真に導く者   作:挫梛道

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以前から、偶に名前だけは出ていた、あのキャラが やっと登場。




アッテムトの神父

「クソが!!巫山戯るにも程があるぞ!」

「フィーグ、少し落ち着いて!」

 

 

アッテムト…キングレオ領北西部に位置する半島にある山々と森に囲まれた町。

以前は鉱山の町として炭坑夫達で賑わっていたが、ある日、鉱山内で毒ガスが発生。

町は一気に荒廃していき、今は、嘗て栄えていた影も形もない。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

俺達はオーリンの書き置きに従い、アッテムトに辿り着いた。

町が荒廃しているのは時事通信の記事(…と原作知識)で、ある程度は知っていた…いや、知っていたつもりだったが、実際に現地に赴き、自分の目で見た光景は予想の遥か上をいく惨状だった。

「国は一体、何をしてるんだ?

復興や救護には、手を着けてないのか?」

何の対策も打ってないのが明らかなキングレオという国に対して、憤りを感じ、つい、それを表に出してしまう。

以前、ブランカ領にある辺境の村が、大雨による土砂災害に見舞われた時は、ウチの陛下は直ぐ、兵は勿論、同時に民間人にも協力者を募り、復興支援の部隊を組織して現地に派遣していた。

そういうのを知っているだけに、形だけではあるが、一応は、故郷では城(くに)に属している身の俺としては、この対応は許せなかった。

 

「昔、お父様が支援物資援助の協力を名乗り出たけど、断られたって聞いたわ。

余所に借りは作らんとか言われたって愚痴ってた…。」

「そんなんじゃないだろ?

プライドで人は救えないんだよ!」

「ふむ…かなり無理な税収をしていると聞くが、此処の復興の為に予算を割いている様ではないらしいのう…」

「あの王が、バルザックが、そんな事の為に税収してる筈がないわ。

自分だけの為に使っているのよ…。」

 

バルザック…ね…

今は まだ、喋る時期ではないよな…

 

「兎に角、書き置きにあった神父さんを訪ねましょう。」

「そうですね…」

 

道を行く馬車を、町の住民が注目する。

今の この町では、馬車というだけで目立つというのに、パインウインドは尚更に目立ち過ぎる。

 

道をを進んでいると、物陰から不意に1人の子供が馬車の前に飛び出して、いや、飛び込んできた。

「うおっと?」

慌てて旦那が手綱を引き、急ブレーキ。

 

俺も思わず馬車から飛び降り、

「こら、危ないだろうが!大丈夫か?

怪我は無いな?」

声を掛けた。

マジに危ない。

もう少しで轢いてしまう処を旦那…いや、寧ろパインウインドの判断だろう、大事に至る事なく済んだが…

 

「何で止まるんだよ!バカヤロー!」

襤褸々々の服を着た子供は、歳相応らしからぬ憎悪が込められた表情で俺達を睨みつけると、そのまま走り去って行った。

 

「今のは…?」

「疑うまでもない、当たり屋だよ。

ああやって、わざと馬車にぶつかって因縁をつけ、金なり食べ物なりを集ろうとしたんだろう。」

「嘘?あんな子供が?信じらんないよ!」

「姫さん…これが現実だよ。

国のトップが狂ってると、民も荒むんだ。

覚えておくといいよ…。」

「ん…」

凄く悲しそうな顔をして頷く姫さん。

もしかすると、今の子供のバックには、親がいて、カモを取り逃がしたとか言って虐待している可能性もあったが、只でさえ凹んでいるのに、これを言うと、自分が悪い訳でもないのに、ますます落ち込んでしまうのは目に見えていたから、敢えて言わずにいた。

 

他の面々も暗い表情になっている。

 

「……………………………………………」

誰もが無言になった儘、暫く馬車を進めると、教会らしき崩れかけた建物が見えてきた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「失礼しますぅ…」

教会の扉を開け、中に入ってみるが、礼拝堂には誰もいない。

「此処は誰もいないのかしら?

