「じゃあな、パトリシアも元気でな。」
「ヒヒーン…」
ホフマンがヒルタン氏に弟子入りする形でパーティーから別れる事となった。
ゲームでは、それでも最後まで勇者と共にしたパトリシアだが、常識的に考えて、馬主のホフマンと一緒に別れる流れになるのが当然な話。
したがってパトリシアとも、此処でサヨナラだ。
パトリシア本人(本馬?)も、何かを察したのか、少し寂しそうな顔をしている。
今後の陸上の移動の要はパトリシアから、パインウインドが引く馬車にバトンタッチする事になった。
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「さて…これから、どうする どうなる?」
原作的には今、この宿に「彼女達」が宿泊している筈なのだが、まさかゲームみたいに他人の客室にヅカヅカと入り込むという訳にはいかない。
それならと、フロントに聞いてみるも「個人情報ですので…」と、確認が取れない。
ミネアさんの占いでも、「導かれし光が近づいています」との事。
宿屋内の食事処(酒場に非ず)で、今後を話し合っていた。
いきなりソレッタの王都に向かうか?…とか考えていたら、店に特徴的な髪型と髭を生やした老人が入ってきた。
「!…ミネアさん、ちょっと、あの爺さんを視て貰えるかな?」
「え?は、はい…」
多分、あの爺さんで間違いないだろうとアタリを付けた俺は、ミネアさんに霊視を頼んだ。
「…!!
フィーグさん、あのお爺さん、確かにわた
し達と同じ、ソロさんの周りを囲む光の1人…です。
一体どうして…?」
「はは…「識者」だから…じゃ、ダメ?
じゃ、ちょっと話し掛けてみる。」
「あっ、僕も行きます!」
原作知識持ちなんて言える筈がなく、軽く笑いながら言葉を濁して席を立ち、ソロと共に老人が座っているカウンターの席に向かった。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~…」
「よっ、爺さん、世界中の不幸を1人で背負い込んだ様な顔をしてるけど、何かあったかい?」
いきなり失礼なヤツとか言わない。
自覚はある。
しかし、本当にそんな顔をしているのだから仕方ない。
「ん~?何じゃ?お主は?」
「な…フィーグさん、いきなり何を言ってるんですか!」
「いや、初めて会った時のお前と同じ様な顔をしてたからさ。」
「僕の事なんか、どうでもいいです!」
「…………………………。
若いの、儂に何か用があるのか?
お主等、何者じゃ?」
「あ、失礼…。俺達は只の旅人さ。
いや、今言ったみたいに、最高に暗い顔をしてるから、何かあったのかな~?てね。
爺さんも旅人みたいだからさ、同じ旅人同士、俺達が少し手を貸す程度で解決する厄介事なら協力しても…と思ってね。
もっとも、事の大きさ次第では対価を求めるかも知れないがね。」
「ちょ…フィーグさん!」
「…………………………………………。」
対価要求は先に其れを口にする事で、必要以上に不信に思われない為。
少なくとも俺なら、見返りを求めないという様な、100㌫善人なキャラなんて、絶対に何か裏があると疑い、信じたりはしない。
敢えて自身の欲を表に晒す事で、逆に信用信頼を得られる事もある…と、俺は思っている。
「ふむふむ…若いの、後で儂が泊まってる部屋に来てくれるかの?」
「いいよ~。
とりあえず、飯、食べた後でね~。」
「はぁ…」
ん?ソロ君?何だい、その溜息?
だって、注文している「今日の焼き魚とライスボール&ミソ・スープ」、まだ食べてないじゃないの。
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「う~ん…う~ん………」
食事の後、ブライ爺さんに案内された部屋には、ベッドの上で魘されている若い男がいた。
「ご覧の通り、共に旅する仲間が重い病に伏せってしまったのです。
我等の主人であるアリーナ様が御一人で薬
を取りに行かれたが、もう心配で心配で…
はぁ~~~~~~~~~~~~…
フィーグ殿、見ず知らずな貴殿達に頼むのも厚かましいが、食事処での貴殿の台詞、心ある御方とお見受けした!
どうかアリーナ様を探しだし、手助けをしては貰えぬか?
金なら可能な限り払うから、頼む…。」
「フィーグさん…?」
「前に言ったろ?
