「おはようございます。昨夜は お楽しみでしt「蟹爪(アクベンス)!!」まにごるどっ?!」
「「「フィーグさん~??!」」」
チェックアウト早々に宿屋の親父が、客のプライバシーも何も無い事を言おうとしやがったので、カウンターを飛び越え、両脚で体を挟み込んで真っ二つにするが如くな脚技を見舞ってやった。
ベッドのシーツを ほんの少しだけ、血に染めたのを謝ろうと思っていたけど、その気は完全に失せたわ。
ほれ見ろ、マーニャさんも顔が真っ赤じゃねーかよ?
「(あわわ…フィーグさん恐い!良かった!言わなくて、本当に良かった!)」
「ん?ソロ?どした?」
「あわわわ…いや、何でもないです!」
…???
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トリートーン号を待機させている港町デュマに戻る前に、旦那の提案で、イムルの村に寄り道する事に。
曰わく、後々の商売の為の下見だとか。
まあ、船も馬車も、一応は旦那の所有物だから、その辺りは何も言えない。
村に着いたのは既に夕方だったから、今夜は此処に宿泊する事に。
因みに今夜の部屋割りは、お姉さんズ&姫さんの3人、俺、ソロ、クリフトの3人、そしてヒゲ3人の組み合わせ。
チェックインした後、俺はマーニャさんに腕を引っ張られ、村の酒場に。
「夢…ねぇ…」
酒場で話題になっていたのは、宿屋に泊まると必ず見るという、奇妙な夢の話。
あー、例の銀髪のイケメンとエルフがイチャつく夢ですね。
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……………………………………………?
何だ?この光景?
村っぽい集落に不釣り合いな石煉瓦の塔…
その最上階の窓から外を眺めるピンクブロンドの少女…
あー、コレあれだ、偶にあるよね、「俺、今 夢見てる!」ってヤツ。
白に近い水色のワンピースのドレスに身を包んだ少女、あのエルフ耳はエルフだな。
なんとなく言葉が変なのは分かっている。
…にしても、ファンタジーとかのエルフってな、大抵が残念な胸なのがデフォなのに、エルフ基準抜きにしても、こりゃあ、なかなかの…
お、銀髪のイケメンが現れた。
不自然な存在感の石畳の上で、妖しげな音色の笛を吹くと、それが鍵だったのか、石畳がエレベーターの如く沈んでいく。
そして銀髪ロン毛のイケメンが、ピンクブロンドのエルフに近づいて語り掛ける。
話の中身は要訳すれば、イケメンが「人間
ムカつくから、やっぱ処すわ!」って、言いたい事だけ言って去って行った。
残されたエルフちゃんは、それを辞めて欲しい…誰か、あのイケメンを止めて欲しい…と、独り呟く。
今、見てる夢は、イケメンを止める事が出来る者に呼び掛けている、エルフちゃんの無差別メッセージな訳ね。
…にしても、少し前の俺なら絶対に「リア充イケメン、爆死しろ!!」とか言ってる内容な夢だったぜ。
否、敢えて言おう!
「リア充イケメン、爆死しろ!(泣)」
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「…とゆう、夢を見た。」
「あ、それ、僕も見ました。」
「あたしもー。」
「私も見ました。」
結論から言えば、全員が例の夢を見て、尚且つハッキリと内容を覚えているという。
考え方によっては「ナニソレ怖い」だ。
「しっかしな~、イイ男って、夢の中でも売約済みなのよね~?」
「ま、マーニャ~!?」
何か、さり気にサラッと とんでもない発言するマーニャさん。
「あー、夢の中の男に妬いたりしない!
大丈夫よ、心配しなくても!
あたしはフィーグ・だ・け・だ・か・ら!」
「うぷっ?!マーニャさん、苦しっ!窒息するからっ!」
我ながら情けない声を発した俺に、「仕方ないなあ、の〇太君は」とばかりに、顔面圧迫してくれるマーニャ。
「ぷはぁ!」
「うわ、クリフトさんが また、鼻血吹いて倒れた!」
其処の妄想エクスプレスなんざ、今は どーでもいい!
「フィーグなら、その程度の締め技くらい、簡単に抜けられるんじゃない?」
これは、断じて締め技じゃない!
「アリーナ、これはね、締め技じゃなく、
GOHOUBIって言うのよ。」
違う!…と思う。
「フィーグさん、不潔です。」
だから、俺?
「ちょっとミネア?
あんたはフィーグの事を、義兄さんと呼びなさい?」
いや、速いから!
てゆうか、先に不潔否定してくれよ!
「若いのう…」
「…ですな。」
あんた等は傍観かーい!?
「皆さん、デュマ港に着きましたよ。
フィーグさんにマーニャさん、続きは船でやって下さい。」
いや、止めろよ!
「はーい♪」
いや、まだ続けるの?
ぐだぐだな儘で、馬車を船に載せ、俺達はスタンシアラを目指した…。
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「ふぅ…さっきはマジ、窒息死するかと思ったぜ…」
「…でも、本当は、気持ち良かったんですよね?(ニヤニヤ)」
「おぅ、ほんのチョットな」
ガン!!