それとも何処か、此処とは別に教会があったかしら?」

「いや、床やテーブルを見てみなよ…きちんと掃除がされている。

今は少し留守にしているだけと思うよ。」

 

 

昔は此の教会も沢山の人が通っていたのだろう、今は音の出ない壊れたパイプオルガンと、大部分が割れ落ちたようなステンドグラスがより気持ちを沈ませる礼拝堂で暫く時を過ごしていると、外から扉が開き、

「誰か居るのですか?」

煤まみれの聖職者の衣を纏った若い男が中に入ってきた。

 

「すいません、神父様に聞きたい事があって、勝手に入らせてもらいました。」

ソロが神父に話し掛けるが、この神父…?

 

「し、シンちゃん?」

「え?フィーグ?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

結論から言えば、今の教会の主は、俺がブランカを出た少し後に、やはり教会から旅立った昔からの友人だった。

シンちゃん曰わく、この教会の本来の神父達は、最初の毒ガス騒動の時に、町の人達を見捨て、皆逃げて行ったらしい。

旅の途中、そんな無人の教会を見つけて、まあ、悪く言えば、勝手に居座っている訳だが、それでも、未だ救いを求める者達からすれば、有り難い存在なのだった。

 

「それにしても、わたし達が探していた神父さんが、フィーグの友達なんて、世の中狭いわー。」

「私も久しい友人が、訪ねて来てくれて嬉しく思っております。

これも、神の思し召しなのでしょう。

紹介が遅れました。

勝手にではありますが、今、この教会で神父として神の道を説かせて頂いている、シンプソンと申します。」

「え?神父ソン…?」

あ、マーニャさん、それ…

 

 

「えぇ…そうですよ…」

地雷です…って、遅いね…

 

「えぇ、そーですよ!どーせシンプソンという名前という、安直な理由で神父を目指しましたy「落ち着け!」

ビシィ!

「痛い?!」

とりあえず、ぷちキレmodeの神父ソ…シンちゃのド頭に手刀を落として黙らせ、

「マーニャさん、それ、禁句な?」

「らじゃ…」

「他の皆も、な?」

「「「「「「ら、らじゃ…」」」」」」

注意を促した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「そうですか、そちらのお嬢さん方が、オーリン殿の言っていた、エドガン氏の御息女でしたか。」

どうやら やはり、オーリンの書き置きにあった、アッテムトの神父とは、シンちゃんだった様だ。

 

「…で、シンちゃん、オーリンは何の為に俺達を、この教k「神父様ー!」

「「「!!!!」」」

はぁ…前から言ってるけど、人の台詞を遮るのは良くないと思う…って、そんな場合ではなさそうだ。

「何事ですか?」

教会に入ってきた老人に、シンちゃんが何があったか尋ねると、

「また、鉱山に、若い連中が!」

「な…またですかっ?

分かりました、直ぐに参りましょう!

フィーグ、話は後です!

では、失れぃ「まあ、待てよ。」くびっ?!」

何やら慌てて教会を飛び出ようとするシンちゃんの襟首を掴んで捕まえ、

「急ぐんだろ?馬車を出してやるよ。」

「すまない…」

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

俺達はシンちゃんに、炭坑に向かって走る馬車の中で事情を聴いた。

 

「…つまりは未だに、あの炭坑に入ろうとする人達がいるのですか?」

「はい、こんな町ですから…

食べるには金を掘り当て、大儲けするしかないと考える人も少なくないのです。」

「毒ガスは まだ収まってないんでしょ?

しかも、魔物も出る様な危険な場所に…

あの炭坑は閉鎖されたんじゃないの?」

マーニャさん達姉妹が、シンちゃんに詰め寄る。

 

「閉鎖はしているのですが、やはり炭坑に入ろうとする人達は後を絶たずに…

私も説得はしてるのですが、この町では聖職者を快く思わない人は少なくなく、なかなか聞き入れて貰えないのです。

私の力不足故に…」

「違うだろ?

