「こぉの、バカ孫がーっ!」
「あぅち!」
勇者ソロ、そしてマーニャさんミネアさん姉妹とパーティーを組み、いよいよ本格的な旅を始めようとエンドールから旅立った俺達はブランカ城を訪ねた。
その目的は、これからハードな旅をするには、あまりにも実戦経験が不足しているソロの為、鬼の様な強さと指導育成には定評があるブランカ城兵士団の団長グレイグ…早い話、俺の祖父っちゃんに稽古を付けて貰う様に頼んだのだが…
「どうした…もう終いか?」
「クソっ!上等だ、ジジイ!
今日こそは、たっぴらかsぎゃぴりーん!!」
何故か、俺がしごかれていた。
「ジジイ!だから今回は俺でなくて、こっちのソロをだな…」
「ふん、フィーグよ…
先のエンドール武術大会…」
「あ゙ぁ?」
「全力を出し尽くしての敗退なら兎も角、聞けば対戦相手の殺気に気圧されて棄権したそうじゃの?」
「あ…」
「だから、こっちの小僧の前に、お前を鍛え直す必要があると思った訳ぢゃよ!」
「待て、ちょっと待て!
あれには事情があっtうわらば!!」
ちーん…
「ふん、続きは後じゃ。
待たせたな、小僧。
さて、面倒くさい説明は無しじゃ。
貴様の最大を以てして掛かってこいや!」
「は、はい!いきます!」
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「ふん…少し休んでいろ…
ちょっと他の若い奴等を見てくるわい。」
「はぁ、はぁ…
あ、ありがとうございました…」
ジジイは実戦さながらの模擬戦でソロをフルボッコの襤褸雑巾にして去って行った。
「ソロ~?生きてるか~?」
「はい、なんとか…」
カチャ…
「フィーグ、ちょっと来い。」
あら、ジジイ、戻ってきて手招きしてる?
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「フィーグよ、あの小僧、何者だ?
基礎は出来てる様だが、動きに迷いがありすぎるぞい?」
「実はアイツ、例の村の生き残りだよ。」
「何と?!」
「モンスターとの戦いで、動きがアレだったんで、祖父っちゃんに鍛えて貰おうと思ったんだけどな…」
「そうか…だが、残念じゃが、ありゃ、心構えの問題で、儂では何ともならんぞい。
今の彼奴は、生きる事に疑問を感じとるというかの…」
「疑問?」
「事情は解ったが、それで彼奴は死んだ村人達に対し、自分だけが生き延びた事を重荷にしとるというかの…」
なるほどね…
本人には言えないけど、ぶっちゃけ、あの村の壊滅はソロが原因と言ってもいいかもしれないからな…
「それが全て悪い方向に出とる。
まだ、復讐心で動くのがマシじゃわい。
一緒に連れてきた娘っ子達みたくの。」
うわちゃ~…
この辺りは流石は年の功、お見通しで…
「じゃから、今の心の問題をどうにかせんと、彼奴は伸びる事はないぞい?」
「分かった、俺が何とかしよう。
手間掛けたな、祖父っちゃん。」
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「ソロ、構えろ。」
「フィーグ…さん?」
「ガチだ。」
「えぇ?」
カチーン カキーン!
ルージュ・オブ・ケイジと破邪の剣が幾度も交差する。
振り下ろされた剣を槍で払い、がら空きの身体に蹴りを放つフィーグ。
「うぅ…」
「どうしたどうした?
その剣の能力(チカラ)は教えただろ?
状況に応じて活用しろ!」
「く…炎よ!」
ブォオン…
使い手の叫びに応えるかの如く、刀身から炎が吹き出し、剣を標的に向け振りかざすと、その炎は敵に放たれる。
「遅い!」
ギラと同等の炎の帯を避け、至近距離に踏み込み、槍の柄尻をソロの鳩尾に叩きつけるフィーグ。
「くはっ…」
「まだだ!次は炎を発動させた後は、それを飛ばさず、そのまま斬り込んでみろ!」
「は、はい!炎よぉっ!!
でぇいやああっ!」
「うぉっ?!」
炎を纏った刃がフィーグに一撃を入れた。
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「ふぅ…やりゃ、出来るじゃねーか…
しっかし、思いの外、上手くいったな…」
「え?」
「ありゃ、俺の親父が得意にしてる、火炎斬りって技だよ。
もっとも親父は自分の魔法を剣に上乗せして斬りつけるんだけどな。」
「も、もしかして、只の思いつきだったんですか?」
「結果オーライって言葉、知ってるか?」
「ははは…アバウト過ぎですよ…」
「あ、笑った。」
「え?」
「今の笑いだよ。それなんだよ。」
「な、何が…」
「言ったよな、1人で背負うなと。
確かに俺は、お前やマーニャさん達みたいに、自分の大事な人の命を理不尽に奪われた悲しみは知らない。
でも、敢えて言うぜ?
お前の大事だった人達は、お前を守る為に命を張ったんじゃないのか?」
「………………………………………」
「生きてるのか死んでるのか判らない、いや、少なくとも今のお前は生きてはいないよな、死んでないだけで。
それでいいのか?
お前を守った人達は浮かばれるか?」
「皆は…」
「ん?」
「村の皆は僕を恨んでるでしょうか?」
「それは、この先のお前次第じゃね?
ただ、端から恨むくらいなら、進んで盾になったりはしないと思うぜ?
