ。………む?此処は箱庭というところなのか万由里?」
「うん。私はあそこにいる十六夜って人の監視役を担ってこの箱庭に召喚されたわ。十香は?」
「そうなのか。………うーむ。それが分からないのだ。何故私がこの箱庭とやらに召喚されたのかを、な」
「………え?それ、本当?」
「う、うむ。本当だ」
万由里の問いに頷く十香。万由里は士道に視線を向けると、
「あんたは知らない?十香がどうしてこの箱庭に召喚されたのか」
「いや、それが俺にもさっぱりなんだよ。強いて言えるのは………十香の顔を思い浮かべた途端に、かな」
「………そ。それじゃあ―――」
あんたの強い想いが起こした奇跡なのかもね、と二人に聞こえないほど小さな声で言う万由里。
その言葉を聞き取れなかった士道は首を傾げて、
「………?それじゃあ、なんだ?」
「え?………なんでもない」
「?………お、おう」
万由里に『なんでもない』と言われたが、納得がいかないのか首を左右に捻って疑問の顔をする。
ついつい意地悪をした万由里は、首を捻る士道を楽しげに頬を緩ませて見つめた。
一方、飛鳥の下へ駆け寄った耀・黒ウサギ・十六夜の三人から労いの言葉をもらっていた。
「お疲れ、飛鳥。最初のアレ、凄かった………アレは飛鳥の力?」
「え?ええ、そうよ春日部さん。だけど私じゃ白夜叉の動きは封じることは出来なかったわ」
「いえいえ。謙遜なさらないでください飛鳥さん!最後のアレも飛鳥さんのギフトなのですよね?凄いのです!」
「え?ああ、あの時のね。けどアレは偶然出来たってところかしら………私自身、あんなことしたことなかったもの」
称賛してくれる耀と黒ウサギに、飛鳥は照れくさそうに頬を掻いた。
十六夜は飛鳥をジーッと見つめ、
「ふうん。アレが偶然ねえ」
「な、何よ十六夜君?」
「別に。何でもねえよ」
ヤハハと笑って誤魔化す十六夜。飛鳥は一瞬怪訝な顔で十六夜を見つめたが、すぐに表情を戻して………そう、と返した。
白夜叉はそれらを滞空したまま見つめていた。まず、士道に眼を向けて、
「(………ふふ。あの小僧、天使を顕現させてかつ振るうことも可能とはのう。終いには同じ天使を扱う謎の美少女を召喚させおった。―――くく、一体どんなギフトか楽しみだのう!)」
くく、と笑った白夜叉は、次に飛鳥へと視線を向けた。
「(この小娘も中々面白いギフトを持っておるようだの。私を従わせる事は出来なかったようだが、恐らくアレは―――自分より霊格の劣った者を問答無用で従わせる事が出来るのじゃろうな)」
スッと瞳を細めて、飛鳥が最後に見せたあの力も考察した。
「(そして最後のアレ。小僧と謎の美少女が放った光に干渉したように、爆発的な輝きに変化させたあの力。アレは恐らく―――自分の霊格で相手のギフトの力を底上げさせたのだろうな)」
白夜叉は嬉しそうに笑い、万由里達を見回し呟いたのだった。
「ふふ―――今宵は面白い客人が目白押しだのう♪」
指摘・意見・感想等お待ちしております。
十香の扱いはどうしようかな………士道のギフトカード行きか、白夜叉の褒美でずっと顕現可能にするか。
でも十香出っぱなしの方が万由里としては十六夜の監視に集中できるし、後者がいいかな。士道ってお人好しで危なっかしいし十香がいれば………的な意味で。