聖職者が信用ないのは、元々居た奴等が町の人間見捨てて逃げ出したからだろ?

謙虚なのは悪くはないけど、必要以上に背負うなよ。」

「フィーグ…」

「説得は任せろ。こちらの お姉さんズは、OHANASHIのスペシャリストだ。」

「「どーゆー意味よ!?」」

「出来れば、平和的に解決したいです…」

まあ、そういう意味だよね。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

鉱山入口に到着してみると、炭坑の中に入ろうとしてる者達と、それを閉じられた門の前で阻止してる者達が一触即発な状態で睨み合っていた。

 

「どけ!俺達が食っていくには、もう、一発当てるしかねーだろーが!」

「こんな毒ガスやら魔物やらで、死ぬの分かってる中に入れさせる訳には、いかないよ!」

 

互いに譲らず言い合っている中、

「すいません、通してください!」

シンちゃんを先頭に、俺と姫さん、そして お姉さんズが割って入る。

「んだ、テメーわ!

クソ神父は引っ込んでろ!」

ガタイの良い、如何にも炭坑夫な風貌な男に怒鳴られても臆さず、

「皆さん、落ち着いて考えてください!

ここは危険です!

貴方達にも大切な人はいるでしょう?

その人の為にも、命を大事にs「るせー!俺等は その大切な人とやらを食わせる為、中に入って、一山当ててやるって言ってるんだよ!」

ドゴッ!

炭坑夫がシンちゃんに殴りつけ、はっきり言って、戦闘力は全然ダメダメな神父は吹っ飛ばされてしまう。

 

「うっ…」

「シンちゃん!…テメーっ!」

ドガッ!

俺は大切な友人に手を掛けた下郎の顎に、アッパーカットを叩き込み、逆に吹っ飛ばしてやった。

「ちっ、俺じゃ、車〇落ちは無理か…」

「テメーっ、よくも!」

「ふっ…暴力でしか訴えられない脳筋にレベル合わせて応えてやっただけだろ?

文句があるなら聴いてやるぜ?

さあ、互いに意見を主張を交換しようじゃないか!脳筋炭坑夫な諸君!」

念の為に言っておくが、勿論、俺はワザと言っている。

 

「テ、テメーっ!!」

炭坑夫達が一斉に挑んできたから、俺もボクサー流の臨戦態勢を取る。

 

「フィーグ、駄目です!暴力は…」

ゴメン、シンちゃん…あっちから殴ってくる輩の拳を甘んじて受けられる程、俺は聖人君子じゃないんだ…

 

先頭に立つ炭坑夫と、互いの拳が届き合う間合いになる直前の、その時、

ボゥワッ!

「「うぉっ?」」

その間合いに巨大な火柱が上がった。

少しタイミングがずれていたら、この燃え盛る炎に拳を突っ込み、火傷をする処だった。

そして、こんな事が出来るのは…

 

「オマエ等、少し頭冷やそうか?」

やはり、マーニャさんだった。

空に向けて高く掲げた右腕に、まるで蛇の如く炎の帯が纏わり付いている。

つまりは「言う事聞かないと、もう1発放つわよ?」と言ってるのである。

その顔は凄く、凄ーく優しく微笑んでいらっしゃる。

知っている…。

あの笑顔は、最高に怒ってる時の それだ。

俺は勿論、頭に血が登っていた脳筋共も、本能的に悟ったのか、無言の涙目で首をカクカクと縦に何度も振ったのだった。

姉さんの横には姫さんも構えている。

ちなみミネアさんは、ダウンしたシンちゃんを回復中。

 

「だ、駄目です…暴力は…」

シンちゃんの訴えに、

「おばさん、今、鉱山には、誰も入ってないんだよね?」

姫さんは鉱山の入口で炭坑夫の侵入を防いでいた、如何にも肝っ玉母さんな風貌の女性に確認を取ると、

「マーニャ、ちょっと一緒に来て!」

…と炭坑の中にマーニャさんと入ろうとする。

「ちょっと、あんた達!」

「大丈夫よ、直ぐ終わるから!」

そう言って、2人は中に消えていった。

そして数分後…

「てやー!二重の極み!」

中から、姫さんの雄叫びが聞こえたかと思うと…

ドドドドドド…

ガタガタガタガタ…

ドドドドドドーン!

