読めば十分です(笑)
「キミに聞きたい事、話したい事がある。
少し付き合いたまえ。」
話しかけてきたのは如何にも貴族です~な感じの高そうな服装を着こなし、額に包帯を巻き、頬と鼻に絆創膏を貼っている長い金髪のグラサン男。
「え~と、誰?」
「私だ私!バルログだ!」
誰?発言に一瞬、顔を引き吊らせたと思えば懐から白い仮面を取り出し、顔に当てて必死にアピールする金髪ロン毛男。
コイツ、意外と面白いヤツかも知れない。
「軽い冗談だよ。
んで、聞きたい事?」
「うむ。少し長くなりそうだから、立ち話でなく、そこの店で食事をしながらと思っているのだが?」
と、指を差したのは、これまた貴族様御用達の様な高そうな店。
「私が誘っているんだ、心配しなくても食事代は此方が出すよ。」
「ゴチになります!」
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「さあ、何でも遠慮せずに注文したまえ。」
遠慮せずにってアータ、このメニュー表、俺が普段から利用してる酒場より、普通に0が1ヶ2ヶ多いんですけどー!
若干引きつつ、
「じゃあ…海鮮パスタと…
「キミ、そんな安い物を頼むなよ、私に恥をかかせたいのかい?」
「いや~、こんな高い店って、初めてなもんだからよ…」
「ふむ…ならば私が適当に注文しよう。
それでいいかい?」
「よ…よろしくっす…」
そう言ってウエイターを呼ぶと、このお兄さん、キャビアだのトリュフだのフォアグラだの、とんでもない異次元な単語を連発してくれてやがります。
そして運ばれて来たのは、これまた生まれて此の方、見た事ない様な豪華絢爛な料理の数々。
面白いヤツだなんて思ったりしてゴメンナサイ、アンタ、凄く善いヤツだぜ!
なんとなく想像はついていたのだが、食事をしながら話したのは、やはり転生者の事についてだった。
このバルログは、どうやら俺と同じ世界でなく、ナンバリングは確認出来ないが、マジにゲーム「ストリートファイター」の世界から転生してきた御当人様らしい。
曰わく、所属していた組織のアジトが壊滅した時の爆破事故に巻き込まれ、その時に命を落としたとか…
「ふ…脱出途中で拉致監禁されていた敵の戦士(ファイター)を気紛れで助け、それが原因で逃げ遅れて死んでしまう…
我ながら愚かな話さ…」
そんな感じのエンディングやエピソードってあったかな?
そして俺同様に記憶持ちで、この世界に生まれ変わったとか…
ただ、彼の世界では、「ドラクエ」というゲームは存在してなく、この世界が「ドラゴンクエストの世界」という自覚はない様だ。
ファンタジー作品みたいな世界という認識はあるみたいだけど…
「それでキミが、あの闘いの最中に転生者という台詞を言ってね…」
「自分と同類と思った…と。」
「Exactly(その通り)」
「確かに、互いの話を合わせてみると、アンタと俺は、同じ世界、もしくは同じ様な世界で前世を生きていたみたいだね?」
バルログの前世の世界や今の世界が、自分にとってはゲームな世界とは、面倒くなりそうだから敢えて言わない。
「…なら、俺も質問。
アンタは自分を、この世界に転生させた…
例えば、そう…
神様みたいな存在には会ったのかい?」
「いや…会ってない。
そうか…同じ転生者のキミなら何か知っていると思ったのだが…当ては外れたか…
結局、手掛かりは掴めず、と…」
数秒の沈黙の後、そう答える貴族風優男。
恐らくは自分も同じ質問をするつもりだったのだろう、がっくりと頭をうなだれた。
此方も所謂、黒幕みたいな存在があるなら知りたいと思っていたので、少しヘコむ。
空気が重く暗くなってきたので、話題を変えてみる。
「しかし、アンタみたいなナルシーが、あんな大会に乗り込むとは、この国のお姫様は、かなりの美人なんだろうな~?」
「な…?き、キミは自分の婚約者になるかも知れない女性の顔も知らずに出場していたのかい?」
「俺は元々、腕試しのつもりで出場してたからね、ある程度、勝ち抜け出来たなら棄権する予定だった。」
「ふ~、呆れた男だな…
ほら、これがモニカ姫だよ。」
そう言って差し出された肖像画(プロマイド)を見て…
「キャミイじゃないか!」
肖像画に描かれていたのは、少しばかり目つきが鋭くて、性格キツい感はあるが、優しく微笑んでいる金髪のおさげちゃんな美少女だった。
当然ながら、頬に傷はない。
紛れもなく、よく知っているゲームキャラであり、つい、名前を叫んでしまった。
「彼女を知っているという事は、やはりキミも裏の人間だったという事d…って、何を自分の懐に入れようとしているんだい!?」
ちっ…
「彼女も転生者?」
「いや、それはないよ。
彼女…キャミイは私を恨んでいるからね…
姫がキャミイの転生者だとしたら、今頃は本人自ら勝負を挑みに来ているさ…」
「でも、アンタはキャミイを…」
「ハハハハハハハ!
キミはジョークの才能があるようだね!
美しさだけは認めている…それだけさ…」
ま、あまり追求するのもアレだし、そういう事にしておこう。
「で、アンタは明日以降で再チャレンジしたりするのかい?」
「いや…あのデスピサロの強さは異常だ…
悔しいが、私が敵う相手じゃないよ…
しかもヤツはまだ、本気を出してない…
それは、すぐそばで対峙したキミが一番分かってる筈だよ?
だからこそ、棄権したんだろ?」
「まあ…ね…」
本当は少し違うのだが、面倒いので肯定しておく。
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結局、バルログとは、店が閉店するギリギリまで色々と話していた。
店としては、かなり高額なオーダーだったから、文句はなかっただろう。
「しっかし、俺が知ってるゲームのアレとは、エラい違いだったな…」
戦ってる最中は、やたらと地味顔発言連発で挑発的だったが、テーブルで対峙した時は、かなりフレンドリーな話し方だった。
まあ、前世の上司や同僚、ライバル達を醜い醜いとディスる黒い面はあったが…
今ほど気づいたが、アイツ、俺に対しては地味顔とは言ってたが、醜いとは戦いの中でも言わなかったな。
どうやら俺はバルログ基準で醜いのカテゴリーには入ってないようで少し安心した。
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それから一週間後の時事通信で武術大会でサントハイム王女優勝と、サントハイム城集団神隠し事件が報じられた。
※※※※※おまけ・未収録会話※※※※※
「そういえばアンタ、元々はスペイン人なんだよな?
どうして決め台詞がスイス民謡なんだ…
…って、うぉ?!
目の前に…
否、眼の前にフォークが突きつけられ、
「よく覚えておきたまえ…
フォークは…宇宙最強の武器なのだよ…
これが質問の答えだ。」
「ら、らじゃ…」
つまり、聞くなと…
つーか、顔が凄いマジだ…
あまりの迫力に俺は涙目で首を何度も縦に振るしか出来なかった。
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