「Lion de Furea!!手加減抜き・超本気版!!」
「うぉっ!?」
ガギィッ!!
刃を地に着け、其処から土を抉り掘る様なアッパースイングの斬撃…掘り起こされた土塊と共に炎を纏わせて迫る刀身を、朱の槍でガッシリと受け止め、ガードするフィーグ。
「おぉう!?」
しかし、燃える刃の直撃だけは防ぐ物の、技のパワー、勢いには勝てず、その身は吹き飛ばされてしまう。
ドォオオオオォォォン…
それと同時に、銅鑼(ゴング)が闘技場内に鳴り響いた。
それは当然、魔法を使用した事による、ゼヴィウスの反則負け、試合終了を告げる鐘の音なのだが…
「せいやっ!!」
「ぬぇい!」
ガシッ!
しかし、それを全く意に介さず、ゼヴィウスとフィーグはその後も、互いの紅蓮の大剣と朱紅の槍をぶつけ合う。
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわ…
ざわめき起つ観客席。
ダンッ
「優勝の肩書きはくれてやるって、そーゆー事かよ!このクソ親父!!」
バシッ
「応よ!貴様が どのくらい成長したか、そっちの方に興が湧いたのでな!」
ドゴッ
「この大会が終わった後で戦るって考えは、無かったのかよ?」
ダガッ
「ふん!こんな縛られたルールの中で行儀良く試合った後、時と場を変えて、改めて本気で もう1回だ?興が冷めるわ!!」
ベキッ
「あー、そーですか!」
ガギィッ!!
武器を交えながら…正しく、拳と拳ならぬ、武器と武器で語り合う2人。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫危ねー!
あっのクソ親父、絶対に何か企んでいると思ってはいたけど、いきなり魔法剣&必殺技かよ!?
試合開始直後で体力もMAX、事前に集中も高めていたし、しかも今迄も過去、如何に手加減版とは云え、何度となく喰らっていた技だったから、辛うじてガード出来たが…
いきなり『必』ず『殺』せる『技』かよ!?
これ、大事な事だから何度でも言うぞ!
ドォオオオオォォォン…
『両選手、試合はフィーグ選手の勝利とします!ひとまず退場して下さい!!』
試合終了となっても、未だ撃ち合う中、再び鳴る銅鑼(ゴング)と共に、俺達に退くよう、場内アナウンスが響くが、
「「うるせー!引っ込んでろ!!」」
『ひぇっ!?』
逆に俺達は怒鳴りつけて、黙らせる。
わーわーわーわーわーわーわーわー…!!
大体、この客席を見ろよ?
今の俺等が既に、ノールールで戦り合ってるを察したみたいで、思いっ切り湧いているじゃねーかよ?
こんな中、途中退場させた日にゃ、それこそ消化不良の暴動が起きるぜ?
…但し、この儘じゃ、普通に勝てる気がしねーよな。
「でりゃあ!プロミネンス・斬!!」
ズシャアッ!
うぉっ!?
本当に遠慮無ーな、おい!
さて…どうする?
中途半端に大技仕掛けても、絶対に捌かれるだろうし…
今の俺の優位な点は、親父の技を全部知っていて(多分)、粗方の防御が出来る事と、親父の知らない技を幾つか持っている事くらいだけど…
「やっぱし基本の連撃で体勢を崩してから、デカいのキメるしかないか…よと!!」
バシッ
「ふんぬ!」「おわっ!?」
ちぃ、やはり簡単には切り崩せねーかよ!!