お前が決めるんだ。」
「は、はい!
分かりました、ブライさん。
アリーナさんと一緒に薬を取って来ますから、安心してください!」
「おお、真か!有り難い!
それでは、このブライもお供させていただきますぞ!」
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「何とコレは、デッカい馬じゃ?!」
ブライ爺さんは病で倒れた旅の仲間…クリフトの面倒を宿の者に頼んだ後、宿の外で俺達と改めて合流、トルネコの旦那の馬、パインウインドを見た瞬間に驚きの声を上げた。
「そりゃ誰だって、最初は驚くよね~♪」
「ははは…兎に角、まずはソレッタだ。
早い内にアリーナ「姫」を探してだな…」
「!…フィーグ殿…!?」
「悪いな、気づいていたよ。
サントハイム王宮魔導師団顧問兼、王女世話係主任のブライ殿?」
「「「「えーーーーーーーっ?!」」」」
「うぬぬ…」
驚くソロ達。
「さ、流石は識者…ですか?」
「まあ、そんな処だね…。」
ブライ爺さんを新たにパーティーに迎えた俺達は、万能薬パデキアを求めてアリーナ姫が向かったというソレッタを目指して街を出たのだった。
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「ブルルルルル…
ブッヒヒィーーン!!」
パインウインドは雄叫びを上げた!
タタタタ…
ドードー鳥は逃げ出した!
バンプドッグは逃げ出した!
マージマタンゴは逃げ出した!
魔物の群れはいなくなった!
「はは…こりゃあ楽だ(笑)」
ソレッタに向かう道中、小型の弱い魔物が襲ってきても、パインウインドの一喝で逃げ出していた。
戦うとしたら、恐怖という感情を持っていない不死(アンデッド)系の魔物か、大型の魔獸くらいだった。
そう、あんな風な…
「出たなブルホーク!
ブッ倒して、その手羽、肉屋に売り飛ばしてやる!行くぜ、ソロ!」
「頑張れ~♪
腿肉や尻尾の肉も高く売れるわよ~♪」
ドカッ!バキッ!ズバババッ!!
動物虐待等と言う事なかれ。
前も語ったが、ゲームじゃあるまいし、倒れた魔物から、ゴールドやアイテムが得られる訳ではないのだ。
旅人、冒険者はこうして倒した魔物を解体して、食べられる部位等、売れる部分を切り取り、行く先々の町で換金して路銀を稼ぐのも基本なのだ。
「それじゃ爺さん、よろしく。」
「うむ…ヒャド!」
ブライ爺さんの氷(ヒャド)系魔法で蒼鳥牛の肉片を氷漬けにして貰った。
当然だが、冷凍保存等の処理で鮮度が良い肉ほど、高く売れるのだ。
ついでに馬車も大型となり、かなりの量を貯えられる様になっていた。
そして、ソレッタに到着。
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ソレッタ…一応、王都ではあるのだが、それは国を治める国王が住まう城があるだけの話。
何処ぞの酒場とカジノをこよなく愛する痴女なお姉さんが凹むが如く、見渡す限りの畑、畑、畑。
賑やかさ華やかさではミントスに及ばず。
だが、世界レベルの農業大国を自負するのは伊達でなく、数年前の大干ばつで国の名産、パデキアが死滅はするも、その後も国と民達の努力で様々な農作物を生産、世界中に流通させており、決して壊滅的に貧しいというイメージは感じられない。
「ゲームとリアルは違う、か…。」
「フィーグさん?」
「いや、只の独り言。気にしないで。」
農作業している農民達も、活き活きと田畑を耕していた。
一般人だけでなく、本職は城の兵士なのだろうか、かなり鍛えられた身体で鍬を振っている者もいた。
「この分だと、国王は城の中で普通に政治でもしてるかな?」
此処で俺とソロ、ブライ爺さんは城に、旦那とマーニャさん達は買い出しにと別れた。
そして城に足を運んでみると、
「国王は現在、外出しておられる。」
「もしかして、畑仕事?」
「うむ…そうとも…言う…」
「失礼だが、国王自らが農作業に出ないとならぬ程、貧しい様には見えない。
何かあるのかい?」
「周知の通り、今までパデキアの流通に依存してましたからな、大干ばつによるパデキア死滅の後、他国より一般農業の専門家をアドバイザーに招く等して、漸く国が此処まで持ち直して来たのですよ。
しかし国王が言うには、復興はこれからが本番との事。
もう暫くの間は、城の者達も、政(まつりごと)や警備等は必要最低限の人材で賄い、農作業の方に人員を優先さてせいく…との事で。」
「それで、国王は農作業?」
「はい…物事、適材適所があり、政治は大臣殿に任せた方が安心だと、キッパリ申されまして…」
「自身は農業のが適してると?」
「はぁ…」
城門前の兵士に国王謁見を申し出たら、王は外で田畑を耕しているとの事。
改めて広大な農園に行ってみると、1人の農夫が現場監督の如く、農民達に的確な指示をテキパキと出している。
「貴方が…ソレッタ公?」
「んにゃ?
