トーナメント、締めの回です。
「ふぅ…あんなに目くじら立てて怒らんでも良い物を…」
「…だよなー?」
街の酒場。
そのカウンター席でグラスに注がれた酒を啜りながら、俺は親父と話していた。
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…あの後、最初に目に写ったのは、知らない天井と、マーニャさんの泣き顔だった。
「ふみゃ~っ!ひーぐーっ!よかったよ、めをさみゃしたよー!!」
「ま、マーニャさん!?うわったぷぷぷっ?!
く、くるひっ!?」
コロシアム内の医務室。
皆が言うには、俺は最後、親父の技を受けて、気を失ったらしい。
俺が目を覚ましたのに気付いたマーニャさんが泣きながら抱きついて、いつもの窒息死させるが如くの、顔面圧迫してきてくれました。
気持ち良いなんて、少ししか思ってなぃ…嘘です、凄く気持ち良かったです。
でも、マジに苦しいのも事実です。
周りにはソロや姫さんにバルログ、更にはミネアさんやライアンに旦那達、全員集合していた。
皆、気を利かせてくれているのだろう、余所を向いてくれている。
いや、何時ものパターンに、呆れているだけですよね、はい。
そんな中、ホイミンだけは、顔を赤くしながら此方をガン見。
はっきり言って、13歳(?)のお子様には教育上、非っ常に芳ろしくない。
この ろりきょぬーなボクっ娘が近い将来にエロビッチ娘になったなら、それは間違いなく俺とマーニャさんの責任だろう。
「そうか、俺、負けたのか…」
「ううん、あの人も一緒に倒れたから…」
暫くしてマーニャさんから解放された俺は、飛んだ記憶の前後を確認する意味で、試合の展開を聞いていた。
結果はダブルノックダウン。
引き分けだったと…。
そういう風に言えば聞こえはマシだが、
「いや、槍を折られた あの時点で、実質 俺の敗けだよ。
あの時、ホウセンが槍を寄越さなかったら、倒れていたのは俺だけだった筈だ…。
くそっ…また勝てなかった…!!」
「フィーグ…」
「…!!そー言えば、親父は?」
「ゼヴィウス氏なら、少し前、君より先に目を覚まして出ていったよ。」
教えてくれたのはバルログ。
「あ、それから、目を覚ましたら、運営事務室に来る様に、大会スタッフの人から伝言を言付かりました。」
「ああ、分かったよ。ん…この槍は…?」
ベッドの横に立て掛けてある、穂先の根元に赤いフサフサの装飾が付いた黒柄の槍の存在を気にしながら、俺は事務室に向かった。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫コンコン…
「失礼しますぅ~…」
事務室に入ってみると、そこには如何にも激おこな顔をしているスタッフ達、そして親父にホウセンと もう1人…見覚えの無い若い…俺より少し年上な見た目の男が「漸く来たか」と言いた気な顔で、俺の方を見ていた。
そして それから、大会委員長による説教会…OHANASHIが始まった。
WHY(何故に)?
確かにルール無視で戦っちまったのはアレだけどさ、結果、大会は大いに盛り上がったじゃない?
委員長曰わく、進行無視のルール無視で私闘しでかしたのも問題だが、それ以上に決勝に上がったファイナリストである2人が揃って閉会式に出られなかったのも、問題だったそうだ。
因みにホウセンと もう1人の男…ベロリンマンは、俺達の私闘?を止めに入ったスタッフを撃退した件について、お小言を喰らっている。
…が、その顔には反省や後悔が、全く感じられていない。
親父も然り。
そして それは、俺も同様だ。
≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
一通り説教された後、一応、頭を下げて退室した俺達。
ホウセンとベロリンマンにも、あの後の事を聞いてみると、閉会式の際の、賞金や賞品の授与は、ソロが代理として纏めて受け取ったらしい。
優勝賞品の【雷鳴の剣】は、公式記録では(親父の反則負けにより)俺が優勝した事になっているので、その所有権は俺に有るそうだ。
それから、ホウセンに医務室に置きっぱだった槍について聞くと、良い戦(モノ)を見せて貰った礼だと言われた。
「要らぬなら引き取る」と言っているが、業物(アレ)を手放すなんて とんでもない!
逆に「やっぱり返せ」って言われても、絶対に嫌だからな!
