第2章:集う光達
ミネアとマーニャとソロ
「占いに行こうぜ!」
「…………………………………………。」
はぁ?この熊オヤジは、いきなり何を言っているのだ?
いつもの酒場でバニーちゃんと楽しい会話をしながら晩飯を食べていたら、スコットがいきなりやってきて、占いに行こうとか言ってきた。
何でも最近、教会の前に、よく当たると評判の占い師が新しく店というか席を構えているらしい。
まあ、間違いなく、「彼女」だろうな…
「OK、付き合ってやるよ。」
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「スコットォ…帰ろうぜぇ…」
「まー待て!少しくらい待て!」
教会まで行ってみると、そこには占い目当ての長蛇の列が…
もう帰ると渋る俺をスコットが宥める。
今度、飯を奢ってやるからと言ってきたので(計画通り)、仕方なく一緒に並んでやる事にした。
行列も徐々に減っていき、スコットも占いというよりかは、他愛のない人生相談みたいなアドバイスを受けて満足気だ。
「あの人の占いのお陰で、どう生きればいいか分かったよ。
人はそれぞれ、色んな使命を持って、この世に生まれてくるんだなあ。」
まあ、本人がそれで良いなら問題はない。
そして俺の番。
目の前には女性占い師がテーブルの上に水晶玉を置いて待っている。
フード付きのローブを纏い、顔の下半分は薄い絹布のスカーフで隠しているが、その瞳を見ただけで、仮に原作知識がなくとも若くて美人と判る。
「やあ、今晩は。
今回、俺が知りたいのは、俺の運命だ。
この先、如何にして生きたらいいか、それを知りたい。」
「分かりました。
では、占ってみましょう…」
正直、「え?コイツ、頭大丈夫?」って目で見られるの覚悟だったのだが、プロなのか意外と同じ様な事を言ってくる奴が少なくないのか、普通に対応してくれた。
「光…
1つの光を囲む7つの小さな光達…
その光達の周りを囲む様に廻る、もう1つの光…
それが貴方…って、え?これは…?!」
正しく計画通り。
恐らく今の俺は、記憶を取り戻した時の自称・新世界の神の如く、最高に悪い顔をしているだろう。
「俺は8人目なんですよ、ミネアさん…
貴女達と同じ宿命を持つね。
もっとも、他の連中と比べると、少しばかりイレギュラーだけど、ね…。」
「私の名前も知ってる…?!
貴方は一体、何者…」
この反応から然るに、御告げ所のシスターは俺の頼み通り、彼女達には所謂「俺を表す光」や「更なる大きな光」については黙ってくれていたようだ。
「俺はフィーグ。
今は識者を自称している。」
自称ではあるが、ネネさんから貰った二つ名と一緒に名乗る。
「識者…識る者…ですか?」
「いぐざくとりー」
更に話を続ける。
「ミネアさん、俺は普段はカジノホテルの3軒隣の安宿か、「華の郷」っていう酒場にいるだろうからさ、待ち人に会えたら、真っ先に訪ねに来てよ。」
「え?その言い方…まさか…」
「ああ…近い内に会えると思うよ。」
時事通信にブランカの北部、通称・人払いの森の中で、恐らくはモンスターの襲撃により滅ぼされたであろう集落が発見されたという記事が載っていたから、勇者は近い内にエンドールにやってくるだろう。
「はい…分かりました。
では、その時に…」
「それから俺の事は、まだ誰にも言わないでね、そう、誰にも…ね?」
「あっ、そういう事ですか…。
はい、了解しました。」
因みにスコットも、この会話はそばで聞いていたのだが、何の話をしているのか、脳筋な彼には解る筈もなく、完全に蚊帳の外だったのは言うまでもない。
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それから2日後の夜、俺の泊まっている部屋に、ミネアさんが凄く暗い表情をした緑色の髪の毛の少年と一緒に訪ねてきた。
この前とは違い、今は顔を隠すフードやスカーフは身に着けていない。
「こんばんは、フィーグさん。」
「やあ、ミネアさん、こんばんは。
えーと、そっちの少年が、もしかして?」
「はい、私達が探していた勇者様…
ソロさんです。」
ソロ…ね。
事情は分かってるつもりだが、暗い、暗過ぎる表情な少年に対して軽く微笑んで、
「フィーグだ。
ミネアさんから話は聞いてると思うが、これからよろしくな、ソロ。」
右手を差し出す。
「は…はい…フィーグさん…
ソロです…よろしくお願いします。」
ミネアさんから勇者と紹介された少年も、戸惑いながらも右手を出した。
「さてと…ミネアさん、ソロ、それでは、もう1人を迎えに行きますか?」
「やはり御存知でしたのね…」
「そりゃ、もう…
伊達に識者は名乗ってないですから(笑)」
軽く苦笑する。
「では、参りましょう。
姉のマーニャは、懲りもせずに、カジノでスっている筈です。」
「すっからか~ん…」
「それ、洒落になってないから止めて貰えますか?」
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「うぅ…やっぱり、こういう騒がしい場所は好きではありません…」
「僕も…こういうのは…ちょっと…」
基本的に暗い系の2人は、カジノみたいな賑やかとか、騒がしい場所は苦手な様だ。
「姉が好きなのはスロットです。
ですからスロットのコーナーを探せば、すぐに見つかるでしょう。」
はい、知っています。
ルーレットやポーカー卓を通り抜け、スロットマシンが並ぶエリアに足を運ぶと、何やらマシンに向かって怒鳴ってる若い女性を見つけた。
長い紫の髪と褐色の肌、そして解放的な服装が何だか色っぽい。
「ミネアさん…」
「何も見えません、何も聞こえません。」
必死に現実逃避している褐色肌で長い紫色の髪の女性をスルーして、スロットにお熱な女性に話しかける。
「何?邪魔しないでよ!」
「……………………………………………。
姉さん…やっぱり、ここだったのね。」
「ギク…」
少し前の「ぷんぷん」に続き、「ぎく」ってリアルに声に出す人も初めて見たよ。
「んもう!私が占いで稼いでも、全~部カジノに注ぎ込んで!