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「強い…!!僕の時とは全然…」
「これが、最強傭兵…
そして、フィーグさんも…」
「ああ。でも、やはりゼヴィウス氏の方が有利だな。
フィーグも あの炎の剣に、どうにか喰らい付いてるけど、全然、反撃の隙も与えて貰えないしね。」
「ちょっと、打つ手無しみたいな言い方しないでよ!!」
控え室、水晶玉(モニター)越しに、その攻撃を悉く弾き飛ばされるフィーグを見ながら話すソロ達。
因みにマーニャ、ミネア、ホイミンも あの後、客席には戻らず、控え室で一緒に観戦していた。
「うむ!簡単に負けてしまう様では、俺の立場が無いぞ!」
「うぉん!右に同じ!」
「!!君達…?」
ソロ達の前に現れたのは、ホウセンとベロリンマン。
ホウセンは左肩をガッチリとテーピングされ、右腕も三角巾で吊っている状態。
ベロリンマンも、その着ぐるみの下は、恐らくテーピングされているだろう。
「ふん…!ベタな台詞ではあるが、この俺に勝った男が、例え相手が如何に あの、フランベルジュとは云えども、良い処無しで敗れて貰っては困るのでな…」
「うぉん!…てゆーか、勝て!!」
「ホウセンさん…ベロリンマンさん…」
ドゴッ
「おらっ!」「ぐっ!?」
ゼヴィウスの縦の両断をガードしたフィーグだが、直後、がら空きとなった腹にサイドキックを喰らってしまう。
「くっそ親父ぃ…!」
「フィーグさんの普段のあの、武器と体術を併せた戦い方って、あの人の教えなんですね。」
「本人曰わく、戦場(いくさば)の傭兵流喧嘩剣術だそーよ。」
「親子対決と言うより、実質これ、師弟対決ですね。」
「そうだ、体術だ!」
「バルログさん…?」
何かを掴んだ様に、バルログが呟く。
「私はフィーグ、ゼヴィウス氏、両者と戦ったから分かるけどね。
武器の扱いは、当然、傭兵…職業軍人のゼヴィウス氏が上。
一撃一撃の重さも、体格的にゼヴィウス氏が分が有るのは否めない。
でも、体術…格闘のセンスとしては、フィーグの方が遥かに上だ。
ゼヴィウス氏の拳や蹴りは単に、攻撃のバリエーションとしか繰り出していない。
しかし、フィーグの其れは、同じく武器による攻撃の中に組み込みながらも、その技自体は完全な…武闘家の『技』として、繰り出しているんだ。
フィーグはそう、武闘家の顔も併せ持っている。」
「「「「あー…」」」」
少し前の、バトランドで行われた模擬戦を思い出すマーニャ達。
「それに、さっきのホウセン氏との試合でも、槍遣いとしては彼がフィーグを圧倒していた。
しかし、最終的に活路を開き、試合を決めたのも体術だったよね。
この戦いも、勝機を見出すなら…」
「…ふん!」
「ん?つまりフィーグさんって、実は槍より格闘の方が強いって事ですかぁ?」
「いやいや、そういう単純な事でもないんだけどね。」
ガチャァッ!
変わる事無く、互いに武器をぶつけ合う両者。
まるで、先に決定打を撃った方が、イコール勝ちと考えている様だった。
違う点は、兎に角パワーに任せ、大技で防御毎崩し倒そうとしているゼヴィウスに対し、小技で体勢を切り崩し、その時に出来る、僅かな隙を狙っているフィーグと云った具合である。
但し、ゼヴィウスの其れは、本人が決してパワー馬鹿と云う訳でなく、単に小技を出す必要が無いだけである。
『最強』と名指しされる戦士が、基礎が出来てない訳がない。
ドォオオォォオンドォオオオオォォォン!!
『試合は終わっています!
両選手、お退がり下さい!!』
「喧しいわ!」「黙ってろ!!」
銅鑼を連打し、退場を促すアナウンスにも、また逆に怒鳴りつけ、己の武器を撃ち合う両者。
「しっかし…今更だけどさ、この状況で戦い続ける2人も2人だよね?」
「うおん!リアル・バトル馬鹿!!」
「まぁ、気持ちは分かるけどね?」
「ふん…頃合いか…」
「え?」
事実、試合終了しているにも拘わらず、互いに強さを示し、互いに強さを確認してるかの様な試合…否、戦闘を続ける両者を見守る中、不意にホウセンが呟き、控え室を去ろうとする。
「何処に行くの?最後まで見ないの?」
アリーナの問いにホウセンは
「…止めてくる。」
「はぁ?ちょ、ちょっと?」
「うおっ!俺も行ってくる!」
「えっ?待って下さいよ!?」
一言だけ残すと、ベロリンマンと共に、控え室を出て行った。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
ドォオオォォオンドォオオオオォォォン!!
『試合は終わっています!
両選手、お退がり下さい!!』
あー、アナウンス、うぜー!しつけー!