俺は王様に喚ばれて、この国の農業指導をしている、グレイトって者(もん)だが?
王様はほれ、あそこでよ。」
グレイトと名乗る農夫が指差した先、そこには先程の、鍛え上げられた上半身を剥き出しにして鍬を振っていた初老の男が、農道に座り込み、お茶を啜っていた。
ウチの祖父っちゃんに勝るとも劣らない筋肉の鎧を纏っている男。
「あれが、国王…?」
なるほど、確かに適材適所な様だ。
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「そうか…あの娘さんは、本当にサントハイムの姫君であったか…。
これは申し訳ない事をしたな。
ブライ殿、失礼を詫びよう。」
ソレッタ城謁見の間、玉座に腰掛けた国王が頭を下げる。
あの後、ソレッタ王に話し掛けたが、「仕事中だから、日が暮れるまで待て」と言われてしまう。
仮にも一国の王相手に無理にOHANASHIする訳にも行かず、日が沈むまで待つ事に。
その間、何故か俺とソロは、農作業を手伝わされていた。
そして、その時に運悪く、その様子を仲間の痴女に目撃され、笑いを堪えた邪悪な笑みを含んだ顔で通り抜けられてしまった。
国王も一緒に作業していたからであろう、俺達が畑仕事してる場面を見た日にゃ、絶対に此方を指差して大笑いする筈なのが、それをしなかったのは一応は大人な女性だったと言うべきか。
てゆうか、もし、それやってたら、日中だろうが路上だろうが目撃者が居ようが関係ない、その場で襲ってたかもしれない。
んでもって、ソロを無理やりに゙卒業゙させていた(笑)。
そして日が暮れ、その日の作業が終わり、俺等は国王に城に招かれたのだった。
「アリーナ殿にも言ったのだが、国内にパデキアは僅かに残ってはいるが貴重な物でな、例え王族相手でも、簡単に渡す訳にはいかぬのだよ。それで、パデキアの種が保管されている洞窟の事を話したら、連れの者達と飛んで行ったわい。」
…らしい。
ソレッタ王が言うには、今日の朝にアリーナ姫が、やはりパデキアを求めて城に訪ねて来たらしいが、国王は彼女が本当にサントハイム王女とは信じずに、パデキアの種が保管されている洞窟の事を、現在はモンスターの巣となっている危険な場所という情報込みで教えたそうだ。
「こうしてはおれんわい!
直ぐに姫様を追い掛けますぞ!」
「待てよ爺さん、夜は危険だ。
聞いた限りでは、アリーナ姫達は歩きで移動なんだろ?
その洞窟、パインウインドなら明日の朝から出発しても、十分に追いつくから、今日はもう休もうぜ?」
「うむぅ…」
「ソレッタ公、もしも俺達がパデキアの種を持って帰れたら、現在、城に保管されているパデキアの根を譲って貰えるかい?」
「ふむ…良いだろう、約束しよう。」
下は兎も角、上半身は未だ、そんなに自身の筋肉美を自慢したいのかとばかりに、肩にタオルを羽織っているだけのソレッタ王は頷いた。
※※※※※※※次回予告!※※※※※※※
「あら、この扉、鍵が掛かってるわね。
…よーし!「あの技」を試してみるわ!
…………………………………
てやーーーーーーーーーーーーーっ!!」
次回、真に導く者:『パデキアの洞窟』
乞う御期待!