「痛い!」
「テメー、ソロ!終いにゃ処すぞ!」
港町デュマを出航。
俺はマーニャの、本人曰わくGOHOUBIから逃れる為に、船に乗って荷物を片付けた後、素早く旦那とソロを誘い、デッキで釣り針を垂らした。
「う…人の頭を叩いといてから言う様な、ベタな発言は どーかと思いますが…」
やかましいわ!
その際に、ソロが何だか面白い事を言ってくれたので、少し『指導』してやった。
「あ、いたいた♪フィーグ~♪」
あちゃ~、マーニャさんに見つかったよ。
ちゃっかりと俺のリュートを持ち出し、ついでに鼻に丸めたティッシュ装着のクリフトを連れてきたマーニャさん。
はい、もう分かりますよ。
クリフトに釣り竿を渡し、俺達2人はデッキの反対側に移動。
既に椅子が2つ、セットされています。
どーせ、釣りをしてる俺の所に来る前に、クリフトに用意させていたんでしょうね、この お姉さんは。
まあ、リュート奏でる最中にGOHOUBIしてくるって事はないから問題ないだろう。
…多分。
♪♪~♪~♪♪♪♪~♪♪♪♪~♪♪♪…
静かなのから派手なのまで、マーニャのリクエストに応えてると、いつの間にかミネアさんや姫さん、釣りをしていた筈の旦那も、椅子を持ち出し、曲を聞くだけでなく、色々とリクエストしてきた。
楽師ポジ確定ですか、そーですか。
「ところでフィーグ、スタンシアラのアレ、何か考えってあるの?」
マーニャがスタンシアラの お笑い大会の勝算があるか聞いてきた。
「ん~、どうかな?」
「いざとなったら、何時もの夫婦漫才をしたら良いじゃない?」
「「あれって、そんなに面白い?…てゆうか、別に夫婦漫才じゃないからね?」」
「相変わらず息ぴったり…」
「大丈夫です!いざとなったら、私が とっておきのギャグで、王様を笑わせてみせますよ!」
「却ーっ下!謁見の間を凍結させる気か?
下手すりゃ、テロ扱いで牢屋行きだぞ!?」
orzる旦那。
だが、悪いが、旦那のギャグのセンスは良く知っている。(9話参照)
「今、モンバーバラにいるパノンに同行して貰うとか?
カノン船長に仲介してもらってさ?」
現在、モンバーバラ劇場では、未だ現役でありながら、「伝説」と称される、お笑い芸人のパノンが毎夜ライヴを開いている。
このトリートーン号の船長であり、パノンの息子であるカノンの紹介なら、確かに協力してくれるかもしれないが…
「いや、パノン氏だって、劇場と契約してる期間中、勝手に余所に抜け出すなんて、出来はしないだろう。」
「う~、駄目かぁ…」
そう、パノンに声を掛け、同行して貰うのは、最後の手段にしておくべきだ。
「ま…我に策アリ…かな?」
♪~♪♪
俺はリュートを弾きながら、そう言った。
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「ふっ、天空の伝説か…懐かしいな…」
「そういえば船長って、ゴッドサイドの出身だったよね?」
「まあな、昔から父上に、よく話を聞かされたもんだよ。」
夜、船内の厨房でカノン船長と ばったり会った俺は、その場で天空伝説について ちょっと話していた。
天空伝説の お膝元と言っても良い、ゴッドサイド出身の船長との会話は、今が夜中でなければ、ソロを呼び出して話しても良かったくらい、なかなか有意義な物だった。
「あんの~、料理長?なして、船長すんとフィーグすんは、SEIZAしてるんだべ?」
「摘まみ食いの現行犯にSEKKYOU中だ!」
「う…まさか…」
「この時間にやって来るとは…不覚!」
朝食の仕込みにやってきた、料理長に見つからなければ、尚 好しだったのだが…
数日の後悔…もとい、航海を経て、トリートーン号はスタンシアラの港に到着した。
スタンシアラ…世界レベルで水の都として名高い水上都市だ。
王都でさえ、その『路』と言うべき其れは、殆どが川であり、筏津やカヌーでの移動が基本である。
今、スタンシアラ城で催されているイベントである『爆笑グランプリ』。
内容は至ってシンプル、謁見の間の玉座に座っている、スタンシアラ王の前で芸を披露、見事に王を笑わせた者には、褒美として王家に伝わる家宝、龍翼の冠…即ち、天空の兜が与えられる。
しかし、イベントが始まって数日経つが、未だ王を笑わせた者はいない…。
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「つまらぬ。出直して参れ。」
orzる旦那。
だ・か・ら・言ったろ?