炭坑内部の壁や天井が崩れ落ち、入口は土砂や岩の欠片で塞がれてしまった。

そして直後、地面に光る魔法陣が現れ、その中から、炭坑内部にいる筈の2人が姿を見せる。

 

 

「「これで、暫くは大丈夫ね!」」

パチーン!

ハイタッチをする姫さんとマーニャさん。

 

「確かに、これじゃ、炭坑内部には入れないよな。

シンちゃん、これで おけ?」

「………………………………………。」

想定の遥か斜め上を行った結末に、声が出ないシンちゃん。

まあ、仕方ない(笑)。

 

姫さんが言うには、炭坑は奥の方から、かなり派手に崩しているらしく、ちょっとやそっと、外から掘り起こした位では、通路まで繋がらないそうだ。

それを知った炭坑夫達は、悪態を吐きながら去っていった。

はっきり言って、ざまあ!…である(笑)。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

教会に戻った俺達は、改めてシンちゃんに話を聞く事に。

 

「オーリン殿が、もしもエドガン氏の御息女達が訪れたら、これを渡して欲しいと言付かりました。」

渡されたのは、二振りの曲刀と、緑色に光る宝玉が埋められた首飾り。

 

「これは…」

「誘惑の剣と静寂の珠です。」

「静寂の珠…!」

「はい、嘗てエドガン氏とオーリン殿が創ったプロトタイプを更に封呪の概念を強くした完璧版らしいです。」

「そして、誘惑の剣…?」

ここで旦那が解説に。

「これはまた…軽い剣ですねぇ…

これなら非力な女性でも、両手に持つ事も可能ですね。

曲刀でありながら、峰の部分も刃となっています。

これで軽さを追求して失われた、殺傷力をカバーしています。

更に、柄に埋められた、小さな宝玉に混乱(メダパニ)の概念が込められてますね。

これで、斬りつけた相手に混乱の効果を追加する事も出来るでしょう。

え?値段?そんなのプライスレスに決まっているでしょう!」

 

静寂の珠はミネアさん、二振りの誘惑の剣はマーニャさんが持つ事になった。

 

そして、

「フィーグ…君だけに話がある…」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

俺1人、シンちゃんに教会の奥の部屋に連れられ、何事かと思っていたら、1枚の封筒を渡される。

 

「これは、オーリン殿から預かっていた物です。エドガン氏の御息女達が現れた時、もしも その仲間の中に、私の目から見て、信用足り得る者がいたら、彼女達に気付かれない様に渡して欲しいと…」

「…心の友よ!」

「わっ、フィーグ?」

思わず、シンちゃんにハグ(笑)。

 

早速、封を開け、手紙を読んでみると…

「成る程ね…」

その内容は、原作知識で知っている物だったが、まあ、マーニャさん達に内緒で伝えようとした分には、納得も出来た。

そして、手紙の最後の行には『2人をよろしく頼む』…

この文章で締められていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「城に行くのですね…

今、あの城に足を運ぶのは、余り勧めないのですが、其処に貴方達の目的があるならば、私は敢えて止めはしません。

ただ…皆さんの安全を祈らせて頂きます。

あ、そうだ、城に向かう前に、ハバリア岬にある御告げ所に立ち寄ってみては、どうでしょうか?

彼処のシスターの霊視は、きっと貴方達に役立つと思います。」

 

シスターの霊視ね…

思えば、彼女の霊視が、俺を今の旅に加わる決心を与えた様な物だったな。

 

「そうだな、何か、役立つ情報を貰えるかもしれない。

そうだろ?姉さんズ?」

無言で頷くマーニャさんとミネアさん。

 

次の目的地が決まった。

 

 




次こそは、ライアンを登場させたい…(笑)
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