初ハジメモノ物ガタリ語   作:北松文庫

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第1話

   そだちメモリー

 

    001  

 こんにちは。老倉育(おいくらそだち)よ。

 オイラーと呼んでね。

 なんて冗談はさておき、そろそろ私は始まりを語らなければならないと思う。

 あの憎むべき男。阿羅々木暦(あららぎこよみ)とのことを。

 あの男と、再び再会した後に何が起こったのかを。

 思えば、あれが私と怪異の初遭遇だったのかもしれない。半吸血鬼というあの男を除いて。

 あの男を世界から除きたい。

 死ね! 阿羅々木! 何もかもお前のせいだ。

 怪異と出会って、怪異そのものになったお前と遭遇した事が、結局怪異を呼んだんだ。

 たとえお前のせいでなくとも、お前のせいだ。

 今のこの状況に在っても、お前の手を借りたりはしない。情けなんて吐き気がする。

 だから、だから――――いや、よそう。

 阿羅々木に何かを願うのは、誰かに何かを願うのは、馬鹿馬鹿しい。

 人は勝手に助かるだけだ。

 そう、誰かが言っていた気がした。少なくともあの男ではない。

 自分でなんとかしなければ。

 振り向くことも、許されず。求めることも、許されない。

 それが私の人生だ。私の選んだ道だ。

 ――――もっと良いスタートを切りたかったと切実に願う自分を呪っている今、進級後初めての夏休み、直前の日。

 自分の不幸さに、笑った。

 ああ、そういえば私も二度目の語り部なんだから、レギュラーメンバー入りよね。

 レギュラーなら、そろそろ決め台詞(ゼリフ)を考えても良いんじゃない?

 ほら、羽川さんの、「何でもは知らないわ。知ってる事だけ」みたいな。

 それこそ、八九寺(はちくじ)ちゃんの、「失礼、噛みました」みたいな。

 え? 私が八九寺ちゃんを知っているのは可笑しい。

 じゃなくておかしいって。

 いや、私は出会ったの。進学早々の四月。

 あの迷子の女の子。

 この町の神と。

 

   002

 

 私の素晴らしい友達、八九寺真宵(はちくじまよい)ちゃんと出会う前のこと。

 つまり入学式。

 私はある男を探していた。

 阿羅々木暦。

 放課後ともなると、友達の作れないあいつはさぞかし早く帰りたいだろうと思い、急いで探した。

 私の友達? 知らない。

 ともかく探し続けた。

 用という用ではない。ただ、けじめをつけようと思ったのだ。

 同じ大学に進学したからには、一度も会わないことはないだろう。そして、会う度苛立ってはキリがない。

 だからけじめを付けて、慣れるのだ。

 プールに入る前に体に少しずつ慣らす。

 そんな感じ。

 しかし一向に目的の男は見つからない。さすがに帰ったのか。そう思うと急に気分が萎えてきた私は、帰ろうと思った。

 別に急ぎの用じゃないし。

 用ですらない。

 私の個人的なわがままだ。それによってあの男に気分を害する事には躊躇はないが、私も暇じゃない。明日はテストがある。

 帰って勉強することの方が、阿羅々木に会うより何倍もましだ。ましとい言うよりそっちが良い。

 大学に来た目的を忘れてはいけない。

 おっとっと、あの男のせいで道を外しそうだった。

 そうと決まれば早いか、私は門に向かった。

 帰ろう。帰って勉強しよう。

 おや、なんだ。カップルが門前でいちゃついてるよ。

 ああ、丁度私が通ろうとしている道でなければ、見かけると微笑ましくも思うのに。

 今の大人な私なら、そう思うのに。

 でも、お似合いのカップルと、そう思った。

 私は、私も。いつか。

 こういう時のいつかというものは、一生来ないんだろうな。と、テレビを見ながら思っていたことを忘れているからこそ、いつかは来ないんだと思うの。

 あれ、あの男と女。見たことあるような。

 ――――見たこと。

 そう表現することが出来ない位に脳裏に焼き付いている男の顔。

 間違うはずはない。

 あんな寒気のする男はあいつしかいない。

 隣の女は――――。

 二人に私が気付いたのと同様に、彼方も私に気付いた。

 「あら、老倉さん。入試ぶりね。覚えてる?」

 戦場ヶ原(せんじょうがはら)ひたぎと、

 「あらら、ぎ・・・」

 王子様との奇跡の再会! 

 だったらいいなって、思う。 

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