あれだけ部屋の中、絶対零度な寒波を喚び起こしといて、逮捕されなかっただけラッキーだよ。
俺の前に、どーしてもって言うから、ま、王を笑わせるのは、仲間内なら無理に俺でなくても問題ないので、お手並み拝見してみたら案の定…
いや、「布団が吹っ飛んだ」は無いわ…
界王様じゃないんだからさ…あれじゃ、誰も笑わんよ。
「次の者、前へ!」
さて、俺の番だ。
♪♪♪
リュートを弾きながら、スタンシアラ王の前に出る。
「ほう…お主、リュートを使った芸を披露するか…さあ、儂を笑わせてくれい!」
「では…」
『一週間の歌』。
前世(リアル)世界の童謡。
このドラクエの世界でも、飲み友の吟遊詩人ロレンスに何気に教えた結果、世界中に認知、広まっている詩だ。
俺が今から披露するのは、この替え歌、所謂コミックソングだ。
♪♪♪~♪~♪♪♪♪♪♪~♪♪
「♪日曜日に浮気をしたら♪
♪次の日に彼女にバレた♪
♪修羅修羅修羅修羅修羅修羅場♪
♪修羅修羅修羅修~羅場ぁ~!♪」
…どうだ?
「………………………………………」
…………………………………………?
「………………………………………」
……………もう、ダメ出しでも良いから、何か喋ってくれ。
「……………………………………ぷっ…」
!!
「ぶははははははははははは!…ハッ!?」
おっし!
「ぷぷ…フィーグさん、やりましたね!」
同行していたソロも、笑いを堪えている。
「う、うむ…フィーグ…と申したな…
み、見事だ…其方に褒美として、我がスタンシアラ王家の家宝の龍翼の冠…天空の兜を与えよう。」
スタンシアラ王がそう言うと、王の後ろに控えていたメイドさんが、サイドにドラゴンの翼というか、鰭を象り、正面には翠の宝玉が埋め込まれた冠を持ち出し、俺の前に差し出した。
「確かに天空の兜、頂戴致しました。」
「う、うむ…」
スタンシアラ王の顔は晴れやかではない。
当然だ。
俺は識っている。
結果、自分の意図とは別の形で、家宝を手離す事になったのだから。
だからこそ…
「スタンシアラ王、確かに、この天空の兜は頂戴致しました。
しかし、この兜、失礼ながら、多寡が この様なイベントで戴くには過ぎた品。
この兜に相応しい対価、今後の行動にて払う心算で御座います。」
「ほう…なかなか申すな?
それで、其方は、如何にして対価を払うと言うのか?」
「それは…真実の笑い。おい、ソロ…」
「はい?」
俺は後ろに立っていたソロを呼び寄せ、
「被ってみろ。」
「え?」
天空の兜を渡した。
「バカな?其れは何人たりとも装備は出来ぬ筈ぞ?」
王曰わく、誰もが被ろうとした瞬間に、まるで兜が拒むかの如く、バチィッと帯電するそうだ。
あくまでも、お部屋のオブジェとしての認識しかなかったらしい。
それを聞いたソロが、恐る恐る、兜を頭に近付ける。
「バチバチィッ!」
「ひえっ?!ちょ、フィーグさん、止めて下さいよっ!」
いや、今の話を聞かされたらさ…言いたくなるじゃない?
気を取り直し、改めて天空の兜を頭に近付けるソロ。
ソロの頭に対し、やや大きいと思われた兜は、何の抵抗もなくソロの頭を包むと、勇者の頭のサイズにフィットするが如くに縮んでいき、完全に装備者の頭に馴染んだのだった。
「これは…」
「むぅ…」
あまりの自然さに驚くソロ。
そして、兜を装備が出来たソロに驚くスタンシアラ王。
「スタンシアラ王、御覧の通り、私の仲間である このソロこそ、伝説の天空の勇者!
私が…否、このソロが、天空の兜の対価として王に、そして世界の人々に、真実の笑いと笑顔を届ける事を約束致します!」
「………………………………………。」
俺の言葉に、黙り込むスタンシアラ王。
そして
「フィーグと申したな…よくぞ、儂の心を見抜いた!
儂が このイベントを思い付いたのも、国を明るくせんが為!
イベントを催し芸人達を呼ぶ事で、少しでも国を明るくしようと思ったのだが…希望を失った民の明るさを簡単に取り戻す事は叶わぬ。
良いだろう!
フィーグよ、そして勇者ソロよ!
儂は、其方達に賭けてみよう!
大義であった!
天空の兜、改めて、受け取るが良い!」
こうして俺達は、天空の兜を手に入れた。
「ふははははははははははは!
いや、目出度い!今宵は宴じゃ!!」
その夜、城下町に待機していた仲間達も呼び、豪華な宴の席に着いたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「いや、フィーグよ、それにしても、お主の詩、最初に聞いた時は吃驚したぞ!
若い頃を思い出したわい!
ふははははははははははは!」
ちょ、国王、あんた若い頃、修羅場ってたんかい…
「あのスタンシアラ王が、あんなにも楽しそうに笑ってる…。初めて見たわ。」
姫さんも驚いている。
こうして、スタンシアラの夜は更けていったのだった。
m(_ _)m 嘉門〇夫さん、ゴメンナサイ。