私達、もう一文無しよ!」
「え~ん、ごめんなさい~」
すっからか~ん…
これについてはミネアさんがお金の管理をしないのが悪いと思いますが…
ほら、姉妹漫才にソロ君も呆れてるよ。
「ん?こちらの人達はって…
あー、あんた、この前のケチ男!」
「え?ケチ男?」
「あ~、ミネアさん、実はさ…
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それは2日前の夜。
「さて…と、ミネアさんがいるって事は、当然な如く…」
ミネアさんとのファーストコンタクトの後に、俺はカジノに足を運んだ。
「確か、スロットが好きだったんだよね~って、あ…いるし。」
真剣なというか、鬼気迫る顔でスロットと対峙している女性を発見。
容姿からして間違いないだろう。
まあ、今回は絡むつもりは無いし、何気なく隣に座り、スロットを回していくと…
_ _ _
|7|7|7|
|7|7|7|
|7|7|7|
 ̄  ̄  ̄
キターーーーーーーーーーーーーーー!!!!
777x5の、5000枚、キターーーーーー!!!!
そりゃさ、自身もハイテンションになって叫ぶわ、派手なファンファーレは鳴るわ、コインがジャラジャラと音を立てて出るわなら、普通は気づきまさぁね。
「アナタ、凄いじゃない!
ねぇ、少し分けてよ?」
隣に座ってたお姉さんが、声を掛けてきました。
因みにカジノ内にて客通しのコインの譲渡は基本的に禁止されています。
「ねぇ~、だめぇ?
分けてくれたら、ぱふぱふくらいなら、してあげてもいいんだけどなぁ~?」
痴女ギリギリ一歩手前な自己主張が激しい服装(誉めてる)で、思いっっきり胸を寄せ上げて、アピールしています。
な、な、な、な、何だってーーーーっ!!!?
マーニャさんの、この御胸様で、ぱぱぱ、
ぱふぱふですとーーーーーーーーーーっ!?
fight!
脳内で天使と悪魔がララパルーザな殴り合いを開始しました。
結果、天使君が辛うじて勝ちました。
ちっ…
「いや~、すいません、
今回は遠慮しときます…」
「何さ!ふんっ!」
あちゃー、怒って行っちゃったよ。
そりゃあ行きずりで済むなら、迷わないけどさ、後々を考えるとねぇ…
決して今、事に及ぶのは、まだだよねー。
勿体ないとか思ってないぞ、本当だぞ。
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「…てな事がありまして…。」
「ねねねね…」
あら、ミネアさんが俯いて身体をふるふると震わしてますが…
「姉さん!」
「ひぇ~、ミネアが怒る~
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「いくらなんでも破廉恥過ぎよ!
たかがコインなんかの為に、ぱ、ぱ、ぱ、ぱふ……なんて…」
ミネアさん、頑張って(笑)!
「バッカね~、本当にする訳ないじゃん。
最初っからコインだけ貰ったら、後はテキトーに誤魔化して逃げるつもりだったに決まってるでしょ!」
………………………。
そういう発言は、当事者の前では言わないのが良いと思います。
「あ、あの…………」
うだうだな展開を収集させるが如く、ソロ君が口を挟む。
「あ、そうでした!」
ミネアさんも冷静?になり
「姉さん、此方が私達が探してた勇者様のソロさん。
そして、此方が私達と同じ宿命に生まれたフィーグさんよ。」
「Wow!ちょうど良かったじゃん!
よーし、これから先は、この2人に養って貰う事にしましょ♪」
「はぁ…」
ミネアさん、頑張って(笑)!
「さ、行きましょ!」
何気に、いつもの酒場の店名を公開。
マーニャ姐さんの台詞やアクションは書いてて楽しい(笑)。
次回予告:「勇者魔改造計画」(予定)