何故、自らを犠牲にしてまでお前を守ったりしたのか…
その辺り、自分1人で考えてみろよ。
この先、どうすべきかをな…
俺ぁ、ちょっと外すわ。」
パタン…
そう言うと、俺はソロ1人を、その訓練室に残して部屋を出た。
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「…………………………………………」
ソロは考えていた。
自分の事、両親の事、村人達の事を。
「父さん、母さん、師匠、老師、村の皆…
………………………………………シア…
僕は…生きていて良いんだよ…ね…?」
「う…うぅ…
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
パタン…
「全部、吐き出せてすっきりしたか?」
「!!」
ソロが訓練室から出ると、フィーグが廊下の壁に背を預けて立っていた。
「待っていてくれたんですか?」
「帰り道、分からないだろ?
ジジイには言っておいたから、帰るぜ?」
「は、はい!」
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「…で、お姉さん達は、人の部屋で何をしていやがるんですか?」
「見て分からない?
アンタのお宝本を見てるの♪」
「破廉恥だわ不潔だわ破廉恥だわ不潔だわ破廉恥だわ不潔だわ破廉恥だわ不潔だわ破廉恥だわ不潔だわ破廉恥だわ不潔だわ…」
甘かった…。
城を訪ねる前に実家に寄り、マーニャさん達には家で待ってもらうように言ったのは失敗だった。
ミネアさんは兎も角、こっちのお姐さんの行動は想定しておくべきだった…。
「だーっ!人の部屋を勝手に漁ってんじゃねーよ!
そこ、ミネアさんもブツブツ良いながら熱読しない!返せ!」
「くす♪それにしても、アンタ、きょぬー系が大好きなんだねー?
何これ?「金髪エルフTの爆new革命」?」
「うっせー!悪いかよ?」
「こっちの「悩殺教室」は触手物か…(笑)」
「こちらは「女戦士、堕ちる」…
フィーグさん、不潔です…」
「もう、止ーめーてー!」
ごめんなさい、もうマジやめて…
「くぷぷ…」
ん?
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
「「「ソロ(さん)?」」」
「ははは…はぁはぁ…
すいませんフィーグさん、くっくく…」
「あ、ソロ~?アンタも読む~?
これなんかどう?「両隣のお姉さん」!
魔法使いと僧侶のお姉さんの修羅場物♪」
「え?いや、僕は…」
「あ、ソロが好きなのは妹系か?
悪い、そっち系は持ってないわ。」
「姉さん!フィーグさん!
ソロさんを悪の道に引きずりこんだりしないでください!」
悪の道爆進中で悪かったな…
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「よし、行くか!」
「皆さん、すいません、砂漠を目指す前に寄りたい場所があるのですが?」
「ソロさん?」
「このパーティーのリーダーはお前だ。
好きにしろよ。」
次の日、砂漠を目指す予定だったが、ソロの一言で俺達はブランカ北部へと進んだ。
「ねぇ、フィーグ?」
「はい?」
「ソロって、何ていうか…
その…顔つきとか…雰囲気変わってない?
さっきのモンスターとの戦闘も動きがこの前とは別人だったし…」
「色々あったのが全部吹っ切れたかな?」
そりゃ昨日のおバカなやりとり見てたら、
1人でネガティブオーラ発散するのも馬鹿
らしくなるだろうよ。
ある意味、マーニャさんお手柄だよ。
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ブランカ北部…通称・人払いの森と云われるこの森は中でどんなに迷っても、必ず最終的には侵入した地点に戻ってしまうという不思議な森だった。
森の奥には小さな村の存在が噂されていたが、誰一人として確認には至らなかった。
俺も以前、ハスターやロレンス達と森の探索を試みたが、村は見つからず、その夜中の帰り道、森の入り口近くに住んでいる樵の爺さんの世話になったりした。
その後、ロレンスがその爺さんをモデルにした「ツンデレ爺さん」という詩をリリースしたが、大して売れなかったのは彼の黒歴史となった(笑)。
「魔力が感じられない…
結界は無い…当然といえば当然か…」
以前は森に足を踏み入れた瞬間に感じた魔力を感じられない…
人払いの結界を張る者がいなくなったのだから当たり前ではあるが…
俺達は苦する事無く、森の最深部にある村の跡を見つけ出した。
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「うわ…ごめん、あたし、この先はムリ…
キツいよ…」
「わたしも記事は読みましたが…
此処まで酷いとは…」
その目に映ったのは無惨にも全てが焼き払われ、以前は其処に村があったかの様な荒れ果てた光景。
女性陣が目を背けるのも解る。
「ソロ…どうするんだ?
1人で済ませてくるか?
それとも、俺達も居たのが良いのか?」
「それじゃあ、フィーグさんだけ…」
「了~解、と。」
やっぱ女性陣は、こういう雰囲気はキツそうだし、待ってもらうか。
「ちょっと待ちなさい!
あたしもついて行くわよ!」
「わ、わたしも行きます!」
おっと…?
「マーニャさん、ミネアさん…」
「「仲間でしょ!」」
ははは…強いお姉さん達だ。
ソロに案内されたのは、村の中央付近にある花畑…の跡。
無惨に荒らされた一点を見つめ、何かしら想いに耽っている様だ。
「………………………………………………
じゃ、行くよ、シンシア…」
一言呟くソロ。
「もう、良いのか?」
「はい、皆さん、我が儘言って、すいませんでした。」
振り返り、歩き出そうとした時、
「!
あ、ちょっと待って!」
「「「?」」」
マーニャさんが花畑だった跡の中心に駆け付け、見つけ出したのは1つの羽根の付いた白い帽子。
奇跡的に大した傷みはない。
「はいコレ。あんたが持ってなさい。」
「これは…シンシアの…
ありがとう、マーニャさん…」
「さ、行きましょ?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
村を後にする前、出口でもう一度、ソロが振り返る。
「行ってくるよ…シンシア…」
※※※※※※※次回予告!※※※※※※※
バキィッ!
「それでも男なの?
この軟弱者!」
「な、殴ったね?
親父にも殴られた事ないのに!」
次回、真に導く者:裏切りの洞窟
乞う御期待!