親父に槍(ケイジ)を折られたばかりで、手持ちの武器が無いし、だからといって今更 数打ちの鉄の槍を…てゆー気も、正直言って既に無い。
また、エンドールの鍛冶屋に同じ槍を打って貰うのも良いのだが、金の問題は兎も角、アレは発注してから完成させるのに時間が掛かり過ぎる。
ソロに雷鳴の剣を渡す事で、使い手が居なくたった破邪の剣を俺が使っても良いのだが、やっぱり俺的には、『槍』のが しっくり来るってのが本音だ。
あの場に置いてあった時点で この展開は予測していて、ぶっちゃけラッキーと思っていたからな。
親父とのバトルでの、少しの間ではあるが、実際に使ってみて、俺からすれば、かなり相性は良い代物だったし。
素直にホウセンには礼を言って、改めて豪槍・方天画戟を手に入れた事を実感する。
そして その直後、親父に
「今から飲みに行くぞ!付き合え!」
「へ?」
半ば強制的に酒場に連れられ、冒頭の会話に至る…。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆「…しかし、お前と こうやって、2人だけで酒を飲むのは初めてだな…」
「…そうだったか?…って、そこまで感慨深くなる事かよ?」
「ふっ…お前にも息子が出来たら、何れ解るさ…」
「へ~、そんなモンかね~?」
しみじみと話す親父に対して そう言うと、俺はグラスに残っていた、酒場のマスターお勧めの、芋から造ったという少しキツ目の酒(ロック)を口に運ぶと、一気に…
「…で、孫は何時頃の予定だ?」
「ぶっぶーーーーーーーーーっ?!」
飲み干す事無く、一気に吹き出した。
ケホッケホッ…
い、いきなり何を言っているのだ?この親父わ?
「ななな…?」
「ふっふっふ…あの健康的な肌の娘さん達と、それなりな仲なのだろう?
少し前、家に帰った時にママから お前が綺麗な双子の娘さんを お持ち帰りしてきた事は聞いてはいたが、彼処までな美人さんだったとはな…
とりあえず息子よ、でかした!!」
…いや、少しだけ誤解してる面もあるが、とりあえず、其処で良い笑顔で親指を上に立てるは止めてくれ。
てゆーか、何時かはマーニャさんの話を振って弄りに来るとは思っていたが、このタイミングで来ましたか…
しかも、ミネアさんも込み込みという、素晴らしく愉快な勘違いをしてくれております、この親父様。
「いやいや、付き合ってるのはマーニャさんだけだし、前に家に連れて来た時は、まだ旅の仲間ってだけで、其処迄な間柄じゃなかったからな?」
…親父だけでなく、マジに一度、ブランカに帰り、母さんの誤解を解いておく必要が有りそうだ。
ついでに(恐らくは)祖父っちゃんも。
「そうか…まあ、どっちにしても、明るくて良い娘さんではないか、『お義父様』って呼ばれた時、感動の余りに、思わず泣きそうになったぞ!」
いや、親父、それは騙されているから!
「…で、真面目な話、お前、あの娘さんと一緒になる気なのか…?」
「…………………………………。
彼女とは そーゆーの、今の旅が、全て終わった後に話し合おうって事にしているけど、親父には本音を言っておくかな…
あ、皆には絶対…母さんや祖父っちゃんにも、絶対に話したりするなよ?」
「ん?それは振りか?」
「マジだよ!!」
フラグ立てたくないの、察しろや…
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「ふ~ん?それで、お義父様と2人で飲んでいたんだ~?」
「いや…すいません…」
「1人で寂しかったんですけど~?」
「…その、ゴメンナサイ…」
…あれから親父と、今後の予定等を少し話した後、宿屋の取っていた部屋に帰ってみると、俺の帰りを1人で待っていた、涙目な お姉さんに「何故に自分も誘わなかったし」と追求されました。
その結構な激(怒)っぷり、『お義父様』発言に突っ込む余裕は無いっす。
「兎に角、罰が必要だよね?」
「はひ?!」
「心配しないで良いわよ?トーナメントで優勝…頑張ったGOHOUBIも、一緒に・し・て・あ・げ・るか・ら」
いや、マーニャさん?何だか字が違わくないですか?…って、ちょっと待っ…
「フィーグニウム、摂取~!」
アッーーーーーーーーーーーー!
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「お前、大丈夫か?昨日のダメージが、まだ抜けてないみたいだが?」
「だ…大丈夫だから…」
「…そうなのか?」
翌日の正午過ぎ、天空の鎧の在処を知る戦士ブランクに、その隠し場所を教えて貰うべく、約束していた酒場で落ち合ったのだが、俺の窶れきった顔を見た瞬間、心配してきてくれた。凄く善い人だ。
でも、これは親父との戦闘(バトル)でなく、俺の隣に座っている、艶やかな顔の お姉さんとの、夜の格闘(プロレスごっこ)が原因なんだよね…
≫≫≫≫≫≫≫次回予告!≪≪≪≪≪≪≪
次回、真に導く者 :『天空の鎧』
乞う御期待!!