「「「「「いーじゃねーか!」」」」」
「「「「続けさせろーっ!!」」」」
「「「「「止めてんなよ!」」」」」
「「「「空気読めー!!」」」」
「「「構わねー!戦れ戦れー!!」」」
…ほれ見ろよ、観客もノリノリだし。
止めようとするのは、野暮ってヤツだぜ。
「ふんっ!」
ガシャッ!
「うぉぃっ!!…って、客席の様子窺ってる暇は無いかよ…っと!
でぇいやぁっ!!」
バキャァッ!
「ふはははは!!楽しいぞフィーグよ!
まさか、ほんの暇潰しの心算で出た大会に、お前も出場しているとは思いもしなかったぞ!」
「…そりゃ、どーも!」
親父…笑いながら斬撃してくるな。
やはり、一撃一撃が重い。
ガードしていてもその上から衝撃がきて、少しずつダメージを削り受けている感じだぜ。
ドギャァッ!
「…それにしても、暫く見ぬ間に腕を上げたなフィーグよ!
多少、マグレが有ったにせよ、あのホウセンに勝ったのには驚いたぞ!!
強くなりおった!」
「…ったりめーだ!
誰の息子だと思ってやがる!」
ガチャァッ!
「応!納得したわい!!」
「…するのかよ!?」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
「…失礼します!」
「「「「「「「?????」」」」」」」
控え室に突然、数人の城兵を連れた、大会運営スタッフがやってきた。
ソロやアリーナをはじめ、未だ控え室に残って この『決勝戦』を観戦していた選手や関係者達は揃って、「?」な顔を浮かべる。
「何事だい?」
バルログがスタッフに問い掛ける。
「あの2人を止めに入ります。
この部屋に残っている選手の皆さんにも、手を貸して頂きたい。」
つまりは、アナウンスによる再々に渡る呼び掛けも無視して、何時まで経っても戦いを止める気配が全くない2人を、物理的に止め、早々に閉会式を行いたいから協力して欲しいそうだ。
しかし、
「あたし、パース!」
アリーナが即答で拒否。
「すいません、僕も…」
ソロも それに続いた。
「「「「「………………」」」」」
他の選手達も無言ではあるが、止めに入る気は無いと、その表情が語っている。
アリーナ達同様に、単純に2人の戦いを最後まで見たいと考える者も居れば、下手に2人の間に割って入り、フィーグは兎も角ゼヴィウスに ぶっ飛ばされたくはない等と考えている者も居るだろう。
「申し訳ないが、この場に居る者は皆、あの2人の戦いを邪魔しよう云うと考えは持ってはいないみたいだね。」
皆を代表する形になったバルログの言葉に、スタッフは若干、苦虫を噛み潰した様な顔をしながら出て行った。
「そう言えば、ホウセン氏達も「止める」とか言って出て行ったけど、あれから全然動きが無いよね?」
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
タンタンタンタン…
闘技場に繋がる、狭い廊下を走る大会運営スタッフと城兵達。
彼等はその廊下の突き当たり、闘技場出入り口の扉の前に立つ2つの人影を確認する。
「おぉ、ホウセン殿とベロリンマン殿!」
それは先刻、控え室を出たホウセンとベロリンマン。
「丁度良かった!闘技場の2人を止めるのを手伝ってくだされぃ!」
スタッフが協力を申し出るが、
ジャギ…
「な…?!」
ホウセンは そのスタッフ達に、無言で左手に構えた槍を向ける。
「な…何のつもりか?」
「…ふん!知れた事よ!
あの2人の邪魔はさせん!!」
「うお!俺達、お前達を止める為に、此処でスタンバっていた!」
そう言って、ベロリンマンも身構える。
「さあ、どうする?この儘 退くか?
それとも意地でも彼等を止める為、その前に此の場で、我等と武器を交えるか?
このホウセン、例え手負いと在れど貴様等に遅れを取る心算は微塵も無いぞ!!」
闘技場で『戦場』の世界で『最強』と云われる男とその息子が武器を交えているその裏で、『格闘』の世界で『最強』と謳われた漢の咆哮が廊下に響き渡った。
トーナメント編は次回で締めます。
締められたら良いな…